ひきつづき Characteristics of Games 3章のレジュメです。
(現在、読書会の2時間半前。間に合った!) 4章はぼくの担当ではないのではここにはレジュメはあがりません。 あがったらリンクは張ろうとおもいます。 -------- 3章 インフラストラクチャー 概要 ・ルールってのはそこまでゲームそのものではないですよ ・一階のルールと二階のルール ・ルールうざい。とくに長いルールうざい ・標準のありがたさ。あんまり新しいってのも考え物ね。 ・ゲームの「結果」っていろいろあるよね。とくにマルチだと。 ・終了条件と最終評価。金を賭ければ全て解決メソッド。 ・非対称性について。あと道具とか。 ・官能性のおはなし ルール ルールは何によって執行・強制されるか。 ・プレイヤー ・審判 ・環境(物理環境、プログラム) この観点を考えると、ルールというのは「ルールブックに書かれたルール」よりも広い。 さて、ではルールはプレーにどれくらいの影響を与えるか。 まず、「ルール=ゲーム」ではないことを確認しよう。バスケの細かいルール変更があったとして、その前後で「バスケ」は別のゲームなのか? そうではない。 また、何かゲームをスポイルするような有力な戦略があったときに、これを塞ぐようなルール変更が行われることも多い。これはつまり、ゲームのコンセプトが先で、このコンセプトに沿ってルールがあるのであり、その逆ではないということだ。 この前提に立つと、ルールの中にはゲームの本質に関わる「一階のルール」と、初めてプレーするときにはべつに知らなくてもいいような細則「二階のルール」がある、ということも言える。むろん、一階のルールの中にもより重要なものとそうでないものがあり、また、MTGのカードのように「出てきたときだけ重要」というものもある。 ゲームの障害としてのルール コアゲーマーやデザイナーほど忘れがちだが、もちろんルールは良くないものであり、短ければ短いほどましなものだ。1ページより長いルールを読みたがるプレイヤーなどそうはいない。 デザインの過程やルール調整の段階で問題が起きたとき、ルールを追加することで解決しようという方針は危険だ。特に一階のルールを加えるのはよくない。 別のトピックとして、あるコンセプトのために設けたルールが、それとは別の方向に(あるいは真逆の方向に)機能してしまうことがある。特に反則のルールに顕著で、「AをしたらXという罰則」は「Aをしてはいけない」にはならず、「AをしたらXという結果を産む」でしかない、ということは意識しておかないといけない。 標準 ルールを覚えるのは難しく、ヒューリスティックス・ツリーの構築も大変なので、すでにプレイヤーに広く受け入れられた「標準」を採用しよう、という話になる。標準はキーアサインから勝利条件まで多岐にわたる。また、素朴な見方を取れば、「ジャンル」とは標準の集まったものである、と言うこともできる。そのジャンルのプレイヤーはそのジャンルに共通で使える知識とヒューリスティックス・ツリーを持っていて、最初から快適に遊べるわけだ。 この「標準」の採用について、創造性の欠如だと文句が出ることも多いが(紙のゲームの世界ではそうでもない)、「標準」によってプレイングに快適さがもたらされているのであり、「創造的」でありすぎることは、この快適さを壊すことにつながる。当然、商業的失敗をもたらすことになるだろう。創造性の導入は、それがゲームにデメリットを超えて多くのメリットをもたらす場合に限って、採用されるべきだ。そもそも、ジャンル最大のヒット作はそのジャンルを創造したゲームではないことのほうが多いのだから。 ちなみに、あるジャンルの標準を別のジャンルに持ち込むことで、おもしろい効果が生まれる場合があるので、留意しておこう。 結果 2人ゲームの結果というのはたいてい、どっちかが勝ちもう片方が負ける、あるいはドローということになる。一方、2人ゲーム以外の世界では、結果にもいろいろある。 (非正統ゲームでは定義からして当然そうで、プレイヤーが自分で目標と評価を決めるものだったり、非電源系だとコミュニティでそれが定められたり。とはいえここでのメインは正統ゲームの話) ・1人ないし1チームの勝ち ・1人負け ・何人(何チーム)かの同盟による共同勝利 ・ランキングづけで評価 ・スコア(タイムとかふくむ)評価 ・あとはドローの有無 (相互排他でないので注意) こういう結果の定義はシステミックなものだと思われるだろうが、実際のところは相当にエージェンシャルなものを含む。