カードを破いてみよう

破壊衝動というと無難なところでは窓ガラスを割って回ったりするわけですけど、その最もいじましい形態は何かという囁かな問いを立てるとですね、「カードを破く」というのはなかなか良い線をついた回答なのではないかと思うのです。

というわけでカードをいろいろ破いてみましょう、というのが今回のお題です。とはいえ、実際のわたくしがそういう卑小な破壊衝動を持っているかというと別にそれとは関係ありません。カードの紙というのはどうなっているのでしょう、というお話でございます。

トランプといいますかカードゲームといいますか、まあああいうアレですね、これを作る際には、普通の紙とは構造の異なる専用紙が用いられます。普通の紙と何が違うかといいますと、正面と背面の間に色つきの紙が挟まっていて、これがあるんで正面も背面も白っぽいデザインであったとしても、透けないんだと。もちろん他にもカードのコシがどうとか重さがどうとかありますが、最も重要なのはこの挟まった色紙です。

ただし、こういう専用紙を使わず、普通の紙を使ってるところもあります。「アートペーパー」といわれる種類の紙がよく使われます。何と言ってもお安いからですが、そのかわり透けます。こういう紙を使う場合、背面は黒ベタを採用するなりして透けないように工夫しないといけないんですが、昔のABACUSSPIELEのゲームってカード透けまくりだったよなー、あれって白ベタなのにアートペーパー使ってたんだろうか、と今ちょっと思いました。

で、これは本当か嘘かわからないんですが、同じ専用紙でも、紙の値段によって中に挟まった色紙の色が違うんだとか。安いのは灰色で高いのが黒、中間でピンクとか青とか。どうもにわかには信用なりません。もっとも、一般には紙というのは同系なら重い(厚い)ほど高いのでして、そのコード分けのために中の色紙の色も変えてる、というならある程度はわかります。でも実際のところ本当にそんなカラフルな色紙が使われてるかは破いてみないとわからないわけで。

それでは破いてみましょう。

※そのまえに。紙の重さの話もいっしょにしておきたいので、重さの単位についてここで前置きをしておこうと思います。日本でよく使われる単位は四六判換算の連量といわれるもので、書籍とかでよく使われる「四六判(788×1091mm)」で1000枚あたり何kgですか、という重さです。英語圏、というか英語で商談をするような場所だと坪量という単位で記されることが多く、これはその紙1枚1平米で何グラムですか、というものです。で、カードゲームに使われる紙として標準的な重さは、四六判連量だと230kg、坪量だと270グラム/平米[以下gsm]のものが多いです。正確には270gsm=232.1kgくらいの換算レートですが、ざっくり270gsm≒230kgとして扱います。

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まずは王道中の王道、US Playing Card社のトランプ「タリホー」です。ご覧のとおりのくっきりブラック。ところで今回いろんなカードをくらべてみて、タリホーが意外と柔らかい紙を使ってることにちょっと驚きました。ほら何しろトランプ業界を代表する会社なのですし、思い切り重い紙を使ってるのかなーと思うじゃないですか。でも実際これたぶん270gsmくらい(あとで調べたら実際270gsmでした)。まあ必要充分ですし、あんまり重いとリフルシャッフルが厳しいので手品の人には売れなくなるかもですけど、王様としては物足りなくないすかね。

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ひとのものを破くまえにまず自分のものを破きましょうということで、再版日英版の「ファブフィブ」です。印刷は中国製。こちらもブラック。今回比較したカードの中では、このファブフィブと後に出てくるアドルング社のカードが最も重いカードとなっています。数字で言うと300gsm。1割しか違わないじゃんって話ですが、いやしかしこれは結構歴然とした差なのですよ触ってみると。何か分銅とか使ってわかりやすく示せればいいんですけどね、いや頑張れば示せるはずですがそれはまた別の機会に。ところでさっきから色紙の話をせず重さのことばっか喋ってますね。

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色紙といいつつみんな黒ですか、という反応が当然あるかと思いますので、黒じゃない色の紙が入っているケースを見てみましょう。
Amigoの6nimmt(1998年くらいに買ったもの)とHiGの操り人形(たぶん初期の版)です。写真だとちょっとわかりづらいかもしれませんが、どっちも紺色をしてます。これ同じ印刷所で刷ってるんじゃないかと思ってたんですが、よくみるとエンボス加工(英語だとlinen finishって言います)が違ってました。HiGのはドイツものでよく見かけるタイプのパターンなんですが、Amigoのはちょっとレリーフっぽいというか、パターンが大きいんです。どうも時期によっても違うらしくて、比較的最近の作品である「テネキー」では普通のドイツっぽいパターンになってました(後述するKosmos等のカードと同じパターンです)。重さは270か280gsmかな? タリホーより気持ち硬い気がしますが、そりゃ単にブリッジサイズとポーカーサイズの違いでしょ、と言われると返せません。

