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素人の素人による素人のための2009/48/ECアンドEN71メモ(※ボードゲーム同人専用

《ディスクレーマー:本文書は素人が書いた文章であり、記載内容について何ら責任を負うものではありません。At your own riskでお読みください。いや言うまでもないとは思うんですけどね》


EUで玩具を売る際は、規制をクリアして、その証明としていろんな文書の作成と、加えて製品自体にCEマークを付与する必要がある。EUの定義ではAges 14+のマニア向けコレクターズアイテムは玩具に含まれないはずで、日本からEssenに百部限で持って行く怪しげなカードゲームなどは実態としてマニア向けコレクターズアイテム以外の何物でも無いはずなんだが、なぜか今年からドイツの官憲が点数稼ぎだかなんだか不明の理由によりこれは断固として玩具であると言い張るようになったらしく、まあ仕方ないのでCEマークを頑張ってつける必要があるのだが、百部限のものに一々検査機関なんか通してられるか自分でなんとかしたる。

という人のためのいんたーねっとりそーすへのポインタです。

このプロセスは一般に「CEマーキング」と呼ばれており、玩具に限らず、全体の流れはこんな感じになります(都立産業技術研究センターのページ)。
http://www.iri-tokyo.jp/site/mtep/ce-general.html


まず規制の根拠となる指令そのもの、2009/48/ECはこちらです。
http://eur-lex.europa.eu/LexUriServ/LexUriServ.do?uri=OJ:L:2009:170:0001:0037:en:PDF
ちなみに、「2009/48/EC 和訳」とかで検索すると、和訳を売ってる人もいることがわかります。

で、作らないといけないドキュメントは下記の2つ。
・自己宣言書 Declaration of Conformity
・技術文書 Technical Document
これをいつでもすぐ官憲に見せられるようにしなきゃいけないわけですね(厳密に言うと技術文書の一部はすぐじゃなくていいんですけど、まあでも、どうせDropboxあたりに入れて管理するんだし一緒でしょう)。10年間保存マストです。

自己宣言書は、私どものこの製品はEUのこの規制(2009/48/EC)、具体的にはこの文書(EN71の諸々)で書かれたていることに適合しておりますよ、という宣言ペーパーです。一枚物の紙で、書かないといけないことは決まってますが、フォーマットは定まってません。
技術文書は、その宣言の裏付けとなる内容です。内容物の詳細な説明とか製造過程の説明とかテスト内容とかそういうやつ。こっちも書くべき事は決まってますがフォーマットは定まっていません。

この件に関するEU当局謹製の解説。それぞれgoogle検索すると出てきます。
Toy Safety Directive 2009/48/EC An explanatory guidance document
Toy Safety Directive 2009/48/EC Technical documentation


まずは自己宣言書ですが、勝手がわからないのでサンプル自己宣言書がほしいところです。さっきの当局謹製解説にも載ってたはずですが、EN71 Declaration/of/Conformity でGoogle検索するといろんな会社のDeclarationがいっぱい出てくるので、適当なものをまねるとよい。です。

サンプルとしては、見た中ではここのがわかりやすかったです。
https://www.logo.ee/et/product/getdocument/10025584/P940.55%20CE_Declaration.pdf

hobbycraft.co.ukなる親切なイギリスの手芸店的なところが、なんと玩具を作りたい人のために簡単な解説と自己宣言書のテンプレを用意しています。そのまま取ってきましょう。
http://www.hobbycraft.co.uk/toy-safety
http://www.hobbycraft.co.uk/supplyimages/WF1041/toysafety-declaration.doc

ようは大体以下のようなものを書けばよいと。

******

EU DECLARATION OF CONFORMITY


[This declaration of conformity is issued under the sole responsibility of:]

Manufacturer/Distributer's Name: Late Toccobushi Game Club
Manufacturer's Address: 2-28-8 Midori-machi, Musashino-shi, Tokyo, 180-0012 Japan (※これは東京都武蔵野市役所の住所なので真似して書かないように)


[Product Identification]

Product Name: Square on Sale
Product Number: TCBS-001
Product Description: An intellectual board game of auctions, mainly for adults (Ages 14 and up). Children of ages 12-13 also able to play with appropriate adult's guidance.


