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SPACE ALERT 日本語版プレオーダー募集

◆(2/23追記) 印刷プロセスは終了し、現在、輸送プロセスに移っています。

◆(1/24追記) 現在、印刷工程に入っています。印刷の完了は2月の下旬が予定されており、今のところスケジュール通りにお渡しできる形で進んでおります。

◆寄付つきプレオーダーにご応募いただいた皆様へ、お支払いのご案内を12/16 12:28に一通送信しております。ご確認いただけますようよろしくお願いいたします。

◆製作決定いたしました。12/17以降、順次ご連絡を行わせて頂きます。
◆一般販売も実施しますが、当初ご案内しておりました「予価5800円」につきましては実現が困難な状況のため、希望小売価格は税別7429円(税込7800円)とさせて頂きます。大変申し訳ありませんが、ご了解いただけますようよろしくお願いいたします。

◆17日0時をもちまして、プレオーダーを締め切らせていただきました。
◆合計254個のプレオーダーを頂きました(寄付込みで目標額の約182%)。ありがとうございます。

◆17日0時までに頂いたメールには全て返信させて頂いたものと認識しております。返信を受け取られていない方は、大変お手数ですがその旨ご連絡いただけますようお願いいたします。

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突然のことで恐縮ですが、プレオーダー募集のご案内です。

SPACE ALERT というゲームがあります。 2008年に出版された協力ゲームで、最大の特徴は「CDの音声で与えられる指示に従いながら、10分間の時間制限の中で何だか随分いろんなことをやらないといけない」というところにあります。けっこう前のゲームなので、インターネット上でレビューやプレイレポートを書かれている方も多くいらっしゃいます。

遊星からのフリーキック
http://ter.ath.cx/yusei/yuseiki/スペースアラート

ふうかのボードゲーム日記
http://fu-ka.livedoor.biz/archives/937102.html

作者Vlaada Chvatilにとっても代表作の一つに数えられ(他の代表作としてダンジョンロードやThrough The Agesなど)、受賞歴などもそれなりにあるゲームなのですが、いかんせん外国語で流れてくる音声を聞きながら外国語で書かれたカードを読まないといけない、というたいへん言語依存の強い仕様となっており、日本ではそれほど遊ばれているとは言えない状態にあります。

私はこの「SPACE ALERT」のことを大変重要なゲームだと考えているので、っていうか大好きなので、音声データを作ってBoardGameGeekにアップロードしたりとかしていた(この音声データはゲームストア・バネストやアークライトから販売されている輸入版にも添付されているとおもいます)のですが、結局のところ日本語版を作らんと誰も遊んでくれんのと違うかという話になり、日本語版を作ることにしたのです。これが2010年末ころのお話。

ということで紆余曲折を経て2年が経過し、出版元Czech Games Edition社の協力を得て、カード・音声・ルール・ハンドブック・箱と全ての日本語版データを作成するところまで完了しました。そして完了したところで気がついた。

印刷する金のあてが無い。

いや、正確には、貯金を全部はたけば無いわけじゃないのですけれど。でも貯金を全部はたいて刷って売れなかったら直行で文無しになってしまいます。例によってNew Games Order社に持ち込んで企画を立てているので版権交渉とかはNew Games Order社で実施しているのですが、メーカーとしてショップに販売して利益が出るかというと、原価率がたいへん高いので絶対に出ないのです。そんなわけで「名義とバーコードは貸してあげるけど他は一人でやってね」という話になっておりまして。

というわけで、前置きがたいへん長くなりました。「スペース・アラート日本語版」プレオーダーのお願いにやってまいりました。

だいたいどんな感じのデータになっているか、という点については、文末に画像を数点載せておりますのでそちらをご覧ください。音声につきましては、BoardGameGeekに載せた合成音声のものではなく、人間の女性の声を用いています。こちらもサンプルを用意しましたのでお聞きいただければ。原語版やBoardGameGeekに載せた日本語音声と比べて、ゲーム中の聞き取りやすさを優先した作りになっています。

