2015年 09月 24日 ( 1 )

Dummett and McLeod に書かれたタロットゲームを遊ぶための準備 #3

そろそろMcLeodに許可とったほうがいい気がしてきた(Dummettは故人)。
3章はイタリア以外でのクラシック(18世紀式)タロット。



タロットの基本形は「3人用」と「4人用」の2つ。78枚使用、フールはエクスキューズ扱い、
オナーはK,XXI,I,フールで各5(1+4)点、Qが4(1+3)点、カバロが3(1+2)点、Jが2(1+1)点。
3枚または4枚(=1トリックの枚数)につき1点【上記はこの1点を含んだ点数】。
ビッド、宣言、ボーナスなし。
3人ゲームではパートナーなしの個人戦。ディーラー28枚残り二人25枚配り、ディーラーは3枚捨て札。
捨て札はディール終了時にディーラーのものになる。オナーは捨てられない。3枚で1点。
4人ゲームでは、2-2の固定パートナー制。パートナー同士で向かい合わせに座る。
ディーラー21枚残り18枚配り、ディーラーは2枚捨て札。
捨て札はディール終了時にディーラー側チームのものになる。オナーは捨てられない。4枚で1点。

多くのタロットゲームがこの2つの細かいバリエーションでしかなく、実際イタリア以外で18世紀以降に作られた
度のゲームもこれをベースにしている。1700年以前にパリやノルマンディで遊ばれていたものを例外とすると、
イタリア以外のタロットは、東フランスのどこかで早い時期に遊ばれていた、そこに単一の起源があると考えられる。
(ドイツへのタロットの伝播は、イタリアからではなくフランスのアルザス経由。1600年前後。
 ところで、ボヘミアへの伝播はドイツ経由ではなく、1586年には既に知られていたらしい)

2人用ゲームも18世紀後半以降盛んに遊ばれていた模様。こちらも起源は単一のところに遡れるようで、
おそらく1750年頃のドイツ。1800年にドイツで出た本には言及がある。また、後述するフランスのオカルトタロット本
のルールからも、二人用ルールがメジャーだった形跡が見られる。

タロットの最盛期は1730-1830年(cf.モーツァルトは1756年生、1791年没)。
イタリア、東フランス、スイス、ドイツ、オーストリア=ハンガリー、ベルギー、オランダ、デンマーク、
スウェーデン、ロシアで盛んに遊ばれていた(ただし「国際大会」的なものは無い。あくまでもコーヒーハウスとか
自宅とかそういうところで遊ぶもの)。そして、細かい違いはあれ、ルールは基本的には同じものだった。

ドイツでは18世紀以降、カードゲーム本の出版が何冊も行われている。
19世紀(1846)にはアムステルダムでブックレットも出版されている
(19世紀に入るとドイツでGrosstarockが生まれ、オーストリアやフランスでは古いタロットはこれに置き換えられていく。
 オランダでは既に1821年には近代的なGrosstarockが遊ばれているので、このブックレットはold-fashionなゲームの紹介。
 一応18世紀型のゲームも生き残っていて、1890年にはフランスでパンフみたいのが出ている)
フランスでは18世紀の本でのタロットへの言及は1冊しかなく、それもオカルトタロットで起源をエジプトに求めている著者が、
友人から聞いた話としてまとめたもの。パリではこの時点で(1781年)既にタロットは遊ばれなくなっていた。
 
(東)フランスやドイツのタロットに最初にひねりが入れられた記録は1754年のもの。
まず手役が入った。(イタリアだと16世紀の時点で出来役の概念があるが、ドイツ・フランスではあくまで手役。たぶんOmbre由来)
つぎにIやKで勝ったときのボーナス、負けたときのペナルティ。(3人ゲームでは、ペナルティは残り2者両方に払う。)
(「最後のトリックをIで勝つ」というタロットの重要なルールはここから派生していて、これはイタリア由来ではない)
最後に、愚者の出し時の制限(最終3トリックで出すの禁止ルール。愚者がスキュースになってからは、最終3トリックでの無力化)。
ちなみにフランスでは「最終トリックのみ禁止」だったが、後に広まったのはドイツの「最終3トリック」のほう。

