再開に当たって

廿四時ブログ期 (Jun2004 - Sep2006) 、再開するなら「第一次ブログ期」と言うべきかもしれませんが、この時期のメインテーマは「批評をやってみよう」だったんですけど、なんかどうも「気にくわないゲームに対して周りの静止も聞かず延々と一方的な罵倒を繰り広げる人」みたいになってて、あれ俺いま変な人って扱い? という微妙な感覚がずっとありました。

ちょっと俺が可哀想になってきたので(いやね、まあ自明だしと思ってたんですよ当時は)、ゲームの批評をしようそうしようと決めたときに、その「批評」という言葉について置いていた前提を、(自分で書くのは面倒なので)他の人の書いた文章を引用して示しておこうと思います。

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表現と享受の関係は、通常「コミュニケーション」と呼ばれるよりはるかにダイナミックな物、闘争的なものだと想定して下さい。あらゆる表現は鑑賞者に対する挑戦です。鑑賞者はその挑戦に応えなければならない。「伝える」「伝わる」というような生温い関係は、ある程度以上の作品に対しては成立しません。見倒してやる、読み倒してやる、聴き倒してやるという気迫がなければ押し潰されてしまいかねない作品が、現に存在します。作品に振り落とされ、取り残され、訳も解らないまま立ち去らざるを得ない経験も、年を経た鑑賞者なら何度でも経験しているでしょう。否定的な見解を抱いて来た作品が全く新しい姿を見せる瞬間があることも知っている筈です。そういう無数の敗北の上に、鑑賞者の最低限の技量は成り立つのです。
(中略)
作品は、何よりまず表現者と享受者の遊技的な闘争の場であり、副次的には享受者間の遊技的な闘争の場でもあります。(中略)たとえばレオナルドを前にする時、享受者は同時に、自分より前にこの絵を見た人々を意識せざるを得ないーー彼らの美的判断と競っている自分を意識せざるを得ない。無数の、名も知れない愛好家から美術史の大家に至るまでの享受者の判断と、自分の判断を突き合わせ、目の前のタブローそのものと同時に、タブローに加えられてきた注釈と判断をも、再評価せざるを得ない。歴史的文脈に敏感な人なら、その時、一枚のタブローの享受の歴史の中に自分の享受を位置付ける体験をするでしょうし、思想的な文脈に敏感な人なら、支配的集団によって作られてきた価値の体系と、自分自身のアイデンティティからくる判断とが突き合わされ、同化にせよ対立にせよ、あるいはある種の超克にせよ、何らかの関係が結ばれるのを見ることになるでしょう。その上で、享受者は歴史的・社会的に競り勝たなければならない。同意するにせよ反発するにせよ乗り越えるにせよ、かつて為されてきた評価、今為されつつあるであろう評価を踏まえた上に(その中には、かつてそのタブローを前にしたときの自分自身の評価も含まれます)、他ならぬ今、この場における整合性のある判断を成立させなければなりません。

ー以上、「小説のストラテジー」(佐藤亜紀、青土社 2006)pp.25-27 より引用

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ちょっと恣意的な引用が混じっているので補足しておくと、佐藤亜紀は「鑑賞・享受」と「批評」をはっきりと別の概念として使っていて、批評っちゅうのは純粋な鑑賞とは別物だから、という方向に話が行く場合もあるんですが、わたくしは上記の文章を、ある意味では「批評≒享受」として引用しています。これは一点には、この文脈でなら概ね同一視してもそんなに意味はずれないだろうと判断したのと、あともう一点は対象分野であるボードゲームと・またはそのボードゲームに対するわたくしの立場の特殊性から来るものです。つまるところわたくしはボードゲームという芸術分野を、他の芸術分野と比較して極端に論理性に振れているものと捉えており、ということは鑑賞行為を比較的原型に近い形で言語化することもなんとかやれる、といいな、と考えているのでした。

さて。

なんでこんな自分の目の前のハードルを上げまくるようなことを述べているかというと、もうこういう、真っ当な鑑賞行為の記録としての批評はたぶんやらないからです。もう俺は跳ばないハードルだし折角だから高くしておこうかみたいな。いや鑑賞行為自体を止める気はないんですけど、それをまともな形で記録することはしないんじゃないかと思います。これからは。えーと。そう。無責任な感じで。それこそ「馴れ合いの生温い、伝わる伝わらないのレベルのコミュニケーション」とか「気にくわないゲームに対して周りの静止も聞かず一方的な罵倒を一言投げかけて終わり」とか。そういう方向性で行く予定です。創作行為としての文章の質は極端に下がるはずです(あ、批評はもちろん創作ですし、そもそも自分で書いたまたは選択した文章ならそれは当然創作になっちゃうので、そこから逃げるのは哀しいことに原理的に無理みたいです)が、それはそれでよいことにしました。最初期の立場に戻ったと言えなくもありません。

つーことで、よろしくお願いします。
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by Taiju_SAWADA | 2008-01-15 05:18 | うわごと
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