2004年 08月 29日 ( 1 )

非ゼロサム

(* 以下の文章では「ゼロサム」という言葉が頻出しますが、意味の分からないかたは「決まった大きさのパイを奪い合うようなゲーム」だとお考えください。で、1位~最下位までを決定するような普通のボードゲームは「あらかじめ順位が定められており、その中でより良い順位を奪い合うようなゼロサムゲーム」である、というところまで了解していただければ)

交渉もののゲームをプレーしてて時折思うことというのがあって、基本的にボードゲームやカードゲームは「プレイヤー全員が単一のゼロサムゲームに参加している」という構造を取っていますから、そうすると交渉相手も自動的に「有限の大きさのパイを奪い合う競争相手」ということになって、ということは交渉を行った結果、相手にとって有利な事態が発生すると、そのこと自体にのみ着目する限りにおいては、自分にとって不利な結果をになる、ということになります。

無論交渉事というのは両者にとって得になるような状況においてのみ成立するというのが基本ですから、だいたいの場合は相手も自分も浮いて、交渉していない人々が沈む、ということになってくれてじゃあいいじゃないか、とはなるんですが、ただゼロサムの枠がどうしてもあるんで、たとえば相手が極端に浮きになるような交渉を成立させようという発想はでてきません。

で、もうちょっと妙な交渉を有りにできないかなー、というわけです。そこで当然のように思いつく発想で、ゼロサムの構造を取っ払ってみよう、と。

既存のボードゲームにおけるノンゼロサム、というと、

・全員協力ゲーム
・「全員負け」(または「全員勝ち」)という状態が定義されているゲーム

の二種類をとりあえず考えることができます。ただし、「ノンゼロサム前提の交渉」というここで掲げている視点から眺めた場合、これらを採用することには躊躇が生まれます。

まず前者について。「全員協力ゲーム」というのは、実際のところ一人ゲームと大差ありません。全員協力ゲームと一人ゲームの違いというのは、全員協力ゲームにおいては「各プレイヤーが異なる情報を持っており、かつそれらの情報について相互参照が厳しく禁じられている」のに対して一人ゲームではそうではない、というそれだけのものでしかありません(*)ので、交渉をやろうとしてもそれは自分自身と交渉しているのと同じ事で、全ての点が妥結点になってしまいます。

(* 正直なところ、世の全員協力ゲームがそのあたりをどれくらい意識しているのかというのも少々怪しい気がします。「他プレイヤー」という監視者がいないのだから、情報開示の禁止を相当に厳密に行えるようなサポートをルール内に入れる必要があるのに、そのへんをパスして普通のゼロサムゲームと同じようにリソースを扱わせていたり)

後者については、別に前者ほどの問題はありません。特に「全員負け」については、交渉ゲームのなかに普通に取り入れることができるという考え方もありでしょう。ただし個人的に引っかかるのは、もともとゼロサムがベースとなっているボードゲーム・カードゲームに「全員勝ち」とか「全員負け」というようなステータスを入れるのがどのような意味をもつのか、ということです。こういうゲームをプレーしていると、考え方がゼロサムになってしまいます(「普通はそうだ」とまでは主張しませんけど。少なくともわたくしとしてはそうです)んで、そういう頭になっているところに「全員負け」などと言われても、「全員同順位→要するに引き分け」としか解釈できないのです。

というわけで上記のような方法はとりたくないと。さてどうしましょうか。

んで考えたのですが、「ゼロサム」部分を取り払うかどうするかという議論をやるのであれば、「プレイヤー全員が単一のゲームに参加する」という部分を取り払おうという発想をしても別に構わないのではないか。つまりは一つのゲームシステムにおいて、複数のゼロサムゲームが同時に行われている、という状況を考えるわけです。たとえばプレイヤーが6人いるとすれば、プレイヤーA, B, Cの3人によって行われる「ゲームX」と、プレイヤーD, E, Fの3人で行う「ゲームY」に分ける。そして交渉は、ゲームXに属するプレイヤーとゲームYに属するプレイヤーとの間で行うことにします。無論、交渉を成立させるためには、ゲームXとゲームYの両方で使用できるようなリソースを複数種類用意しておく必要があります。

このようにしてしまえば、とりあえず相手がやたらと浮くような交渉を成立させてしまっても、貰うものだけ貰ってしまえば後は「あっち側の世界」の話ですので、とりあえず自分に不利にはなりません(むろん「あっち側」の人々からは恨まれるでしょうから、後の交渉でいろいろあるかもしれず、そのへんがこの枠組の限界ではあります)。今までよりも野放図な交渉を楽しむことができるようになるでしょう。交渉とは直接的には関係ない話ですが、他プレイヤーとの干渉という意味では、「あっち側の他プレイヤーを叩く」という行為がゲームに及ぼす影響についても、通常のゲームとは異なる効果が得られそうでもあります。

難点としては、1回の「ゲーム」において複数の勝利者が出るというのが興を殺ぐのではないかということ、構造上最低敢行人数が4人、できれば6人以上欲しいということになってしまって最近の少人数ゲーム化傾向に逆行しているということ、あと何といってもデザインするときに他のゲームをまともに参照できないので作るのがえらく難しい(←妙な実感が篭ってますが何故でしょうね)、ということでしょうか。でも実際に現れれば面白そうな感じはするし、少なくとも目新しさで一定の注目は得られると思うんですが。
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by Taiju_SAWADA | 2004-08-29 22:13 | うわごと