実録:食卓遊戯密着大本営発表廿四時
2022-11-01T09:44:24+09:00
Taiju_SAWADA
ボードゲームの何やかや。
Excite Blog
清貧ユーロゲームプロジェクト Frugal Eurogame Project
http://toccobushi.exblog.jp/241641358/
2022-11-01T01:50:00+09:00
2022-11-01T09:44:24+09:00
2022-11-01T01:50:32+09:00
Taiju_SAWADA
うわごと
実のところ、これは商業ボードゲームに限ったことでもない。印刷の性質上過大な部数を抱える傾向を持ちながら消費者とコンタクトするチャネルが極めて限られる、インディペンデントなゲーム生産者にとっては、消費者の興味を喚起する演出の必要性は商業ボードゲームに比べても高いとすら言えるだろう。その物品が自分の身銭と空間を削って作られたものである以上、これを誰かに売らずに手元に抱え続けることは、生産者にとってあらゆる意味で負担になる。
しかし、それは本当に唯一のあり方なのか? 《同人》という日本語が示しているのは、インディペンデントに生産されたゲームは不特定多数の消費者ではなく、趣味を同じくするコミュニティのメンバーの間で流通させることが可能だったはずだという事実だ。消費者へ向けた数々のサービスは、同人ボードゲーム作品を、幸福なる……としておこう……少数者のコミュニティからかえって遠ざける結果に繋がっていないか?
当然のことだが、たまたまインディペンデントな形で生産されている作品が、インディペンデントを志向しなければならないわけではもちろん無い。より大きな生産者たらんと欲し、大衆〈マス〉との幸福な出会いを願うのは何も悪いことではない。問題は、そうでないあり方を求める少数者たちにとって、そのような善意の野望に由来する演出に埋め尽くされた小世界の中で、同じ少数者に出会うことの途方も無い困難のほうだ。
単純に考えよう。演出を準備することが消費者との幸福な出会いを希求する資格なのだから、演出を準備しないことは、消費者との幸福な出会いを望まないことの明らかな印となる。それを行うのに、技術的に難しいことは何も無い。ただ認めれば良いだけだ。二十世紀末には同じ場所に立っていたように見えたのかもしれないが、結局のところ彼らは正しく伝道者だったのであり、一方の我々は失敗した伝道者ですらなく、単なる複数の少数者だったのだと。
* * *
不毛な御託は切り上げて実務を進めよう。ゲームデザインの可能性なるもののために商業的な可能性を捨て去って少数者同士で群れることにした我々は、そのサインとして、演出のないゲーム、消費者の興味を喚起しないものであることをこれ見よがしに示すゲームを作ることにしたのだったが、具体的にはどのようにすれば良いのだろう? ちょうど良く、ここにかつて失敗した革命が転がっている。James Ernestが1990年代後半に開始したCheapass Gamesは、まさに当時のアメリカのボードゲームにおける肥大化した演出に異を唱えるプロジェクトだった。我々はもはや外に対して何かを期待してはいないものの、Ernestに倣うことで、外に対して何も期待していないと示すことはできる。
#### Tier 1: 清貧ユーロゲーム ####
・内容物の構成
外装は封筒を使用すること(後述)。
内容物として、説明書(ルールブック)、ボード、カード、既製品の円形シール(後述)のみ同梱可。
・内容物における色の使用について
どのパーツにおいても、印刷(または手書き)を行う際は、黒単色(グレー含む)のみ使用可。
ただし、プレイヤーや物品等の識別を目的として、補助的に、既製品の円形シールを同梱し、このシール※を適切なパーツに貼付するよう指示することは可とする。
(※ニチバン製「マイタック カラーラベル」を想定しているが、その他の円形単色の既製品シールでも可。)
シールの使用色は下記の5色を超えないことを推奨する。
・白(White)
・赤(Red)
・青(Blue)
・黄(Yellow)
・緑(Green)
パーツへのシールの貼付を指示する場合、対象のパーツの該当箇所に色を示す文字(「白/赤/青/黄/緑」または「W/R/B/Y/G」)を記すこと。
・イラストについて
どのパーツにおいても、イラストや写真は商用(印刷利用)自由の無料のもののみ利用可。加工は可(ただしイラスト自体の利用条件に抵触しないこと)。
自らイラストを描いてはならず、自ら撮った写真の使用も不可。また、この作品のために他者にイラストや写真を新たに創出させるのも不可。
※例外として、説明書(ルールブック)に図例を掲載する場合に限り、自ら準備したイラストまたは写真を用いてもよい。「説明書(ルールブック)」の項を参照。
・フォントについて
どのパーツにおいても、フォントは商用(印刷利用)自由の無料フォントのみ利用可。
・メカニクスについて
『ユーロゲーム』において、ユーロゲームの代表的なメカニクス(または目的)として記されている、
下記の要素の少なくともひとつをキーメカニクスとして実装することを強く推奨する:
・オークション
・エリアコントロール(エリアマジョリティ)
・セットコレクション
・トレード/交渉
・役割選択
・ワーカープレースメント
・タイルプレースメント
・外装
既成の封筒、白またはクラフト色のみ使用可。サイズは洋2カマス(A6)、角6(A5)、角3(B5)、角20(A4)のいずれか(ただし角20は非推奨)とする。
封筒に直接印刷するかわりに、シール(白またはクラフト色)に印刷し(黒単色のみ)これを封筒に貼付してもよい。
表面には任意の情報を印刷可能。
裏面には、下記の情報のみ印刷可とする(これらの情報は表面に記載してもよい)
・(必須)同梱していないがプレイにあたり必須となる駒・ダイス・コイン等各種パーツ(不要の場合はその旨を明記する)
・(推奨)作者名
・(推奨)出版者名
・(推奨)《メカニクスについて》項に列挙された各メカニクス(または目的)の使用不使用の別
・(推奨)内容物一覧
・(推奨)清貧ユーロゲームプロジェクト Frugal Eurogame Project参加作品であることの表明。
・説明書(ルールブック)
白上質紙のみ可。封筒に収まらないものは不可。
イラスト/写真の利用に関する例外として、説明書(ルールブック)に図例を掲載する場合に限り、自ら準備したイラストまたは写真を用いてもよい。
ただし、例示ではなく装飾を意図するイラスト/写真に関しては、通常のルールが適用される。
・ボード
枚数は任意。封筒に収まらないものは不可。
厚紙のみ可。紙の色は任意。ただし、1mmを超える厚みの紙は使用不可。
ボードへのニス加工は非推奨。PP加工はマット/グロス問わず不可。
・カード
枚数は任意。封筒に収まらないものは不可。紙の色は任意。原則として片面にのみ印刷可。
角丸加工は禁止。ニス加工は非推奨。PP加工はマット/グロス問わず不可。
・同梱しない物品について
大量生産される既製品であり、形状や意匠において著作権の保護を受けていない物品であれば、任意のものを指定可能。
ボードゲームに典型的な物品としては下記を想定している。
・小キューブ(8または10mm立方を想定) ※駒の色は内容物と異なり、白青赤黄緑の5色に縛られないが、白青赤黄緑黒灰茶の8色以内とすることが望ましい。
・大キューブ(14mm立方を想定)
・小ディスク(15mmの円盤を想定)
・大ディスク(20mmの円盤を想定)
・ミープル駒(立った状態と寝た状態の2状態を表現できる人形型の駒)
・ハルマポーン駒(立った状態のみ)
・ダイス
・小コイン(様々な額面のもの)
・ポーカーチップ(様々な額面のもの)
・紙幣
・トランプ
・タロット
・カードスリーブ
・メモ帳, 筆記用具
#### Tier 2: 準清貧ユーロゲーム ####
下記を除いてTier 1と同様。
・内容物の構成
内容物として、タイル(後述)を同梱してもよい。
・内容物における色の使用について
印刷の際、黒(および灰)に加え、青赤黄緑を用いてもよい(ただし、外装の封筒はTier 1同様に黒単色刷のみ可とする)。
ただし、これらの色は、パーツの属性を示すため、シールの代用としてのみ用いることができる。
イラストや写真にはこれらの色を用いてはならず、装飾を目的としてこれらの色を用いることもできない。
・説明書(ルールブック)
上質紙以外の紙を用いてもよい。紙の色は白のみとする。
・タイル
駒やコインやカードによって代用できない場合に限り、下記のいずれかの方法により作成されたタイル(正方形または正円型のみ可)を同梱することができる。
・印刷所・加工所等に発注して作成した、厚さ1mm以下のもの
・厚さ1mm以下の既製品の厚紙を作者自身が切り抜くことにより作成したもの
・購入者が既製品のコイン等に貼付けタイルとして使用するためのシール
タイルの色は任意。原則として片面にのみ印刷可能とする。
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ルールブック組込み用トリックテイキングゲーム概要説明文(※パブリックドメイン)
http://toccobushi.exblog.jp/241277191/
2021-11-18T20:49:00+09:00
2021-11-20T16:56:14+09:00
2021-11-18T20:49:33+09:00
Taiju_SAWADA
雑題
このエントリは Creative Commons CC0 1.0 で公開しています。
つまりこのエントリはパブリック・ドメインに提供しているものであり、営利目的か否かにかかわらず、許可を得ずに複製、改変・翻案、配布などが可能です。適宜改変の上で、必要な部分をつまんで、トリックテイキングゲーム作品のルールブック等に組み込まれることを主に想定しています。このエントリの著者の名前やこのエントリへのリンク等も示さないで構いません。
Creative Commons CC0 1.0 要旨(日本語)
https://creativecommons.org/publicdomain/zero/1.0/deed.ja
Creative Commons CC0 1.0 リーガルコード本文(英語)
https://creativecommons.org/publicdomain/zero/1.0/legalcode
沢田 大樹
ver0.1: 2021年11月18日公開
ver0.2: 2021年11月20日公開(切札のコラムを追加)
■ディールを使わず、かわりにラウンドを使った説明
『』は「トリックテイキング」と呼ばれる種類のカードゲームです。この種のゲームでは、まず一番手の人が手持ちの中からカードを選んで出し、そのあと他の人にもカードを出す順番が一度ずつ回ってきます。一巡したら出したカードの強弱を比べ、最も強いカードを出した人が、この一巡の競り合いを制したことになります。この一巡の競り合いのことを「トリック」と呼び、トリックを制することを「トリックを取る」などと言います。このトリックを何回か、普通は全員の手持ちのカードが尽きるまで繰り返すと1ラウンド終了、取ったトリックなどに応じて点数計算が行われます。ゲーム終了条件を満たすまでラウンドを繰り返します。
■ディールとラウンドを同義で用いることを強調した説明
『』は「トリックテイキング」と呼ばれる種類のカードゲームです。この種のゲームでは、まず一番手の人が手持ちの中からカードを選んで出し、そのあと他の人にもカードを出す順番が一度ずつ回ってきます。一巡したら出したカードの強弱を比べ、最も強いカードを出した人が、この一巡の競り合いを制したことになります。この一巡の競り合いのことを「トリック」と呼び、トリックを制することを「トリックを取る」などと言います。このトリックを何回か、普通は全員の手持ちのカードが尽きるまで繰り返すと1ラウンド終了、取ったトリックなどに応じて点数計算が行われます。この1ラウンドのことをトランプ用語で「ディール」と呼びます。ゲーム終了条件を満たすまでディールを繰り返します。
■ディールを使った説明
『』は「トリックテイキング」と呼ばれる種類のカードゲームです。この種のゲームでは、まず一番手の人が手持ちの中からカードを選んで出し、そのあと他の人にもカードを出す順番が一度ずつ回ってきます。一巡したら出したカードの強弱を比べ、最も強いカードを出した人が、この一巡の競り合いを制したことになります。この一巡の競り合いのことを「トリック」と呼び、トリックを制することを「トリックを取る」などと言います。このトリックを何回か、普通は全員の手持ちのカードが尽きるまで繰り返すと一勝負終了、取ったトリックなどに応じて点数計算が行われます。この一勝負のことをトランプ用語で「ディール」と呼びます。ゲーム終了条件を満たすまでディールを繰り返します。
■トリックが一巡ではないゲームの場合
『』は「トリックテイキング」と呼ばれる種類のカードゲームです。◆普通のトリックテイキングゲームでは、まず一番手の人が手持ちの中からカードを選んで出した後、他の人にもカードを出す順番が一度ずつ回ってきて、一巡したら一区切りとなります(『』では一巡で一区切りではないのですが)。◆一区切りになったら出されたカードの強弱を比べ、最も強いカードを出した人が、この一回の競り合いを制したことになります。この一回の競り合いのことを「トリック」と呼び、トリックを制することを「トリックを取る」などと言います。◆このトリックを何回か、普通は手持ちのカードが尽きるまで繰り返すと1ラウンド終了、取ったトリックなどに応じて点数計算が行われます。◆ゲーム終了条件を満たすまでラウンドを繰り返します。
(※【(『』では一巡で一区切りではないのですが)】の部分を強調。トリックテイキングゲームの説明を読み飛ばす=トリックテイキングゲームの知識を持っているプレイヤーの目に、この部分だけは入るようにする)
■マストフォローの説明まで入れたい場合
『』は「トリックテイキング」と呼ばれる種類のカードゲームです。◆トリックテイキングゲームでは、まず一番手の人が手持ちの中からカードを選んで出します。そのあと他の人にもカードを出す順番が一度ずつ回ってくるのですが、多くのゲームには、「一番手が出したのと同じ色のカードを持っている人は、原則としてその色のカードを出さなければいけない」というルールがあります(同じ色のカードを出すことを「その色をフォローする」と言います。このフォローの義務のルールは『』にもあります)。◆一巡したら出したカードの強弱を比べ、最も強いカードを出した人が、この一巡の競り合いを制したことになります。この一巡の競り合いのことを「トリック」と呼び、トリックを制することを「トリックを取る」などと言います。通常は、今回のトリックを取った人が次回のトリックでは一番手になります。◆トリックを何回か、普通は全員の手持ちのカードが尽きるまで繰り返すと1ラウンド終了、取ったトリックなどに応じて点数計算が行われます。ゲーム終了条件を満たすまでラウンドを繰り返します。
■メイフォローの場合
『』は「トリックテイキング」と呼ばれる種類のカードゲームです。◆トリックテイキングゲームでは、まず一番手の人が手持ちの中からカードを選んで出した後、他の人にもカードを出す順番が一度ずつ回ってきます。なお、多くのゲームには「一番手が出したのと同じ色のカードを持っている人は、原則としてその色のカードを出さなければいけない」というルールがあります(同じ色のカードを出すことを「その色をフォローする」と言います)が、このフォローの義務のルールは『』にはありません。◆一巡したら出したカードの強弱を比べ、最も強いカードを出した人が、この一巡の競り合いを制したことになります。この一巡の競り合いのことを「トリック」と呼び、トリックを制することを「トリックを取る」などと言います。通常は、今回のトリックを取った人が次回のトリックでは一番手になります。◆トリックを何回か、普通は全員の手持ちのカードが尽きるまで繰り返すと1ラウンド終了、取ったトリックなどに応じて点数計算が行われます。ゲーム終了条件を満たすまでラウンドを繰り返します。
(※【フォローの義務のルールは『』にはありません】を強調)
■マストフォローだがリードスート以外のスートがフォロー対象になるゲームの場合(リーダーの説明込み)
『』は「トリックテイキング」と呼ばれる種類のカードゲームです。◆この種のゲームでは、まず一番手の人が手持ちの中からカードを選んで出します(この一番手の人のことを「リーダー」と呼びます)。その後で他の人にもカードを出す順番が一度ずつ回ってくるのですが、普通のトリックテイキングゲームには、「リーダーが出したのと同じ色のカードを持っている人は、原則としてその色のカードを出さなければいけない」というルールがあります。決まった色のカード(この場合はリーダーが出したカードの色です)を出すことを、その色を「フォロー」する、と言います。先ほどのルールは「リーダーの出した色をフォローする義務がある」と言い換えることができます(※後ほど説明するとおり、このフォローの義務のルールは『』にもありますが、リーダーの出した色をフォローするわけではありませんのでご注意ください)。◆一巡したら出したカードの強弱を比べ、最も強いカードを出した人が、この一巡の競り合いを制したことになります。この一巡の競り合いのことを「トリック」と呼び、トリックを制することを「トリックを取る」などと言います。通常は、今回のトリックを取った人が次回のトリックのリーダーになります。◆このトリックを何回か、普通は全員の手持ちのカードが尽きるまで繰り返すと1ラウンド終了、取ったトリックなどに応じて点数計算が行われます。ゲーム終了条件を満たすまでラウンドを繰り返します。
(※【フォローの義務のルールは『』にもありますが、リーダーの出した色をフォローするわけではありません】を強調)
■マストフォローだがリードスート以外のスートがフォロー対象になるゲームの場合(「リーダー」を使わず「一番手」で通す)
『』は「トリックテイキング」と呼ばれる種類のカードゲームです。◆この種のゲームでは、まず一番手の人が手持ちの中からカードを選んで出します。その後で他の人にもカードを出す順番が一度ずつ回ってくるのですが、普通のトリックテイキングゲームには、「一番手が出したのと同じ色のカードを持っている人は、原則としてその色のカードを出さなければいけない」というルールがあります。決まった色のカード(この場合は一番手が出したカードの色)を出すことを、その色を「フォロー」する、と言います。先ほどのルールは「一番手の出した色をフォローする義務がある」と言い換えることができます(※後ほど説明するとおり、このフォローの義務のルールは『』にもありますが、一番手の出した色をフォローするわけではありませんのでご注意ください)。◆一巡したら出したカードの強弱を比べ、最も強いカードを出した人が、この一巡の競り合いを制したことになります。この一巡の競り合いのことを「トリック」と呼び、トリックを制することを「トリックを取る」などと言います。通常は、今回のトリックを取った人が次回のトリックでは一番手になります。◆このトリックを何回か、普通は全員の手持ちのカードが尽きるまで繰り返すと1ラウンド終了、取ったトリックなどに応じて点数計算が行われます。ゲーム終了条件を満たすまでラウンドを繰り返します。
(※【フォローの義務のルールは『』にもありますが、一番手の出した色をフォローするわけではありません】を強調)
推奨改変事項
色とスートが別概念であるようなゲームの場合、「色」は「スート」で置き換える。スートの初出の際、【「リーダーが出したのと同じ色のカードを持っている人は、原則としてそのスートのカードを出さなければいけない」というルールがあります(スートとはカードのマークのことで、トランプで言うスペードやハートなどが相当します)。】などのような注釈を入れる。コンポーネントの説明時に、カードを図示してスートを「マーク」として説明している場合は、「スート」ではなく「マーク」で置き換える。この場合は初出時の注釈は不要。【普通は全員の手持ちのカードが尽きるまで】の部分は、そうではないようなゲームのルールブックに組み込む際は、【手持ちのカードが尽きるなりその他の終了条件が満たされるなりするまで】に差し替え。【この一巡の競り合いを制した】【トリックを制する】の部分は、概ねトリックを取れば取るほど良いタイプのゲームのルールブックに組み込む際は、それぞれ【この一巡の競り合いに勝った】【トリックで勝った】に差し替え。【通常は、今回のトリックを取った人が次回のトリックでは一番手になります。】の部分は、そうではないゲームの場合、(『』では違います)などの形で追記。
■切札コラム 〔v0.2追加〕
多くのトリックテイキングゲームには、「一番手が出したのと同じ色のカードを出せなかったプレイヤーは、そのトリックを取れない」というルールがあります。このルールの例外が「切札」です※。切札は一番手が出した色のカードより強いカードとして扱われます(一番手が切札を出している場合は別ですが)。◆※切札のことを英語でtrumpと言います。
■切札コラム(既にマストフォローの説明を行っている前提での注釈付き)〔v0.2追加〕
多くのトリックテイキングゲームには、「一番手が出したのと同じ色のカードを出せなかったプレイヤーは、そのトリックを取れない」というルールがあります。このルールの例外が「切札」です※。切札は一番手が出した色のカードより強いカードとして扱われます(一番手が切札を出している場合は別ですが)。ただし、切札はフォローの義務から逃れられるカードというわけではないので、一番手が出したのと同じ色のカードを手に持っている場合は、切札を出したくても出せず、一番手が出した色のカードを出さないといけません。◆※切札のことを英語でtrumpと言います。
To the extent possible under law, SAWADA, Taiju (沢田 大樹) has waived all copyright and related or neighboring rights to ルールブック組込み用トリックテイキングゲーム概要説明文.This work is published from: 日本.]]>
同人トリックテイキングゲームのルールにおける専門用語の使用について
http://toccobushi.exblog.jp/241275299/
2021-11-17T01:22:00+09:00
2021-11-17T06:52:57+09:00
2021-11-17T01:22:10+09:00
Taiju_SAWADA
うわごと
【ボドゲガレージで買ったトリックテイキングゲームをみっつほど遊んだんですが、とりあえずルールの文面においては普通に「トリック」とか「ディール」とか「フォロー」とか使ってください。意図はわかりますが現状ではポジティブな効果を持ち得ていません。ひたすら読者を苛立たせているだけです】(2021年11月15日)
とツイートしたあとで、いや別にディールは使わなくていいんじゃねえかな、とも思ったわけですけど、意外にも僅かながら反響があったようなので、せっかくだし本件について多少の補足を書いてみようかと思います。
■主張の対象となるゲーム
まず、この主張は前提として
・小規模なボードゲーム即売会で売っている
・同人のカードゲームであって
・パンフまたはポップで「トリックテイキングゲーム」と明確に謳っている
(またはタイトルがトリックテイキングゲームであることを明らかに想起させるものである)
ゲームを対象としています。トリックテイキングゲームであってもそうと謳っていないものは対象としていません。また、大規模な商業流通を前提とした出版物も一応は対象外です。
そのような主張の対象であるトリックテイキングゲームは、下記の3種類に分けることができます。
(1) 購入者/ルール読者のほとんどがトリックテイキングゲームについて一定の経験を持つことを前提としたゲーム
(2) トリックテイキングゲームの紹介/への入門を意図して作られ、購入者の一定割合がトリックテイキングゲームを知らないことを想定しているゲーム