サンプル音声

一点お断りが必要です。中に入っているCDは、音声CDではなくMP3 CDとなっています。これはコストダウンのためで、つい先ごろ発売されたフランス語版と同じ仕様となっています。同じくコストダウンのためシナリオカード16枚も付属しない(インターネットからダウンロードすることで代用)という形になっているのですが、これについては無いと寂しいものなので、プレオーダーしていただいた分については特典として、こちらで別途刷ってお付けします。


それではプレオーダーの仕様です。


【プレオーダー】
◆価格:5800円 (税込・離島等一部地域を除き送料込)
◆申込期限:2012/12/16
◆支払方法:銀行振込(製作確定後に振込先をご連絡します。振込期限は1月中旬を予定しています)
◆受渡予定:2013年5月上旬(やや早くなるかもしれません)
◆特典:シナリオカード16枚
◆申込先: preorder@newgamesorder.jp に下記の事項をご記入の上メールをお送り下さい
◆ご記入事項:
 ・住所(※)
 ・氏名(必須)
 ・メールアドレス(必須)
 ・電話番号(※)
 ・個数(必須)
※ご住所と電話番号につきましては、最初にメールを頂く段階では未記入でも問題ありません。未記入の場合、製作が確定した際に改めて伺います。

【プレオーダーは締め切らせていただきました。ありがとうございました。】

予定数は最大で500部、これは(あるかもしれないし無いかもしれない)一般販売分を合わせた数です。
一般販売を仮に実施する場合、販売価格は原則としてプレオーダーと同じ5800円を予定しています(一般販売分にはシナリオカードは付属しません)。

【2012/12/3追記:冒頭でのご案内の通り、一般販売を実施いたします。金銭的な事情により、一般販売の希望小売価格は当初予定の税込5800円ではなく、税込7800円となります。申し訳ありません】

申込期限が来た時点で十分なオーダーが集まらなかった場合、製作を断念する形になります。製作できるだけのオーダーが集まった場合に限り、その旨のご連絡を兼ねてお支払先をお伝えします。

ここで「十分なオーダー」というのは送料+80万円くらいを想定しているのですが、どうにもこれだけだと届かない気がしてならないので、大変浅ましいのですがもう一つオプションとして「寄付つきプレオーダー」というのを用意させていただけませんでしょうか。

【寄付つきプレオーダー】
◆価格:10000円(税込・離島等一部地域を除き送料込)
◆申込期限:2012/12/8(通常のプレオーダーより期限が1週間早くなっています)
◆支払方法:銀行振込(製作確定後に振込先をご連絡します。振込期限は1月中旬を予定しています)
◆受渡予定:2013年3月上旬(刷り上がり次第空輸で持ってくるので、通常のプレオーダーより早くなります)
◆特典:シナリオカード16枚。加えて、下箱の側面に、"出資者"としてお名前を記載します(お望みでない場合はその旨ご連絡下さい)
◆申込先: preorder@newgamesorder.jp に下記の事項をご記入の上メールをお送り下さい
◆ご記入事項:
 ・住所(※)
 ・氏名(必須)
 ・メールアドレス(必須)
 ・電話番号(※)
 ・個数(必須)
 ・出資者としての名義(本名をご希望の場合はその旨をご記入ください。ご指定がない場合は記載いたしません)
※ご住所と電話番号につきましては、最初にメールを頂く段階では未記入でも問題ありません。未記入の場合、製作が確定した際に改めて伺います。

【寄付つきプレオーダーの募集は締切いたしました】


ご不明な点がありましたら preorder@newgamesorder.jp までお問い合わせ下さい。

以上、ご検討いただけますよう、是非ともよろしくお願い致します。



◆追記(2012/11/22)◆

製作未決定の現段階で住所や電話番号を記入必須とする必要は無いのではないかというご指摘を頂きました。このご指摘を受けまして、住所と電話番号についてはご注文を頂く段階では未記入で問題ない旨を追記しました。

なお、頂いた注文メールにつきましては、当然のことですが、他の用途には一切使用しません。ゲームの受渡しが完了した、または製作しないことが確定した時点から2ヶ月以内に削除します。

preorder@newgamesorder.jp 宛に送ったメールが宛先不明で戻ってきてしまうというご報告を頂いています(特にOCNをお使いの方からご報告頂くことが多くなっています)。このような場合は、 tsw@yahoo.co.jp までお送り下さい。 tsw@yahoo.co.jp にお送り頂く場合、表題に「スペースアラート日本語版プレオーダー」と入れていただけると助かります。


