Dummett and McLeod に書かれたタロットゲームを遊ぶための準備 #1

Dummett and McLeod "A History of Games played with the Tarot Pack (vol. 1/2)" (2004) はタロットゲーム本の決定版と名高い本で、なんか200個くらいのルールが、歴史的な流れとかの説明といっしょに詰まっているようです。

前回触れた「ボードゲーム読書会」は20:00集合なんですが人が出揃うのは20:30くらいになるので、その間の暇つぶしにタロットでもやろうかな、と思っており、遊びに必要そうなところを抜き出して適当にまとめていくことにします。

ほんとはまとめとかしないでぱっと英語の本を開いてあそべればいいんですけど、最初のゲームの説明に入る前に原則の話が18頁くらいつづくので、まとめておかないとしんどいんですね。

Dummettといえばタロット占いdisでも有名なひとで、この本にもきっちり載ってますが、そういうところは省略していきます。

タロットゲームの歴史に関しては、なんか面白そうだったら適当にみつくろってまとめていきます。




#1.

タロットカードは北イタリア発祥。おそらく1425年頃。
現存する最古のカードはミラノ宮廷のために作られたもので推定1441年製。
タロットに触れた文献で最も古いものはフェラーラ宮廷から出てきたもので1442年。
15世紀末ころにはローマ以北では知られるように成っていた。
16世紀はじめにはフランスやスイスにひろがる。
15-17世紀にはタロットに関する言及が大量にあり、その言及はすべて(オカルトではなく)カードゲームに関するもの。
占いに使われだしたのは18世紀に入ってから(フランス、ボローニャ)。オカルトタロットは主にフランスで流行。

15世紀イタリアにおいて、タロットゲームは「トリオンフィ(=切札)」と呼ばれていた。
また、タロットのカードパックは「Carte da trionfi(=切札つきのカード)」と呼ばれた。
(タロット、イタリアではタロッコ/タロッキ、の名前になるのは16世紀から。)
15世紀にはすでにイタリア式トランプ(キング、カバロ、ジャックと数字札。スートはソード、バトン、カップ、デナリ)は存在。
(1740年頃から、♠♡♢♣のフランス式に置き換わっていく。ソードとバトンが♠♣、カップとデナリが♡♢)
タロットはこれに特殊な札(21枚の「トリオンフィ」と1枚の愚者(Matto)。スートなし)を追加したもの。
また、切札以外にもクイーンが加わる。
以降、絵札をKQCJA(Aはエース。エースは文脈によって入らないことも、っていうか入らない事のが多い)と呼び、スートはS,B,C,Dと呼ぶ。
なお、切札のうち、「世界 XXI」「天使(または審判)XX」と「バガット(僅少) I」は特殊な扱いになることがある。
タロットゲームというのは要は固定の切札のあるトリックテイキング。通常カードと構成の違う切札の存在が肝になる。
トリックテイキングというのはそれまでにも存在していて、たぶん14世紀にイスラム世界からやってきたのだが、
その段階では切札はなかった。切札の発祥は、タロットのほか、ほぼ同時期のドイツでKarnoeffelというゲームもあるが、切札の概念が広まったのはタロットから。
15世紀後半以降、トランプでもスートのひとつを切札として遊ばれるようになる(「トライアンフ」に類する名前で呼ばれた)。
これらのうち、イギリスのトライアンフはホイストの祖先になる。
なお、この頃すでに切札スートはディールごとに変えらていれたのだが、ビッドの概念がまだ無いので特に意味はなかった。
(ビッドの登場は17世紀以降)



【ルールの基本】

大概のタロットゲームでは、カードはディーラーの右隣から反時計回りに配る。
大抵は、最初のトリックのリードはディーラーの右隣。カードプレイも反時計回り。
プレーの前に宣言のフェイズがあるたぐいのゲームでも、ディーラーの右隣から始まるのは一緒。
概ねいわゆるポイントトリックテイキングのルール。
切札が出ていれば最高ランクの切札の勝ち、出てなければリードスートの最高ランクの勝ち。
取ったトリックのカードは1トリック分をひとまとめに伏せて自分の近くにおいておく。切札は数字が大きいほうが強い。
ただし、
・リードスートが無いが切札はあるという場合、切札を出さないといけない。【以降、これを標準ルール(マストラフ)と呼ぶ】
という点は大きく異なる。なおルールに拠っていろいろある。
また、ランクも特徴的で、通常のゲームでは、
・ソードとバトンは(強)KQCJ-10-98765432A(弱)、カップとコインは(強)KQCJA23456789-10(弱)。
以降、これを【オリジナルランク】と呼ぶ。これに対して、フランスやシチリアで遊ばれているタロットでは、
・どのスートでもKQCJ-10-98765432A。
以降、これを【Jの次は必ず10式】と呼ぶ。
(昔のゲームではスートごとにランク順が違うことが多いようです)