(3) トリックテイキングゲームの枠組を使いながら根本的には別種のゲームとして作られており、購入者の一定割合がトリックテイキングゲームを知らないことを想定しているゲーム
■「トリック」の語を使わないことの弊害
前述の3分類のどれであっても、ルールブック中に「トリック」への言及は行うべきです。
購入者の一定割合がトリックテイキングゲームを知らない前提のゲーム〔(2)(3)〕では、パンフまたはポップまたはタイトルで「トリック・テイキング」と言っている以上、「トリック」とは何を指しているのか説明が無い限り、パンフまたはポップまたはタイトルが何を意味しているのか不明なままになります。とりわけ、トリックテイキングゲームの紹介/への入門を意図したゲーム〔(2)〕においては、「トリック」への言及がないと、紹介すべきものをプレイヤーに紹介できたことになりません。
ルール読者のトリックテイキングゲーム経験を前提としたゲーム〔(1)〕は、多くの場合ジャンルの基本的な構造を部分的に崩して作られるものでもあり、読者の側でもそのような期待あるいは疑いを持ったままルールを読み始めることになります。作者がこのトリックテイキングゲームのなかで何を「トリック」であるとしているかをできるだけ早期に示すことにより、読者にルール読解の足場を与えることができます。逆に言えば、このゲームにおいて何がトリックであるか示さないまま、捻ったトリックテイキングゲームに出てくる謎めいた新概念を次々に繰り出してしまうと、ゲームの全体について像を結ぶ読解の手掛かりを得られないまま、与えられたパーツからトリックテイキングゲームの枠組を成立させるための試行錯誤を頭の中で繰り広げないといけなくなります。新しいゲームとはそもそもそういうものなのだ、とは確かに言えるのですが、なぜトリックテイキングゲームという大枠に乗っかってしかもそのことを謳ってすらいるゲームにおいて、そのような試行錯誤が必要となるのか、それは単に無駄なことをさせられているだけではないのか、という不信が読者の中に芽生えていきます。
えー、というかですね……、ここまでの話はある意味で綺麗事に過ぎないのでして……、読者の側としては、これまでに遭遇した様々に愉快な経験の数々から、「小規模なボードゲーム即売会で売っている」「同人の」カードゲームやボードゲームのルールライティングに対して根本的なところで不信があるわけです。よくわからないパーツがパーツのままに放り出され、最後までそれらがゲームとして形を成すことはないのではないか。繰り返しますが、これは故のない不信ではありません。そもそも「このゲームはトリックテイキングゲームである」という宣言こそ、その読者の不信を軽減する最大のものであり、もしかするとゲームが購入されるに至った主因ですらあるかもしれないのですが、それでもそれだけでは不信の解消には充分ではないんです。
有効な言及の方法は複数ありますが、トリックテイキングゲーム概念について冒頭で概要として簡単に説明するか、そのゲーム自体の概要について冒頭で説明する中で、トリックに相当する概念に言及する際「※伝統的なゲームでは、これを《トリック》と呼びます」と触れるのが基本になると思います。
■「フォロー」の語の使用
トリックテイキングゲームの紹介/への入門を意図して作られているゲーム〔(2)〕では、「トリック」で記したのと同じ理由により、「フォロー」の語を使うべきです。同じく、ルール読者のトリックテイキングゲーム経験を前提としたゲーム〔(1)〕でも、「フォロー」の語は何らかの形で使うべきです。
何をフォローすべきかについて標準的なルールを採用しているゲーム、つまりリードプレイヤーが手札から出した1枚のカードのスートが必ずフォロー対象スートになるようなゲームという意味ですが、このようなゲームでかつマストフォローの場合は、マストフォロー概念の説明の際、リードプレイヤーが出したのと同じスートを出すことについての文が必ず現れるはずですので、そこに「※これをフォローと言います」などのような注釈を入れるだけでも問題ありません。ですが、何をフォローすべきかについて捻りを加えたゲームの場合、読者の混乱を静めるためにも、フォローの語を明示的に定義した上で、何がフォローの対象になるのかについて、フォローの語を使用することでより強調的に表す必要があります。(なお、このようなゲームの場合は、リーダーの出したカードのスートとフォロー対象スートの違いを示すため、「リード」または「リーダー」の語も定義して使用する必要があります。そうでなければ、「リード」は便利な語ですが、使用必須というほどのものでもありません。)
一方、トリックテイキングゲームの枠組を使いたいだけのゲーム〔(3)〕の場合、プレイヤーとトリックテイキングゲームに対してフォローの概念を教え込まないといけないような義務を自ら負っているわけではないので、「フォロー」の語を使うべきとは言えません。ゲームが全体としてはトリックテイキングゲームの定型に従ったものでは全くない、というのであれば、むしろ避けた方が良いとすら言えるかもしれません。ただしその場合、既に使われている「トリックテイキングゲーム」という言葉は混乱を招く災いの源でもあり、作者はこの余計な災禍を抱えながら、自身の新しいゲームを説明しきらないといけないことになります。
■トリックテイキングゲームの原則
ところで、前段で「伝統的なトリックテイキングゲームでは原則として、フォロー対象のスートをフォローしなかった場合、切札を出したのでなければ、そのトリックの獲得者にはなりません」と書きました(追記:すいません、書いたあとで消しました)。これはトリックテイキングゲームの原則ですが、特に現代のデザイナーズゲーム(もちろん同人ゲームも含まれます)においてはさほど守られません。このような守られたり守られなかったりする原則としては、他に
・フォローの義務(マストフォロー)
・最も高い価値のカードを出したプレイヤーが、そのトリックを丸ごと獲得する
があります。守られる度合いは様々ですが、とはいえこれらはいずれも原則ではありますから、読者はこれらを念頭に置いて読んでいます。トリックテイキングゲーム経験を前提としたゲーム〔(1)〕でこの原則を破るルールを採用しているのであれば、その部分は強調して書くべきです。この強調表示には、作者がトリックテイキングゲームの基本原則を知っていること、その原則を今回のゲームにおいては採用していないことを明示する意味があり、読者にとっては作者のトリックテイキングゲーム理解が読者と変わらないものであることを支持する効果を持ち、これまで述べてきた不安や不信の解消に繋がります。
■「ディール」について
不信の解消という意味では、「ディール」も同様の効果を持ちます……が、冒頭で触れたように、この語については、使ったほうが良いかどうか微妙なところがあります。というのは、これは別にトリックテイキングゲームの必須概念とかそういうものではなく、単にカードゲームの専門用語でしかないからです。言うまでもないことですが、ルールブックに登場する専門用語の数は少なければ少ないほど好ましく、専門用語を使う場合はその一つ一つについて必要性を問うた上で、使うと決めた用語にはあの煩わしい定義なるものを載せる必要があります。
それでも敢えて最初のツイートで「ディールの語を使った方が良い」と言っているのは、実のところあんまり一般性のある話ではなく特定の作例を念頭に置いたものです。その作例においてはディール概念を説明する語としてフレーバーに沿った独自の語を用いているのですが(非実在の例を挙げますと、たとえば学校生活をテーマにしたゲームにおいてディールを表す語に「学期」を用いている、みたいな感じです)、その語がディールを表すものであると確定するのがルールの終盤に入ってからで、ルールを読んでいる最中には、「繰り返し概念であることは最初に提示されている(ステップやフェーズとは違うもののようだ)」「たぶんこれはトリックではない」「ディールとトリックの中間概念は存在しなさそう」「ディールより大きくてゲームより小さい繰り返し概念は無い」「つまりこれはディールのことだ」と読者は推測を続けていくことになり、これが非常に煩わしいわけです。読者をこういう目に遭わせるよりは、最初から「※これはディールのことです」と注釈を入れておくべきです。
独自の語ではなく、しかしディールほどピンポイントに定まったわけではない語、たとえば「ラウンド」を使うという選択肢を考えてみましょう。トリックテイキングゲームにおいて「ラウンド」の語がふつう指し示しうる概念はトリックかディールのどちらかです。従って、トリックを示す語として「トリック」を割り当てておけば、「ラウンド」の使用には全く問題が無いことになります。そうでない場合、ラウンドと区別するため、結局なんらかの汎用的(=曖昧)または独自(=謎)の語をトリック概念に割り当てないといけなくなります。
■ついでに言っておきたいこと
一部の分野の論文や教科書では、読者は知識ゼロ・読解力無限であることを想定して書け、なんてことが言われる場合もありますが、同人ゲームのルールライティングでその態度を取るのは止めましょう。少なくとも知識ゼロの読者を想定する場合、その知識ゼロの読者のルール読解力は知識のある読者の読解力よりも当然劣ります。知識の無い読者のために専門用語を使わないという選択を行うのであれば、専門用語を使わずに説明できればそれでOK、という態度は決して取れないはずです。
■ところで、読者一般は置いといて、君は何がそんなに苛ついたの?
何をフォローすべきかについて捻りを加えたゲーム(リードプレイヤーが手札から出した1枚のカードのスートがフォロー対象スートになるというわけでは無いゲーム)に連荘で当たってどっちも何がフォロー対象なのか後ろのほうまで読まないとわかんないルールになっていたのです。たいへん不幸な事故と言えます。
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マック・ゲルツとその作品
http://toccobushi.exblog.jp/241216219/
2021-10-03T00:45:00+09:00
2021-10-03T00:45:53+09:00
2021-10-03T00:45:53+09:00
Taiju_SAWADA
感想・紹介
* * *
マック・ゲルツについて何かを書くのであれば、やはりまずは彼のデビュー作である2005年の「古代 Antike」から始める必要があるでしょう。古代ローマの時代を舞台に担当国を決めて3都市を持ってスタートし、街から出る資源を元に軍隊を雇って軍隊を動かして軍隊で街を建てて、というよくあるドイツの地政学ゲーム、より狭く言えば拡張・開発・殲滅ゲームなんですが……よくある、というのは嘘です。確かにこれは、1980年代前半までの英米の多人数ゲームでは比較的好まれた主題です。しかし、ドイツの商業ボードゲームや、それがグローバル化した「ユーロゲーム」と呼ばれるジャンルにおいて、この種のゲームをまっとうに作る方法は、事実上この「古代」の登場以前には存在しませんでしたし、2020年現在でも決してよく見られるものではありません。なぜかといえば、ユーロゲームというのはジャンルの定義上、許容される複雑さに上限があるからで、一方で英米の地政学ゲームというのは地域間の関係の動学を総合的に表現するものだったので一定以上の複雑さが避けられなかったんです。
複雑さの上限とプレイ時間の制約を厳密に守った上で地政学ゲームを作りあげるために、ゲルツはテーマに固有の特殊ルール、ローマなので軍隊が強いとかカルタゴなので云々とかそういうやつですが、これを完全に削除し、勝利条件をおよそ地政学ゲームでは考えられなかった「一瞬でもいいので何々できたら1点」「最初にx点取ったら勝ち」というものに変え、さらには一手番あたりの負荷を下げることでゲームのテンポを上げ、とあらゆることをやっています。これにより、夢もロマンも歴史もない、しかし間違いなく地域間のダイナミズムが表現された充分にシンプルで遊びやすいボードゲームが産まれ、彼の名前はボードゲーム愛好家に知れ渡ることになります。
とりわけ、「手番あたりの負荷を下げる」、つまりプレイヤーがゲームの中でできる行動を「収入」「技術開発」「駒の購入」「配置」「移動」というような形で分割モジュール化し、1回の手番ではそのうちの1つしか選択・実行できないようにする、しかも(ここが重要なんですが)その選択も自由に行わせるわけではなくこれまでの行動選択の履歴に応じて一定の制約をかける。これは、ゲルツの作品に共通する、彼のデザインの最も大きな特徴です。このデザインが「輪盤(ロンデル)システム」という形で盤上にわかりやすいビジュアルと共に提示されたということも、「古代」そしてマック・ゲルツという作者の登場が大きな注目を集めた一つの理由ではあるでしょう。
とはいえ、重要なのはロンデルであること自体ではありません。個々の行動の最小化・モジュール化によりテンポが非常に早いゲームになっていること。行動の選択順序に制約をかけて選択肢の数を減らした上でその選択自体を戦略的意思決定と言えるような重要なものにしていること。そしてそれらによって、元来は複雑なルールと煩雑なプレイが必然的に付随するものとされていた主題から、シンプルな骨子だけを分離できている、という点です。「古代」の場合は、地政学ゲームをチェックポイント早巡り競争に書き換えることで、ゲーム全体を「可能な限り早く」という意思の下に駆動させるようにし、そこに選択の順序つまり何を先にやるべきかという問題を載せたということが、テンポの速さと一回ごとの選択自体の重要性の両立に大きく関わっています。言うまでもないことですが、単にゲーム盤上に輪を描けばロンデル・システムとして機能するわけではありません。
翌年の第2作「インペリアル Imperial」では再び地政学、それも交渉ゲームをベースに、「1830」などで知られる株券=経営権メカニズムを突っ込み、これ以上無く重厚長大なところから始めています。「古代」と同様にロンデル・システムを用いたダウンサイジングは十二分な成果を挙げていますが、それでもこれはプレイ時間、ルールの複雑さ、プレイヤー間の対立構造の厳しさ、ガードレールの不在、いずれの点でもゲルツの全作品の中では頭一つ抜けてプレイヤーへの負荷の高いゲームです。「古代」が旧来のゲーマーズ・マルチプレイヤーズゲームをユーロゲームの文脈に置き直したゲームであるのに対し、「インペリアル」は不要な枝葉を落とした後の骨格としてユーロゲームの文脈からこぼれ落ちるもののほうを残している、と言ってもいいかもしれません。
おそらくこの地政学ゲーム2作(と、そのリメイクまたは変形ゲームである「インペリアル2030」「古代・決戦 Antike Duellum」「古代II」)がゲルツ初期のゲームとしてくくられるべきもので、2007年の第3作「ハンブルグム Hamburgum」以降の5作は全て、前述のモジュール化とテンポへの意識はそのままに、元々ユーロゲーム的な主題である経済効率を競うゲームとなっています。盤上に様々な種類の「拠点」(実際には文字通りの意味での拠点とは異なる場合もありますが)を築いていくことで得られるリソースを如何に良いタイミングでその時々必要なものに変換できるか、加えて、どの種類の拠点を勝利点に換金するか。彼の2010年代の3作品はいずれも、この「ハンブルグム」で最初に提示された枠組を引き継ぎ、その中で異なる側面を描き出したものです。
(本来はここで、他の作品群と並べた時に異質さが際立つ《ロンデルの中を駆けずり回るゲーム》、2009年発表の傑作「マチュピチュの王子 The Princes of Machu Picchu」について、2010年代の作品群と何が同じで何が異なるか述べていく必要があるんですが、作品の簡単な紹介を通じてゲルツの作家性を大掴みに説明するという本稿の趣旨から大きく逸脱するため、申し訳ないのですが省略させていだだきます)
特に2010年の「ナヴェガドール」は「ハンブルグム」との対比がわかりやすい作品で、「ハンブルグム」が混沌のまま盤上に散らばった得点の欠片のうち「what - 何を」取っていくのが効率的なのか、ということを主眼においたネットワーク構築ゲームだったのに対し、盤上も得点要素も全てが徹底して明瞭かつ直線的/単線的になるよう美しく整理された「ナヴェガドール」は、何をすべきなのかは自明に近い、「how - 如何に」の技術についてのゲームでした。「ハンブルグム」の枠組をどのように可視化するかという点では、「ナヴェガドール」は最終回答と言えるものです。実際、ゲルツは答の出た部分をいじることを好まず躊躇無く使い回しを行う作者なので、その後の2作でも同様のメカニクスがそのまま登場しています。一方、ユーロゲームがhowの技術を競うゲームであるべきなのかという点では、もしかすると思うところがあったのかもしれません。「ナヴェガドール」で結論を得た見通しの良さを可能な限り保ったまま改めてwhatのネットワーク構築ゲームを作るということが行われたのが、2013年発表の、現在では「古代」を上書きするゲルツの代表作とみなされている「コンコルディア Concordia」です。
「コンコルディア」ではロンデル・システムが捨てられています。代わりに、やりたい行動が書かれたカードをカードデッキに組み入れていき、かつその取ったカードの色がそのまま特定の種類の得点に対する乗数的増幅要素にもなるという、簡易的なデッキビルディングが行動選択のメカニクスとして採用されています。初期の地政学ゲームではロンデルとして提供された数種類の行動から何をどの順番で行うかがそのまま戦略的意思決定となって戦術を縛っていましたし、逆にどこまでも戦術のゲームである「ナヴェガドール」ではロンデルのまわり方の巧拙がそのまま点差になっていたんですが、「ハンブルグム」のロンデルは他のゲームほど絶対のものではありませんでした。何と言っても、90分で遊べるネットワーク構築ゲーマーズゲームの傑作ならばユーロゲームの枠内で他にもあるわけですから。「ナヴェガドール」(や「マチュピチュの王子」)のようにロンデル自体を競争要素とする趣向が無いのであれば、枠組の実装に必要な複数の要素を同時に片づけることのできるデッキビルディングのほうが、不必要な複雑さを削除し見晴らしを良くするという点でより望ましいわけです。結果として、この種のゲーマーズゲームとしては例外的にシンプルなルールセットの中でバラエティに富んだ「何をどれくらい重視するのか」の選択肢を提供することに成功し、発表から6年以上が経過した現在でも広く愛されています。
最後に現時点での最新作である、2017年発表の「Transatlantic」についても触れておきたいと思います。最も重要な点は、ゲルツの作品としては初めて、タイトなゲーマーズゲームとは微妙に違うところに着地させたゲームだということです。これまでのゲームはいずれも、ルールやプレイ時間の面では負荷を下げつつ、どう遊ぶかという点ではプレイヤーに対してそれなりの態度を要求するものでした。もちろん、そのようなゲームをプレイヤー全員がぼんやりと遊んでみるのは大変たのしい愉快なアクティビティなので是非おすすめしたいところではあるわけですが、とはいえ主要なプレイヤーとしては「運要素無し!」と広告の惹句に書いてあるのを見て喜ぶ人々が想定されていました。「Transatlantic」はそうではありません。経済効率を追求する点は「ハンブルグム」以来不変ですが、しかしこれは山札からめくられる船カードに一喜一憂するゲームです。諸々の理由により現在ユーロゲームの市場は短時間軽量級ゲームと重厚長大ゲーマーズゲームに二極化しており、その中で敢えてゲルツが中庸寄りの道を意識した面白いゲームを世に出したことをとても嬉しく思っています。早く日本への本格的な紹介が実現されると良いのですが。
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プロプライエタリ・ゲームの誕生――「ユーロゲームの誕生と消失」からカットした部分
http://toccobushi.exblog.jp/240611155/
2020-10-03T22:46:00+09:00
2020-10-03T23:19:27+09:00
2020-10-03T22:46:50+09:00
Taiju_SAWADA
雑題
わたくしの書いた文章は、論文といってもそれほど厳密なものではなく、英語の学術界隈で使われる意味での「essay」くらいの感じです。だいたいどういう文章なのかという点については、この文章の冒頭「はじめに」の部分でまとめたので、そのまま抜粋します。
遊戯の歴史は人類の文化史と同じだけの長さを持つものである一方、個人あるいは集団の創作物としてのゲームが商業的に流通するようになったのは概ね近代以降のことであり、そのような商業的ゲームが芸術形式として必要な制度を獲得してからの歴史はさらに短い。
その短い芸術形式としての商業ゲームの歴史の中で、「ユーロゲーム」と呼ばれる卓上ゲームのサブジャンルは、ゲームの内容、および受容の慣習に関する重要な特徴を持ち、より正確には、その特徴がジャンルを形作っている。また、このユーロゲームは、ボードゲームがここ数年の日本において流行の兆しを見せている、あるいは21世紀の欧米の一部で流行していると言われる時、その「ボードゲーム」という言葉が実質的に指し示す対象でもある。
この小論では、ユーロゲームの成立課程を解説した後、そのユーロゲームのジャンルとしての特徴が1970~80年代西ドイツの商業的背景に由来するものであり、現在の環境では自然には維持され得ないものであることを示す。
(太字は字数制限のためカットした部分)
……というわけなんですが、ご存じの方はご存じの通り、雑誌というのは頁数制限がありまして、書きたいことを全部放り込むわけにはいかないんですね。ご覧の通り上記の「はじめに」でも太字の部分を削ってて、おかげで冒頭が「ゲームの歴史は短いですよ」というだけの話になり、何を言いたかったのかよくわからないことになってて後で後悔したんですけどそれはそれとして、そういうわけなので本筋と関係無い部分をカットしたのです。こんな感じに。
3-1. 娯楽のための商業ゲーム
デヴィッド・パーレットは著書『ボードゲームの歴史』において、個人ないし集団によって創作され、特定の出版社によって独占的に販売されるゲームを、囲碁やチェスなどの伝承ゲームと区別して「プロプライエタリ(独占的)・ゲーム」と呼んでいる(Parlett 2018:345)。ユーロゲームの成立過程にはプロプライエタリ・ゲームの近現代史が大きく影響を及ぼしている以上、本来であればユーロゲームについて論じる前に、まずプロプライエタリ・ゲームの近現代史の概要について述べる必要があるのだが、ここではパーレットによる「プロプライエタリ・ゲームが最初に現れたのは18世紀」(ibid.:345)との言葉を紹介するにとどめる。
欧米で初期に出版されたプロプライエタリ・ゲームにはふたつの典型があり、ひとつは植民冒険家によって欧州に持ち帰られた外国のゲームを微修正したもの(Michon 2009:206)、もうひとつは、16世紀から欧州各国で製作・販売されている双六型のゲーム「鵞鳥のゲーム」を雛形に教育説話的モチーフを付与したもので…(以下略)
でまあ、せっかく書いたのでちょっと勿体ないなあ、と思い、このカットした部分を供養のために掲載しておこうと思います。それではどうぞ。
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デヴィッド・パーレットは著書『ボードゲームの歴史』において、個人ないし集団によって創作され、特定の出版社によって独占的に販売されるゲームを、囲碁やチェスなどの伝承ゲームと区別して「プロプライエタリ(独占的)・ゲーム」と呼んでいる(Parlett 2018:345)。ユーロゲームはそのほとんどがプロプライエタリ・ゲームであり、ユーロゲームの成立過程にはプロプライエタリ・ゲームの近現代史が大きく影響を及ぼしている。従って、ユーロゲームについて論じる前に、まずプロプライエタリ・ゲームの近現代史――そのほとんどはマス・マーケット向けゲームの歴史――を概観する必要がある。〔※編注:「マス・マーケット向けゲーム」というのは、スチュワート・ウッズ『Eurogames』において「ホビーゲーム」と対比されて使われている言葉です。要はデパートとかトイザらスとかで売ってるゲームのことだと思ってください。対する「ホビーゲーム」はイエローサブマリンで売ってるゲームです〕
