海賊組合 Seeraeuber

[手元には自分の色の海賊チップが五枚並んでいます。それぞれの海賊チップには2とか5とか数字が書かれています。場には30とか9とか大小の数字が書かれた何枚かの客船カードが出ています。手番には、「自分のチップ(が一番上に載ったスタック)を他人のチップ(が一番上に載ったスタック)の上に重ねる」か、「自分のチップが一番上に載ったスタック(単独のチップは禁止)で任意の客船カードを襲う」かの二者択一を行います。スタックをカードの上に載せるとそのカードを取る事ができて数字の分だけ得点になりますが、スタックに含まれている他プレイヤーのチップの数字のぶんだけ、それぞれの他プレイヤーに報酬として得点を支払わないといけません。清算が終わったらスタックはバラします。客船カードが無くなった時点で一番得点の多い人の勝ち。さてどんなゲームでしょう。1996年作品のリメイク。]

正統派の競りゲームというのはKniziaが九十年代前半5年足らずの間に全部の可能性を掘り起こしてしまったかのような感があり、そうするとその後からできることというのはその研究成果を使って重厚なゲーマーズゲームを仕立ててみるか、あるいは非正統的な変態競りゲームに新天地を見るか、ということになります。これは別に悪い事では全くなく、そのおかげで競りという行為に含まれる様々な側面を見たり様々な行為に競り性を見いだす事ができるようになったわけですから。

という前段のもとにこのゲーム。これは正に、一見すると競りに見えない行為に競り性を見いだす類の変態競りゲーム、それもかなりの変態と言ってよろしいかと思います。正直なところルール聞いただけでは(さらに言えば、始まって最初の一二手番を通過するくらいまでは)何のゲームなのか全く解りませんでした。基本的には「一手番回ってまだ最高値だったら落札資格あり」「ビッド対象同時複数」「展開によっては落とそうと思ってたビッド対象が先に落とされてしまっていて涙をのむ事あり(つっても劣化した商品を無理矢理買わされることは殆どないんで一安心とは言えます)」という(あれどっかで聞いた事あるぞっつうか作った事ある気がする)内容で、それだけでも十分に変質者気味ではあるんですけど、それ以上に提示の方法が特殊です。

「手元にある自分のチップ(正確には、自分のチップが一番上に載っているスタック)を、他人のチップ(が一番上に載ったスタック)の上に載せる」。これを行うと、スタック内の他人のチップに書かれた数値の総和を、自分がビッドしたことになります。自分も他人もチップの数は有限なので、いつまでも競りが決まらないと、だんだんビッドに使えるチップというかスタックの総和が減っていき、スタックの一本あたりの高さは上がっていって、行動に身動きが取れなくなっていきます。で、しょうがないからどっちかが降りる、と。いまは最初から競りゲームとして説明してるのである程度把握できるかもしれませんが、前情報無しにルールを眺めると何のことだか全く解りません。海賊チップを載せる? 報酬を支払う? はあ?

で、ゲームの途中で理解できる瞬間があって、その後で改めて眺めると、いろいろと気の利いたルールだなー、と感心することになります。どちらかというと競りゲームにおいてはその勘所を競り対象物のプライシングおよびまたはプライス操作に置くのが多数派だと思いますが、このゲームではそっちは最初から割と明瞭になっていて(いくらかプライシング要素もあることはありますが)、要点は(これまでの説明でわかるように)ビッドの制限となっています。制限といってもかけかたはいろいろありますが、このゲームで重要なのは「ビッドの履歴」です。具体的なルールとしては「競りに勝ったら、負けた他人に、その他人が積んでいたチップ分の報酬を支払う」というところ。

同時に複数の客船(競り対象物)が存在していてそれぞれの客船の価値は異なっているので、どのスタックへのビッドがどの対象物へのビッドを意味する事になるのか、だんだんと何となく決まっていきます。高いスタックは高い客船へ、ということですね(最初から決まっている訳じゃなく、最後まで決めずに通せる訳でもないというのが素敵なところ)。そしてさっきのルールのために、何となくスタックと対象客船との関係が決まりだした頃には、それまでにどのスタックに(ということはどの客船にということでもあります)ビッドを出していたかによって、その後のビッドの有利不利があっさりと決まってしまっているのです。要はオーバービッドを食らえば食らうほど(あるいは、オーバービッドをかければかけるほど)そのスタックにおいて有利になる。でも「そのスタック」が「どの対象物」を指差した競りなのかは、いざ有利不利が決まってからじゃないとクリアにならない。じゃあどうするの? 当然それは予測と操作ということになるでしょう。つまりそういうゲームだったのです。

と宣告された瞬間と、その後に続く「確かにそうなってる!」という感嘆。リメイクですがこれがSdJでも僕は何の文句もありません。

Seeraeuber
by Stefan Dorra
(ASS, 1996 as Safeknacker)
(Queen Games, 2006)
★★★☆
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by Taiju_SAWADA | 2006-06-28 23:34 | 感想・紹介
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