[The products mentioned in this declaration are in conformity with:]

EU Conformity Legislation:
2009/48/EC Toy Safety Directive (TSD)
Relevant harmonised standards:
EN71-1:2014
EN71-2:2011+A1:2014
EN71-3:2013+A1:2014
EN71-9:2005+A1:2007
Other specifications:
(none)
Notified body (where applicable) [公認機関]:
(Not applicable)
Additional information:
(none)

[Signed for and on behalf of:]
Place and date of issue: Tokyo, 01-Aug-2017
Signature [署名]:
Name and Title: Taiju Sawada, President
Company Name: Late Toccobushi Game Club

*****

上記を見ると、EN71というのがひとつではないことに気づくと思います。現在EN71はpart1からpart14までに分かれています。
1: 機械的・物理的特性
2: 可燃性
3: 特定物質が手とか口とかに移ることについて
4: 化学実験器具とかそういうやつについて
5: 実験器具じゃない化学玩具について
6: 警告用ラベルに関する規定
7: フィンガーペイント(指で描く絵の具)
8: ブランコとか滑り台とかそういうやつ
9: 有機化合物(要件)
10: 有機化合物(サンプルの用意)
11: 有機化合物(分析方法)
12: ニトロソアミン(発癌性物質のひとつ。口に入れるもの)
13: 匂いを嗅ぐ系ボードゲーム、化粧品、味覚に関するゲーム
14: トランポリン系

まあこれを見ると、匂いを嗅がない系のボードゲームであれば、関係しそうなのは1, 2, 3, 6, 9~11くらいかな、となるでしょう。
実際その通りなんですが、6のラベルの規定(かの有名な3歳児以下絶対禁止マークがこれですね)は今は別のpartのところに書いてあるので、
このpart6自体は欠番になっています。
それはいいとして、「EN71-2:2011+A1:2014」みたいに、[2011+A1:2014]とかよけいな何かがくっついたりしてますが、これは規制文書のバージョンです。割と頻繁にアップデートがかかるんですね。とりあえず上記のは2017年現在での1, 2, 3, 9 の最新版です。

いまどの文書が最新かというのは調べ方はいろいろありますが、とりあえずは英国規格協会の規制文書販売サイト(「販売」!)
https://shop.bsigroup.com/
で「EN71-1」とか検索するといろんなバージョンが出てくるので、名前からして最新、というものをピックアップすればよいです。
ちなみに上記の通り英国では公の組織がくそ高いお値段で売ってる一方、「EN71-1 PDF」とかで検索すると、なんか普通にダウンロードできたりするんですが、これは別にいいんでしょうか本当はよくないんでしょうか。民間の文書なら明らかに良くないわけですが、でもこれEUの規制文書だしなあ。日本で言えば内閣府令が3万払わないと読めないみたいなやつでしょ? それはどうなんだ。

ところでチェックする対象となる指令は本当に2009/48/ECだけでいいんでしょうか。実際の所よくない場合があります。巨大な音を出したり鉛的な金属を使ってそうだったり、電気仕掛けだったり(RoHS!)、まあ諸々の理由がある場合、それ用の指令も満たす必要があります。でもまあ、いわゆるごく普通のボードゲームであれば、2009/48/ECだけでいいんじゃないでしょうか。この点についてはまたあとで触れます。

とりあえず自己宣言書の話は終わったので技術文書のほうにいきましょう。
前掲「Toy Safety Directive 2009/48/EC Technical documentation」に説明されている(特にp18-19の表とそこからのリンク)ので、それを読めばいいんですが、

検査機関に全面的にお願いするのではなく概ね自分でなんとかすることに決めた場合、技術文書というのは以下のものを含んでる必要があります。
・デザインと製造に関する詳細説明。各コンポーネントのリスト(ボードゲームの説明書に書いてあるやつ)、そのリストされた物品のそれぞれについて、材質とか、あとケミカル的な要素を含む場合は安全性に関するデータシートとか。説明書自体もこれに含みます。印刷所に出してる場合は印刷所に出した仕様とか。
・安全性評価シート。これは前述のhobbycraft.co.ukが実例を用意してくれています。たいへんわかりやすいのでありがたく使うとよいです。http://www.hobbycraft.co.uk/supplyimages/WF1041/toysafety-assessmenttemplate.xls
・製造場所と保管場所の住所。立ち入り検査するためでしょう。
・自己申告書のコピーも技術文書に含めます。
・検査機関も使ってる場合は当然、検査機関によるOKとかレポートとか、あと検査機関に提出したものとか。
・適合性評価について、実施した手続き(デザイン編)。
・適合性評価について、実施した手続き(生産編)。