プロプライエタリ・ゲームが存在するためには、「一定の数量のゲーム物品が生産されること」「生産されたゲームが商業流通し、一般に購入されること」が必要条件となり、また、ユーロゲームまで連なるものとしてのプロプライエタリ・ゲームの歴史を考える場合は、「ルールが創作され、書かれ、読まれること」も要件に加える必要がある。
この意味でのプロプライエタリ・ゲームの歴史がどこまで遡れるかという議論については、証拠となる記録がないこと、また「ルールの創作」の定義が曖昧であることから、厳密な特定は難しい。しかし、パーレットは「子供用のボード・カードゲームの発展は歴史的には近年の、とりわけ西洋文化のもので、18世紀後半より大きく遡ることはない」(ibid.:x)、『プロプライエタリ・ゲームが最初に現れたのは18世紀、パーカーブラザーズ、ワディントン、ラベンスバーガーといったメジャーなゲーム会社ができたのは19世紀で、典型的には、紙の生産、印刷、出版といった本業から派生する形で生まれている』(ibid.:345)としている。またブルース・ホワイトヒルは、アメリカにおけるゲーム産業の確立について『アメリカのカードは植民時代に遡るが、カード《ゲーム》(4スート各13枚ではないもの)はおそらく商業的には1800年代初頭以前には製造されていなかった(中略)知られている最初のアメリカで製造されたボードゲームは1822年、ただし産業としては1840年代にW.& S.B.Ivesがカード・ボードゲームの出版を始めるまで確立されなかった』(Whitehill 1992:2)としている。個別事例についてはさらに過去に遡ることができるものの【※たとえば高橋(2018)では、近代のボードゲームの最初の事例として、フランスの地理学者ピエール・デュバルが1645年に製作した「地図のゲーム」を挙げている。また、西洋文化を離れると、例えば日本でも、増川(2012:169)によれば『一七世紀後半のわずか数十年間に――むろん、手書きでさまざまな絵双六が作られた可能性は否定できないが――人々の欲求にもとづいた絵双六が出板されるようになったといえる。』】、大枠の理解としては、18世紀後半から19世紀前半にかけて勃興したものと考えても大きく誤ることにはならないだろう。
田中治久は、伝統ゲームからコンピューターゲームへ至る近代化の過程を「無害化、大衆化、自立化」とまとめており、教育に用いられるゲームの登場を無害化の過程の一側面だと述べている(あそび屋Kai 2019)。【※ルールが書かれ・読まれるようになることは、ゲームの大衆化の一側面として位置付けられている。ボードゲームのルールを記した例外的に早い実例として13世紀のアルフォンソ10世による『Libro de los juegos』があるものの、基本的にはルールの明文化はグーテンベルク以降、16~17世紀にかけての出版文化の興隆を土台としているものと思われる。端的な例として、ヨーロッパ最初のカードゲームルール集と考えられるコットン『The Compleat Gamester』は1674年発表の出版物である。】実際、後述するように初期のプロプライエタリ・ゲームは知育玩具の側面を強く持つものだった。プロプライエタリ・ゲームが18世紀に子供の遊びとして勃興していることは、西欧において子供と遊びの概念がこの時期に確立されたことと一定の関係があるものと考えられる。クリスティン・ウォーカーは、1692年のジョン・ロック『教育論』で不可欠な活動としての遊びが着目され、1762年のジャン=ジャック・ルソー『エミール』で(半人前の大人ではなく、感傷の対象化された純潔なものとしての)子供という概念が生まれたことに触れながら、1730年代にはイングランドに存在しなかった子供玩具の専門店が、1780年代になるとどこにでも見られるようになった、と紹介している(Walker 2009:203)。
加えて、18世紀後半から19世紀前半とはつまり産業革命の時代であり、当然のこととして、産業革命による印刷技術の進展が、プロプライエタリ・ゲーム産業の発生に大きく寄与している。ヘザー・ミチョンによれば、『19世紀より前、ボードゲームはほとんどがハンドメイドだった。この世紀前半の英独の印刷機の発展と安い木質パルプ紙の入手性向上は印刷費用を下げ、19世紀中盤のクロモリトグラフィの受容は手作業に頼らない安い多色刷を可能にした。』(Michon 2009:206) 【※単色刷リトグラフの発明は1798年、クロモリトグラフィ(多色刷リトグラフ)の発明は1836年のことである。(小勝 1998)】
欧米で初期に出版されたプロプライエタリ・ゲームにはふたつの典型があり、ひとつは植民冒険家によって欧州に持ち帰られた外国のゲームを微修正したものである(Michon 2009:206)。この典型に属する代表的なゲームとしてパチシがある。インドの伝統的ゲームであるパチシは、19世紀に欧米の各国の出版社から、それぞれ若干のアレンジを施された上で出版されている。……(以下略)
あそび屋Kai. 2019. 「ゲームが解き放つ〈AIの野生〉トークイベントに行ってきた!」 https://note.mu/niteandday_tokyo/n/nedad162091cd
小勝礼子. 1998. 「リトグラフ」『世界大百科事典 第2版』平凡社.
高橋浩徳. 2018. 「ボードゲームの近現代史」『大阪商業大学アミューズメント産業研究所紀要』(20). pp.119-181.
増川宏一. 2012. 『日本遊戯史』平凡社。
Michon, Heather K. 2009. "Europe, 1800 to 1900." in Encyclopedia of PLAY in Today's Society vol.1. Rodney P. Carlisle (ed). SAGE.
Parlett, David. 2018. Parlett’s History Of Board Games – The Updated Edition Of The Oxford History of Board Games. Echo Point Books and Media.
Walker, Christine M. 2009. "Europe, 1600 to 1800." in Encyclopedia of PLAY in Today's Society vol.1. Rodney P. Carlisle (ed). SAGE.
Whitehill, Bruce. 1992. Games: American Boxed Games and Their Makers, 1822-1992 : With Values. Wallace-Homestead Book Co.
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はい。以上でございます。ご興味のあるかたは、10月中に現代風俗研究会のウェブサイトから購入申込ができるはずなのでそちらでお買い求めいただくか、あるいはサブスクしてる大学図書館がいくつかあるようなので(CiNiiで見る限りでは、東大・早・慶・中央。一橋も買ってるかも)、そのへんから複写依頼を出してみてください。ゲーム特集ということで、私の文章を含め、ゲームに関する論文が5本、それ以外の論文が3本載っています(そのうちサイトにタイトルが載ると思いますが、私以外のゲーム関連論文は、クレーンゲームの話、メイルゲームの話、麻枝准の話、ゲーム依存概念の話の4つで、それぞれゲーム研究者の方が書かれており、何者だか素性がわかんねえのは私だけです)。
※わたくしの直接のお知り合いのかたはわたくしまでご連絡いただいても構いません
■ご興味のあるかたのための「ユーロゲームの誕生と消失」もくじ
1. はじめに
2. ユーロゲームとは何か
3. プロプライエタリ・ゲーム
3.1. 娯楽のための商業ゲーム
3.2. ホビーゲーム=批評の対象としてのプロプライエタリ・ゲーム
4. 西ドイツの現代ボードゲーム市場の成り立ち
4.1. 3M Bookshelf Games
4.2. 1970年代イギリスのボードゲーム・コミュニティ
4.3. 西ドイツのボードゲーム業界と批評の発生
4.4. ドイツ・ゲームオブザイヤーとSPIEL
5. 拡散と消失
5.1. ドイツの特異性
5.2. ユーロゲームの誕生
5.3. ボードゲーム出版者側の事情の変化
5.4. 差異の消失
6. 結び
■追記
プロプライエタリ・ゲームを批評の対象とみなすような慣習の発生がいつ頃なのか説明するパートがこの後にあります。というのは、この文章は「批評の対象(≒芸術的受容の対象)としてのゲーム」をキーワードに、ドイツゲーム(ユーロゲームではなく)を「マス・マーケット向けのボードゲームを批評の対象として扱うムーブメントの定着」として扱う、というのが重要なポイントになってるからです。
で、そういう批評の慣習は今のところ1950年代のアバロンヒルまでしか遡れない(大人を対象としたプロプライエタリ・ゲームが出版されるようになった1930年代後半~1940年代においても、そういう批評の慣習があったわけではなさそう)という話をしてるんですけど、そこでカットした注が一個あります。
【※ゲームの近接分野であるパズルについては、批評の慣習が遥かに早い段階で形成されているが、それが1950年代以前の段階でプロプライエタリ・ゲーム批評コミュニティの発生に繋がった事例は現時点では確認できない。】
パズルは割と昔から美的に受容される対象になってるんですよね。典型的には日本の詰将棋なんかがそうで、1755年の作品集『将棋図巧』なんて「初代・伊藤看寿 作」ですよ。18世紀半ばの時点で既に作者名がある! 18世紀半ばったらルールブックを書く慣習すらほとんど無かった頃の話ですよあなた。びっくりですよねえ。
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キングス・ジレンマ第一印象 …それで何がそんなに好きなの?
http://toccobushi.exblog.jp/240434122/
2020-07-05T01:21:00+09:00
2020-07-16T10:16:55+09:00
2020-07-05T01:21:49+09:00
Taiju_SAWADA
感想・紹介
※この作品はキャンペーン方式を採用しており、「キャンペーンを通じて、各プレイヤーがそれぞれ1つの公爵家または侯爵家を担当。個々のセッションでは、その家に属する1人の人物としてプレイに参加する。1セッションは約1時間、15セッションくらい遊ぶことでキャンペーンのグランドフィナーレを迎える」という形になっているんですが、第3セッションあたりから入って6セッションほど遊ぶ、という、この作品のプレイとしてはだいぶ行儀の悪い入り方をしております。
さて、このメモにおいて、The King's Dilemmaに対してここまで「ゲーム」という単語を用いるのを避けてきました。というのは、この作品、いわゆるボードゲームではないんですね。イェスパー・ユール『ハーフリアル』をお読みの方であれば(読んでね!)、「古典的ゲームではない」という言い方のほうがわかりやすいかもしれません。ボードゲームっていうのはふつう、「勝ち」とか「負け」とか、「1位」や「3位」とかでもいいですけど、そういうものがあって、そうでなかったとしても点数みたいのがついてます。で、「勝ち」は「負け」よりも当然好ましく、あるいは点数制のゲームなら「プラス42点」は「プラス35点」よりも好ましいのであって、もちろんプレイヤーはより好ましいほうを目指してプレイするのが大前提になっています。
この作品はそうではありません。まず、最終的に自分が担当する公爵家または侯爵家が何をすれば「勝った」ことになるのかは、ある程度ほのめかされているものの、明示はされていません。というか、そもそも「勝ち」という概念があるのか自体、定かではありません。キャンペーンを通じたプレイ指針として、「セッション中にこの条件を達成すれば、次のセッションからはこの特殊能力が貰える」とか「【セッション中にこの条件を達成する】を3回やれば、家の《名声》値がこれだけ上がる」とかは用意されているものの、その《名声》値を上げることが何を意味するかは、担当する家についてのフレーバーテキストその他セッション毎に次々出てくるテキスト群から予想するしかありません(勝利条件の予想に必要なわけですから、これを「フレーバー」というのは本当は不適切ですね)。
一方で、セッションごとのプレイヤーキャラクターには、勝利条件が明白に設定されています。国のパラメータが「富」とか「軍事」とか6種類あって、セッション中あがったり下がったりするわけですが、最終的に「一定値《以上》になっているパラメータが1種類あるごとに得点」とか「一定値《以下》のパラメータが1種類あるごとに得点」みたいな感じに得点条件が設定されているキャラクターカードが6枚あり、ここから『フェレータ』とか『あやつり人形』みたいな感じで各プレイヤーがそれぞれこれを1枚受け取ってセッションを始める形になります。そしてセッション終了時には各自そのキャラクターカードの条件に従って得点精算を行い、最も得点の高いプレイヤーの家は《名声》値がこれだけ上がり、二番手のプレイヤーの家はこれだけ、みたいなことをやります。
ならばとりあえずセッションではそのキャラクターになるわけだからその勝利条件でやればいいのか、というと、もちろんそうしたっていいんですが、そうしない理由もいくらでも見つかります。まず何より、キャラクターカードの勝利条件と、担当する家の方向性とは、必ずしも一致しません。なにせ家は固定なのにキャラクターカードの選択は『フェレータ』式ですから。いや家の勝利条件は明示されてはいませんが、それでもプレイ指針はありますし、フレーバーからも推測はできるわけで。加えて、このキャラクターカードなるもの、テキストによるフレーバーがほとんど付いていません。プレイヤーが担当する公/侯爵家にはキャンペーン開始時に名前を付けることが義務づけられるのに対して、キャラクター個人には固有名すら与えられません。The King's Dilemmaにおいてフレーバーが付かないというのは、そのまま「重視しなくてもよいもの」ということを意味しています。つまりここでは、ボードやチットやカードがいっぱい入った「ボードゲーム」としての見た目との関連では最も重視されるべき(かつ一応ルール上もそのようには扱われている)セッション毎の勝利条件に、同時に「重視しなくてもよいもの」というラベルが貼られていることになります。
勝利条件が必ずしも重視されないということ自体は、パーティーゲームなどではよく見られることではあります。ですがほとんどの場合、その「重視されない」というのは、勝利を目指すという体裁をプレイヤー達が取りつづけることによって産まれる齟齬のおかしさを狙ったものだったり、あるいは単にゲームという体のために勝利条件が付いているものの実際にはそれよりも明白に重視されるべき目的が用意されているものだったりします。The King's Dilemmaはそのどちらにも当てはまりません。ここでは、プレイヤーに与えられる勝利条件/価値設定が混乱しており、それはもちろん意図的なデザイン…というか、このゲームの眼目になっています。
プレイヤーに与えられる勝利条件/価値設定がシステムにおいて意図的に曖昧にされている遊び、といえば、代表的なものとして思いつくのはもちろん卓上RPGです。実際、この作品をどのジャンルに結びつけるべきかと聞かれれば、とりあえずは卓上RPGとするのが妥当でしょう。ただし、これはもちろん典型的なRPGではありません。典型的なRPGというのは、Role-playingの名の通り役割演技を行うもので、さらに言えば、通常はその役割というのは個人、つまりキャラクターです。キャラクターとプレイヤーの間に距離を取らせる、つまり例えば「キャラクター自身の損得や感情よりも作劇上の要請をプレイヤーは優先すべき」と明白に掲げるRPGってだけでも割と少数派ですが、その個としてのプレイヤーキャラクターそのものが曖昧にされているとなると、これはかなり特殊なRPGだということになります(実のところボードゲームではごく普通のことだとは言えるんですが、ボードゲームの場合は意図的にやってるわけではないです)。RPGを構成する諸々の要素のうちの何かを再検討し、それを極端に強調したり逆に取り外してみたり別の物に置き換えたりする、というのは、卓上RPGの中でもメインストリームではなくインディペンデントに出版されている作品に見られる特徴で、なのでそういう作品は「インディペンデントRPG」と呼ばれることもあります(絵画のモダニズムに引っかけて「モダンRPG」のほうが適切な名称じゃないかと思いますが)。
The King's Dilemmaを気に入ったのは、まず第一にはこの点です。これは別に良し悪しの話ではなくて単に好き嫌いのレベルのことなんですけど、わたくし卓上RPGが基本的には好きなんですが、プレイヤーキャラクターがプレイヤー…っていうかわたくし…にべたべたくっついてくることに嫌悪感をおぼえるタチで、これまでプレイヤーとプレイヤーキャラクターの間に距離がある作品ばっかり遊んでたんですね(それこそ『パラノイア』とか)。そこいくとThe King's Dilemmaの場合は、自分が誰であるのか、名前すら決まっていないわけですから、意思決定以外の点ではほとんど負荷を感じることなくリラックスして遊ぶことができます。
距離のおかげでリラックスして遊べるというのは、ストーリーとプレイヤーとの距離、という点でも同じことが言えます。ほとんどの卓上RPGがストーリーをテリングするゲームでもあるように、The King's Dilemmaも当然、ごりごりのストーリーテリングゲームではあります(この作品の惹句で「大量の封筒に大量のカードが入った《レガシー》スタイルのゲーム」というのがありますが、この大量に入ったカードというのは要するにRPGで言うシナリオが書かれたテキストで、レガシーというのは適切な表現ではなく、単にゲームマスター無しでキャンペーンシナリオ的なことをやるので先がわからないようにシナリオ分岐ごとに別の袋にシナリオカードを入れてるだけです)。ただ、そのストーリーの提示の方法が、フィクション上の構造としてもシステム上の構造としても少々独特です。まずフィクション上の構造ですが、プレイヤーキャラクターは全員、国の王を補佐する宮廷メンバーで、次々に持ち込まれてくる下々のよしなしごと…おおごとになる場合も往々にしてありますが…に対し、こうすべきかああすべきかの2択を協議と交渉と投票で決める、でもって結果を眺める、それだけです。要は、プレイヤーキャラクター達は、それが誰であれ、現場にはいないんです。どっちにしろ自分が直ちに死ぬわけではなく、そもそも合議で国としての意思決定を行うのであって、自分に意思決定の全責任が直ちに襲いかかるわけでもない。そしてシステム上の構造ですが、宮廷は1つの太いシナリオに対してだけ対処しているわけではなく、複数のシナリオが同時並行的にやってきます。で、その同時並行性がどう表されているかというと、何枚もあるシナリオカードがシャッフルされてデッキになり、毎ターン、1枚ずつ上からめくられる、という形になっています。あるターンに隣国の王位継承に干渉するか否かの深刻な意思決定を強いられたかと思えば、次のターンには海洋冒険家に投資するか否か、みたいな全然関係無い話がでてきて、ひとつの案件に没入できないようになってるんですね。
いや距離感はいいんだけどさ、ストーリーテリングゲームでそんな感情移入できない仕組みになってるんだったらどこを遊びどころと考えればいいわけ? という真っ当な疑問に対しては、2つの回答が用意されています。まず1点目、シナリオは刺激的で面白いです。いや別に、小説や戯曲として成立するとか言いたいわけじゃなくて、宮廷メンバーの意思決定の議題として妥当なヘヴィネスと対立があり、意思決定の結果の転がり方も意外性と納得感と酷薄さがちょうど良い案配でミックスされていて、この話どうなるのかな/俺はどうしたいのかな、とプレイヤーの興味を持続させるのに充分だ、ということです(ところで俺『パンデミック・レガシー シーズン1』を10月で中断したままなんですが、あれって最後の2ヶ月で話が面白くなったりしますか?)。もう1点が意思決定のための投票システムで、子細は省きますがこれが非常に良くできてます。The King's Dilemmaはボードゲームとして見れば投票ゲームのジャンルに属するもので、投票パワーを突っ込んだり金で他プレイヤーを買収したり、みたいなことをやるんですけど、パスと終了のルールにひねりがあるんで、多数派の形成に際して割と真面目に考えることが要求されます。それで、ここで頭を使って国を導きたい方向に導けると謎の充実感が湧いてきたり、あるいは競り負けて望まない意思決定が行われた結果として国が予想を遥かに上回る傾き方をしたりすると根拠のない義憤が吹き出てきたりします。
何より面白いのは、この情動には一切の根拠がないんです。
ここでやってることはボードゲーム的な手続きと意思決定からもたらされる情動かもしれないのですが、しかしそこに絶対に必要なはずの明瞭な勝利条件/価値設定は用意されていません。あるいは物語がプレイヤー自身の価値観をフックしているのかもしれませんが、それにしてはプレイヤーの情動を託すべきフィクション上のキャラクターの存在感はあまりにも希薄です。ここにあるのは何物としても成立しないはずのメカニズムとフィクションのキメラで、しかし間違いなく、これは遊びとして成立しています。
ボードゲームをデザインする中で、「何を削っても遊びとして成立するんだろうか」みたいなことを考えたことがあります。4Xゲームのルールのことあるごとに「この点については合議によって決める事」とだけ書かれていたら。精緻に組み上げられた文明発展ゲームに、勝利条件だけが欠けていたとしたら。こういう思考実験は無駄と言えば無駄なことかもしれませんが、しかし我々は既に、ウォーゲーマーが産んだ卓上RPGという巨大な実例を知っています。そうであるが故に、このような奇妙な構造で成立している謎のプレイシングを提出されると、受け取った側としてはこれを批評的実作と捉えて興奮せざるを得ないわけです。
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Eugen OkerのFür Spielerファーストシーズンだいたい全作品
http://toccobushi.exblog.jp/240266982/
2020-04-26T02:22:00+09:00
2020-04-26T10:38:31+09:00
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Taiju_SAWADA
雑題
なお、Die Zeitは現存する新聞で、しかも有料会員向けに古い記事のアーカイブを検索できるようにしてくれています。以下の情報は会員になって取得した記事に基づきます。
※(追記)Eugen Oker公式サイトの記述では1971年までとなっており、実際、1971年にも彼の筆によるFuer Spielerが1本、Fuer Spieler以外の記事が2本載っています。ちなみに、Fuer Spielerはその後(ファーストシーズン終了後から?)、連載というよりはDie Zeit誌のゲームレビューコラムのタイトルになっています。Bernward Tholeによるレビューが1973年に2本載っており(Tholeによれば投稿した文が載ったもので、ゲームレビュアーとしての彼の最初の文章とのことです)、またTom Werneckも1975年から1979年まで同紙で同名のゲームレビューを書いています。
1964, no.50
- Wer wird Meisterdetektiv? (Schmidt)
= Cluedo.