ルールに何も書いてなくても、人は一位をとりたがる。 こういう結果の定義は、当然ゲームのポリティクスに大いに影響する。 1人勝ちなら負けてるプレイヤーはギャンブルに出るし(これはポリティクスじゃないけど)、キングメーカー問題も強くなる。 全員負け、の存在するゲームでは、2位に着くのがいいのか全員負けのほうがいいのか、という順位評価の問題もあるだろう。 1人負けのゲームだと、ターゲットを1人選んで残りの全員で殴る蹴るの暴行、ということが起きる。これは1人負けものだけでなく、負け抜けのある長いゲームでも起きる問題で、適当なところで「残った全員が勝ち」みたいな協議終了になったりする。共同勝利のゲームは「勝ち馬に乗る」ゲームであり、言うまでもなく極めてポリティカルだ。 こういうポリティクスを抑止する最も便利な方法は、既出の通り、金(ないしそれに類する利得)だ。金が支配する世界では、誰もが気にするのは順位ではなく稼ぎということになる。 金そのものではなくとも、スコアそのものに価値がある世界では、ポリティクスの問題は軽減される。 引き分けについて: とりわけ正統ゲームでは勝者の発生を期待してプレーしている側面があるので、引き分けは不満が起きることもある。ただ、実力をきれいに反映する種類のゲームでは、引き分けが正当、ということもあるだろう。 引き分けありのゲームで注意しないといけないのは、負けかけているプレイヤーが引き分けに簡単に逃げ込めすぎるようだと興ざめになる、という点だ。 終了条件 正統ゲームというのはどこかで終わって勝者が決まる。終わり方には大きく2通りある。 ・誰かが勝利条件を満たして終わる ・終了条件が満たされてゲームがおわり、その時点で誰が勝ちか評価される 勝利点的なものがあるゲームだと、後者が採用される事が多い。 終了条件は否応無く勝手にやってくる場合もあれば、プレイヤーが操作できる場合もある。後者の場合、勝ちプレイヤーは終わらせようとするし、負けプレイヤーは引き延ばそうとする。これは良い効果も悪い効果も生みうる。 ちなみに1人ゲームでは、テトリスのように「勝ち」が存在しないものもある。こういうものに不満が上がることもあって、2周目の概念がでてきたりエンディングができたり。 多重トラック制 スコアがスコアを再生産するモノポリーのようなゲームだと格差が雪だるま式に膨れ上がる。対して、ユーロゲーム的な「金と勝利点」式のアプローチがある。ユーロゲームほど明示的なものでなくても、囲碁における「地と厚み」のジレンマもこれに類するものと言えるだろう。これには利点がいろいろある。 ・ビハインドを負ったプレイヤーが追いつきやすい。 ・戦略的な選択肢を追加できる。 ・ゲームの結果も接戦になりやすい。「あと1ターンあれば逆転できた」みたいなことが起きる。 ・負けたとしても、「いや金では勝ってるから」的な慰めになる。 勝利条件 勝利条件にもいろいろある。勝利条件を適切に設定することで、ゲーム上の問題を解決できる場合がある。たとえば「相手の殲滅」を条件にすると互いに相手の陣地に攻め入ろうとせず膠着するところ、「マップ中央の拠点を支配下に置く」だとまともに組み合ってくれるとか。 勝利条件を複数持たせる手法もある。戦略の深みとリプレイアビリティをもたらすが、かわりに複雑化を招く。また、異なる勝利条件の間でバランスを取ることも必要になるだろう。(ゲームの穴を塞ぐために勝利条件を追加するケースではこの限りではないが) 勝利条件は必ずしも全員同じとは限らない。極端な例では勝利条件を自分しか知らないということもある。ヒストリカルシムのように大局的な勝敗がすでに決まっている状況からゲームを開始する場合、ゲームとしての勝敗をフェアに保つためには非対称的な勝利条件を設けるのが普通だ。 ポジション的非対称性 ほとんどのゲームは初期状態に関して非対称性を持つ。RPGでは種族が違っていたりする。また、2人ゲームでは先手と後手がある。完全同時プレーでないかぎり、厳密な意味での対称性は確保できない。 むろん、スキルの低いプレイヤー同士では、チェスの先手後手というのはほとんど非対称性とは無関係と行ってよく、そのレベルであれば多くのゲームは対称的であるとも言える。