2006年 07月 10日 ( 2 )

手荷物検査 Hart an der Granze

[税関を通して良いものと良くないものが混ぜこぜになって手札にやってくるので、まぜこぜにしてトランクに突っ込んで蓋をして、「俺はテキーラ三本しか詰めてません」(今でも酒三本免税制ってあるんだっけ?)と言い張りましょう、というゲーム。査察官はターンごとに持ち回りで誰か一人が担当。最も怪しそうなところ一人に対してのみ(使い切りのアイテムを使用した場合のみ複数人可)査察を行います。査察を受けた場合、おとなしく没収されるのではなく、査察官に賄賂を払って合意の上で切り抜けてもよし。手札は常に一定枚数になるようにターンごとに補充。全員が三回査察官を担当した所でゲーム終了、より価値の高いものを通した人の勝ち。]

うーん。楽しいか楽しくないかつうと楽しいんですけどー、なんかルールいろいろ無駄なんじゃないのかなー、という気がしないでもありません。というのは別に余計な枝葉がどうとかいつも愚痴ってるようなことではなくて、なんというか、その、ルールの根幹が。

基本的に額面の小さい物埋めても儲けにはならないってのと、額面の高い物埋めるためには額面の高い物引かないといけなくて、で額面の高い物引くためには手札を回さないといけないので、さらに言えば額面の高い物埋めたってペナルティを受けることはそうそう無いし、となれば基本はみんな全勝負ということに流れがちです。あとは開けるほうが誰か(つまり全勝負をかけてるプレイヤーのうちの誰かということですが)に数回連続で放火して牽制をかけることで、一時的にその放火対象のプレイヤーの全勝負を止めることは可能だと思うんですが、問題はそれやってると他のプレイヤーが、【全勝負を基本スタンスとしていないプレイヤーでも】全勝負に流れるでしょう。そうすると、既に放火していて沈んでるプレイヤーに追い打ちをかけるのは、他のプレイヤーを単に利するだけで(他のプレイヤーは一回も沈まないわけですから)あまり良い姿勢であるとは言えない。そうなるとやっぱり全勝負が基本だよなー、となります。特に周りが全勝負となると、一人だけで地味な態度を取るのは何の意味もない。

一人か二人だけ枚数で突出して目立っていると査察を食らうんでそこでルール上の規制がかかっている、というのがデザイナーの意図なんだろうと思いますが(もしかして期待値換算して一人か二人突出の場合はそっちのが不利、とかやってるのかもしれませんが)、ちょっと不十分なんじゃないのかしら。仮にそういう意図だとして、全員全勝負だとやっぱりどうやったって解消はされないし、そうでないとしても高い物が来たら当然埋める訳で、あとは他の物も埋めて枚数を回して査察上等で勝負するか、高いものだけ埋めて枚数を目立たなくしてそのかわり高い物がくる確率の減少は甘受するか、その二択で戦略を決めてあとは山から引き勝負(ともう一個、ゲームの根幹とはあまり関係ないけど得点上は有用な要素があるんでそっちで勝負)、ということになってしまってそれはデザイナーの選択としてどうなのよ。と。

繰り返しますが、楽しい事は間違いなく楽しいんです。箱にカード詰めて差し出して「俺だけは今回真実です」みたいな目の泳がせ方をする瞬間とか。少なくともそういうプリミティブな楽しさがルールによってスポイルされているってことはないんで、最低限の仁義は切ってあるとは言える以上、「それで充分じゃね?」と納得できるならしてもいいんですが。でも僕としてはこのゲームは少し頼りすぎてるという印象を持っています。

Hart an der Grenze
by Andre Zatz and Sergio Halaban
(Estrela, release date unknown, as Jogo da Fronteira)
(Kosmos, 2006)
★★☆
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by Taiju_SAWADA | 2006-07-10 00:36 | 感想・紹介

エグザクティカ Xactika

[ノートランプマストフォローの宣言ジャスト狙い系トリックテイキング。特徴はカードに記載されたスートが複数(12スート存在し、うち4スートが記載)。カード出すときに、そのカードに書かれた四つのスートのうちひとつだけ指定。ルールは以上です。]