1964, no.51
- Die Schlacht am Metauro (Hausser)
= Batalla del Metauro. 1963年スペインのウォーゲーム. https://boardgamegeek.com/boardgame/14985/batalla-del-metauro
1965, no.03
- 7 neue Spiele (Otto Maier)
= 不明(オークションに出ているので写真はある)。
1965, no.05
- Jet + Boccia (Mieg)
= 不明(オークションに出ているので写真はある)。
人形に球をセットして転がし、目標の位置に近づけるタイプのゲーム。JetとBocciaの2つのルールがある模様。
1965, no.06
- Bus Stop (Noll)
= Peter Pallat(ドイツ人)による1964年のゲーム。
PallatのゲームはBGGにも10作程度登録されている。代表作はおそらくJungle(1981年。Spear's社)かScalino(1970年。後にAbacusから復刻)。
https://boardgamegeek.com/boardgame/94054/bus-stop
1965, no.07
- Memory (Ravensburger)
= 説明不要。
- Ecco
= 不明。出版社Abel-Klingerについては、BGGにも登録されているゲームが多数ある(後の号でも出てくる)。
1965, no.08
- Monopoly (Schmidt)
= 説明不要。
1965, no.09
- Scrabble (Spear's)
= 説明不要。
- Das Duden-Spiel (Otto Maier)
= 不明(オークションに出ているので写真はある)。
ワードゲーム。https://www.spiele4us.de/Otto-Maier-Verlag-Ravensburger/Gebrauchte-Gesellschaftsspiele-Grundschulalter-ab-6-7-8-oder-ab-9-Jahren/Das-Duden-Spiel-OMV-6203-gebraucht.html
1965, no.10
- Hans Gygax の絵本の紹介。ゲームではない。
1965, no.11
- Dot (Kleefeld)
= 1963年のゲーム。賽の目に従って盤上の色つきドットの間に線を引いていく。
Kleefeldは後のKlee(Kosmosにより吸収)。 https://boardgamegeek.com/boardgame/305269/dot
1965, no.13
- Öl für uns alle (Otto Maier)
= 1960年のゲーム。モノポリー式にぐるぐる回って石油掘り。 https://boardgamegeek.com/boardgame/12237/oil-great-adventure
1965, no.14
- Risiko (Schmidt)
= Risk.
1965, no.15
- Der Favorit (Franz Xaver Schmid)
= Der Ausreisser. 1989年版が有名だが元々は1963年仏Miro社のゲーム。
この1965年FX Schmid(まだ旧社名)版はBGGに登録されていない。 https://boardgamegeek.com/boardgame/923/breakaway-rider
1965, no.16
- Schöne alte Spiele (Otto Maier)
= 古い伝統ゲーム27種類の詰め合わせ。 1963年発売。 https://boardgamegeek.com/boardgame/12499/schone-alte-spiele
1965, no.17
- Mich laust der Affe (Abel Klinger)
= 1964年。動物が木に登るすごろく。通過した駒をスタート位置に戻せるとかなんとか https://boardgamegeek.com/boardgame/159875/mich-laust-der-affe
- Everest (Schmidt)
= 不明
1965, no.18
- Das Jagtspiel (Otto Maier)
= 1954年。サイコロを振って狩りにでかけるゲーム。 https://boardgamegeek.com/boardgame/25271/das-jagdspiel
1965, no.20
- Umleitung (Spear's)
= 車を走らせて目的地に行くゲーム。 https://boardgamegeek.com/boardgame/229189/umleitung
1965, no.21
- Reise in die Ewigkeit (Schmidt)
= このゲーム自体は不明。同名の20世紀初頭のゲームがあり、それはマンションオブハピネスみたいなゲーム。
1965, no.22
- Conference (Mieg)
= マンカラ的なやつ。 https://mancala.fandom.com/wiki/Weikersheim_mancala_boards
1965, no.23
- Carrera (Schmidt)
= ルーレットを回してカレラを進めるレースゲーム。 https://boardgamegeek.com/boardgame/157184/carrera
- Nürburgring (Schmidt)
= Formula-1. 1962年イギリス(ではなく本当は仏Miro社だったはず)の大変有名なゲーム。このドイツ版がいつ出たのかは不明。
- 1000 Kilometer (Franz Xaver Schmid)
= ミルボーンズ(1954年)。
1965, no.24
- Europareise (Otto Maier)
= 1954年。定められた目的地に諸々の交通手段を駆使して辿り着く、うっすらエルフェンランドみのあるゲーム。
https://boardgamegeek.com/boardgame/2484/explore-europe
1965, no.25
- Stratego (Jumbo)
= 説明不要。
1965, no.26
- Mah Jongg (Schmidt)
= 説明不要。
1965, no.27
- Die große Auktion (Otto Maier)
= 1959年。偽物とか状態の悪い物を掴まされることがあるオークション&交渉ゲーム。
https://boardgamegeek.com/boardgame/6789/die-grosse-auktion
- Glocke und Hammer (Hausser)
= たぶん19世紀のギャンブルゲーム。https://boardgamegeek.com/boardgame/18254/bell-and-hammer
1965, no.28
- Karriere (Schmidt)
= Careers. 1955年。
- Wild Life
= 似た名前のゲームが同時期に複数あるけどたぶんラベンスのこれ⇒ https://boardgamegeek.com/boardgame/2311/wild-life
- Moby Dick
= 1962年ラベンスバーガー。https://boardgamegeek.com/boardgame/22982/moby-dick-das-spiel-vom-weissen-wal
- Warum (Otto Maier)
= 1958年。MBのゲーム。https://boardgamegeek.com/boardgame/2487/why
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百質3rd
http://toccobushi.exblog.jp/239551609/
2019-09-09T01:30:00+09:00
2019-09-09T01:30:33+09:00
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Taiju_SAWADA
うわごと
https://tantramachine.hatenablog.com/entry/20190904/1567599483
Q1 ボドゲ歴は何年ですか?
カテゴリ自体に注目して遊ぶようになってからなら20年くらい。
Q2 初めて遊んだボードゲームは何ですか?
カテゴリ自体に注目するきっかけになったボードゲームならたぶん「エントデッカー」。
そうでなければ「モノポリー」じゃないかと。
Q3 誰とボードゲームを遊ぶ事が多いですか?
最近はクローズドで近しい人達と遊ぶことが多いです。
Q4 どこでボードゲームを遊ぶことが多いですか?
立川B2FGames。
Q5 どれくらいの頻度でボードゲームで遊びますか?
月2回くらい?
Q6 ボードゲームはいくつくらい持っていますか?
たぶん大箱100ちょっとくらい?
Q7 あなたのベストボードゲームは?
一作だけなら「モダンアート」
Q8 好きなゲームデザイナーは誰?
カサソラ=メルクル, マック・ゲルツ、クリスティアン・アムンゼン・オストビー(でいいのかな発音)、
ライナー・クニツィア、クラウス・トイバーなど
Q9 嫌いな(苦手な)ゲームデザイナーは?
とりあえずアレクサンダー・プフィスター。
Q10 好きなメカニクスは?
オークション。交渉も割とすき
Q11 苦手/嫌いなメカニクスは?
メカニクスのレベルでは嫌いというほどのものはないです。
ポイントサラダは嫌いですが、メカニクスとはちょっと違うものだし。
Q12 好きなボードゲームのテーマ/モチーフ/世界観は?
特にないっす
Q13 嫌いな/避けてしまうボードゲームのテーマ/モチーフ/世界観は?
強いて挙げれば植民もの。往々にして対象に対するデリカシーの欠如が見られるため。
でも「避けてしまう」というほどのものでは全くないです。
Q14 人気あるけど好きじゃないゲームはありますか?
好きじゃない、というか、全く評価できないゲームが山ほどあります。例えばQ9参照。
「人気があり、たぶん良く出来ていると思われるが、好きとは言えない」ゲーム、となるとちょっと難しくて、うーん、「1830」とか?
Q15 お世辞にも面白いとは言えない/あからさまな欠点がある/万人受けするとは言えないけど、好きなゲームありますか?
「(例えば作品の成立を危うくする傷があるために)高い評価は出せないが好きなゲーム」は、無い、またはすぐには思いつかないです。大概は留保を付けつつ高く評価しちゃうので。
「高く評価しているが万人受けはまあしないだろうゲーム」なら、例えばグレートジンバブエとか。
Q16 好きだけど持ってないゲームありますか?
好きの程度によりますが、本当に好きなもので、多少の金で解決できるものについては解決してきてます。
Q17 好きじゃないけど持っているゲームありますか?
敢えて言えば「1830」かなあ。後で手離す気がする
Q18 好きなアートワークのボードゲームは?
「エルフェンランド」
Q19 ボードゲームのアートワークやコンポーネントをどの程度重視していますか?
それほどは重視しません。
Q20 オサレな見た目のボードゲームは好きですか?
どういうものを指して言っているのかにもよりますが、少なくとも嫌いってことはないです。
「エルフェンランド」は含まれますか? ゲーム自体も割と好きです。
「タイムストーリーズ」の箱表も好きです…が、あれ箱裏やボードまでクオリティを維持できてないですよね。なおゲーム自体は全く評価に値しません。
TANSANFABRIKが「ルールの達人」や「Nage x Nage Portside YOKOHAMA」でやったインスパイアードフロム鈴木英人&永井博も良かったと思います。
Q21 お気に入りのボドゲグッズ、教えてください。
特にないです
Q22 TRPGゲーマーですか? もしくは経験者ですか?
経験者です。いまは誘われればNo-GM/No-Prep物をやります程度ですけど
Q23 TCGゲーマーですか? もしくは経験者ですか?
中3~高1の時に半年~1年間くらいだけMTGをプレイしていたことがあります。Fallen Empire - Ice Ageくらいの時期。
Q24 ソシャゲをプレイしますか?
ほぼしません。いちばん長くやってたもので「ゴシックは魔法乙女」を半年間くらい。
Q25 アニメやマンガ、コンシューマーゲームなどを好みますか?
漫画は嫌いではなく時々読みです。
アニメも別に嫌いではないですがあまり観ません。アニメがどうというより劇映画もドラマもほぼ見ないし観劇もしないので。
昔はコンシューマーゲームについてははっきりと「好みます」だったんですが、最近はそう言えるほどやってません。3D酔いというものがあってですね…
Q26 ぶっちゃけオタクですか?
定義によります。個人的には、2019年現在「オタク」という言葉は意味をほとんど失っていると考えています。
Q27 同人ゲーム買いますか?
時折は。
Q28 国産ゲーム買いますか?
時々は。
Q29 KickStarterでKickします/しましたか?
ごく稀に。Keyperとか。
Q30 米アマゾン、独アマゾンを使ってボードゲームを輸入したことがありますか?
Amazonに限らなければいくらでもやってますが、米or独Amazon限定となると、あるにはあります程度。
Q31 ゲームマーケットに行ったことはありますか?
あります
Q32 ボドゲカフェに行きますか? 行く人はお気に入りのお店ありますか?
行ったことはあります、くらい。
Q33 ゲーム会に参加するならオープン派、クローズ派?
近しい人々がどこか一カ所に集まってゲームするのを「クローズドのゲーム会」と呼ぶのであればクローズ派ではあります。
でもそういう質問じゃないですよねこれ。「ゲーム会を運営するならオープン派、クローズ派?」なら分かるんだけど…
Q34 実は本名を知らないけどよく遊ぶボドゲ友達がいますか?
本名を知ってるはずだが忘れたままになってる人、ならいっぱいいます。
本当に一回も聞いたことがない、となると、一応いることはいるかな、くらい。
Q35 ボドゲのジャケ買いします/したことありますか?
「タイムストーリーズ」とか。本当に後悔した
Q36 初心者相手のツカミに絶対ウケる! キラーコンテンツ的なボドゲはこれ、というものはありますか?
無い…というか、そういう意味での「初心者」という集団が存在するとも思えません。
Q37 ボドゲ未経験の初心者(ゲームを普段遊ばない人)にボドゲを遊んで貰うなら、どういうラインナップで攻めますか?
それゲームしなきゃ駄目すか? 基本ゲームじゃない話をしたほうがいいと思いますが、
例外的に、向こうが「男もすなるゲームといふものを、我もしてみむとするなり」的な関心を気まぐれで持ったんだとすれば、
…それでも向こうがどんな人かで全然話が違うと思いますが…「ファブフィブ」「髑髏と薔薇」とか?
Q38 ボドゲ未経験の初心者(ボドゲ以外のゲームは遊ぶ人)にボドゲを遊んで貰うなら、どういうラインナップで攻めますか?
「ドミニオン」「ハイソサエティ」
Q39 どういうルートでボードゲームを購入する事が多いですか?
テンデイズゲームズで買うことが多いです。あとはeBayとか。
Q40 中古ゲームの購入に抵抗はありますか?
全くありません
Q41 遊ばないゲームを手放したことがありますか?
始終手放してます
Q42 スリーブ入れる派? 入れない派?
入れない派閥
Q43 アメ(リカン)トラ(ッシュ)派? ユーロ派?
90sユーロ派
Q44 日本以外のアジアのボードゲームに関心ありますか? 買ったり遊んだりしていますか?
あります。北京のDICE CONとか高雄の月光卓游節とか行ったりしました。「ポンジスキーム」最高
Q45 レガシー系ゲームで遊んだことはありますか? また、レガシー系ゲームは好きですか?
「パンデミックレガシー」が10月で止まったままです。
やりたいことはわかるし、未來がありうるジャンルだとも思いますが…
Q46 人狼やごいたなど(あくまでも例です)の、チーム戦のゲームは好きですか?
あんま好みません。チーム戦であることよりも「2チーム戦」であることが嫌なのかも。
Q47 一対多、一対一の陣営非対称ゲームは好きですか?
あんま好みません。これも「2陣営戦」が嫌なんでしょう。
Q48 マーダーミステリーを遊んだことはありますか?
ないです。あそびたい。
Q49 謎解きや脱出ゲームを遊びますか?
誘われれば遊びます程度ですが、「Escape from the RED ROOM」はとても良かったです。お勧め。
Q50 萌え絵のボードゲームは持ってますか? 萌えっぽい絵のボードゲームを購入するのに抵抗はありますか?
買ったことは結構あります。前述の通りひっきりなしに手放すので、いま持ってるものがあるかどうかは定かではありません。
そういう様式の絵であること自体には抵抗はないですが、絵柄が統一されていなかったり、
ゲームのキャラクターや想定TPOと合わなかったりするものが時折目に付いて、それは割と嫌です。
(具体的に言うと「プリンセスワンダー」がかなり嫌でした。みんな忘れてると思いますが「ラブレター」の最初の商業パッケージだったんです)
Q51 海外のボードゲームによくある「エセジャパン」的な世界観のゲームをどう思いますか?
全然OK…なんですが、鷹揚に構えてたらSuperdryがついったで図に乗った事を抜かしてて大変むかついたので、
怒ったふりくらいはしておいたほうがいいのかな、とも思っています
Q52 BGGのアカウントを持っていますか? 普段からBGGを見て/利用していますか?
持ってます。ときどき見てます。メインの利用方法は英語ルールのダウンロードとGeekmarket。
Q53 ボドゲーマのアカウントを持っていますか? 普段からボドゲーマを見て/利用していますか?
持ってません。意識的には見てませんが、避けているわけではないので、見たいゲームの検索で引っかかれば見ます。
Q54 ゲムマ以外のボドゲフリマなどの即売会イベントに参加した事がありますか?
DICE CONや月光卓游節、あとエッセンのSpielも即売会イベントなので、その意味ではYESです。
日本の同人ゲームを含む即売会は、どうだったか記憶に無いです。一回くらいはあったような気もする
Q55 プレイヤーのマイ担当カラーを決めていますか? 決めている人は何色ですか?
決めてません
Q56 トリックテイキングは好きですか? 好きな人はメイフォローとマストフォローどちらが好きですか?
特別好きってことは無いですが、普通に遊びます。メイフォローはトリックテイキングではありませんよ…と言いたいところですが、
「知略悪略」とか嫌いではないです。でもまあ普通にマストフォロー派。
Q57 トランプゲームで遊びますか?
誘われれば遊びます。
Q58 ワードゲームは好きですか? また、得意ですか?
好きでも嫌いでも無いですが、「LINQ」はかなり高く買ってます。
「デクリプト」も(ちょっと「LINQ」に似すぎてる気はしますが)良かったですね。
ワードゲームであることによって要求されるスキルが一意に決まるわけでは全くないので、それだけでは得意とも不得意とも。
Q59 大喜利ゲームは好きですか?
このジャンル出来の悪いのがあまりに多くないですかね? それとも今は違う?
Q60 協力ゲームは好きですか?
ジャンル全体としてはそんな好きではないです。作るの難しいジャンルだと思いますよ。
個別のタイトルで高く評価しているのは「エスケープ」「スペースアラート」「ザ・ゲーム」など。
Q61 バランスゲームは好きですか?
割とすき
Q62 紙ペンゲームは好きですか?
これも何か狙いを持ってゲーム作るのが難しいジャンルじゃないでしょうか。
個別には「DOODLE CITY」とか高く評価しているゲームはあります。
Q63 ダイスゲームは好きですか?
これはさすがにちょっと指し示している対象が広すぎませんか。
Q64 ゲームにおける運要素の比率はどれくらいがベストだと思いますか?
運100のものは別ジャンルなのでプレイや評価の対象と見なしませんが、
そうでなければゲームにおける狙いとの兼ね合いで個別に決まるものなので、一般論としてどれくらいがベストというのはないです
Q65 アプリ連動型のボードゲームは遊びますか? また、これらをアナログゲームだと言えると思いますか?
実例としてそれほど遊んだことはないですが、特段避けたり好んだりはしません。
デジタル表示の秤を使ったゲームを作ったことがありますが、そういうものの一種と考えるべきでしょう。
「ソビエトキッチン」なんかはアプリを使うことで成立するアナログゲームと言えるんじゃないでしょうか。
Q66 軽ゲー派? 重ゲー派? 中量級?
中量級。
Q67 2時間以上の重量級ゲームでよく遊びますか?
わりあい遊びます
Q68 あなたのスマホ/タブレット/PCにはボドゲアプリがインストールされていますか?
いまはされてません
Q69 有名/定番タイトルなのに、遊んだことがないゲームはありますか?
いっぱいあります。「スコードリーダー」とかやったこと無いし。
自分のジャンル(つまりユーロゲーム)に限っても、毎シーズン、結局遊ばなかったゲームが大量に発生します。
後の設問で出てきますが、赤ポーンのゲームで遊んでないのが10作近くあります
Q70 日本語版を是非出して欲しいと思うゲームはありますか?
「出して欲しい」と無邪気に言える立場でもないのでパス
Q71 海外ゲームのゲームメーカーによる邦訳の誤訳が気になる/許せない方ですか? また、メーカーのエラッタページはチェックしますか?
石を投げられる側の立場なのでパス
Q72 海外と日本版でアートワークなどが変わるのは気になる/許せませんか?
これも同じ理由でパス。つっても翻訳と違ってアートワークまたはそのディレクションに関ったゲームっていくつもないですけど
Q73 同じ内容のゲームでも、アートワークが変わっ(て、それが好みの絵だっ)たら買いますか?
買って古いのを手放したりします
Q74 リメイク前のゲームを持っていても、リメイクされたらリメイク版も買いますか?
リメイクの内容次第。
Q75 海外の未翻訳ゲームを自力で翻訳して遊んだことがありますか?
はい
Q76 レビューや意見、ゲームの考察などで参考にしているボードゲーム関係の個人はいますか?
参考にしている、程度ならいっぱいいます
Q77 ここで(この)ゲームをやってみたいという場所、ありますか?(実現可能性はおいとく)
ケイラスで「ケイラス」みたいなべたなやつ。ありますあります。
「K2」だと実現する遥か手前で確実に死んじゃうのであれですが。
Q78 この人にボードゲームのマンガを描いて欲しいというマンガ家がいますか?
林正之を現世に呼び戻してください
Q79 ボードゲーム関連の動画を見ますか? お気に入りの動画があったら教えてください。
テンデイズTVを時折見る程度
Q80 ボドゲのポッドキャストを聞きますか? お気に入りがあれば教えてください。
テンデイズラジオを時折見る程度。
ボードゲーム読書会@高田馬場もボードゲームのポッドキャストと強弁できなくもないですが…
Q81 この人とボードゲームを遊んでみたい、この人にボードゲームを遊んで欲しいという人は?(故人、非実在人物、ゲーム業界の人でなくても可)
シド・サクソン、ジョージ・パーカー(とゲームしてみたくない人なんていないでしょうけど)。
Q82 「おじさんがパッケージのボドゲは面白い」という法則を知っていますか? また、真実だと思いますか?