◆追記(2012/11/23)◆

寄付つきプレオーダーにおける出資者名義は、団体名・サークル名・ウェブサイト名などでも問題ありません。名義の変更を行いたい方はご連絡いただけますようお願いいたします。

特定商取引法に基づく表示が必要ですねとのご指摘がありました。
下記の通り、よろしくお願いします。


■特定商取引法に基づく表示■

販売業者: 合同会社ニューゲームズオーダー
運営統括責任者: 山根 敬弘

所在地:郵便番号190-0023 東京都立川市柴崎町3-10-6 イチカワビル2F

◆商品代金以外の必要料金
・配送料金:離島など一部地域を除き、表示されている商品代金に含まれます。
・消費税:表示されている商品代金に含まれます。

◆引き渡し時期
・商品案内の欄をご覧ください。
※災害の流行などにより、お届け期間、お届け方法が変更になる場合がございます。

◆お支払い方法
・銀行振込

◆返品・交換の対応
商品到着後、お客様のご都合による返品・交換は原則としてお受けしておりません。ご了承ください。
お届けの際、商品を構成する部品に劣化・破損が起こった場合には、同等の部品を再度届けさせていただきます。
※万一、該当の部品に在庫切れが発生した場合、ご返金による対応とさせていただきます。





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by Taiju_SAWADA | 2012-12-16 12:28

重要タイトルで振り返る捏造ドイツボードゲーム20年史(part5)

わたくしの休日を際限なく食い潰してきた迷惑極まるこのシリーズもやっと最終回でございます。最後はドミニオンと七不思議。最後どう見ても七不思議もう関係ないよねって話題に流れていますが、このシリーズを書くきっかけになった本『西洋音楽史 「クラシック」の黄昏』(岡田暁生/中公新書)もそういう構成なので、オマージュ的なものだと思ってください。



ドミニオン | 2008

ここまでプエルトリコからルイ十四世を挟んでケイラスと、終わる過程を振り返ってきたわけですが、最終的にドイツゲームに死を宣告したゲームは言うまでもなくこちら「ドミニオン」です。どの辺がそうなのかということで、このシリーズの原則通りに外側から見ていきますと、まず作者がニューヨーク在住のアメリカ人、企画出版社がアメリカ(Rio Grande Games. 御存知の通りRioは欧州系の翻訳を本業としているので純粋な米系とは言えない側面がありますが。なお、このゲームはHans im Gluckの企画ではないのでお間違えなきよう)、使用しているシステムのベースがMagic: The Gathering由来で強力な特殊能力ベースの構成。清々しいくらいにどこを取ってもドイツでは無いわけです。ドイツっぽさが残っているとすれば印刷会社が欧州系で箱がカタンサイズというくらいじゃないでしょうか。ちなみにアメリカ人がアメリカのメーカーから出したゲームがSpiel des Jahresを取った例というと一応03-04シーズンの「チケット・トゥ・ライド」がありますが、これは作風が純欧州でそもそもMoonは作風から言えば名誉ドイツ人的なアレですんで、となるとその前は92-93のブラフ(ライアーズダイス)まで遡ることになります。SdJが次のシーズン以降2回連続で「あ、そこに賞を出すんだ?」的な授賞を行ったことも、SdJ/ドイツゲーム業界の果たした役割が終わった、と感じさせる外形的な要素とは言えるでしょう。