技術文書の書き方は、玩具以外のCEマーキングについてならば、日本語でもいろいろな情報があります。
http://www.meti.go.jp/policy/chemical_management/reports/H25_sc_tyousa4.pdf
https://www.jetro.go.jp/ext_images/jfile/report/07001771/cemarking_201403.pdf
上は経産省、下はジェトロの文書です。基本的にこのひとたちは玩具などというどうでもいいものには振り向いてくれないんですが、それでもジェトロの文書の37頁から39頁は、だいたいどういうものを用意すればいいか書いてあるので読むといいでしょう。

でもってこの規制の話全体の本編が「適合性について、実施した手続き(デザイン編)(生産編)」です。ちなみに、印刷所とかに生産(でもデザインでも)を丸投げした場合でも、このドキュメントを製作する責任はあくまでも依頼者側にあります。
デザイン編では、生産者は
・必要な要件がどれであるか同定する
・適切な分析とリスクアセスメントを行う
必要があります。
生産編では、生産者は
・それに沿うことによって生産物が法の要求を遵守している、生産プロセスがそのようなものであることを確保するために必要なあらゆる手段を取り
・詳細なテストとコントロールを行い
・製品のアウトプットが要求通りのものになっているかモニタする
必要があります。
当然、その中で、ブツがまともであることを確認するために行ったテストのレポートも、ドキュメントの一部として必要になります。

このふたつのうち、デザイン編はそれでもがんばって書こうという感じの起きるものですが、生産編はどうしたもんかって感じが漂います。生産管理がしっかりしていれば、仮に事故が起きてリコールになった場合でもリコールの範囲を特定できるが、そうでなければ全部リコールになるのだ、みたいなことが前掲のガイダンスに書かれているんですが、もうこの記述自体が、同人ボードゲームなどというものを全く想定していないことを顕わにしているわけで。こっちは一回500部刷ったら次の刷はどんなに早くても半年後だよ、というね。どんな小さなリコールだって500個ってこたないだろうと。まあそんな訳なので、第何刷かをパッケージにきちんと記載するということをデザイン的に確保した上で、
「刷ごとに、いつ刷るか、自分で組み立てるならどこのパーツをどこからいくつ買って作るか、印刷があるならどこの印刷所に投げたか記録して保存する」
「刷と刷の間は最低3ヶ月あけることにより、ごっちゃになることがないようにする」
「印刷所を使う場合、刷り上がったものについては2~3個ランダムサンプリングで開封し、清潔さのチェック、要求仕様通りであることの確認、物理的形状に危険の無いことの確認を行う」
「EN71-2/3/9の対象物をパーツとして含む場合、パーツの供給元から証明を受け取るか、あるいは自ら検査機関にかけてチェックする」
あたりを書いておけばいいんじゃないかと。

ということで生産編はてきとうにお茶を濁してデザイン編です。
デザイン編でまずやるべきことは、まず自分の作るものがEN71-1/2/3/9以外の対象に明らかにならないこと、また2009/48/EC以外の対象に明らかにならないことを確認し、それを記すことです。これは材料上のコンセプトとプレイ上のコンセプトを決めてしまうことでわりあい容易に達成できます(シュリンクとか、駒を梱包しておくビニールとかは、一回開封したら捨てるものであることを前提として、規制対象外になります)。
・比較的高度な算術や推論を要する知的なボードゲームであり、8歳未満の児童が遊ぶには明らかに適さないものにする
・電気的なものは使わない
・粘土とかそういう引っ付くものは使わない(ゲーム上使う場合もコンポーネントには含めず、ユーザに用意させる)
・嗅いだり口に入れたりとか論外
・鉛筆とかクレヨンとかも同様
・体(とくに頭)なにか近づけたり巻いたり着けたりとかしない
・原則として印刷された紙(ニスまたはポリプロピレンのコーティングを含む)と厚紙のみを用いる
・補助的に、ガラス、木材(ペイントを含む)、アクリル樹脂、ユリア樹脂を用いる(この辺は増やせば増やすだけ検査が面倒なので注意)
・長辺が10cm未満のジップロック袋は用いてよいが、10cm以上のものは使わない(というかジップロックは入れない方がいい)
・巾着袋はできれば入れないほうがいい(紐の長さに関するテストが必要)。チット引きをやる場合でも、外箱を使わせるか、紐の無い袋を用いたほうがベター。
・金属は一切使わない(説明書は規制の対象に含まれないが、コンセプトは貫いたほうがいいので、ステープラーも使わない)