知らないです。真実だと思える理由がどこにあるのか
Q83 好きな(これくらいの規模で遊びたい、という)プレイ人数は?
ゲームによりますが、4-5人くらいかなー
Q84 お泊まりボドゲ会を開催したり、参加したことはありますか?
あります
Q85 ぶっちゃけ、クニツィアディレンマって言う? 言わない?
「クニツィアが一時期の作品でよく使っていたゲーム理論周辺的なジレンマ」みたいなことは割と言いますが、
こういうことを言いたい時は大抵「ゲーム理論周辺的な」に重きを置いているので(だいたい例として「ラストパラダイス」の話をする)、
一言で「クニツィアディレンマ」と言うことはないです。
Q86 リボーク、ミゼール、ディール、ラフ、ディスカード、全部分かる? 普段から使う?
全部分かりますが、ミゼールは(あんまりやらないので)使わないです。
Q87 上家、下家、対面、先ヅモ、ベタオリ、全部分かる? 普段から使う?
先ヅモ以外は使います。
Q88 ゲーム中に交渉要素のないゲームで、口プロレス(はったりを仕掛けたり相手を誘導するような発言)はする方ですか?
それほどはしない方です。ただし、そのようなことを好まない、という意味ではまったくありません。
そもそも、本来3人以上で遊ぶゲームにおいて「ゲーム中に交渉要素のない」と簡単に言い切れるものではないはずです。
Q89 同席相手がプレイングに悩んでいる際に、求められていなくてもアドバイスしてしまう方ですか?
前問のような意味を込めて何か言うことはよくあります。
そういう意図のない純粋なアドバイスは、相手が悩んでいるときはそれほどしません。するのは相手が何か見落としていそうな時とか。
Q90 ボードゲームを遊ぶ時、ハウスルールを導入したことがありますか?
あります
Q91 ゲームの拡張は買う方ですか? 買った拡張を入れて遊ぶ頻度はどれくらいですか?
買わないほう(ただし「エルグランデ」には可能な限り「K&I」を入れます)
Q92 赤ポーン(ドイツゲーム大賞受賞作)のゲームは何作くらい遊んでいますか? あなたにとって赤ポーンは意味があるモノですか?
いま数えてみたら32/41作。2010年代以降意味を失っています
Q93 ゲームマーケット大賞の受賞作を何作くらい遊んでいますか? あなたにとってゲームマーケット大賞は意味があるモノですか?
遊んだのが2/4作(あと買ったまま積んであるのが1作)。現時点では意味のあるものではありません。
Q94 どれくらい積みゲーしてますか?
20か30くらい…だと思いますが…
Q95 仲の良い知り合いに頼まれても絶対やらないレベルのNfMゲームありますか?
私は「Not for me」という言葉を作品に対する強くネガティブな評価の婉曲表現として使うことはないので、
言葉通りには「絶対やらないレベルのNfMゲーム」という状況は発生しづらいのですが(敢えて言えばスポーツがこれにあたります)、
「絶対やらないレベルでネガティブな評価をしているゲーム」ならいっぱいあります。
Q96 同じゲームを何度も遊ぶ方?
どっちかといえば遊ばないほう。
Q97 入手が難しいが欲しいゲームありますか?
あらかた入手したので、いまはもうそんなにはないです。
Q98 長考する方ですか? 他人の長考は気になりますか?
するほう。気にしないほう。
Q99 ボードゲーム以外の趣味は何ですか?
りょこうにいったりおいしいものをたべたり
Q100 最後に、あなたにとってのボードゲームは、何ですか?
趣味のひとつ…で済ませるには最近おおごとになってきてる感じがしますが
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A Gamut of Games / シド・サクソンのゲーム大全に関する宣伝文のようなものその他
http://toccobushi.exblog.jp/238032162/
2017-11-29T23:58:00+09:00
2017-12-05T21:24:01+09:00
2017-11-29T23:58:35+09:00
Taiju_SAWADA
感想・紹介
原著は1969年に初版が発売された、基本的にはゲームのルール集です。シド・サクソンとゆかいな仲間たちが寄ってたかって作り上げた38作が詰まっております。それだけと言ってしまえばそれだけなんですが、ただそれだけだとサイエンティフィック・アメリカン誌の書評で「ゲームと数学的娯楽、双方の分野の文献における真の画期的事件だ」とまで書かれた理由も(ちなみに書いたのはマーチン・ガードナーです)、米国が誇る国立遊戯博物館 The Strong National Museum of Playの博物館ブログで「(2016年)現在でもなお、学者や重篤なゲームプレイヤーにとってマストハブと見なされている」と記されている理由も分かりません。
38個のゲームの平均的な品質が高い。というのは、まあ間違いないところでしょう。後に1982年1981年(20171205 Typo修正)ドイツ・ゲーム・オブ・ザ・イヤーを獲った「フォーカス」、「Choice」の名で製品化されたダイスゲームのクラシック「ソリティア・ダイス」(例えばクニツィアの「ロストシティ」がこのゲームの影響を受けてないと言ったらどう考えても嘘でしょう)、比類無き多人数パーティゲームとして特に名高い「ハグル」など、いまでも名前が失われていない重要なゲームがいくつも載っています。後世の人間である我々の目から見れば品質の高さも当然と言って良く、何しろ主著者がシド・サクソン、ゆかいな仲間たちというのはアレックス・ランドルフにジェームズ・ダニガンに…、と、つまりここにいるのは商業ホビーゲームというものを成立させた人々そのものなわけですから。
そして商業ホビーゲームというものが確立した後の世界で遊ぶ我々にとって、この本が重要なものである更に大きな理由がそこにあります。この本には、そうしたゲームの世界がどのような雰囲気の中でつくられたのか、その空気が保存されているんです。A Gamut of Gamesはルール集としては独特な構成が取られており、どのルールについても、最初に1~2頁程度、「ポーカーって最近ラミーに押されてあまり流行ってないよね」「結婚旅行でヨーロッパ行ったんだけど、ゲーム屋ばっか巡っててさあ」「モノポリーには実際のところ先行作で《地主ゲーム》というのがあってね」みたいな枕が挟まれています。この枕の記述から、ここに載った重要なゲームが何を源流として作られているのか、当時の世の中でゲームというのはどういうものだったのか、諸々を知ることができるのですが、特筆すべきはゲスト作者を紹介する際のサクソンの文章です。商業ホビーゲームはコミュニティをベースとして成立した文化である、というのは他のいくつかの本の記述からも分かることですが(例えば「Playing at the World」「Eurogames」など)、この人はこういうバックグラウンドを持っている人で、こういう形でゲーム仲間として関わってて、と書くサクソンの記述から、この文化の、とりわけ後にドイツゲーム/ユーロゲームまで繋がった部分を担ったコミュニティの内実がどのようなものであったのかが窺うことができるわけです。
加えて、巻末付録に添えられている「1969年/1982年時点で発売中の主要なゲーム各々に対する、シド・サクソンの一言紹介」は、当時のゲーム出版状況を知る上で、これ単体でもちょっとしたものでしょう。また、1982年版と1992年版の序文(どちらも訳出されています)に書かれた仲間達の消息、そしてその序文を「1982年は私が考えるシリアスなゲームの黄金期が終わりを告げた年だった」と締める彼のビターな筆致から、あらゆるコミュニティとあらゆる文化に訪れるであろう結末を思うこともできるかもしれません。
今回の日本語版は、そのユーロゲームまで繋がる流れの起点である3Mブックシェルフシリーズを意識した、函入ハードカバー装となっています(アイデアはタチキタプリントの西山昭憲、実装と函表イラストはNGO社インハウスのデザイナーである西村優子)。装丁にコストを突っ込み過ぎたせいもあり、お値段が4630円+税と少々張るものになっておりますが、そのぶん手元に置いておきたいだけの官能性を持ったものに仕上がっていますので、ご興味のある方は是非お手にとっていただければと思います。
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ここからは宣伝とは全く関係の無い、ちょっとした成り行きの話を。
わたくしにとっては、この企画のそもそもの始まりは2014年初まで遡ります。当時のわたくしは「パラノイア【トラブルシューターズ】」の翻訳権がほぼ取れるだろうことが内定したというくらいの状況で、毎日会社から帰っては翻訳を進めつつ、ついったなどで「翻訳を進めてる本があって、もうすぐ発表できます」みたいな事を述べたりしておりました。そうすると2月の11日、Boardgamegeek の geekmail に竹田原裕介さんという方からのメールがあり、その中身は「その翻訳を進めてる本というのはSid Sackson "A Gamut of Games"だったりしますか?」という内容のものでした。この時点で既に竹田原さんは全文の翻訳の初稿を個人的に上げていて、「翻訳がバッティングしていたらどうしようか」という趣旨からの問い合わせだったんですね。で、そのときは、いや今こっちで翻訳してるのはRPGなんでバッティングはしてないです、A Gamut of Gamesの翻訳なら俺は読みたいし仮に電子書籍で出すなら5000円くらいの値付けであれば高いとは思わないですよ、くらいのことを返しただけでおしまいだったんですが、そこから1年半くらい経って、そういえばあの話どうなったんだろう、版権交渉が難航してるなら十年留保使って出しちゃってもいいんではないすか、みたいな気持ちでメールを出してみたところ、「図版を色々載せたいので(十年留保は図版には適用されません)やっぱり出版社と交渉しようかと」との返信をいただき、交渉ごとで何か面倒があったらご連絡もらえればサポートしますよー、と返して、これもここでおしまいになりました。
それから数ヶ月。竹田原さんから再びご連絡をいただいたのは2016年の3月末でした。ええと、そのー、何か面倒があったわけですね。子細は省きますが、トラブルということでは全くなく、単純に果てしなく、やってらんないくらい面倒なプロセスがあったんです。それで、(BGGを見ていなかったのでだいぶ返信が遅れてしまったんですが)ああ、これはサポートしたほうがいいですね、差し支えなければこちらで出版する形をとりましょうか、ということで、企画がわたくしの手持ちになったのが6月のこと。ニューゲームズオーダー社に企画持ってったらファンディングしてもらえることになったので、じゃあ版権交渉を片付けましょうか、と先方(Dover社)に連絡をして……連絡をして……連絡をして……
気がつくと町にはトナカイとシュトーレンが溢れていたのです。途中で向こうの担当者が会社辞めたおかげで一時期は完全な連絡不能状態になったり、まあ思い出したくもない様々な形態の待ちぼうけがあったのですが、最終的にはこちらのうざいプッシュの束に折れた向こうが翻訳エージェント(日本ユニエージェンシー)を立ててくれたおかげで話がスムーズにまとまるようになり、ようやく契約に漕ぎ着けました。
何しろ原稿は2014年2月の段階で初稿が上がっているわけですから、そちらのほうは(わたくしとInDesign CCの素晴らしい連携により、修正したはずのレイアウトずれが三倍になって返ってくるなどの諸々の失態を重ねながらも)順調に進み、装丁の方もハードカバー版を出したいという竹田原さんのご希望(原著も今はペーパーバックですが初版はハードカバーだったんです)に沿って愛蔵版のハードカバーと普及版の電子書籍と……みたいなプランで進めていたところ、契約に盛り込まれていたはずの電子書籍出版の権利が諸事情によりキャンセルにされて我々とエージェントの方が一緒にうんざりする事態が発生し、急遽実施されたニウゲームズオーダー井戸端会議、そんならもう仕方ないから凝るだけ凝った装丁の函装上製本一本で行こうぜという結論になり、函入ハードカバーのコストの高さと納期の長さに戦きつつもなんとか昨日11月28日に刷り上がったわけでございます。間に合った!
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最後に。図版はDover版と同様、シド・サクソン自身の手書きをスキャンしたものを用いています。製作側としては、印刷に耐えるクオリティのものにならないかもしれないという心配があり、当初はAdobe Illustratorで描き直す方向で考えていたのですが、やはり上記のようなこの本の特性を鑑みてハンドドローイングを用いるべき、という竹田原さんのご意向を受け、元の版と同じものに戻しました。どれくらいのクオリティで出来てくるものか100%の確信が持てず、刷り上がった本の頁を開くのはちょっとしたスリルでしたが……これならOKだと思います印刷屋さんありがとう! というわけで楽しんでね!
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たらちねの母、フィードバックの遅れ
http://toccobushi.exblog.jp/237750575/
2017-09-14T23:52:00+09:00
2017-09-16T11:37:52+09:00
2017-09-14T23:52:56+09:00
Taiju_SAWADA
うわごと
《以下で説明するのは、知ってる人にとっては「なんで今更そんな基本的かつトリビアルなことを大事なこと風に書いてるんですか」ということでもあるんですけど。でも「ルールズ・オブ・プレイ」がわざわざ書いていて、しかも書き漏らしている以上、やっぱり大事なことだし書いておかなければいけないんじゃないかな、と。》
とりあえず、まずはお手元の「ルールズ・オブ・プレイ(上巻)」18章「サイバネティックシステムとしてのゲーム」を開いてください。この章のトピックは下記の四つとなっております。
・サイバネティックなフィードバックループ
・正のフィードバック
・負のフィードバック
・動的な難易度調整
サイバネティクスといってもここで触れているのはフィードバックループの話だけなので(最後の「動的な難易度調整」というのもフィードバックの概念を難易度調整に適用する話なので、結局同じ事です)、別にサイバネティクスじゃなくて制御工学でも全然構わないんですが(※)、それはそれとして。
負のフィードバック(ループ)というのは、同書の例をそのまま使うと、センサーで部屋の温度を拾って、設定温度と比較して、その差が無くなるような形で温風ないし冷風を吹く、で部屋の温度が変わるので、またその変わった温度をセンサーで拾って、というもので、これを繰り返していくと、基本的には、部屋の温度と設定された温度に差が無くなり、その状態が保たれるようになります。差を減らすようにするので「負の(ネガティブ)」と呼びます。逆に「正の(ポジティブ)」フィードバックだと、設定温度との差が広がるように温風なり冷風が出てくることになります(このへんでエアコンのたとえに無理がでてくる)。
ルールズ・オブ・プレイでは、プレイヤー間の差を埋めるような形でネガティブフィードバックを使い、ゲームを収束させるためにポジティブフィードバックを使う、あとは難易度調整のために色々と、くらいの話をして終わってしまうので、うんまあそれはそうよね、以上の感想を抱きづらいと思います。ですが、ここでは書いていない重要なことが一点ありまして。フィードバックループの話をするときは、必ず「遅延」の話をセットでしないといけないんです。
遅延、または遅れの話は制御工学の教科書には必ずみっちり書いてあるので、詳細はそっちを読んでもらうとして、この話の文脈で必要なぶんだけ書くとですね、まず部屋の温度が下がったのをセンサーが感知するのも一瞬とは言えず(やっぱり例に無理が…)、さらに冷風を吹いてもすぐにびたっと適温まで下がるわけじゃなくて(そうだったらループなんていらないですよね)、まあ時間がかるわけです。さらにセンサーがぽんこつだったりすると(諦めて恣意的な状況設定に変えました)、ちゃんと冷えてきたことを認識するまでに時間がかかって、おらーまだ冷えてねえぞーってんでがしがし冷風を吹き込みまくって、気がついたらなんかめっちゃ部屋寒くて、あ、やばい、温風温風、みたいな。なんかこの部屋温度が上がったり下がったりで中々ちょうど快適な温度にならないんですけど。と。もっと言うと、今は部屋の温度がエアコン以外では変わらない、という前提でしたが、実際のところは外の天気の都合で部屋の温度も当然変わりますから、夕立降ってきたんで外気温が下がってるのに冷風回ったままだから冷え過ぎちゃって、ということも当然ございます。
さて、ここまではエアコンの話でしたが、わたくしは別段いまダイキンなりキヤリアなりを称えたいわけではなくて、ゲームの話、それもマルチプレイヤーズゲームの話をしたいのです。リチャード・ガーフィールドet al.が「Characteristics of Games」でdisを加えておりますとおり、マルチゲームにはある種の本質として、トップ叩きによってみんなが横一線に並んで最後にたまたまぴょんと鼻だけ飛び出した奴が勝つ、みんな同じじゃないか、という話があります。このマルチゲームにおけるトップ叩きというのはもちろんネガティブフィードバック機構です。同書では各マルチゲームのオリジナリティについて、このトップ叩き性をどれくらいまでブレンドし、どれくらい技術の巧拙が強く出るようにするのか、という方向に話が進み、というかあまりマルチゲームに興味を持ってない感じがするんですが、マルチゲーム愛好者としては、技術の巧拙はマルチゲーム性=ネガティブフィードバック性の中には存在せず別の所から足し込んでいかないといけないんだ、という論調には賛同しません。マルチゲームにおけるプレイヤーの技量は、ネガティブフィードバック性の中にこそ存在するべきであって、また、実際にも存在します。つまり、遅れを前提とした制御の巧拙です。
各時点でトップの位置にいるプレイヤーは他プレイヤーとの差を増大させる方向でゲーム状態に働きかけるのに対して、他の全員が、その時点でのトップとの差を縮小させる方向に働きかけます。マルチゲームの定義上、力の数は1 vs N(N≧2)ですから、ゲームシステムの作りによる部分も当然あるとはいえ、基本的な構造としては、ゲーム全体としては、トップとそれ以外との差を縮小させる方向にコントロールが働くことになります。これがマルチゲームにおけるネガティブフィードバックの基本です。しかし当然ここにはセンサーの問題と冷風機の性能の問題が存在します。たとえば勝利点を稼ぐゲームにおいて、本来モニターしたい指標は「ゲーム終了時点における勝利点」ではあるものの、これは言うまでも無くゲーム中に観察できる指標ではない以上、センサーたる各プレイヤーは何らかの代替指標を使わざるを得ないわけですが、この場合に何が相応しいかというのは、これは各プレイヤーの解釈に委ねられ、しかも動的です。加えて、各プレイヤーに対して、ゲームシステムの側からは、その指標に直接働きかけることのできる冷風機は用意されていません。プレイヤー達は初期状態では怪しげなセンサーと怪しげな冷風機しか持っておらず、これは容易に発散してどうしようもなってしまうわけですが、それでもプレイヤー達はセンサーと冷風機をなんとか改善し、部屋の温度は千鳥足気味ながら設定温度にふらふら近づいていきます。
結局のところマルチプレイヤーズゲームにおいても、ゲームプレイというのはパズルプレイがそうであるのと本質的に同じ意味においてゲームを解く課程なので、それがまともなゲームである限りにおいて、確かに部屋の温度は設定温度に近づいてはいきます。しかし、これは逆に言うと、ネガティブフィードバックがきちんとかかった、部屋の温度が設定温度に張り付いた状態というのは、あくまでもそのゲームがジグソーパズルや○×ゲームのように「解かれた」最終形でしかない、ということです。解かれていない、つまり遊べる状態にある各マルチゲームにはそれぞれ固有の部屋とセンサと冷風機と外気があり、従って固有の遅延の構造を持ちます。それぞれはシステムそのもの、あるいはシステムを解釈した各プレイヤーの思惑によって設置されるものであり、つまりゲームデザイナーにとってはデザインの対象になります。そしてプレイヤーにとっては、これらはもちろん操作の対象であり、つまりは攻略の対象、そして鑑賞の対象になるわけです。
※この話がルールズ・オブ・プレイにおいて「制御工学の対象としてのゲーム」ではなく「サイバネティックシステムとしてのゲーム」と書かれているのは(おそらく)理由があります。制御工学は工学であり、あくまでも厳密に、巻き尺と秤で量った数字を微分方程式で処せるものだけを対象としているんですが、サイバネティクスや、サイバネティクスと密接な関係にあるシステム思考/システム理論の領域はそうでもなくて、上でやったように、定量的な世界のものを「系(システム)ってくくりで見れば一緒だろ」というので、会社組織とかゲームシステムとかにも平然と定性的に適用しちゃったりします。というかシステム思考というのは色んな学問分野からシステムに関する諸問題を括りだした学際領域なので必然とそうなります。あんまり無定見に濫用すると怪しげなコンサル喋りみたいになってソーカル&ブリグモンが警笛を持って寄ってきますが(ちなみに怪しげコンサルタントのバイブルとして知られる「ライト、ついてますか」と「コンサルタントの秘密」の著者ジェラルド・ワインバーグはシステム思考の代表的な教科書「一般システム思考入門」の著者でもあります)、適用可能な範囲を意識して運用する限りにおいては充分に有用だとわたくしは考えております。]]>
素人の素人による素人のための2009/48/ECアンドEN71メモ(※ボードゲーム同人専用
http://toccobushi.exblog.jp/237426132/
2017-08-03T01:09:00+09:00
2017-08-04T21:29:34+09:00
2017-08-03T01:09:35+09:00
Taiju_SAWADA
雑題
EUで玩具を売る際は、規制をクリアして、その証明としていろんな文書の作成と、加えて製品自体にCEマークを付与する必要がある。EUの定義ではAges 14+のマニア向けコレクターズアイテムは玩具に含まれないはずで、日本からEssenに百部限で持って行く怪しげなカードゲームなどは実態としてマニア向けコレクターズアイテム以外の何物でも無いはずなんだが、なぜか今年からドイツの官憲が点数稼ぎだかなんだか不明の理由によりこれは断固として玩具であると言い張るようになったらしく、まあ仕方ないのでCEマークを頑張ってつける必要があるのだが、百部限のものに一々検査機関なんか通してられるか自分でなんとかしたる。
という人のためのいんたーねっとりそーすへのポインタです。
このプロセスは一般に「CEマーキング」と呼ばれており、玩具に限らず、全体の流れはこんな感じになります(都立産業技術研究センターのページ)。
http://www.iri-tokyo.jp/site/mtep/ce-general.html
まず規制の根拠となる指令そのもの、2009/48/ECはこちらです。
http://eur-lex.europa.eu/LexUriServ/LexUriServ.do?uri=OJ:L:2009:170:0001:0037:en:PDF
ちなみに、「2009/48/EC 和訳」とかで検索すると、和訳を売ってる人もいることがわかります。
で、作らないといけないドキュメントは下記の2つ。
・自己宣言書 Declaration of Conformity
・技術文書 Technical Document
これをいつでもすぐ官憲に見せられるようにしなきゃいけないわけですね(厳密に言うと技術文書の一部はすぐじゃなくていいんですけど、まあでも、どうせDropboxあたりに入れて管理するんだし一緒でしょう)。10年間保存マストです。
自己宣言書は、私どものこの製品はEUのこの規制(2009/48/EC)、具体的にはこの文書(EN71の諸々)で書かれたていることに適合しておりますよ、という宣言ペーパーです。一枚物の紙で、書かないといけないことは決まってますが、フォーマットは定まってません。
技術文書は、その宣言の裏付けとなる内容です。内容物の詳細な説明とか製造過程の説明とかテスト内容とかそういうやつ。こっちも書くべき事は決まってますがフォーマットは定まっていません。
この件に関するEU当局謹製の解説。それぞれgoogle検索すると出てきます。
Toy Safety Directive 2009/48/EC An explanatory guidance document
Toy Safety Directive 2009/48/EC Technical documentation
まずは自己宣言書ですが、勝手がわからないのでサンプル自己宣言書がほしいところです。さっきの当局謹製解説にも載ってたはずですが、EN71 Declaration/of/Conformity でGoogle検索するといろんな会社のDeclarationがいっぱい出てくるので、適当なものをまねるとよい。です。
サンプルとしては、見た中ではここのがわかりやすかったです。
https://www.logo.ee/et/product/getdocument/10025584/P940.55%20CE_Declaration.pdf
hobbycraft.co.ukなる親切なイギリスの手芸店的なところが、なんと玩具を作りたい人のために簡単な解説と自己宣言書のテンプレを用意しています。そのまま取ってきましょう。
http://www.hobbycraft.co.uk/toy-safety
http://www.hobbycraft.co.uk/supplyimages/WF1041/toysafety-declaration.doc
ようは大体以下のようなものを書けばよいと。
******
EU DECLARATION OF CONFORMITY
[This declaration of conformity is issued under the sole responsibility of:]
Manufacturer/Distributer's Name: Late Toccobushi Game Club
Manufacturer's Address: 2-28-8 Midori-machi, Musashino-shi, Tokyo, 180-0012 Japan (※これは東京都武蔵野市役所の住所なので真似して書かないように)
[Product Identification]
Product Name: Square on Sale
Product Number: TCBS-001
Product Description: An intellectual board game of auctions, mainly for adults (Ages 14 and up). Children of ages 12-13 also able to play with appropriate adult's guidance.
