Dummett and McLeod に書かれたタロットゲームを遊ぶための準備 #2

ところでこれだけイタリアがイタリアが言っておきながら、この本でイタリアのタロットゲームが紹介されるのは第2部。
Ch.2から始まる第一部で紹介されるのはフランスとスイスのタロット。



Ch.2 初期のフランス・スイス物


ミラノが1494年から1522年にかけてフランスの占領下になったとか、スイスもマリニャーノの戦いでフランスに負けて以降フランスの影響が色濃くなったとかで、フランスとスイスには16世紀初頭にタロットが渡っている。16世紀のフランスの文章には、タロットについてかなり多くの言及がある(最初のものは1534年)。宮廷でも、グルノーブルで1579年に遊ばれていたとの記述がある。1615年にはボルドーでルイ13世が遊んだとも。1622年にFrancois Garasseは「フランスではチェスよりタロットのほうが人気がある」と書いている。

タロットゲームのルールについて触れた最も古いフランスの文献は1637年、"Regle du Jeu des Tarots" (Michel de Marolles著。以下RT)に遡る。
その後1659年に別の本La Maison academique des jeux(以下MA)が出ている。MAの記述はRTにくらべて不明瞭な点が多い。MAにはフレンチタロット3種とスイスタロット1種(MAによれば「スイスやドイツでは他のゲームは通常遊ばれない」)が載っているが、説明がクリアなのはスイスタロット1種だけ。なお、「Jの次は必ず10式」が登場するのはMAから。

16-17世紀のスイスでは法令で色々なカードゲームが禁じられていたが、trogge(n)のように認められているゲームもあった。最も古い言及は1572年。1741年頃までは続いていた模様。

パリでは1725年までにタロットは廃れ、東部(アルザス、ブルガンディetc)でのみプレーされるようになった。Depaulisは廃れた時期を1650年頃と推定している。20世紀になってフランスではタロットのリヴァイヴァルがあったのだが、その間も東部ではプレイされていた。



■2.1 17世紀初頭のフレンチタロット(RT 1637)

カードの呼び名について
愚者を含む切札は「Triomphes」と呼ばれる。XXI(世界 le Monde)、I(le Bagat。イタリア語のバガットから)、愚者(le Math。イタリア語の愚者Mattoから)の3枚の切札と、4枚のKが、「Tarot」と呼ばれる。騎士がシュバリエと呼ばれるのはフランスの通例だが、ジャックがFaonsと呼ばれるのは通例とは異なる。勝利点はmarqueと呼ば得れる。コインのAはla belleと呼ばれる。

基本
基本は3人制の個人戦。78枚フルセット使用。愚者は逃げ(エクスキューズ)用、見たところ交換なしの模様。オリジナルランク。
(さわだ:フォロー形式について言及がなし。たぶん標準のマストラフ)

ディールと手役の宣言
1stディーラー決め:一枚めくって最も高いランクのカードを出したプレイヤー(愚者は普通の数字札より下扱い)。
ディーラーは山札の一番下のカードを公開する。これがTarotだった場合、ディーラーは他のプレイヤーから1勝利点ずつ貰える。
その後カードを配る。ディーラー自身に28枚、他の2人に25枚ずつ。
ディーラーは4枚、他の2人は1枚ずつ、捨て札にする。ディール終了時に自分の取り札扱いになる。切札やTarotは捨ててはならない。
捨て札の後、プレイヤーは(たぶんディーラーの右隣から)順々に、手役を宣言していく。
複数の手役を作ってよく、別カテゴリの手役なら同一のカードを複数の手役のために使ってよい。
宣言した手役は公開。手役になるカードがあっても宣言の必要はない。
手役を宣言したら、ただちにそのぶんの勝利点を他の全員から貰える。
(手役の概念はイタリアのタロットゲーム「ミンシェット」に由来)
(さわだ:手役は全部一度に宣言するのか一周ごとにひとつなのか書いていないが、一度に全部と考えるべきだろう)

