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天空の城タチカワと重力の儀

東京都立川市。かつてここに立川飛行場があった。そして今も横田基地がある。

横田基地は米軍の極東における主要兵站基地であるが、それ以外にもう一つの使命を持つ。それはかつての日本軍がここ立川に飛行場と航空産業を集中させた理由と全く等しいものであり、つまり天空の城タチカワの発見である。

立川市にはいくつか土地に伝わる伝承がある。伝承というものはどこの土地にでもあるものではあるが、立川市の伝承は日本の他の地域に伝わる物とは毛色が大きく異なる。その内容は日本(あるいは中韓)の民話とも、西洋の伝説とも異なり、民間伝承またはそれに由来する物語の中で最も共通性が高いのはインドの「ラーマーヤナ」だが、より近しい印象を与えるのはむしろ「海底二万里」や「ガリバー旅行記」といった創作である。

伝承においては、彼らの祖先は空中に浮かぶ城「タチカワ」に住むタチカワ人であるとされる。殆どの市民はこのような空中の城の存在を真に受け取らないが、しかしこの伝承はいくつか無視できない事項を含んでいる。その中でも最も重大なものとして、「飛空石」が挙げられる。立川市には、地層から想定されるものとは全く異なる種類の小石が敷き詰められた不可思議な土地がいくつも存在するのである。この石は世界中のどの石とも組成が異なるものであり、現在は産業的な価値が無いために商業的には放置されているが、研究者の間では「立川石」としてつとに知られている。

無論、表だって空中に浮かぶ城の存在を論ずる者などいない。「タチカワ人」研究にしても精々がインドとの独自の交易ルートについての調査があるくらいのものである。しかしそれでも、この石がそもそも何であるのかが全く解明されていないのは事実であって、また少々陰謀論めいた話にはなるが、日本軍にせよ米軍にせよ、この地に対して不自然なまでの拘りを持っているのも確かなのだ。

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最後に、立川市の子供達の間で親しまれている遊戯(我々はこの遊びを「重力の儀」と呼んでいる)を紹介しよう。伝承の一つにある「タチカワ人の王家の末裔である少女が瓦礫の中から飛空石を見つけ出し、これを不思議な作法で操ることにより天空の城タチカワに帰還する」という一節から取られた遊戯で、少女が石を「作動させる」際に用いた手順を模したものである。伝承では、少女が並べ終えた瞬間に石は閃光を発し、タチカワへの道を指し示したのだと云う。
by Taiju_SAWADA | 2008-04-21 00:19 | 創作関連
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