[The products mentioned in this declaration are in conformity with:]
EU Conformity Legislation:
2009/48/EC Toy Safety Directive (TSD)
Relevant harmonised standards:
EN71-1:2014
EN71-2:2011+A1:2014
EN71-3:2013+A1:2014
EN71-9:2005+A1:2007
Other specifications:
(none)
Notified body (where applicable) [公認機関]:
(Not applicable)
Additional information:
(none)
[Signed for and on behalf of:]
Place and date of issue: Tokyo, 01-Aug-2017
Signature [署名]:
Name and Title: Taiju Sawada, President
Company Name: Late Toccobushi Game Club
*****
上記を見ると、EN71というのがひとつではないことに気づくと思います。現在EN71はpart1からpart14までに分かれています。
1: 機械的・物理的特性
2: 可燃性
3: 特定物質が手とか口とかに移ることについて
4: 化学実験器具とかそういうやつについて
5: 実験器具じゃない化学玩具について
6: 警告用ラベルに関する規定
7: フィンガーペイント(指で描く絵の具)
8: ブランコとか滑り台とかそういうやつ
9: 有機化合物(要件)
10: 有機化合物(サンプルの用意)
11: 有機化合物(分析方法)
12: ニトロソアミン(発癌性物質のひとつ。口に入れるもの)
13: 匂いを嗅ぐ系ボードゲーム、化粧品、味覚に関するゲーム
14: トランポリン系
まあこれを見ると、匂いを嗅がない系のボードゲームであれば、関係しそうなのは1, 2, 3, 6, 9~11くらいかな、となるでしょう。
実際その通りなんですが、6のラベルの規定(かの有名な3歳児以下絶対禁止マークがこれですね)は今は別のpartのところに書いてあるので、
このpart6自体は欠番になっています。
それはいいとして、「EN71-2:2011+A1:2014」みたいに、[2011+A1:2014]とかよけいな何かがくっついたりしてますが、これは規制文書のバージョンです。割と頻繁にアップデートがかかるんですね。とりあえず上記のは2017年現在での1, 2, 3, 9 の最新版です。
いまどの文書が最新かというのは調べ方はいろいろありますが、とりあえずは英国規格協会の規制文書販売サイト(「販売」!)
https://shop.bsigroup.com/
で「EN71-1」とか検索するといろんなバージョンが出てくるので、名前からして最新、というものをピックアップすればよいです。
ちなみに上記の通り英国では公の組織がくそ高いお値段で売ってる一方、「EN71-1 PDF」とかで検索すると、なんか普通にダウンロードできたりするんですが、これは別にいいんでしょうか本当はよくないんでしょうか。民間の文書なら明らかに良くないわけですが、でもこれEUの規制文書だしなあ。日本で言えば内閣府令が3万払わないと読めないみたいなやつでしょ? それはどうなんだ。
ところでチェックする対象となる指令は本当に2009/48/ECだけでいいんでしょうか。実際の所よくない場合があります。巨大な音を出したり鉛的な金属を使ってそうだったり、電気仕掛けだったり(RoHS!)、まあ諸々の理由がある場合、それ用の指令も満たす必要があります。でもまあ、いわゆるごく普通のボードゲームであれば、2009/48/ECだけでいいんじゃないでしょうか。この点についてはまたあとで触れます。
とりあえず自己宣言書の話は終わったので技術文書のほうにいきましょう。
前掲「Toy Safety Directive 2009/48/EC Technical documentation」に説明されている(特にp18-19の表とそこからのリンク)ので、それを読めばいいんですが、
検査機関に全面的にお願いするのではなく概ね自分でなんとかすることに決めた場合、技術文書というのは以下のものを含んでる必要があります。
・デザインと製造に関する詳細説明。各コンポーネントのリスト(ボードゲームの説明書に書いてあるやつ)、そのリストされた物品のそれぞれについて、材質とか、あとケミカル的な要素を含む場合は安全性に関するデータシートとか。説明書自体もこれに含みます。印刷所に出してる場合は印刷所に出した仕様とか。
・安全性評価シート。これは前述のhobbycraft.co.ukが実例を用意してくれています。たいへんわかりやすいのでありがたく使うとよいです。http://www.hobbycraft.co.uk/supplyimages/WF1041/toysafety-assessmenttemplate.xls
・製造場所と保管場所の住所。立ち入り検査するためでしょう。
・自己申告書のコピーも技術文書に含めます。
・検査機関も使ってる場合は当然、検査機関によるOKとかレポートとか、あと検査機関に提出したものとか。
・適合性評価について、実施した手続き(デザイン編)。
・適合性評価について、実施した手続き(生産編)。
技術文書の書き方は、玩具以外のCEマーキングについてならば、日本語でもいろいろな情報があります。
http://www.meti.go.jp/policy/chemical_management/reports/H25_sc_tyousa4.pdf
https://www.jetro.go.jp/ext_images/jfile/report/07001771/cemarking_201403.pdf
上は経産省、下はジェトロの文書です。基本的にこのひとたちは玩具などというどうでもいいものには振り向いてくれないんですが、それでもジェトロの文書の37頁から39頁は、だいたいどういうものを用意すればいいか書いてあるので読むといいでしょう。
でもってこの規制の話全体の本編が「適合性について、実施した手続き(デザイン編)(生産編)」です。ちなみに、印刷所とかに生産(でもデザインでも)を丸投げした場合でも、このドキュメントを製作する責任はあくまでも依頼者側にあります。
デザイン編では、生産者は
・必要な要件がどれであるか同定する
・適切な分析とリスクアセスメントを行う
必要があります。
生産編では、生産者は
・それに沿うことによって生産物が法の要求を遵守している、生産プロセスがそのようなものであることを確保するために必要なあらゆる手段を取り
・詳細なテストとコントロールを行い
・製品のアウトプットが要求通りのものになっているかモニタする
必要があります。
当然、その中で、ブツがまともであることを確認するために行ったテストのレポートも、ドキュメントの一部として必要になります。
このふたつのうち、デザイン編はそれでもがんばって書こうという感じの起きるものですが、生産編はどうしたもんかって感じが漂います。生産管理がしっかりしていれば、仮に事故が起きてリコールになった場合でもリコールの範囲を特定できるが、そうでなければ全部リコールになるのだ、みたいなことが前掲のガイダンスに書かれているんですが、もうこの記述自体が、同人ボードゲームなどというものを全く想定していないことを顕わにしているわけで。こっちは一回500部刷ったら次の刷はどんなに早くても半年後だよ、というね。どんな小さなリコールだって500個ってこたないだろうと。まあそんな訳なので、第何刷かをパッケージにきちんと記載するということをデザイン的に確保した上で、
「刷ごとに、いつ刷るか、自分で組み立てるならどこのパーツをどこからいくつ買って作るか、印刷があるならどこの印刷所に投げたか記録して保存する」
「刷と刷の間は最低3ヶ月あけることにより、ごっちゃになることがないようにする」
「印刷所を使う場合、刷り上がったものについては2~3個ランダムサンプリングで開封し、清潔さのチェック、要求仕様通りであることの確認、物理的形状に危険の無いことの確認を行う」
「EN71-2/3/9の対象物をパーツとして含む場合、パーツの供給元から証明を受け取るか、あるいは自ら検査機関にかけてチェックする」
あたりを書いておけばいいんじゃないかと。
ということで生産編はてきとうにお茶を濁してデザイン編です。
デザイン編でまずやるべきことは、まず自分の作るものがEN71-1/2/3/9以外の対象に明らかにならないこと、また2009/48/EC以外の対象に明らかにならないことを確認し、それを記すことです。これは材料上のコンセプトとプレイ上のコンセプトを決めてしまうことでわりあい容易に達成できます(シュリンクとか、駒を梱包しておくビニールとかは、一回開封したら捨てるものであることを前提として、規制対象外になります)。
・比較的高度な算術や推論を要する知的なボードゲームであり、8歳未満の児童が遊ぶには明らかに適さないものにする
・電気的なものは使わない
・粘土とかそういう引っ付くものは使わない(ゲーム上使う場合もコンポーネントには含めず、ユーザに用意させる)
・嗅いだり口に入れたりとか論外
・鉛筆とかクレヨンとかも同様
・体(とくに頭)なにか近づけたり巻いたり着けたりとかしない
・原則として印刷された紙(ニスまたはポリプロピレンのコーティングを含む)と厚紙のみを用いる
・補助的に、ガラス、木材(ペイントを含む)、アクリル樹脂、ユリア樹脂を用いる(この辺は増やせば増やすだけ検査が面倒なので注意)
・長辺が10cm未満のジップロック袋は用いてよいが、10cm以上のものは使わない(というかジップロックは入れない方がいい)
・巾着袋はできれば入れないほうがいい(紐の長さに関するテストが必要)。チット引きをやる場合でも、外箱を使わせるか、紐の無い袋を用いたほうがベター。
・金属は一切使わない(説明書は規制の対象に含まれないが、コンセプトは貫いたほうがいいので、ステープラーも使わない)
特に、一切が紙と厚紙だけでできているように設計されていると、ほぼ何も検査しなくてよくなるので、話がとても楽になります(紙のコーティングに何を使ったかと、インクが何インクであるかを聞いておく必要があるかな、くらいですかね)
上記のコンセプトを決めることで、なにゆえ2009/48/ECだけでいいのか、なぜEN71-1/2/3/9だけでいいのか、ということを書くことができます。
ということで書いてみましょう。
2009/48/ECは「ニューアプローチ指令」というものの一部です。さっきのジェトロの文書のp.10-11に、ニューアプローチ指令の一覧がありますので、この中で自分のプロダクトが明らかに2009/48/ECのみ適用で問題ないことを示しましょう。
1. 2009/48/EC 玩具安全: 対象
2. 89/686/EEC 身体保護用具: 明らかにボードゲームには関係ない
3. 90/385/EEC 埋め込み式農道医療機器: 明らかにボードゲームには関係ない
(中略)、
16. 2006/42/EC 機械: 機械的な機構を含まないタイプのボードゲームなので関係ない
17. 低電圧電気機器: 電気機器を含まないタイプのボードゲームなので関係ない
(後略)
こんな感じのことを英語で書いておくとよいと思います。同様のことをEN71-nについてもやりましょう。
それではEN71-1/2/3/9について見ていきます。
EN71-1は8章+Appendixの構成ですが、基本的には第4章、第6章、第7章だけ見ていればよく、残りは必要に応じて参照すればよいです。4章が一般的な要件、6章がパッケージに関する要件、7章が警告表示に関する要件です。
4.1 物品の清潔。検品のときのチェック項目に入れましょう。
4.2 組み立て玩具。ボードゲームでも型抜きとかこの厚紙とこの厚紙を組み合わせてくらいのことはやりますが、ここで書かれているのはそういうことではなくもっとがっちりしたおもちゃのことなので、ボードゲームである限り通常は無関係です。無関係だと宣言しましょう。
4.3 プラスチックシート(ビニールシート)。基本的には(裏張りされてない)ビニールシートについての要件ですが、10cm x 10cmより大きいプラスチックシートについては規制の対象になります。ということは、ジップロックも規制の対象になるわけですね。10x10というのが面積を言っているのかちょっとでもはみだしたらということなのかは不明ですが、ここではより厳格に、長辺が10cmを超えるそういうものを入れないようにしましょう。で、入ってません、と宣言します。
4.4 トイ・バッグ 開口部が38cm(直径ではなく周辺の長さです)以上の場合、ちょっと面倒なことになります(かぶって窒息しないのが眼目なので、不織布みたいに空気を通す素材でできてればOKです)。そういう大きい巾着袋などは基本用意しないようにして、その旨を宣言しましょう。3歳以下の子が使う場合は巾着袋の紐の長さも問題になりますが、3歳以下の子のことは今は考えないことにしているので、紐の話は忘れてよいです。
4.5 ガラス ガラスのマーブルを使う場合は落下試験と耐衝撃試験ををやる必要があります。ガラスは化学試験をやらなくていいという意味では優秀な素材なので、落下試験をやる価値はあります。落下試験は、4mm厚の鉄板の上に、ショアA硬度(という指標が世の中にはあるんですが)70-80のゴム2mm厚を敷いて、その上に80-90cmの高さから5回落としてなんともないことを見る、みたいなことをやります。耐衝撃テストは、鉄板の上にテスト対象物の一番もろそうな箇所を向けて置いて、その上に高さ1mのところから1kgの分銅的なものを落っことす、みたいな感じです(8.5, 8.7節に記載)。テストしたならそのテストの詳細な記録、ガラス入れないならその旨を書きましょう。
4.6 伸びる系の物品。入れないようにしましょう。
4.7 カドとかジョイントとかファスナーやらネジやら締め付け系の物品。カドは金属やガラスのときに問題になりますが、ボードゲームでガラスったらおはじきとかそういうやつですから問題にはならないでしょう。というようなことを書きます。
4.8 先端とか金属線。入れてませんね。
4.9 傘の先みたいな突き出た形状のパーツ。ボードゲームでたまにそういうの使うことが無いとは言いませんが、ここでは無いものとみなして次にいきます。ある人は記載に従ってテストがんばりましょう。
4.10.1 スライドしたり折りたたんだりする機構。ボードゲームのボードは四つ折りだったりしますが、ここで想定されているのは折りたたみ乳母車てきなやつなので、我々には関係ありません。
4.10.2 運転に関する機構。関係ありません。
4.10.3 ヒンジ。ごくまれにヒンジが出てくるボードゲームもありますが、まあ関係ないでしょう。
4.10.4 バネ。これもまれに出てくるゲームがありますが、関係ないことにしましょう。
4.10.5 お口に含むもの。含めてはいけません。当然っちゃ当然ですが、お口に含むものについては、検査内容はかなり厳しくなります。
4.12 風船。入れないように。
4.13 凧とかその他空を飛ばす玩具の紐。これは紐ではなくて凧が主眼の項目なので、関係しません。
4.14.1 子供が中に入れる系のでかい玩具。関係ないですね。
4.14.2 マスクとヘルメット。関係なし。
4.15 子供の重量を支えられる系の玩具。すごい長い節ですが言うまでも無く関係ありません。
4.16 重い、動かない玩具。関係ないです。
4.17 射出系。ボードゲームで射出機構があるものはたまに見ますが、そういうものをエッセンにもってくのはやめましょう。
4.18 水がらみのおもちゃ、(水を吸ってとかで)ふくらむおもちゃ。関係ございません。
4.19 撃発雷管…えっと、何ですかそれ??