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ドイツはみんな紺なのか、というとさにあらず、黒いのが挟まってるカードもちゃんとあります。Kosmosの「大聖堂カードゲーム」とHiGの「カードカソンヌ」。たぶんこの2つは印刷所同じです。エンボスのパターンが全く同じですし。紙質ですが、さっきの紺色組にくらべてわずかに柔らかくなってます。これが多分タリホーと同じ。そうすると紺色組は280gsmってことなんですかね。

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続いてはドイツ非標準ものを。どっちもエンボスかかってません。
まずはABACUSの「シュヴァインズギャロップ(オール・ザ・ウェイ・ホーム)」。このころのアバカスはカードにお金をかけてない印象があり、実際エンボスはかかってないわけですけど、でもカードはご覧のとおりちゃんと黒紙を中に入れてました。初版のマンマ・ミーアとか透けまくりだった印象があるんですが、もしかするとわたくしの思い違いだったのかもしれません。お持ちの方はお試しください。重さはたぶん270gsm。
そして問題のAdlung。これは「ベネチアの仮面舞踏会」からとってきました。Adlungというのはいつでも60枚ワンパックの定形フォーマット、という印象がもちろん強いのですが、カードの質は結構ゲームごとに変えてます。この「ベネチアの仮面舞踏会」はすごくて、まず表面加工がマットじゃなくてグロスです。ドイツのカードでグロスのものってかなりレアだと思います(他の国だと結構ふつうだけど)。グロスはマットよりも硬くて丈夫なのでカードの重さを他と同じ基準で考えると間違える可能性がありますが、あえて気にせず比較しますと(どうせ印象論だ)、ファブフィブとほぼ同じ重さ・硬さとなっています。つまり300gsmですね。Adlungがいつもこんなごっついカード使ってるかというとそんなことはないはずで、個人的にはむしろエンボス無しで少し薄めのマット、という印象を持っていますが、何しろゲームごとにころころ紙を変える人たちなので、印象がどうこういっても仕方ないかもしれません。

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変わり種を2つ。1点目は日本物で、モンスターメーカー5リバイズドのカードです。先ほど出てきた紺色のものと少し似てますが、これは水色になってます。これは珍しい。どこで売ってるんでしょうか。カードはエンボス無しのグロス、重さはたぶん270gsm。あと、ドイツものに馴染んでいるとちょっと面食らうことに、大きさがポーカーサイズです。というか冷静に考えてみると、欧州ものってほとんど全部ブリッジサイズですね。やぱしブリッジは欧州のものだってことなんでしょうか。そしてモンスターメーカーはなぜわざわざサイズのでかい(ということは値段も多分高い)ポーカーサイズを選んだのだろう。
あともうひとつ。Gryphon GamesのFor Sale。今回唯一の灰色です。というか、中身のほとんどが灰色ですね。他のカードは白ベースで薄く色紙を挟んだ構成なんですけど、この紙は基本が灰色のボール紙で、いちばん外だけ白い紙を貼ってる、という造りです(モンスターメーカーのも同様に、色紙のほうの比率が高くなってます)。見た目で判断するとこっちのが安そうですが。だってボール紙にしか見えないし。重さはたぶん270gsm。ポーカーサイズです。これがポーカーサイズなのは単純にメーカーが米系だからなんでしょう。

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そして最後に、何の色紙も間に挟まず堂々とアートペーパーを使っている素敵なカードを御紹介。まず一点目の小さいカードは交易王(第1版)の小さい方のカード。まあこのカードは表裏の概念がない以上透けていても全然構わないわけで。大きい方のカードとは作りが露骨に違います。たぶん大きいほうのカードは色紙挟んでる。しかしこういうところでちゃんとコスト削っているのですねえ。そしてもう一点、こっちはあまり言い訳が効かない、Red GloveのBig Cheeseです。いや手札にはならないんでたしかに致命的なことにはならないんですが、でもねえ。ところでRed Gloveなんてメーカー知らないし、って人のが多いかもしれませんね。別に知っておかなければいけないメーカーでもないので気にしないでください。

以上です。ご清聴ありがとうございました。
…また印刷所の人の不興を買いそうだな…
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by Taiju_SAWADA | 2012-06-09 11:16 | 雑題
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