2004年 07月 31日 ( 1 )

Intrigue : 公正と信頼の「反」交渉ゲーム

以下、 Intrigue とゆうゲームについて書くです。書いてみたらちょっと長すぎる上に話があちこち飛んで分かりづらくなってしまったので、見出しなどをつけてみることにしました。


0. ゲーム概要


相手に賄賂を贈って自国の人材を相手国の役職に就けてもらったり(役職に就くと、就いた職の重要度に応じて相手国からではなく銀行からお給金がもらえます)、相手から賄賂を貰って自国の役職に相手国の人材を受け入れたりする交渉ゲーム。すでに誰か他人が役職についているところに人材を派遣して追い落とすのも大事。この場合は賄賂バトルになります。全ての人材の処遇が確定したらゲーム終了、所持金の一番多い人が勝ち。


1. なんで「イントリーゲ」なのか。

もう10年前のゲームをいまさら初プレー。たいへん面白かったのですが、いっこだけ引っかかるところがありまして、それは何かというとこのゲームのタイトルなのです。 Intrigue とはすなわち陰謀のことであるのですが、このフェアネス精神溢れるゲームの呼び名が「陰謀」は無いだろうと。そういう意見がほかにも当然あるだろうと思ってあちこちのレビューなどを読んでみたのですが、目に付くのは友達を無くさないように云々(ディプロマシーじゃないんだから)みたいな話ばかりで、あれ僕もしかして少数派ですか?

なぜこのゲームに(パブリックイメージやセルフイメージと違って)公正の精神が根付いているのか。それは単純なことで、「相手を騙して裏切って陥れる」ということに、殆どの場合メリットがないからであります。


2. ゲームの流れについて

このゲームの流れは、概ね「前半」と「後半」のふたつに分けることができます。前半は「良い役職が空いているところに人材を送り込む」フェーズ、後半は「既に埋まっている役職に人材を送り込む(前任者を追い落とす)」フェーズです。前半から後半への移行は、良い役職が概ね埋まったあたりで発生します。良い役職が空いているのであれば賄賂バトルなどしても何の得もありませんし、逆に役職が埋まっているのであれば、これはそもそも戦わないという選択肢がないわけです。むろん移行期には、上のほうの役職が埋まってきたあたりで「どれくらいの役職であれば『良い役職』と言っていいのか」「戦うことのコストはどれくらいか」を判断しなければいけなくなり、その結果として各プレイヤーの移行タイミングには差が生じることになりますが、とはいえこれはコストやリスクの計算法の問題であって、ちょっと早いタイミングで移行したからといって裏切り者呼ばわりされる謂れはどこにもありません。


3. 前半に行われること

前半は、「相手国に人材を送り込む(自国のターン)」→「相手国に賄賂を支払う(相手国のターン)」→「相手国が、人材をどの役職につけるか決める。なお、必ずいずれかの役職には就けないといけない(相手国のターン)」という流れで行われます。相手国のターンが来たときに、相手国に複数の人材が送り込まれているか一人しか人材がいないかによって話は少し変わりますが、まずは単数の場合。


3.1 人材が一人だけ送り込まれている場合の処遇

ここで最も重要なルールは「なお、必ずいずれかの役職には就けないといけない」というところでして、このルールがある限り、いずれ全ての役職は埋まってしまいます。全ての役職が埋まってしまうからにはいずれにせよ自分ではない誰かに俸給は支払われてしまうわけで、ということは、賄賂を貰う側にとって「敢えて低い役職にしかつけてやらない」という行為は、別にさほど有利には働かないということになります(*)。

(* 但し、俸給は毎ターン支払われる事から考えて、良い役職はなるべく空けたままにしておいたほうが、支払い総額は少なくなります。しかし、高い役職が空いているような国には人材が群がりますから、「良い役職につけない戦法」で稼げるターン数は高々1ターンというところでしょう。このような戦法をとることによって賄賂の額にどう影響があるかといえば、これは「良い役職しかない場合、どうせ空いた役職には就けないといけないわけだから賄賂など少額でよい」という方向に行く可能性と、「たくさんの人材が入ってきて賄賂競争が発生する」という方向に行く可能があり、これは展開しだいなのでこの場ではなんともいえません。)

この、「賄賂支払側にいじわるしても、賄賂受取側にとって損にも得にもならない」ということがポイントになります。仮にこれが、「良い役職に就けると賄賂受取側にとってはっきりと損になる」とか、あるいは逆であれば、賄賂の額に関わらず、良くない役職(あるいは良い役職)に就けようとする動機が発生し、とくに「良くない役職に就けようとする動機」が発生する場合には、裏切りがどうのといった話が浮上してくるのですが、そうではないと。それでも賄賂をたくさん払わせたいことには変わりないわけですから、どういうところに落ち着くかといえば「賄賂をたくさん払ってくれれば厚遇するし、賄賂が少なければ冷遇する」という態度を明確にすることによって、なるべく多くの賄賂を受け取る、となります。

では、「たくさん」とはどれくらいか。「厚遇」とはどれほどのものか。この感覚は人によって異なります。何しろ、役職に就いた賄賂支払側が得ることのできる俸給の総額は、どの時点で追い落としがかかるかによって全く異なってくるわけで、単純に俸給総額から山分けで、というような賄賂額の設定が取れないのです。追い落としを受けるリスクをどれくらい見積もるかは、人によって当然異なります。ということは、賄賂受け取り側にとっての「たくさん」と、賄賂支払い側にとっての「たくさん」とでは意味するものが違う可能性が大いにある。互いの「公正」の基準の違いをいかにすり合わせられるか。これがここで行われる可能性のある「交渉」の実態です。