【愚者について】

・元々のタロットゲームでは、愚者はマストフォロー/ラフから逃げる(エクスキューズ)ためのカード。
 愚者を出して逃げた場合、出した愚者はトリック勝者のものにならず、愚者を出したプレイヤーが獲得する。
 このルールを【逃げ=エクスキューズ用の愚者】と呼ぶ。
 なお、ルールによっては、愚者は出したプレイヤーが獲得するが、愚者を出したプレイヤーはその代わりに、
 自分が獲得していたカードから任意の一枚を選んでトリックの勝者に差し出さなければならない。
 これを【逃げ用の愚者(交換あり)】と呼び、【逃げ用の愚者(交換なし)】と区別する。
 なお、一般に、愚者を獲得したプレイヤー(チーム)が最後まで一トリックも取れなかった場合、その愚者は、
 元々のトリックを取ったプレイヤー(チーム)に没収される。愚者を出した時点で一トリックも取っていなかった場合、
 いったん愚者を表向きにして置いておき、一トリックとった時点でそこに混ぜ、交換を行う。
 なお、その他にも、最終トリックでの愚者は没収、ラスト数トリックでの愚者は没収、など、いろいろある。

・18世紀以降、上記とは異なる愚者のルールが登場した。つまり、単に愚者を最強の切札として扱う。
 このルールでは愚者はよく「スキューズ」と呼ばれる。
 以降、このルールを、【愚者=スキューズが最強】と呼ぶ。



【ポイントルール】

個人戦の場合もあり、2チーム対抗戦の場合もある。
元々のタロットゲームでは、1トリックにつき1点+ポイントカードによる得点。
ポイントカードによる得点について、K=4点、Q=3点、C=2点、J=1点は多くのゲームで共通。この4ランクを【絵札】と呼ぶ。
切札のポイントには色々あるが、XXI, I, 愚者にポイントが乗る場合が多い。この3枚を【標準役物(オナー)切札】と呼ぶ。
最も標準的なルールでは、【標準役物切札】は各4点。
これに先ほどの絵札とトリックの点とあわせたものを、【初期標準得点系】と呼ぶ。
この初期標準得点系を使って3人でプレイした場合、獲得3枚ごとに1点プラス前述の役物による得点となる。
それはいいのだが、後期のタロットゲームでは、この「3人でプレイした場合」という前提が抜け落ち、
何人で遊ぼうとも「3枚につき1点+役物」という数え方になっているものがままる。これを【常に3枚単位で得点】と呼ぶ。
なお、ディールでトリックやカードから得られる得点と、その得点をもとに決められるゲームの勝利点は異なる。
以降、「得点(またはカードポイント)」と「勝利点」の語は明確に区別される。
その他、多くのゲームでは(花札の八八のような)「手役 declaration」の概念がある。
また、目標を「宣言(announcement)」して達成するとボーナス、失敗すると罰符、という宣言系のゲームもある。

なお、慣習として、上記の初期標準得点系でポイントを数える場合、以下のように行っている
(これを【標準得点系】と呼ぶ。【初期標準得点系】と実質的な差はない)。
いったん役物の点数を上記より1点高いものとして扱う。つまりK=5, Q=4, C=3, J=2, 標準役物切札=5。
そのうえで、トリック(3枚を想定)ごとに、
・得点札が一枚も入っていない=1点
・得点札が一枚だけ入っている=その得点札の得点
・得点札がn枚入っている=得点札の合計マイナス(n-1)点
という形で数える。



【場札(タロン)と捨て札】

手札とは別に通常は1〜6枚の場札(タロン)を伏せて用意しておき、誰か(1人なり複数なり)がこれを手札と交換できる、
とするルールのゲームもある。このとき、交換で捨て札にしてはいけないカードが設定されていることが多い。
特に、最高点のポイントカードが捨て札禁止カードになっていることが多い。
(タロンは「キティ」と言われることもあります。日本のナポレオンとかが、まさにキティ/タロンのあるトリックテイキングですね)



【縮小カードセット】

数字札を抜いて切札含有率を高めることがある。
最も標準的な抜き方は、ソードとバトン(♠♣)のA〜6、カップとデナリ(♡♢)の5-10を抜く方法。
この方法で作ったカードセットを、以降【54枚セット】と呼ぶ。
逆に切札を足すことで切札率を高めるゲームもある。
(枚数少ないカードセットというとスカートをやるドイツ式セットとかが思い浮かびますね)



【ビッド】

タロットゲームのバリエーションは、主にビッドの方式によるもの。
タロットゲームのビッドの概念は、スペインのトリックテイキングゲーム「オンブル」から来ている。
オンブルのビッドはブリッジのビッドと違い、勝利目標(トリック数なりポイント)を競るのではなく、
固定された勝利目標をどの条件下で(場札との交換あり/なし、など)達成するかに関するもの。
(これも割とスカートのイメージ。まあこのへんはタロットに限らない気も)



【ゲームの歴史】

文献からは、タロットゲームは15-16世紀イタリアですでに発展していたらしいのだが、そこに書かれている記述はスケッチ程度のものでしかなく、ルールを起こせるほどではない。現存する最古のルールは16世紀のもの。
1450年の時点で、切札に書かれた絵じたいはどこのものも一緒だったが、強さの順は違っていた。
こういうのとか、絵柄とか、切札の強さが数字で示されているか否かとかを見ると、カードやルールの伝播ルートがわかる。
タロットの場合、ミラノとフェラーラとボローニャの3都市が主要な発信源で…
(以下タロットの中心地の変遷が語られるが省略)
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by Taiju_SAWADA | 2015-08-12 00:58 | 感想・紹介
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