さて、そのドミニオンが採用したシステムについて、これはドイツゲームのシステムとは到底いえないのですが、一方で「いわゆる」アメリカの標準的なスタイルともかなり違うものです。先ほどドミニオンのシステムのベースが「M:TG由来」と書きましたが、実際のところドミニオンはM:TG/CCGのシステムを直接採用してはいません。それだと単に別のCCGとか"Blue Moon"(2004)ができあがるだけですし。そうではなく、M:TG/CCGのエコシステムをルールの源としています。これによって、大雑把に言えばソフィスティケイテッド・アメリカなんだけども、でも既存のアメリカのゲームを直接ソフィスティケイトして出来上がるものとは明らかに異なる、そういうルールを作ることに成功しました。これは重要なことで、というのはドイツゲームはこれまで振り返ってきた通りかなり狭い範囲でゲームシステムを捉える作法であってそのことが徐々に進む停滞の原因となっていたわけですが、じゃあ何でアメリカ系のシステムに振らなかったのかといえば単純にそっちはもっと前から停滞していて見るべき進歩がどこにもなかった。半笑いでというよりはクリアな嘲笑と共に語られる「アメゲー」というやつですね。カタンのところでソフィスティケイテッド・アメリカという句を使ったように、アメゲーに対してドイツ的洗練によって何かが産まれないかという試みはずっと行われていて、でも後継のシステムを次々と産み出すインスピレーションの源になるという意味での成功は(カタンも含め)これまで無く、このドミニオンが初めてのブレイクスルーということになります。CCG/のエコシステムをこのような形で参照すれば、いままでとは違う絵を今までの伝統の上に描くことができる。それが解った(参照すべき成功例が存在する)今ならば、その方法のリトライも行われるでしょうし、別のソースからゲームを産み出す試みも行われるでしょう。道が開かれた以上、停滞する狭い概念に固執する必要はどこにもありません。エルグランデがドイツ・ゲーマーズゲームの源となったのとほぼ同じ意味で、ドミニオンはポスト・ドイツゲームの源となるものと思われます。

…本来であればここは「源となったのです」と締めたいところなんですが。そうでないと殺された立場であるほうのドイツゲームも浮かばれません。ただ現状は未だそこまでたどり着いておらず、端境期の混乱が続いています。さすがにドミニオン・クローンの乱造みたいな恥ずかしい事態は落ち着いて来ましたが(※)、まだドミニオン自体の咀嚼が続いていて「ネクスト!」って感じにはなっておらず、一方でルイ十四世〜ケイラスの非-ドイツ的手法はそのまま何となく狭い所で市民権を得ていて、ちょっと次が見えてないということが2011エッセンにて浮き彫りにされた感のある2011年11月現在。その中でネクストを宣言し得る可能性と現状のあからさまな停滞とあれやこれやが詰まった現在を象徴する作品を取り上げて、このシリーズを締めることにしましょう。ということで最後の作品、 "7wonders" です。

(※)エルグランデは結構へんな要素がごってり盛り込まれていてそこも面白いゲームだったのでまだクローンの乱造も耐えられなくはなかったのですが、ゲーム単体として見たドミニオンはこれ以上削ると成立しなくなるぎりぎりのところまでの洗練を行っていてそこが大きな魅力なので、考えなしにクローンを作るとそのまま考えなしのゲームにしかなりません。正直なところドミニオン本家の拡張にもその問題が発生しつつあるような。



七不思議 | 2010

七不思議はまだ発表から1年しか経ってないので、重要な作品かそうでないかを判断するには早過ぎるのですが、ドミニオン以降のゲームデザインを明示した(実のところ数少ない、メジャーではおそらく唯一の)ゲームだということと、あと直前で述べたとおりドミニオン以降のゲームシーンをわかりやすく表したゲームなので、締めとして取り上げることにしました。

七不思議はご案内の通りCCGにおいて一般的なカードドラフトを基本構造に置いているゲームですが、「単純にドラフトをドイツゲームに持って来ました」だけだとMoonのSan Marco(2001)とやってることが大差ないのでして。前述の、着眼点を変えることでアメゲー(CCG)由来のシステムを新しいものと見立て直すという意味でのアフター・ドミニオン性は、このゲームの速度にあります。七不思議ってルール説明が結構たいへんで20分くらいかかるんですけど、ゲーム進行の全プレイヤー並列処理が徹底されているので、ゲーム時間も20分くらいしかかからないのです。ルールから普通に予想されるよりもゲームのテンポが強烈に速く、それも割と機械的に作業Aと作業Bを繰り返す形で進んでいくので、ちょっとしたトリップ感を伴ってあわあわと20分間が過ぎていき、終わったときにはさてこのゲームは何だったのかしらと何も残らない空虚感を味わえます。つまりこれ、競争(ルビ:アゴーン)のゲームであるのと同等以上に眩暈(ルビ:イリンクス)のゲームなんですね。ここで大きく取り上げられているのはカードドラフトのゲーム性というよりはカードドラフトが持つ独特のビートであり儀式性です。ドミニオンのあと2年かかったとはいえ、ゲーム製作においてそういう「プレイ風景まで込みでゲームを捉えて再構成すること」という手法によるヒット作が出て、それによってポスト・ドイツにおける一つの方向性が打ち出されたこと。これは七不思議の功績です。