3.2 人材が複数送り込まれている場合の処遇

複数の国から同時に一国に対して人材が送り込まれている場合も基本的に処理の流れは同様ですが、この場合、「先に人材を送り込んだほうの国が先に賄賂を贈る」ことになっています。賄賂の額は公開ですから、後に人材を送り込むほうが有利なわけです。ということは、人材を送り込むほうとしては、後から割り込んでこられるとあまり嬉しくない(後から飛び込んできたほうは「空いている最も良い役職」を得ることをベースに賄賂額を設定し、先に入ったほうは「空いている二番目に良い役職」を得ることをベースに賄賂額を設定するので、実際のところ戦闘というほど激しいことにはならないのですが、飛び込んでこられることが嬉しくない、という点においては変わりありません)のであって、「なるべく良い役職」と「なるべく飛び込んでこれないこと」の二つを念頭に置きながら、送り込み先を決定します。でもって、これ、想像できると思うんですが、交渉云々の問題ではありません。交渉して協定を結ぶというのは、互いに得になるからやるんであって、この場合は「互いに飛び込んでいかない協定」など結んだところで良いことなどなにもないのですから。


4. 後半に行われること

後半、誰かを役職から追い落として自国の人材を職につけようという場合。ふたつほどルール上のポイントがあるので、先にそれらを説明してしまいましょう。

a: 人材には5種類あります(各国とも、5種類×2人=10人の人材を抱えてゲームスタート)。追い落とせるのは同じ種類の人材だけです。後半ともなると、まだ派遣先を決定していない人材は限られてきますので、「あのすばらしい役職についているあいつを追い落としてうちの人材をつけたい」と思っても、その「あいつ」と同じ種類の人材を既に別のところに使ってしまっている場合、追い落としは不可能なのでした。

b: 追い落としをかけようとして賄賂バトルが発生した場合、まず、すでに役職についているほうの人材から、賄賂を役職提供先に払います。この額は公開です(なお、賄賂は必ず一定金額以上支払う必要があります)。その後、追い落とし側が賄賂を役職提供先に支払います。で、最後に、役職提供側が、どっちを役職に残すか決めます。結果に関わらず、賄賂は戻ってきません。ということは、追い落とし側が圧倒的に有利であると言えます。極言すれば、追い落としを誰かがしかけてきた時点で、追い落とされることが確定します。

おそらく、このゲームに「Intrigue」というタイトルが付いている由来は、上記ルールのbだと思います。「私はあなたを追い落とさないのであなたも私を追い落とさないでください」とゆう。しかしそこで問題になるのがルールaのほうで、追い落としによって良い役職を得たい場合、自分の抱えているのと同じ種類の(他国の)人材が良い役職についてないといけないわけで、そうするともう、良い役職を得たいというのが前提であれば選択肢は最初からあんまり無かったりします。選択肢を広く持っておきたければ派遣する人材の種類と順番には細心の注意を払う必要があり、むしろ後の結果に繋がりが大きいのは交渉よりもこっちの人材マネジメントのほうでしょう。

さらに、追い落としがかかった場合、争いの舞台になる国で双方からの賄賂を受け取るプレイヤーには、リスクフリーの収賄益が発生することも忘れてはいけません。良い役職をめぐっての争いとなった場合、収賄益が莫大な金額にのぼることもいくらでもあります。ということは、追い落としをかけようとしても、その舞台となる国のプレイヤーが現時点で自分より高い順位にいると予想される(所持金は公開義務なし)場合、その国で事を起こすのは可能な限り避けなければならず、というような要素も追い落とし先選択においては無論考える必要があり、そうすると「協定」などというものが意思決定に際して主張する余地などもはやどこにもないのです。そして最初から意味を持たない協定というのは、逆に健全なものになります。挨拶みたいなものですから、裏切りがどうとかそういう重たいことが発生するわけもないのでして。


5. まとめ

一般に、交渉ゲームが協定と裏切りをベースとしているのに対して、このゲームではそのような要素は用意されているにせよ扱いとしては大きなものではありません。交渉という面で見て最も大きい要素は、序盤において行われる「公正」の基準のすり合わせであり、交渉という言葉を取り払った時の一番大きな要素は、人材派遣の種類とタイミングです(二番目は所持金のカウンティングでしょうか)。つまるところこのゲームは、ぱっと見では「交渉ルールのみが整備された最小セットのルール」といういかにもな交渉ゲームでありながら、その実は交渉ゲームにおいて発生しうる様々に愉快な鬱陶しさとは無縁なゲームなのであって、従って交渉量(というか喋る量というか)は多いのにたいへん後味爽やか、という全くもって素敵としか言いようの無いプレー感が保証されているのですが、どうも周りには同意見のひとがいないようで、わたくしといたしましてはこれはなぜなのだろうと首を傾げるしかないのでありました。



イントリーゲ Intrigue
by Stefan Dorra
(FX Schmid, 1994)
(AMIGO, 2003)
★★★☆
[PR]
by Taiju_SAWADA | 2004-07-31 14:14 | 感想・紹介