タロットの諸ルールは元々3人用を想定して作られたものなので、4人用にアダプトする際に問題が生じた。
たとえば自分がIを出し、勝ったのがパートナーだったら(これについては、18世紀当時はノーボーナスノーペナ。
後にペナルティ扱いになった)。ボーナスやペナルティはパートナーも受けるのか(受けるという原則が固まった)。

4人用拡張がどうやって出てきたのかははっきりしない。1846年オランダの本には、3人ゲームの4人拡張としての
ルールが記載されている。どちらかというと少なくとも19世紀以降の4人タロットはクラシカルな固定パートナー制ではなく
新式のもの(Lombard/Vinnese式。6章)で遊ばれるのが普通だったようで、オランダでも1821年の本には
そっちしか載っていないし、どいつでは旧式4人タロットへの言及はごくわずかなものしかない。
例外はミュンヘンで、ミュンヘンでは1756年の段階で、カードを103枚に拡張した4人ゲームの記述がある
(追加する25枚は本によって違いがある。全切札、愚者、ハートのACKとする本もあれば、XIII-XXI,I,愚者と♡全て、
 とする本もある)。同じカードが先出し有利か後出し有利かは不明。


3.1 ドイツ Taroc (18世紀中盤)
3人用。オリジナルランク。だいたい上記のルールにそっている。
・Kは捨て札禁止。「切札がちょうど3枚あるとき」「I, 愚者+あと切札1枚だけ」のいずれかの場合のみ、切札を捨てられる。
・愚者の捨て札についてはコメント無し。
・手役宣言あり。ディーラーから一巡。義務ではない。宣言した札は公開。点数を直ちに他の2人から受け取る。
 手役は以下のとおり。
 「Matadors」3枚式マタドールはXXI, I, 愚者。10点(取り決めによって20点の場合もある、とする本も)
 「Matadors(4+)」4枚式マタドールは書いてない本もある。3枚式に加えてXXからの降順連番。3枚目までで10点、
   4枚目以降の1枚につき5点。
 「Cavallerie」1スートのコート4枚揃い。本によって4点とか10点とか。
 「ハーフCavallerie」1スートのコートのうち3枚。フルが10点の本で、5点の扱い。
 「切札10枚以上」愚者は含まない。10点(本によって11枚目から1枚5点のものも)。ローカルルール扱いの本も。
   本によっては、宣言者の得点が26点以下だったらこの宣言による得点は無しになる、とするものも。
 「K4枚」10点。3枚だと5点。
・愚者は逃げ用。交換あり。ただし、「サレンダー」(逃げに使った愚者の交換用トリックを最後まで取れなかった時の没収)無し。
・愚者はリードできない(本に寄っては、リードできるルールのところもあり、この場合は切札リードと同じ扱い、とも)
・PAGAT ULTIMO: Iで負けたらペナ5点。最終トリックにIで負けたらペナ10点。最終トリックIで勝ったらボーナス10点。
 

3.2 フランス(前述のオカルトタロット本に書いてあるやつ)
28-25-25の3人制。Jの次は必ず10式。逃げ愚者(おそらく交換)。ディーラーは3枚捨て札。切札、K、愚者は捨てられない。
手役は以下のとおり。一巡の宣言。
愚者+XXI+I : 15点
切札10枚 : 10点
同13枚: 15点
1スートのKQCJ揃い:5点
最上位の切札上から5枚すべて: 10点
最下位の切札下から5枚すべて: 10点
最上位の切札上から5枚のうち任意の3枚: 5点
最下位の切札下から5枚のうち任意の3枚: 5点
XXI, I, 愚者のうち2枚を持っていることを宣言し、相手(のうち一人)を指名。相手が持ってなかったら、その人から5点。
(相手は持ってるならそれを公開)
切札10枚/13枚の場合は公開、その他は非公開。
プレーは普通に行う。
ディール終了後、得点計算時のボーナスポイントは以下のとおり。
・相手の出したIを取る:5点
・相手の出したKを取る:5点
・1トリックでK2枚と愚者を取る:5点
・1トリックでK3枚を取る(オカルトタロット本には違うことが書いてあるが、誤記と思われる):15点
ディールごとに得点を計算し、そのディールの最下位からの差分をスコアとする。100点先取。
得点計算時に特殊なのは、「(3枚ではなく)2枚で1点」となるところ。