ところで七不思議にはもうひとつ、こっちは括弧付きになる「功績」があります。前項ドミニオンのところでドミニオン・クローンの恥ずかしい乱造の話をしたのですが、たぶん七不思議についてもこのあとクローンが大量に出てくるものと思われます。で、こっちの七不思議クローンについては、出てくるゲームが多分そんなに恥ずかしい感じにはならない。なんでドミニオン・クローンの多くが恥ずかしいかといえばドミニオンが削りに削って作られた素敵なゲームだという事実を無視しているからなんですが、七不思議はさっき少し触れた「ルール説明20分」でも分かる通りぜんぜんルールを削っていない上に、イリンクス性を敢えて無視して普通の落ち着いたカードドラフトゲームとして冷静に眺めると、そんなに面白いわけじゃない。誰だって、とまで言うと言い過ぎでしょうが、気の利いたゲームデザイナーであればこれを「競争(アゴーン)のゲームとして」面白くすることは普通に可能ですし、その際には90年代的な純ユーロに寄せることも、元のM:TGに立ち返って特殊能力ゲームにすることも、あるいは七不思議の路線をあまり変更せずに矢印ゲーっぽく作ることも(七不思議自体は矢印ゲーじゃないですが、ちょっとした変換で矢印ゲーにできるというのは簡単に想像できると思います)できます。ここには相当な自由度が用意されていますので、カードドラフトというのがワーカープレースメントみたいな1ジャンルを形成してしまう可能性があります。

ただ、これってあんまり良いことでもないよなー、と思うのでして、まあ七不思議が速度を失うとそんな面白くない、ってのはいいと言えばいいんですが、みんなが七不思議の改良の方向を向くと「プレイ風景をアイデアの源とする」という肝心のところが抜けていってしまいます。さらに、現在の「説明に20分かかる七不思議」「なんか矢印の匂いがする七不思議」を前提として改良ということになると、どうしたって現状を考えると全力で改良ですら無い市場におもねった矢印ゲーが乱造されるだけなんじゃないのか、という心配があります。

だいたい市場への目配せという話ならば七不思議自体が相当にそっちに寄ったゲーム構造をしているのです。ドイツゲームからポストドイツゲームへの流れは、前回までに申し上げたような構造の転換という話とともに、もっと単純に「ゲームのルールがめんどくさくなる」という側面が当然あります。ファミリー層はそういうめんどくさいルールのゲームを好まない傾向がありますんで、ファミリー向けにはファミリー専用設計のゲームがあてがわれ、そうするとこちら方向に対しては当然「ファミリーじゃない層」としてのマーケティングが行われることになります。ここでファミリーストラテジーというカテゴリの崩壊が起きるのですけどもそれはさておき、こっちの「ファミリーじゃない層」がそのままボードゲームマニアのことを指すのかというと、そんなところをポイントしていてはメーカーがそれなりの規模で食っていけるわけがありませんから、もうちょっと大きい市場、つまり「ルールが猥雑で、その中で俺無双できると嬉しい層」をターゲットにしたゲームが作成されることになります。この層の市場についてはご存知のかたも多いでしょう、各方面(CCG, TVゲーム, RPG, 漫画, etc.)で相当な研究が進んでおりまして、例えば日本のCCGメーカーである株式会社ブシロードのデザイナーの方がこの層に向けたゲームデザインの鉄則を講演で述べられています。このサイトでも議事録へのリンクを貼ったことがあります(「せっき〜のゲーム屋さん」より http://sekigames.gg-blog.com/Entry/102/ )。一行でまとめると「勝ったら実力、負けたら運。そのためにはルールの複雑化も受容」という内容です。じゃあってんで七不思議のデザインを見ますと、これがモロにそういう作りになっています。