手役
・コインのA:1点
・Tarot4枚/5枚/6枚/7枚:1点/2点/3点/4点
・Tarot7枚+コインの1:5点
・K3枚/4枚:1点/3点
・愚者+K2枚/3枚/4枚:1点/2点/6点
・切札10枚/15枚/20枚:1点/2点/3点
・同スートのKQCJ揃い:1点
・Q4枚またはC4枚またはJ4枚:1点
・最上位の切札上から4枚/5枚/6枚:1点/2点/3点
・最下位の切札下から4枚/5枚/6枚:1点/2点/3点

加えて、
・XXI, I, 愚者のうち2枚を持っていることを宣言すると、この3枚のうち1枚も持っていないプレイヤーから1点貰える。

プレーにおける特殊なルール
愚者をリードで出してはいけない。最終トリックで出さざるを得なくなったら勝利点2ずつ全員に払う。
最終トリックをIかKで勝ったら全員から勝利点6ずつ貰える。
Tarotでトリックを取ったら、全員から勝利点1ずつ貰える。
Tarotでトリックに負けたら、全員に勝利点1ずつ払う。

二人で遊ぶ場合
ダミーの「三人目」の手札を配り、伏せ山札として積んでおく。プレーでは2人のプレイヤーの分しか出さない。
トリックに勝ったプレイヤーがダミープレイヤーの山札から一枚めくり、これも自分の取り札として獲得する。

66枚ヴァリアント
各スートから最弱の3枚を抜く。手札は24枚/21枚配りの4枚/1枚ディスカード。後は一緒。
パンフレットの著者は非常に好意的にこのヴァリアントを紹介している。
ただし、このヴァリアントが広く遊ばれた形跡はなさそう。



■2.4 フレンチタロット (MA 1959)

カードの呼び名
XXIが世界(モンド)、Iは奇術師(バテル)、愚者はle Fou。Kはシュバリエ、JはValets(従者)。

基本
人数の取り決めなし。個人戦。78枚フルセット。愚者は逃げ(エクスキューズ)用で交換あり。Jの次は必ず10式のランク。

ディール
配る枚数は事前に適当な枚数を決めておく。ディーラー含め全員同枚数。捨て札なし。
全員、合意した賭け金(さわだ:競りのルールとかないのでたぶん固定)をテーブルに置く。

プレイ
ふつうにやる。  

カードの点数
愚者5点、XXI4点、I:4点、K4点、Q3点、C2点、J1点。
書いていないが、おそらく上記に加えて1トリックにつき1点。
最多得点のプレイヤーが賭け金総取り。




■2.5 フレンチタロット(2つめの版)(MA 1659)

2-6人(ベストは4人)。個人戦。全員に12枚配り、捨て札なし。
プレイは普通に行う。愚者5点、XXI4点、I:4点、K4点、Q3点、C2点、J1点。
加えて、「取ったカードの枚数-12」が得失点として加わる。合計点がそのまま勝利点になる。
勝利点の合計が50以上になったらそのプレイヤーの勝利。



■2.6 La rigueur (「厳格」、MA 1659)

ヴァリアント。
「ソード」のスートのカードは全て、準切札となる。
トリックの中に切札が無い場合、準切札であるソードの最高ランクのカードがトリックを取る。
ソード以外のスートがリードされ、そのスートが無い場合、マストラフは準切札でも切札でもOK。
準切札であるソードがリードされ、手持ちにソードがない場合、マストラフは切札で行う。
切札がリードされ、手持ちに切札がない場合、準切札はださなくてもいい。



■2.7 スイスの初期Troggen(MA, 1659)

カードについて
ふつうのフランス式78で紹介されているが、なぜか皇帝と女帝の数字が逆。
誤記とも思われるが、実際に18世紀のフランスのタロットカードには、皇帝と女帝が逆になったものがある。

概要
3人。個人戦。78枚フルパックを使用。愚者はエクスキューズ(交換あり)。おそらくオリジナルランク。

ディールとプレイとスコアリング
ディーラー28枚の子25枚配り。親のみ3枚捨て札。おそらく切札とKと愚者は捨て札禁止。
得点は標準式。ポイントは「XXIが5点、Iが5点、Kが5点、Qが4点、Cが3点、愚者が3点。
Jの2点がないのは、単に書き忘れと思われる。
得点がそのまま勝利点。3ディールの合計得点で勝敗を決める。
[PR]
by Taiju_SAWADA | 2015-08-16 18:51 | 感想・紹介
<< Dummett and McL... Dummett and McL... >>