4.20 楽器系。でかい音がなるやつ。無くもないですけどねこれも。まあやめといてください。
4.21 熱源(非電気的な手段による)を含む玩具。関係あるわけ無い。
4.22 小さいボール。久しぶりに関係あるやつです。直径4.45cmの孔をくぐれるボールが該当します(ただし、ぬいぐるみ的なふにゃけたやつは対象外らしい)。なんか色んなテストをしないといけなくなるので、どうしても作品上必要でない限りは、ビー玉とか入れないほうがいいと思います。
4.23 磁石。これも時々つかうゲームありますが、磁石入れてると磁石に関する検査が必要になりますので、入れない方が楽です。
4.24 ヨーヨー。これを使うボードゲームはさすがにないですよね。
4.25 食玩系。食玩は止めましょう。
以上が4章です。チェックシート形式で関係ないことを証明していくとよいと思います。
5章は3歳未満向け玩具用の特別考慮。無関係。
6章はパッケージ。ただし、シュリンクとか、すぐ捨てちゃうやつは規制の対象外です。下記の通りで、まあ4章で触れたことと基本同じ。あと外箱はだまって普通の紙箱にしときましょう。そいで、この規制は適用対象外、こっちのはごらんの通り(写真か何かを持ってくる)満たしてます、みたいにやっていきます。
a) (10x10cm以上の大きさの)プラスチックシートとかバッグについては、一定以上の厚みを持ってる必要があり、テストの対象になります。避けましょう。
b) 38cm以上の大きさのビニール(プラスチック)バッグについては、紐で縛る巾着袋形式を取ってはいけません。
c) 球体状のパッケージ(ガチャみたいなやつ)については、ボールに関する規制がそのまま適用されます。
d) パッケージに玉みたいのがくっついてる場合も同様。
e) 3歳以下向けのおもちゃの場合は、半球状のパッケージをしていたら、3歳向け半球に関する規制がそのまま適用。
7章は警告表示。パッケージと説明書に書く必要があります。売る国の言葉で書かれていないといけません。ドイツで売るならドイツ語が必須ということになりますね(ドイツ語の説明書も必須ということに)。その上で、ここに書いてあります、あるいはこういう理由で書かなくていいのです、と宣言していくことになります。
7.2 三歳未満絶対禁止マークと「“Warning. Not suitable for children under 36 months. Small parts”」とかの表示に関する規定。ほぼあらゆるボードゲームに書いてありますから、そのまままねして書きましょう。
7.3 ゴム風船に関する警告表示。ゴム風船は入ってないはずなので関係ないです。
7.4 水かんけいのおもちゃに関する警告表示。関係なし。
7.5 機能玩具、おもちゃのミシンみたいに実際になにかしら出来ちゃう系のおもちゃ、に関する警告表示。関係ないですね。
7.6 先端とかがある場合の警告表示。ないようにしましょう。
7.7 射出がある場合の警告表示。ないようにしましょう。
7.8 マスクとかヘルメットがある場合の警告表示。ないようにしましょう。
7.9 凧の警告表示。かんけいないです。
7.10 ローラースケートとかその手のやつの警告表示。その手のやつじゃ無いです。
7.11 ゆりかごとか檻とかにくっつけたりする系のおもちゃに関する警告表示。何を言っているんだ。
7.12 液体のつまったおしゃぶりに関する。本当に訳はこれでいいんだろうか。いずれにせよ全く関係ない。
7.13 撃発雷管に関する。だからなんだそれは。
7.14 楽器系に関する。楽器系じゃ無い。
7.15 おもちゃの自転車に。じゃない。
7.16 子供の重量を支える系のあれに。あれじゃない。
7.17 モノフィラメント・ファイバーで作られる玩具に。おお、シャドウラン!(ちがいます)
7.18 おもちゃのスクーターに。
7.19 木馬系。
7.20 磁石とか電気をつかう実験用おもちゃ。そういうものでないようにしましょう。
7.21 電気ケーブルの入ったおもちゃ。これも関係ないようにしましょう。
7.22 紐とかが入ったおもちゃで、1.5歳から3歳向けのもの。向けのものではありません。
8章はテスト方法なので無関係です。
続いてEN71-2. 可燃性チェック。これも要件は4章に書いてあります。
4.1
・セルロイド禁止(ただしニスとかペンキとか糊とかで使われてる場合と、卓球のボールで使う場合だけは許す)
・セルロイドと同じ感じで燃えるようなやつは禁止。ここが重要でしょうね。セルロイドと同じ感じで燃えないためには、(用途がニスとかでなくてたとえばダイスで)プラスチックを使ってる場合、それが何の素材であるか把握し、書いておく必要があります(これはユリア樹脂だからそれほど燃えないんです、みたいな)。ここがプラスチック駒の難点。木はまあ木なので、セルロイドと同じような感じではさすがに燃えません(MDFはちょっと微妙。使わない方が賢明でしょう)。
・ベルベットみたいに毛羽立った素材はチェックの対象になります。使わないように。
・当然ですが燃える液体とか燃えるガスとかそういうのについては厳格に使用量規制があります。が、ボードゲームについては関係ないです。
4.2 頭にくっつける系のおもちゃにおける特殊要件。まあバンドを頭に巻くゲームとかありますけどね。
4.3 コスプレ衣装とか身につける類いの。かんけいないです。
4.4 子供が中に入って遊ぶ系。かんけいないです。
4.5 ぬいぐるみ系。まあ関係ないでしょう。
そしてEN71-3.化学検査ですね。ここで見るべきは4章ではなく、対象を書いた1章です。
「予期される使い方において、吸ったりなめたりしゃぶったり長い時間肌と接触したり、そういうようなことが無い玩具は、本文書の対象外とする。」
「ただし、6歳までの子供を対象年齢に含む場合、6歳までの子供はそういうことをするもんなので、対象に含む」
ボードゲームはもちろん吸ったりなめたりしゃぶったりするものではありません。駒を取って置くか、カードを手に持つくらいですから、長い時間肌と何かが触れる、というほどのこともないでしょう。そしてエッセンに持って行くようなボードゲームといえば普通は8+かもっと上です。なので、わたくしはEN71-3、スキップしてかまわないと考えます。
(なお、対象年齢に関する考え方として、欧州ではCEN CR 14379という文書が定められているんですが、すくなくともこの文書の2002年版では、3歳までのことは色々書いてあっても、6歳という判断基準については何も書いてありませんでした。どうすんだこれ。あんまり役に立つとも考えづらいですが、米国の同様の文書である、 CPSCという機関が出してるAge Determination GUidelinesには、そのへんの基準が書いてあります)
最後にEN71-9. 有機化合物。ここではチェックの対象となる項目および材質が26組、表の形で挙げられています。★と☆のやつだけ気にする必要があります。
1. 3歳以下で口に含む以下略。
2-4. 3歳以下が手に取って以下略。
5-6. 3歳以下略。
6-9. 口に含む系おもちゃのマウスピース。
10. 水を吸って膨らむ系
11-13. 口とか鼻とかにくっつける系のおもちゃ
14-15. 子供が中に入れる系
☆16. おもちゃとして売られてたりおもちゃの中に含まれる、お絵かき系のもの(くれよんとか)。これはぼーっとしてると引っかかりますので、そういうものが必要な場合はユーザーに用意してもらうようにしましょう。
★17. おもちゃのコンポーネントで、触れる部分にあるもの。インドアユース。材質:木材。はい。ここで木材が引っかかります。これってシックハウス症候群的な話が意識されてるはずだから、ボードゲームの駒みたいのは気にしなくていいと思うんですけど、まあ言っても仕方ないことです。主に防腐剤関連でいくつか指定化学物質があり、何かしらの検査結果の記載が求められます。化学物質含有に関するテストなので、ちょっと素人の手には負えないですね。ちなみに定義上、紙は木材ではありません。
18. 17のアウトドア版。
19. にせ食い物。
20. 痕を残すための堅いもの。
21. おもちゃの中の、さわれる液体。色つき。
22. 21の色なし版
☆23. 粘土とか。粘土ゲームの粘土はユーザに用意してもらいましょう。
24. 風船をつくる化合物。
25. にせタトゥー
26. にせジュエリー。
はい。以上でございます。前掲のEU謹製解説文書にドキュメントのサンプルが用意されていますが、基本的にフォーマットは規定されてません。思いの丈を英語で書きましょう。それではがんばってください。
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日本でアバロンヒルのゲームが店に並んだのはいつからかしら:中間報告(追記あり)
http://toccobushi.exblog.jp/23478015/
2016-12-16T00:34:00+09:00
2016-12-23T10:40:06+09:00
2016-12-16T00:34:01+09:00
Taiju_SAWADA
雑題
このサイトは主としてドイツゲーム以降のファミリーストラテジーボードゲームを追いかけるサイトなのですが、このファミリーストラテジーには源流がいくつかあって、そのうちの一つとして、アバロンヒル社が始めたボード・ウォーゲームがあります。どのような意味で源流になっているかというと、商業的に次々と出版されるゲームを取っ替え引っ替え遊んではゲーム自体を鑑賞するホビー、としてのゲーム趣味、あるいはホビイストとしてのゲーマーというのは、ここに起源を求めることができるわけです。
そういえば、以前moon Gamerで「レイメイ期のウォーゲーム (http://moon.livedoor.biz/archives/52401074.html )」という記事がありました。大雑把に要約すると「1972年に、ホビージャパン誌界隈を中心として、プラモデル等を用いたミニチュア・ウォーゲームのブームがあった」という内容です。そこでは(日本においても)ミニチュア・ウォーゲームの受容がボード・ウォーゲームの受容よりも先行していたことが示唆されているわけですが、そうすると気になるのが、それでは日本にボード・ウォーゲームが入ってきたのはいつ頃だったのか、という点です。
実のところ、単に「入ってきた」=日本国内にボード・ウォーゲームが存在していた、というだけでよければ、既に1960年代に存在していたことは周知の事実になっています。というのは、今でも続いている著名なボード・ウォーゲーム雑誌である「Strategy & Tactics」は、60年代、日本在住のアメリカ人(確か米軍関連の人だったはず)が編集していた時期があるんですね(※)。とはいえ今回の話は「日本における受容」の文脈での話ですから、これをもって「入ってきた」とは言えないでしょう。こちらの主要な関心は、いつ誰が日本で初めて商業的にボード・ウォーゲームを売り出したか、という点にあります。
(※【追記】 @alpharalpha_jjさんが、上記の点について「S&Tは67年1月に、東京で勤務していた米空軍のクリス・ワグナー軍曹が創刊した」と、証跡付きで正確な情報をコメントされています。 https://twitter.com/alpharalpha_jj/status/809429789694005248 および https://twitter.com/alpharalpha_jj/status/809434782534758401 )
諸々の雑誌等で見る限り、70年代当時の主要なプレイヤーとしては以下の出版社やショップがあったようです。
・ホビージャパン (お馴染みの例の会社。アバロンヒル社のゲームを輸入していました)
・モデルエース (久が原にあったホビーショップ)
・木屋通商 (輸入商社で、アバロンヒル社のゲームを輸入していました。後に、同社のコンピューターゲームの販売を手がけるようになります)
・タイムマイザー (輸入商社 【※次の追記を参照】。「ホビーネットワーク」のブランド名で、ミニチュア・ウォーゲームのルール販売やボード・ウォーゲームの輸入を実施)
・えんどう (笹塚のホビーショップ【※次の追記を参照】。現在は通販専門店「ホビーセンターえんどう」。SPI社のゲームの輸入販売等を行ってた模様)
・キディランド (原宿と梅田に旗艦店のある玩具チェーン店。一時期は「日本で一番ウォーゲームを売る店」だったとのこと)
(※【追記】実際にタイムマイザーにいらしたという @hyuga55032216 さんから、タイムマイザーはホビーセンターえんどうの社長が設立した会社である、とコメントをいただきました。他に「ミニチュアゲームのUさん、カデーに属していたTさん、インディアンオーシャンアドベンチャーを訳されたAさん後にコマンドマガジンの編集長」が所属されていたとのこと。 https://twitter.com/hyuga55032216/status/809593740662685696 タイムマイザーは、後にツクダホビーからゲームを出版する岡田厚利さんも所属されていたゲームクラブ"Atelier"のデザインによるミニチュアウォーゲームルールブックを販売したりもしています)
(【追記】また、後藤信二さんから、積極的にシミュレーションゲームを取り扱っていたショップとして、他に蒲田「ベンケイ社」がある、とコメントをいただいています。「モデルエース、エンドウ、ベンケイは、同人系のゲームも扱っていて、そういうの作ってた人たちがバンダイやツクダのデザイナーになりました」とのこと。 https://twitter.com/gto246/status/809560537012965376 )
これらのプレイヤーのうち、タイムマイザーと 木屋通商については、ほとんど何の情報もありません。えんどうについても何の情報もありませんが、こちらはまだ店が通販専門店として現存しているので、伺ってみるという選択肢は取れそうです。一方、最も簡単に情報が手に入るのは言うまでもなくホビージャパンで、何せ毎月雑誌を出していて、国会図書館に納められています。田村寛さんの調査によれば (http://legalalien.sakura.ne.jp/wiki/index.php?卓上ウォーゲーム/「ホビージャパン」卓上ウォーゲーム記事一覧 )、ホビージャパンがアバロンヒル社(以下AH)のゲームの輸入販売を予告する広告を初めて出したのが「ホビージャパン」誌の75年4月号です。わたくしもヤフオクで買って確かめたところ、確かに1頁使って「6月全国一斉発刊予定」と書いてあります(取扱タイトルはTactics II、Gettysburg、KRIEGSPIEL、D-DAY, PanzerBlitzなど)。ということで、ホビージャパンについてはこれでよいでしょう。
次に情報が手に入りやすいのはモデルエースなんですが…。まずは「シミュレイター」誌2号(83年1月)に掲載されている、モデルエース店長である矢木沼佐一郎さんのインタビューを見てみましょう。
10年くらい前かな、東京のキディランドで天井からぶら下がっているAH社の『ドイツ・アフリカ軍団』が目に入って、「うん、これは面白そうだ」と感じたのです。
その時はそれっきりだったのですが、それと時を同じくして、経済関係専門誌にAH社のゲームが、ビジネス新入社員育成教育用として紹介されているのを知りました。それですぐにその輸入商社に出掛けていったのですが、(中略)そのゲームの中からいわゆるウォーゲームといわれるものの3店『フランス1940』『クライグシュピーゲル(※原文ママ)』『パンツァーブリッツ』をほんのすこし見本仕入したわけです。ですから、おそらくこれが模型店の店頭にならんだ日本で最初のウォーゲームのはずです。
以後、AH社の内のウォーゲーム関係を主体に扱う代理店、ホビージャパン等があらわれ、流通機構がスムーズになったので、「ホビージャパン」1972年6月号に初めてウォーゲームの広告をのせたわけです。
というわけで、モデルエースがAHのゲームを扱い始めたのは1972年6月です。という風にはいかない事情があってですね。というのは、ヤフオクには出てなかったんで国会図書館行ってホビージャパン72年6月号を確認したんですが、モデルエースの広告、どこにも載ってないんです。ヤフオクで買えた中では、74年9月号にモデルエースの広告は載っていますが、ゲームの広告ではありません。ゲームの広告が載っているのは74年11月号(10月号は売ってなかったです。もしかしたら10月号にもあるかも)。その広告の文面は以下のようになってます。
アバロンヒルゲームは極めて高度な知識と頭脳を要するゲームです。その高度なプレーにより、戦略的訓練を培うために、アメリカのウェストポイント士官学校でも実際に使われていたり、アメリカ各地の軍人クラブでも広く利用されています。なおゲーム説明は英文です。
(A Bは日本語説明書を作る予定)
引用文中のAはパンツァーブリッツ、Bはフランス1940です。もうひとつCというのが広告に載っててこれがKRIEGSPIEL(広告では「クリーグスピェール」)。広告ではこのCのクリークシュピールが入門用という扱いになってるんですが、入門用のゲームには日本語説明書を作らないというのはどういう目論見なんでしょうか。いずれにせよこの段階ではまだ日本語訳がなかったわけですね。翌年75年1月号の広告になると、和訳ルールが販売されていることが確認できます。
74年11月号で注目すべきことはもう一つあります。モデルエース以外にも、ウォーゲームの広告を載せている店が2つあるんです。ひとつはマルケイ(千葉のホビーショップ)で、取り扱いゲームは「KRIEGSPIEL」「PanzerBlitz」「France 1940」。和訳なし。そしてもうひとつがポストホビー。言うまでもなくホビージャパン社の店です。そして取り扱いゲームが…「KRIEGSPIEL」「PanzerBlitz」「France 1940」。一緒じゃん! 更に言うと、この2つのどちらも、74年9月号の段階では、広告の中でアバロンヒルの話は一切していません。つまりまあ、先ほどのインタビューの内容と突き合わせて考えると、みんな同じ商社から仕入れていたんじゃないか、と考えられるわけです。この商社の名前がわかればいいんですが(それが木屋通商だったりタイムマイザーだったりしたら面白いんですが)、残念ながら記載はなく、手がかりは「経済関係専門誌に記事が載ってた」ということだけです。アバロンヒルの当時のゲームで新人社員研修に使えそうなゲームというと、おそらく「Business Strategy」(1973)と思われるので、73年か74年(タイミングから考えるとおそらく74年)の記事ではないかと思われます。これについては後で調査して、奇跡的に何か解ったら報告します。
そして最後にキディランド。キディランドについては、以前ボードゲーム読書会で高梨俊一さん(バンダイ「スペースコブラ」、アドテクノス「レッドサン・ブラッククロス」等の作者【後者は共作】で、パラノイアの校閲をお願いしています)にインタビューした際(私信:すみません今年中にテープ起こしします)、「1974年の早い時期にキディランドでウォーゲームが並んでいた。1973年のクリスマスシーズンからの取り扱いではないか」とコメントされていて、たしかに前述のモデルエース店長の発言とも整合します。
なお、高梨さんは74年の春にパンツァーブリッツ、夏にKRIEGSPIELをおそらくポストホビーで 【高梨さんから訂正:キディランドでとのこと】購入していて、秋に 【同年末か翌年初にポストホビーで「ルフトバッフェ」を購入し、】「他のゲームは無いか」とポストホビーの人【ちなみに錦糸町店とのこと】に尋ねたところ、モデルエースを紹介され、【75年に行ってみると】そこにはSPIの作品が各作品1部ずつ並んでいた、とも仰っています(更に、このSPIの作品を仕入れさせたのは、「当時イエナ書店でミリタリ関連書を扱っていた(※)」井出隆弥さんだった、とも【仕入れさせたというよりは委託というか持ち込み販売的なものだったようですが、契約上の構造は不明】)。雑誌に載せられるほど量を仕入れられるのは前述3作品だけとしても、店頭で1部ずつサンプル的に入れて売る、というのは個々にやっていたものと思われます。あるいは前述3作品にしても、パイロット的に店舗で数ヶ月扱ってから雑誌に広告を出した可能性が高いですが。
(※追記。前掲moon Gamerの記事では、「新宿でミリタリーフィギュアや軍事関係の書籍を販売するショップを経営なさっていた」と紹介されています。このショップは「日本史料研究会」で、70年代後半のホビージャパン誌に広告を出しています。日本史史料研究会とは無関係ではないかと思われます。DOBUROKU-TAOさんによる記事[http://bonkura-otaku-life.seesaa.net/s/article/390863511.html]を見ると、井出さんが1971年の時点で日本史料研究会に在籍していたことはほぼ間違いなく、一方で井出さんがイエナで仕事をされていたという証言も複数あります。移籍されたのか委託業務として行われていたのか…※※)
(※※【さらに追記】先ほどの @hyuga55032216 からこの件についてもコメントをいただきました。おそらく、イエナで勤務していた井出さんは並行してサークル「日本史料研究会」を主宰していて、この日本史料研究会が、1975年頃にモデルエース店舗を部分的に間借りする形でSPIのS&T誌50号[Battle For Germany]等を販売開始、その後70年代後半に西新宿でショップを開店、という流れと思われます。ショップ開店後イエナとの関係がどうなったのかはまだわかりません)
なお、この件について、キディランドに問い合わせを行ってみました。梅田店にいた方のご記憶だと76年頃から並べだしたとのことでしたが、これは梅田店での取扱が始まった時期であるものと思われます。当時のキディランドはアメリカやヨーロッパに直で買い付けに行っていたようで、またミリタリー物のプラモデル等も豊富に取り扱っていたとのことなので(72年夏にホビージャパンが主催したミニチュア・ウォーゲームのデモンストレーション会は、キディランドで行われています)、バイヤーが買い付けに行った先のアメリカで、興隆するAH社ウォーゲームを見て仕入れてみた、ということなんじゃないのかな、と推測しています。(これも高梨さんによれば、当時の原宿キディランドは1フロアが輸入玩具専用フロアで、その更に上のフロアにAHのゲームのコーナーがあった、とのこと)
ということで、以上中間報告でございました。木屋通商とかタイムマイザーとか どうやったら情報拾えるんでしょーか。
※ぜんぜん関係ない余談ですが、ボードウォーゲームの専門誌というのが80年代前半にいくつか出ておりまして、代表的なものが「タクテクス(ホビージャパン)」「シミュレイター(レックカンパニー→翔企画)」「オペレーション(ツクダホビー)」の3つです。これらのうち、本としての作りがしっかりしているのはタクテクスですが、当時の雰囲気を知る資料として役に立つのは(レックカンパニー時代の)シミュレイターですね。普通は活字化されると人格が漂白されるものですが、初期シミュレイターには漂白前の面倒なプレイヤー達の面倒な言説がそのまま載っています。
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ユール「ハーフリアル」邦訳書の発売に寄せて
http://toccobushi.exblog.jp/23227830/
2016-09-20T00:20:00+09:00
2016-09-20T00:22:14+09:00
2016-09-20T00:19:58+09:00
Taiju_SAWADA
感想・紹介
以前「捏造ドイツボードゲーム現代史」というプレゼンを行った時にも触れたのですが、そもそもわたくしには個人的に、ゲームについて喋りたいという願望があります。現にゲームというものは存在していて、更に言えば面白いゲームと詰まらないゲームが存在していて、面白いゲームには面白いゲームにおける、詰まらないゲームには詰まらないゲームにおける、なにがしかの傾向もある。そうであるのにもかかわらず、喋るための十分な言葉は用意されていません。日本語www界隈には「小学生並の感想」というスラングがありますが、ゲームについて喋る時には小学生並の語彙しか存在しないので、小学生並の感想ではない事を喋ろうと思ったら、毎回自分で言葉を一から作り上げていかないといけないわけです。もちろん、中学生以上の語彙が用意されている他分野から言葉を借りてくることはできますが、その場合には、借りた言葉がなぜ適用可能かということについて、根拠の説明を毎回自分で行わなければいけません。
ボードゲームの場合はビデオゲームと比べてさらなる困難があり、我々には言葉が無いだけでなく個々の作品を位置づけるための歴史もまともに存在しないのですが、それについては「捏造ドイツボードゲーム現代史」で既に喋ったので置いておくとして、今回は言葉の話です。先ほどは小学生並の語彙しか存在しないと書きましたが、実際のところ現代においては、「あるものがビデオゲームであるとはどういうことなのか。どういう場合にビデオゲームは楽しいものになるのか。ゲームのルールはどのような仕方で機能するのか、またルールはどのようにしてプレイヤーに楽しみを与えるのか。どのようにして、そしてなぜ、プレイヤーはゲームの世界を想像するのか」という動機に基いて、ゲームについて調べ、よその分野から調達した語彙をゲーム用に調整し、また自らも概念を考え出して、とゲームについて考えるための様々なパーツを生産する仕事に従事する「ゲーム研究者」と呼ばれる人々が何人も存在しています。
そして実際にゲーム研究者の方々の仕事は、我々のごとき普通にゲームを考えたい人々が手頃に使用できそうな成果が生まれる程度まで進んでいます。進んでいるんですが、ここで問題になるのが例のバベルの塔です。突然ですがここである一人のついったー民の荒れた呟きをご覧ください。
「ジェスパージュール(※)の主著も未訳だしサットンスミスも軒並み未訳。ジュールは最近の人だから仕方ないがサットンスミスの未訳って絶望的なんじゃないか。ルールズオブプレイの和訳は奇跡と言えるかもしれない」
「Sutton-Smithすら邦訳のない日本のゲーム屋まじで仕事放棄しすぎだと思うんですけど」
「同人ボードゲーム製作をここ数年止めてるのは優先度の都合です。あのゲームも未訳、ジェスパージュールもサットンスミスも未訳、純草場オーラルヒストリーも手付かず(これはいたるさんがやってくれるらしい)、増川宏一も松田道弘も安田均も手付かず(SNEの誰かやってよ)、でゲーム自作ってもねえ」
(※イェスパー・ユールの英語読み)
誰も! 翻訳を出さないから! 英語で読むしか無い! いや読むけど、読むけど! 俺が欲しいのは「俺が手頃に使用できそうな成果」なんであって!