この層へのマーケティングでゲームを作ることの問題は2つあり、ひとつはこれまで述べてきた事につながる話で、ゲームデザインがどうしても保守化すること。「この層への」というよりはマーケティングでゲームを作ること全般に関する問題ですね。で、もうひとつは、ボードゲームである必然性が全く無くなることです。いま述べたとおりこの層へのマーケティングは各方面でものすごーく進んでいますから。そこにボードゲームが新参で入ってきたところで、最初は開店セールでそれなりのお客さんも呼べるかもしれませんが、一回転目が済んだらもうその店に行く意味ないよね完成度低いし、ということで終わってしまいます。お客さんをとりあえず呼んできた所で、実はうちにはスペシャリテがありまして、とやれれば良いのですけど。そのスペシャリテを開発できるはずのメソッドを(ドミニオンに続くことで)確立した功績を持つ「七不思議」というゲームは同時に、メーカー側から見ると単に「客が喜ぶ柔らかいもの出せば店も畳まないで済むかも」という形でしか受け止められない可能性を持っていて、しかしそういう危険な可能性を持つことで初めて七不思議は注目されるゲームになり得た。ここまでのぐらんぐらんした記述にお付き合い頂いた皆様にはお分かりの通り、わたくしはこのゲームに対して相当にアンビバレントな感情を持っています。

そして1年。業界の雲行きはどうにもよろしくないようです。まだボードゲームがやらなきゃいけないこと、ボードゲームでしか引き受けられないことは結構残っていて、ご新規の方々もそれを期待していらしているはずなのですけれど。



(おまけ)

取り上げたかったんだけどねー、とか、取り上げたくなかったんで、とかそういうコーナー。

フェレータ
役割秘密選択システムを採用した「最初の」ゲーム。役割秘密選択じたいが「操り人形」までで止まっちゃって潮流にならなかったので取り上げられませんでした。無理やりプエルトリコのところまで繋げちゃうという手も無くはなかったのですが。

ちなみに。カサソラ=メルクルの作品はどれも採用しているベースシステムの歴史的な位置付けと、それに対していまこのゲームで何をトライしているかという目的意識が明確なので、今回のシリーズで取り上げたような視線をもって遊ぶと面白いと思います。もっと言うと、この人のゲームに関してはそのへん、ルールに含まれる批評性を意識しないと遊んだことにならないとすら言えます。

魔法にかかったみたい
バッティングゲームのルネサンスになるはずだったんですが、後続が全く出ませんでした。個人的には、面白いゲームを出すメーカーとしてのaleaの遺作、ということになっています。

古代 (Antike)
Antikeに始まるロンデルシステム(と、その系としての「マチュピチュの王子」)は素敵なシステムで、ワーカープレースメントみたいにもっと解析が進んでもいいと思うんですが。作るの難しいんですかねー。

ルイ十四世
明らかに重要なゲームなので本当は一項立てて取り上げなきゃいけないんですが、各項で言及するのみにしました。たいして面白くないんですものこのゲーム。どう重要かについては本文に書いたとおり。

カルカソンヌ
ゲーマーズゲームからファミリーゲームへの揺り戻しそして二極化へ、という意味ではまあ重要なんでしょうけども、あとカタンの次くらいにくる大ヒットゲームなので取り上げるべきという話もあるんですけど。ミープルが可愛いとかタイルのサイズがちょうどいいとかそういうところ(そういうところに凝る流れを決定的にしたゲームではあります)はともかくシステム的には見るべき所が何もないっつうかマルチゲームとしては旧エントデッカーの劣化コピーでしょこれ、というので無視。あ、二人用でタイマー使えば割と面白いです。


第一回は第二回以降と比べて記載がだいぶ甘いです。それでもカタンについてはこれ以上わたくしの側から言うべきことは別にないんですが、わたくしの最愛のゲームのひとつであるモダンアートについては、現状のようなおざなりな記述で済ませるわけにはいかんよなあ、とは思っています。いや、元々はどのゲームについてもモダンアートくらいの記載レベルで行く予定だったのです。こんな手間かかることになるとは。
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by Taiju_SAWADA | 2011-11-21 01:54