3.3 オランダのTarok (1846)
3人用。オリジナルランク。逃げ愚者(交換あり:トリックを持っていないと愚者を出せない)。ディールとプレイが「時計回り」。
28-25-25。カードの配り方は5枚ずつではなく、3枚ずつ(8週目は4枚)。
ディーラーの捨て札における制限はないが、たぶん単に書き忘れ。
手役は以下のとおり。誰から宣言するかは書いていない。
切札10枚:5点
切札9枚+愚者:5点
K4枚:5点
K4枚+愚者:10点
K3枚+愚者:5点
1スートのKQCJ:5点
1スートのKQCJ+愚者:10点
1スートのK+(QCJのうち2枚)+愚者:5点
マタドール(XXI, I, 愚者):5点
愚者は手役1つにしか使えない。
切札9枚+愚者の宣言者は26点取る必要あり(取れなかったらリファンド)。
プレイは基本的には通常通りだが、2人目が切札を出している場合、3人目にはマストラフ制限はかからない。
愚者リードは不可。最後の2トリックで出されたら、逃げ機能は失われ、普通に負け札としてとられる。
得点ルールは普通通り。各2者間で差額払い。


3.4 ベルギータロット(1890-1910)
3人用。オリジナルランク。逃げ愚者、交換あり。
28-25-25。切札とKは捨て札不可、ただし切札が3枚ちょうどだった場合はこれを捨ててもいい。
マタドール(XXI,I,愚者):15
1スートのKQCJ:8
1スートのKQCJのうち3枚+愚者:4点
K4枚:12点
K3枚+愚者:10点
K3枚:8点
K2枚+愚者:4点
切札10枚以上:切札の枚数x1点
手役は宣言時の公開義務なし。
愚者は最後の5トリックでは効力を失う。
Iを出したトリックで勝てば5点、負ければマイナス5点(最終トリックなら倍)。


3.5 ドイツの2人用タロット(19世紀。1840など)
28-25。残りはそのディールでは使わない。交換ありの逃げ愚者。ラスト3トリックでは(5、とする本も)愚者は効果を失う。
ルールは3人タロットに基本的に等しく、手役等も3人タロットに準ずる(3.1のルールや、4章にあるルールのもの)。
ディーラーの相手からプレイ。
ボーナスは以下のとおり。Kの入ったトリックを取ると10点(最終トリックなら15点)。Iの入ったトリックは15点(最終は25)。
スコアは差分ではなく取ったものをそのまま点数になる。本によって100点先取/120点先取で1セット。
120点先取の本には、相手が60点以上なら1vp、30-59点なら2vp, 1-29点なら3vp, 0点なら4vpというスコアリングで
支払いを決めるとある。


3.6 オランダの4人用タロット(19世紀)
時計回り。ディーラーの左隣から配って21-19-19-19。2枚捨て札。手役あり。手役の点はチームの2人両者が払う。
誰かが既に切札を出しているトリックでは、それ以降のプレイヤーにはマストラフは適用されない。
「3枚で1点」。端数は四捨五入。片方のチームが全トリック取った場合は点数が倍。


3.7 「Tarok-Whist」(1890年代ドイツ。ホイストとのルール上の繋がりはない)
固定パートナーの4人用。時計回り。ディーラーの左隣から式。21-19-19-19。Kと切札は捨てられない(愚者はOK)。
手役は4章で述べる3人用のものと同じ、とあるが、調整無しで使われているというのはやや信じがたい。
交換ありの逃げ愚者。ラスト5トリックでは、愚者は効果を失う。
4枚で1点。チーム得点が36点を超えたら、その分を記録。
4ディールで1ゲーム、差分を精算。点差が36点以上か負けチームが0点だったら、支払いは倍。
6ゲームで1セット。6ゲームを完全固定パートナーでやる場合と、2ゲームごとに入れ替える場合がある。
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by Taiju_SAWADA | 2015-09-24 01:47 | 雑題