特に、一切が紙と厚紙だけでできているように設計されていると、ほぼ何も検査しなくてよくなるので、話がとても楽になります(紙のコーティングに何を使ったかと、インクが何インクであるかを聞いておく必要があるかな、くらいですかね)


上記のコンセプトを決めることで、なにゆえ2009/48/ECだけでいいのか、なぜEN71-1/2/3/9だけでいいのか、ということを書くことができます。
ということで書いてみましょう。

2009/48/ECは「ニューアプローチ指令」というものの一部です。さっきのジェトロの文書のp.10-11に、ニューアプローチ指令の一覧がありますので、この中で自分のプロダクトが明らかに2009/48/ECのみ適用で問題ないことを示しましょう。

1. 2009/48/EC 玩具安全: 対象
2. 89/686/EEC 身体保護用具: 明らかにボードゲームには関係ない
3. 90/385/EEC 埋め込み式農道医療機器: 明らかにボードゲームには関係ない
(中略)、
16. 2006/42/EC 機械: 機械的な機構を含まないタイプのボードゲームなので関係ない
17. 低電圧電気機器: 電気機器を含まないタイプのボードゲームなので関係ない
(後略)

こんな感じのことを英語で書いておくとよいと思います。同様のことをEN71-nについてもやりましょう。

それではEN71-1/2/3/9について見ていきます。

EN71-1は8章+Appendixの構成ですが、基本的には第4章、第6章、第7章だけ見ていればよく、残りは必要に応じて参照すればよいです。4章が一般的な要件、6章がパッケージに関する要件、7章が警告表示に関する要件です。

4.1 物品の清潔。検品のときのチェック項目に入れましょう。
4.2 組み立て玩具。ボードゲームでも型抜きとかこの厚紙とこの厚紙を組み合わせてくらいのことはやりますが、ここで書かれているのはそういうことではなくもっとがっちりしたおもちゃのことなので、ボードゲームである限り通常は無関係です。無関係だと宣言しましょう。
4.3 プラスチックシート(ビニールシート)。基本的には(裏張りされてない)ビニールシートについての要件ですが、10cm x 10cmより大きいプラスチックシートについては規制の対象になります。ということは、ジップロックも規制の対象になるわけですね。10x10というのが面積を言っているのかちょっとでもはみだしたらということなのかは不明ですが、ここではより厳格に、長辺が10cmを超えるそういうものを入れないようにしましょう。で、入ってません、と宣言します。
4.4 トイ・バッグ 開口部が38cm(直径ではなく周辺の長さです)以上の場合、ちょっと面倒なことになります(かぶって窒息しないのが眼目なので、不織布みたいに空気を通す素材でできてればOKです)。そういう大きい巾着袋などは基本用意しないようにして、その旨を宣言しましょう。3歳以下の子が使う場合は巾着袋の紐の長さも問題になりますが、3歳以下の子のことは今は考えないことにしているので、紐の話は忘れてよいです。
4.5 ガラス ガラスのマーブルを使う場合は落下試験と耐衝撃試験ををやる必要があります。ガラスは化学試験をやらなくていいという意味では優秀な素材なので、落下試験をやる価値はあります。落下試験は、4mm厚の鉄板の上に、ショアA硬度(という指標が世の中にはあるんですが)70-80のゴム2mm厚を敷いて、その上に80-90cmの高さから5回落としてなんともないことを見る、みたいなことをやります。耐衝撃テストは、鉄板の上にテスト対象物の一番もろそうな箇所を向けて置いて、その上に高さ1mのところから1kgの分銅的なものを落っことす、みたいな感じです(8.5, 8.7節に記載)。テストしたならそのテストの詳細な記録、ガラス入れないならその旨を書きましょう。
4.6 伸びる系の物品。入れないようにしましょう。
4.7 カドとかジョイントとかファスナーやらネジやら締め付け系の物品。カドは金属やガラスのときに問題になりますが、ボードゲームでガラスったらおはじきとかそういうやつですから問題にはならないでしょう。というようなことを書きます。
4.8 先端とか金属線。入れてませんね。
4.9 傘の先みたいな突き出た形状のパーツ。ボードゲームでたまにそういうの使うことが無いとは言いませんが、ここでは無いものとみなして次にいきます。ある人は記載に従ってテストがんばりましょう。
4.10.1 スライドしたり折りたたんだりする機構。ボードゲームのボードは四つ折りだったりしますが、ここで想定されているのは折りたたみ乳母車てきなやつなので、我々には関係ありません。
4.10.2 運転に関する機構。関係ありません。
4.10.3 ヒンジ。ごくまれにヒンジが出てくるボードゲームもありますが、まあ関係ないでしょう。
4.10.4 バネ。これもまれに出てくるゲームがありますが、関係ないことにしましょう。
4.10.5 お口に含むもの。含めてはいけません。当然っちゃ当然ですが、お口に含むものについては、検査内容はかなり厳しくなります。
4.12 風船。入れないように。
4.13 凧とかその他空を飛ばす玩具の紐。これは紐ではなくて凧が主眼の項目なので、関係しません。
4.14.1 子供が中に入れる系のでかい玩具。関係ないですね。
4.14.2 マスクとヘルメット。関係なし。
4.15 子供の重量を支えられる系の玩具。すごい長い節ですが言うまでも無く関係ありません。
4.16 重い、動かない玩具。関係ないです。
4.17 射出系。ボードゲームで射出機構があるものはたまに見ますが、そういうものをエッセンにもってくのはやめましょう。
4.18 水がらみのおもちゃ、(水を吸ってとかで)ふくらむおもちゃ。関係ございません。
4.19 撃発雷管…えっと、何ですかそれ??
4.20 楽器系。でかい音がなるやつ。無くもないですけどねこれも。まあやめといてください。
4.21 熱源(非電気的な手段による)を含む玩具。関係あるわけ無い。
4.22 小さいボール。久しぶりに関係あるやつです。直径4.45cmの孔をくぐれるボールが該当します(ただし、ぬいぐるみ的なふにゃけたやつは対象外らしい)。なんか色んなテストをしないといけなくなるので、どうしても作品上必要でない限りは、ビー玉とか入れないほうがいいと思います。
4.23 磁石。これも時々つかうゲームありますが、磁石入れてると磁石に関する検査が必要になりますので、入れない方が楽です。
4.24 ヨーヨー。これを使うボードゲームはさすがにないですよね。
4.25 食玩系。食玩は止めましょう。