結論だけ先に書くと面白かったんですけど、どう面白かったかという話になると説明がしづらくて。一つ言えるのはとにかく解りやすいゲームだということですかね。そもそもトリックテイキングは歴史の古さとかルール自体の構造とか複数の理由により御作法化しがちであり、かつプレー人口の多さとかドイツ人がアレだとかそういう理由により変態化しがちでもあって、結論としてどうなるかというと楽しみ方が込み入りがち。きちんとこうなってああなってそれがどうなるからつまりはそうなるからなるほどこれは確かに最高に素晴らしい、って遠くに行き過ぎです帰ってきてください。無論そこでお前らがこっちまで来いという論を立てる事も可能ではあるんですが、ことトリックテイキングに関して言えばそこまで行くの面倒だし入り口付近で遊んでいたいなあというのが個人的な事情でもあります(別にどのジャンルだって入り口に愉快なアトラクションが置いてあるのがきーわーめーてー大事だってことに変わりはないんですけど)。

さて何が解りやすいかというと、必ずしもルールが解りやすいというわけではなく、いやルールだってトリックテイキング知ってれば全然解りやすい部類だとは思いますがそれでもホイストもブリッジもブラックレディもルールなら十分解りやすいんで、ここで言いたいのは遊びどころ、というか悶えどころ。「このトリックは取れるけど取っていいんだろうか取ったけどこれでよかったのか」「トリックを取ったのでリードなんだけど次のトリックは取りに行くべきだろうか、あるいはここは降りて他人のリードを掬うべきだろうか」「そろそろトリック取れないと展開的に不味いけど取れるのかなあ」「ここでトリック取らされるのは早すぎるんじゃねえのか」「最終トリックは一応負けられそうな(あるいは勝てそうな)カードを残せたけど実際どうなるかは祈るしか無いし」と、まあ宣言ジャストものであればそうあるべきである、というような要素はきちんと一通り【誰にでも解る形で】用意されています。

用意されているだけでなく、あるべき形で用意されている、というところが大事で。つまり、コントロールできそうな部分と祈るしかない部分の配合が正しく行われており、トリックごとの状況の変化が急すぎず緩すぎず、とりわけ、早い段階における突然死ないし勝ち確定がほぼ無いので全員が最終トリック近くまで不安ないし期待を持ちつづけることができます。

ルールとして効いているのは、まず複数スート選択制であることを生かした数値の配分。あるスートは低めの数値に寄っていて別のスートは高めの数値に寄っているので、同じカードでも、勝ちに行きたい使い方と負けに行きたい使い方のどっちにするか悩む事ができます。無論マストフォローの縛りによってカードは変なところで徴発されますし、ノートランプなんで微妙な数値のカードでも結構勝てたり(勝ててしまったり)して、コントロール可能/不能感の演出がされているあたりは如何にも正統的なトリックテイキングちゅうか。当然このあたりのルールが生きているのはジャスト宣言物を選択しているからということでもあります。そして何より大きいのは、同値カード後出し優位の法則。このゲームは同値カードが割と大量にあるんで、トリック数のコントロールのために、リードを取ったけど一旦抜けて後で他人のリードを掬いに行こう、という選択がかなり効きます。逆にこのルールにより、別にそれほど強いわけでもないカードなのに手番の関係でうっかり拾ってしまったり、というナイスな事態も発生するでしょう。

総じて(複数スート選択制というゲームの根幹を除いては)奇を衒うようなルールは排除されており、その上でトリックテイキング標準ルールオプション選択チェックシートの中から全ての分岐で正しい選択肢にマルをつけているなー、という印象を受けました。トリックテイキング特有の技量がどうこうという点に囚われず誰でも楽しく気軽に悶えましょう、という視点で堅く作られたウェルメイドな傑作だと思います。

Xactika
designer unknown
(SET Enterprises, 2002)
★★★☆
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by Taiju_SAWADA | 2006-07-10 00:36 | 感想・紹介