ただわたくしも、このウェブサイト始めたころと違っていい加減おっさんになったので(何せ十五年経ってます)、こういうのは待ってても誰も何もしないものなのだ、ということは解っています。現状の出版状況と一般的な出版社の社員さんのコストを考えれば、普通の商業出版社が出して費用を回収できる可能性はあまり高くないですし。また現在の研究者ワールドにおいて翻訳は直接には業績ポイントにはならない上にゲーム研究だと学術的な出版補助のゲットも厳しそうなんで、学術出版社から出てくることもあまり期待できないですし。上の荒れたツイートとして書いた通り、本来ならゲーム業界が責務として翻訳を出すべきだとは思いますが…まあ現状を鑑みれば妄想以上のものではないですよねそれは。
そういうわけで、自分でやることにしました。
先ほど引用した「あるものがビデオゲームであるとはどういうことなのか。どういう場合にビデオゲームは楽しいものになるのか。ゲームのルールはどのような仕方で機能するのか、またルールはどのようにしてプレイヤーに楽しみを与えるのか。どのようにして、そしてなぜ、プレイヤーはゲームの世界を想像するのか」というのはこのユールの本の冒頭に書かれた文で、この通りの内容になっています。加えて、ビデオゲーム「ではない」古典的なゲームの定義に関する議論と、それを踏まえてビデオゲームがどの点においてユニークなのか、という議論が含まれており、ボードゲームプレイヤーにとっては、展開されるビデオゲームの議論から、ではボードゲーム(古典的なゲーム)というのはどのようなものなのか、ということが逆に照らし出されるようにもなっています。ゲームについて考える・喋るための語彙をつくるベース、という目的において、内容の面でも語り口の簡潔なわかりやすさという意味でも、最も相応しい本のひとつと言えるはずです。無論その語彙は、ゲームを作る上でも大いに必要になるものでしょう(それが「定義を壊すために定義を知っておく必要がある」という使い方なのだとしても)。わたくしはいつでも読みたいときに日本語で読めるようになって大変満足していますので、皆さんも読んで満足していただきたいと思います。
【外部リンク】
読みやすい本ですが学術書である以上は学術的なものとして使える翻訳にしたいということで、翻訳はゲーム研究者の松永伸司さんにお願いしています。原文がそうであるように、誰でも問題なく読めるわかりやすさと学術書としての緻密さが両立された訳文になっています。本のより詳細な内容については、松永さんが紹介を書かれているのでそちらをご覧いただければと思います(http://9bit.99ing.net/Entry/25/)。
また、ボードゲームプレイヤーが読むイェスパー・ユールということで、草場純さんによる読解の録音が「ボードゲーム読書会@高田馬場」で公開されています(http://www.boardgamereaders.com/books/half-real 、現在は4章まで。9月末に最終章まで公開する予定です)。
加えて、購入する前にサンプルを見たいという方のために、ニューゲームズオーダー社のウェブサイトで1章のPDFがダウンロードできるようになっています(http://www.newgamesorder.jp/games/half-real)。]]>
文化的資産として保存し、広く利用に供することに関する二題、或いは同人誌納本と小出版についてのメモ
http://toccobushi.exblog.jp/23210576/
2016-09-12T23:44:00+09:00
2016-09-12T23:55:10+09:00
2016-09-12T23:44:16+09:00
Taiju_SAWADA
雑題
【この文書はスタブです。あとから色々追加する可能性があります】
* 1 *
別にWebでなんか書いてればよくて、それ以上のことは要らないんじゃないか、というのはそうなんですが、ただWebに書いた文章というのは宿命的に消えていくわけです。いやほんとはそれは宿命ではないような気もするんですけど、ここ20年間の実績を見る限りでは実際に消えていっています。そこ行くと紙に刷った書籍というのは消えないんですね。これは紙という物理的存在の性質によるところも少しはありますが、それよりも、過去数千年に渡ってその時々の文明国が文明国たる証明として維持管理してきた「書籍残すシステム」の存在のほうが大きくて、なので紙に刷っても書籍ではないもの扱いされると途端に保存状況が悪くなるわけで、書籍という体が大事ですね、ということになります。
幸いにして日本も一応いまのところ文明国なので(でも公文書すぐ捨てちゃうし準文明国くらいかなあ)、書籍残すシステムが整備されています。ですので、残すべき文章を作ったら、まずは紙の書籍を作ってこのシステムに載せよう、という話になります。何をもって「書籍」とするかという点については色々な定義がありますが、今回の文脈で言えば、書籍残すシステムが書籍と認めればそれは書籍です。では、日本の書籍残すシステムの要でありますナショナル・ダイエット・ライブラリ、国立国会図書館による定義を見てみましょう。
http://www.ndl.go.jp/jp/aboutus/deposit/deposit.html
http://www.ndl.go.jp/jp/aboutus/deposit/pdf/deposit_request_pvt.pdf
【引用】
Q.
どんなものを納めなければならないのですか?
A.
原則として、頒布を目的として発行された全ての出版物です。
図書、雑誌・新聞だけでなく、CD、DVD、ブルーレイ、レコード、楽譜、地図なども対象となります。
また、自費出版でも、相当の部数を作成し配布されているものは納本の対象となります。
ただし、ホチキス留めなど簡易綴じのもの、頒布を目的としないものなどは、納本の対象とはなりません。
【引用終】
この「相当の部数」というものの定義が曖昧なんですが、文化庁の定義では50部の頒布をもって「発行」とする、という定義があり(※)、一方で国立国会図書館に電話で聞いたら「100部以上」と回答があったという未確認の噂もあって(※※)、あまり定まったものはありません。ですがまあ、無線綴じなり上製本なり、本またはブックレットみたいな体で100部刷れば、書籍とみなされると考えてよいでしょう。ISBNが付いているかどうか、というような話は、ここでは関係ありません。
※下記文書の25頁参照。 http://www.bunka.go.jp/seisaku/chosakuken/seidokaisetsu/toroku_seido/pdf/tebiki.pdf
※※ 噂の出処は下記を参照。但しあくまでも噂の域を出ない。 http://srad.jp/comment/2984168
従って、オフセットで100部刷った同人誌は、国会図書館への納本の対象である、ということになります。先方は「保管に適した環境の書庫で、可能な限り永く保存し、利用に供します」と仰ってますので、お手元に100部以上刷った同人誌のある方は、是非とも国会図書館へ2冊納本しましょう。宛先は下記の通りです。いきなり何の前触れも送り状もなく現物をどんと送ってしまっても問題ありません。
〒100-8924 東京都千代田区永田町1-10-1 国立国会図書館 収集書誌部 国内資料課 収集第一係
http://www.ndl.go.jp/jp/aboutus/deposit/images/deposit_02.gif
* 2 *
ということでオフセットで同人誌を100部刷って国会図書館に納本するだけでも充分といえば充分なんですが、それだけでは足りないシチュエーションというのもあったりします。やりたいのが翻訳出版であって、原著者側がこちらに対して会社組織であったり商業出版者であったりすることを求めてきそうな場合とか(しかし立ち止まって考えると会社というのは制度から言えば個人の責任を限定する方向に働くものなので、相手に対して会社組織であることを求めるというのはちょっと不思議な感じもします)。分野によっては、商業出版されることによって社会的に存在が認められた文章として扱われる、ということもあります。そうでないとしても、ISBNを取得して各種データベースに登録することで、当面の社会的な認知と、年を経た後でなお参照されうる可能性の向上もそれなりには期待できるでしょう。あとまあ、これは文書の内容にもよりますが、売る場所が広がる場合もあります(例えばコミックマーケットなど「法人が発行/制作したもの」の販売に制限がある場もあるので、場合によっては狭くもなります)。
つまり、なるべく手間をかけず商業出版者になることで、商業出版のシステムをつまみ食いする、ということが必要になったり、必要とは言わないまでもメリットが大きかったりする場合があります。ということで、手っ取り早くそういうものになるために便利な文献等をいくつか紹介したいと思います。
まず最も重要なのは、ISBN(厳密には、ISBNと書籍JANコード)を取ることです。「書籍を発行するとき、ISBNを付けなくてはならないという法令やルールはありません。ご自身が読者に直接販売・頒布する場合は、コード番号は必ずしも必要とされないでしょう。しかし、その書籍を書店やネット書店等で市販しようとすれば、その取引先からISBNコードを付けることを求められるでしょう。また、図書館を始め書誌情報を作成する方々にとって、ISBNコードは書籍を識別するためのコード番号として重視されてきています。」(日本図書コード管理センター「よくあるご質問」)
ということで、素早く申し込んでしまいましょう。申し込みのときに、ISBNと書籍JANコードあわせて3万円くらいのお金がかかります。なお、このコードの有効期限は3年で、更新時にもお金がかかります。
http://www.isbn-center.jp/regist/index.html
なお、ISBNのついた本には、ISBNと書籍JANコードの2つのバーコードをつけないといけないことになっています。バーコード作成用ソフトは市販でも色々ありますが、無料バーコード作成サイト(※)で作ったバーコードでも別段流通に影響はありません。
※例えば下記など。 http://rs-lab.net/jancode/
続いて、どうやって本を売るのか、ということになります。大雑把に言って「直売」「書店と直取引」「Amazon」「取次(=問屋)経由」の4つの経路がありますが、手続きだけなら最も楽なのはAmazonで売ることです。Amazonは「e託販売サービス」というのをやってて、年額9000円を払うことで、だれでもISBNが付いた本をAmazonに並べる権利を獲得できます(いまのところ取引条件は、原則として60%掛・送料こっち持ち・委託販売=売れなかったら返品されてくる、という条件になっています)。「e託販売サービス」で検索すればいくらでも情報が出てくると思います。とりあえず公式のページは以下にあります。
https://www.amazon.co.jp/b?node=4160761051&rw_useCurrentProtocol=1
書店との直取引、というのは、それこそ同人誌であればメロンブックスのような所が普通にやっているあれのことです(というか、さっきのAmazonのも「直取引」の一種です)。紀伊國屋書店や丸善ジュンク堂のような大書店チェーンは直取引の窓口を持っていることが多いので、やろうと思えばできますが、これをやり始めると本格的にマンパワーが必要になりますので、とりあえずAmazonのe託で売りつつ、取次との経路を準備する、というのがまあとりあえず無難な選択ではないかと思われます。
で、その取次なんですが、書籍取次の大手であるトーハンや日販は、新規の小出版社を取引先として見なしていません。小出版社を対象にした取次は、下記のようにいくつかあります。確認は取ってませんが、どこも出版社側が法人であることを前提にしているはずです…が、明らかに法人ではないだろう団体が取次と契約をしているのも事実です。
・トランスビュー
・地方小出版流通センター
・星雲社
・子どもの文化普及協会
・JRC
・ツバメ出版流通
これらのうち、出版社にとって最も分かりやすい条件を出しているのがトランスビューです。トランスビューが出している条件は、「まっ直ぐに本を売る(石橋毅史著、苦楽社)」にまとめられています(ウェブサイトには載っていません!)。何が分かりやすいかというと、他の取次の場合は「60%で出版社から仕入れて70%で書店に出す」みたいなモデルなので、一時的に倉庫に本を置いておくことに対するコストとかは取次側が持つことになり、つまり新規出版社との取引において若干のリスクが伴うことになるので、取引開始にあたって年ごとの出版計画みたいなものを書いて審査を受ける必要があったりするんですが、トランスビューの場合は「倉庫保管料が1冊につき月xx円、出庫の費用が1回yy円」というように、掛かるコストをそのまま出版社側に請求する形になっているので、トランスビュー側が持つリスクがごく限られており、なので出版計画とか無しで1タイトルから取引を結んでくれるんですね。とはいえ人文書の会社なのであまりにジャンルが違うと受けてくれないような気がしますが、仕組みから言えば最も広く門戸の開かれている取次だと言っていいでしょう。(なお、トランスビューは「取次」ではなく「取引代行」と形容してますが、これは理念的なものから来ていて、実務としてはまあ一緒です)
ついでオープンなのが地方・小出版流通センターですが、ここは「66%で出版社から仕入れて」モデルなので、年3タイトル程度の継続出版を求められます。取引開始希望のメールを送ると、FAXで(FAXです)案内書がやってきて、「会社概要・既刊図書、現在の販売経路と販売実績、今後2年間の出版予定(形態、価格、内容、著者等)」の提出を求められます(こっちもウェブサイトには載ってません!)。何しろ「現在の販売経路」を書かないといけないので、こちらを選びたい場合、まずはAmazonのe託から始めて…、ということにはなるでしょう。
トランスビューと地方小出版流通センターの違いは色々あるんですが、最大の違いは、トランスビューが委託が原則で書店には70%で卸しているのに対し、地方小は建前上は買切がメインで書店への掛率はもっと高い(注文経路によって値が変わるので具体的な値は示されていません)ということでしょう。「建前上は」というのは、地方小には特約書店というのが数十店くらいあって、これらの特約書店に限っては委託に近いかたちで販売され、そしておそらくこの数十店というのは小出版社の本でも売れる可能性のある大書店とほぼイコールなので結局そんな違わないんじゃないかということです。
契約が済んだらあとは本を作って売るだけで、本の作り方自体は別に同人誌と何も変わるところはありません(ただし、「短冊を入れる必要がある」「バーコードとISBN/書籍JANコードを載せる必要がある」「定価を載せる必要がある」「カバーは何かしらかけたほうが良い」という点のみ若干異なります)。営業活動というのは一応あるんですが、小出版社というのは書店営業みたいなことはほとんどやってないようです。メディアへのPRとか広告とか(書評を期待した)献本とかそれくらい。
【かつては暗黒通信団が「書籍制作と納品の仕方」というとても良い文書を載せていたんですが、非公開になってしまったみたいです】
あとは気構えとか諸々の話ですが、最近は「ひとり出版社」に類する本が数多く出ており、参考になるものも数多くあります。折角なのでここでいくつか紹介しておきます。
〈まっ直ぐに本を売る〉(石橋毅史、苦楽社)
取次としてのトランスビューの情報を得るのに最適な本であると同時に、出版社としてのトランスビューの思想もわかりやすく書いてあります。
〈ひとり出版社「岩田書院」の舞台裏〉(岩田博、1巻目は無明舎出版、2巻目以降は岩田書院)
ひとりで学術出版社を回すことに関する具体的な活動が詰まっています。たぶんこのシリーズよりも一人出版社のイメージを喚起する本は無いと思います。
〈翻訳出版の実務〉(宮田昇、日本エディタースクール)
翻訳出版をするなら、という前提で必読。必要なことはこの本に全部書いてあります。
〈出版状況クロニクル〉(小田光雄、論創社)
一応書籍のほうを挙げましたが、ウェブログの連載のほうがリアルタイムな感じがあっていいかも。日本の大規模商業出版流通に対して何の期待も持たなくなります。
〈計画と無計画のあいだ〉(三島邦弘、河出書房新社)
必読というほどではないですが、書店との直取引を行う出版社がどういうことをやっているのか、というイメージはつかみやすい本です。
〈日本でいちばん小さな出版社〉(佃由美子、晶文社)
本を作って流通させることのばたばたした感じはこの本が良いかなー、と。
〈あしたから出版社〉(島田潤一郎、晶文社)
ひとり出版社の営業活動が書かれているのは珍しいんじゃないでしょうか(っていうか書店営業やるひとり出版社が珍しい)。
あとはウェブサイトで、
〈本を出すまで〉(清田麻衣子、「マガジン航」連載)http://magazine-k.jp/category/series/hon-wo-dasu-made/
徒手空拳でおっかなびっくりやってるところが身近な感じがしていいです。マガジン航は他にも優れた記事が複数あります。
〈京都に出版社をつくる(には)〉(ホホホ座、「DOT Place」連載)http://dotplace.jp/archives/category/interview/%E4%BA%AC%E9%83%BD%E3%81%AB%E5%87%BA%E7%89%88%E7%A4%BE%E3%82%92%E3%81%A4%E3%81%8F%E3%82%8B%EF%BC%88%E3%81%AB%E3%81%AF%EF%BC%89
現状の崩壊した大規模商業出版流通システムと、その中でインディペンデントな出版をやるということについて、語られています。
日本著者販促センター http://www.1book.co.jp/
書店向けFAX営業の業者なんですが、コラムで色々と参考になる情報を載せたり引用したりしてます。
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7つの習慣ボードゲーム プレビュー
http://toccobushi.exblog.jp/22716501/
2016-04-14T22:58:13+09:00
2016-04-14T22:58:12+09:00
2016-04-14T22:58:12+09:00
Taiju_SAWADA
感想・紹介
どういう意味で例外なのか、なんですが、まずこのゲームはウェブサイト等でルールが公開されていません。また、値段設定がかなり高め(二万円+税)なので、自分で買って読んでね、と言うのに無理があります。見た感じではルールの詳細に触れたレビューも少ないようです。まあこれらは本当はどうでもよくて、わたくしにとって重要なのは、このゲームがSid Sackson作「アイム・ザ・ボス (I'm the Boss! / Kohle, Kies & Knete)」の強い影響を受けている、悪意のある言い方をすれば所謂ぱくりがある、という話を耳にしたということです。そのぱくりというのがシステムの軽い流用程度のものなのか、それとも完全な盗作なのか。これは確かめてみる必要があります。というのはわたくし、「アイム・ザ・ボス」の日本語版出版に関わっておりまして、具体的にはルール和訳(初稿のみ)と一部ボード・カードのエディトリアルデザインをやってるのです。
そういうわけでございまして、次段落以降、アイムザボスとのルール比較という形で「7つの習慣」のルールを簡単に見ていきます。正直なところ筆致に稚拙な悪意が混じっているのは否定しがたいのですが、上記のような事情なのでご容赦いただきたく。(稚拙なのは単に時間なくて急いで書いているというこっち側の事情もあります)
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アイムザボスでは、プロジェクトに割って入ったり邪魔したりするために使う手札が重要な役割を果たしますが、7つの習慣には、その意味での手札はありません。あるのはプレイヤーの手元に置くビジネスマンタイルだけです。つまり、プロジェクトの交渉において、例の醜い主導権争いがなくなり、条件闘争のみになります。
【※これが最も決定的な違いと言えるでしょう。個人的にはこれでこのゲームへの興味が完全に萎えましたが、このゲームの本来の目的である講習的なアレを考えればアイムザボスみたいな意地汚いゲームが受け入れられるはずがないので、その意味では妥当な変更であろうと思います。どうしても面白くなきゃいけないってこともないでしょうし。あとまあこの段階で違うゲームになってるので提訴的なやつも無くなると言えるでしょう(そもそもゲームに著作権は…という話をおくとしても)。つまるところドミニオンが劣化デッキビルドを訴える権利も必要もどこにもないわけです。】
そのプレイヤーの手元に置くビジネスマンタイルですが、アイムザボスのように1種類につき1枚ずつしかないのではなく、いっぱいあります。ゲーム開始時には1枚だけしかありませんが、後から金で買えます。また、能力値の概念があり、難しいプロジェクトは能力値が高いビジネスマンしか参加できません。当然、高い能力のビジネスマンは購入費が高くなります。なお、所有ビジネスマンの能力値合計は勝利条件に絡みます。
7つの習慣には勝利点チップというのがあり、プロジェクトを成功させるとお金だけでなく勝利点チップももらえます。当然、勝利点チップも交渉対象になります。お金はビジネスマンタイルを買うのに必要なんで重要ですが、最終的な勝利条件に絡むのは勝利点チップのほうです。この変更はたぶん悪くないんじゃないでしょうか。
アイムザボスでは手番プレイヤーは「プロジェクト」か「手札補充」の2択から選択しますが、このゲームではその部分での選択権は基本的にありません。サイコロを振って出た目の指示に従います。出た目がプロジェクトならプロジェクト(プロジェクトのマスに止まったらプロジェクトの難度は自分で選択できます)、イベントならイベント、雇用ならビジネスマンタイルの購入、という感じです。あと「勝利点カードをもらう」というレアなマスがあります。
ええと、勝利点チップとは別に「勝利点カード」というものがあります。このゲームは何種類かの勝利条件があって、それを全部満たさないと勝利とはみなされません。で、勝利点チップと勝利点カードは完全に別の条件です。勝利点カードは4色あって、これを全て揃える必要があります。勝利点カードをもらうマスにとまったら、自分と誰か1人他プレイヤーを指名して、その2人が1枚ずつ任意の(ではなく山から3枚引いて好きなもの)色のカードを貰います。ちょっとしたネガティブフィードバック装置と考えればよいでしょう。
イベントは昔懐かしいこてこてなやつです。なお、悪いイベントを防ぐためのシールドも用意されており、特定のマスでお金を払うと買えます。
あと何か細かい要素がいくつかあります。
ちょっとおもしろいのは勝利条件で、このゲームは必ずしも勝者を一人決めるものではありません。ゲームは一定ターン数経過で終了し、(明確には書いていないんですが)終了時点で勝利条件を全て満たしているプレイヤーは全員勝利、満たしていないプレイヤーは全員敗北となります。ただし、勝利したプレイヤーの中でも、勝利条件の満たし方で優劣があります。プレイヤーはそれぞれミッションカードというのを1枚だけ渡されてゲームを開始し、そこに書かれたミッションを達成するのが勝利条件の1つになっています。このミッションは1枚1枚違うもので、難易度にばらつきがあり、難易度の高いミッションを達成したほうが優れた勝利だ、というわけです。そして、このミッションカードは特定のマスに止まると交換できます。難度の設定をある程度プレイヤー側で調整できるわけですね。普通の(1人勝ちまたは順位決めの)ボードゲームでは採用できないルールですが、これはこの種のゲームとしては気の利いたルールだと思います。
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と、こんな所です。勝利条件には見るべきところがありますが、その点を除けば、重要なところがスポイルされ、かわりに何か変な要素がいろいろ突っ込まれたアイム・ザ・ボス、というあたりの評価になります。既に書いた通り、その変更にはそれなりに尤もな理由があるんですが、それならアイム・ザ・ボスじゃなくてもよくない? という疑問はどうしたってあります。ただしこれはあくまでもルールのみ読んだ段階でのプレビューであり、遊んだ後には評価の変更を行う可能性が大いにある、とは申し添えておきます(付き合って遊んでくれる人がいればね…)。
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※それから業務連絡。このゲームのデザイナーであるNaoki Matsunagaさんは二度とわたくしの前に顔を出さないでいただけますようお願いいたします。
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https://www.excite.co.jp/
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