とくに古典的ゲームでは大きく非対称的なゲームは珍しいが、最近のゲームでは非対称性をフィーチャーするのがトレンドともなっている(Quakeみたいな対称的FPSは現在では少ない)。 非対称性の特殊な例として、用具の違いというものがある。通常のゲームではこれは許されないことが多いが(MTGみたいなものを例外として)、スポーツではたいてい、一定の制限の上で認められている。 対称性が望ましいようなゲームにおいて先手後手的な意味での非対称性がある場合、スタートプレイヤーを交代していくことで調整する手法は広汎に見られる。後手にハンデを与える手法もある。コンピュータゲームでは同時プレーが可能なので、おおむね非対称性は初期状態に関するものに限られる。 ゲームないしアトムが短ければ、複数回プレーすることで非対称性の解消を図れる。長いゲームでもリーグなどのキャンペーンを行うことはよくある。 官能性 ゲームにおいて五感に訴える側面は重要な要素だ。ここで押さえておく必要があるのは、ゲームのインターフェースにおける官能性の利用に関して、「美的側面」と「プレイサポート的側面」の2軸があり、この2軸は時に対立を招くということだ。 インターフェースと美についての問題は別途一冊の本が書けるほどのトピックなので、ここでは感覚的にいくつかのポイントを挙げるにとどめておく。 視覚 ゲームのビジュアルが悪くなるのは、複雑にしすぎたせいだということが多い。ゲームのビジュアルを「改善」すると、もとのものより悪くなっているというわけだ。 聴覚 特にコンピュータゲームでは聴覚の利用が著しいが、非電源系でも、ポーカーチップを置くときの音やボクシングにおけるボディコンタクトの音、スポーツイベントにおける観衆のうなり(勝敗にすら影響を及ぼす)など、聴覚が重要な役割を果たす。 聴覚は意識しているよりも無意識下に影響を及ぼすことが多い。官能性を抜きにしてゲームシステムを評価できると自分では思っているゲームデザイナーでさえ、実際には聴覚から自由ではないことが驚くほど多いのだ(音を消してコンピュータゲームをプレイしてみよう)。 触覚 チェスの駒の重み、シャッフルするカードの手触りなど、非電源系ゲームでは触覚の喜びを良く利用している。ダイスなどは最たるもので、ほとんど単にダイスを振り続けることのエクスキューズでしかないようなゲームすら少なくない。 コンピュータゲームではこの分野の利用は遅れていたが、最近では専用コントローラーやWiiリモコンなど、状況が変わりつつある。 嗅覚 コンピュータゲームやボード・カードゲーム等では嗅覚はあまり重要な要素ではない(が、本や箱を開けた時の匂いはみなさん嫌いではないでしょう?)が、スポーツでは匂いにも役割がある。つまり野外の匂いであり、人や動物や用具の匂いだ。 味覚 ワサビ寿司ロシアンルーレットみたいなものを除いては、味覚が問題になるのはスポーツでひどい目に遭ったときくらいしかない。 操作感 ゲームに対して何らかの入力を与えると、ゲームの環境がそれによって影響され、何らかの反応を返す。この反応がプレイヤーの予想と一致していたり驚きをもたらしたりすることで、プレイヤーに喜びを与えられることがある チェス駒を前に進めようとすることで、チェス駒が前に進むとか、単に自明であるということもあるが、それでも触覚の問題でこれが良い感触をもたらしたり悪い感触をもたらしたりする。 ーーーーーーーーーーーー 基本的には「意識されていなかったかもしれない様々なトピックを文字に起こして再確認」という章で、それほど目新しいトピックは無い(が、意識していなかったのであれば今からでも意識しておいたほうがいいポイントで溢れている、という言い方もできる。特に勝利条件設定や金の話など)。 あえて言えば、章の全体から「ルールデザインの非優越性」についてのメッセージを感じ取ることはできる。ゲームとはルールのことではない、新規性に対する戒め、官能性への言及など。とくに新規性に対する懐疑と標準への言及(レジュメではカットしているが相当なページ数が割かれている)には著者の商業ゲームデザイナーとしての矜持が感じられる一方、商業性による制約・限界の存在も同時に感じさせる記述になっているとも言える。
by Taiju_SAWADA
| 2013-03-20 10:37
| 雑題
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