以上が4章です。チェックシート形式で関係ないことを証明していくとよいと思います。
5章は3歳未満向け玩具用の特別考慮。無関係。

6章はパッケージ。ただし、シュリンクとか、すぐ捨てちゃうやつは規制の対象外です。下記の通りで、まあ4章で触れたことと基本同じ。あと外箱はだまって普通の紙箱にしときましょう。そいで、この規制は適用対象外、こっちのはごらんの通り(写真か何かを持ってくる)満たしてます、みたいにやっていきます。
a) (10x10cm以上の大きさの)プラスチックシートとかバッグについては、一定以上の厚みを持ってる必要があり、テストの対象になります。避けましょう。
b) 38cm以上の大きさのビニール(プラスチック)バッグについては、紐で縛る巾着袋形式を取ってはいけません。
c) 球体状のパッケージ(ガチャみたいなやつ)については、ボールに関する規制がそのまま適用されます。
d) パッケージに玉みたいのがくっついてる場合も同様。
e) 3歳以下向けのおもちゃの場合は、半球状のパッケージをしていたら、3歳向け半球に関する規制がそのまま適用。

7章は警告表示。パッケージと説明書に書く必要があります。売る国の言葉で書かれていないといけません。ドイツで売るならドイツ語が必須ということになりますね(ドイツ語の説明書も必須ということに)。その上で、ここに書いてあります、あるいはこういう理由で書かなくていいのです、と宣言していくことになります。
7.2 三歳未満絶対禁止マークと「“Warning. Not suitable for children under 36 months. Small parts”」とかの表示に関する規定。ほぼあらゆるボードゲームに書いてありますから、そのまままねして書きましょう。
7.3 ゴム風船に関する警告表示。ゴム風船は入ってないはずなので関係ないです。
7.4 水かんけいのおもちゃに関する警告表示。関係なし。
7.5 機能玩具、おもちゃのミシンみたいに実際になにかしら出来ちゃう系のおもちゃ、に関する警告表示。関係ないですね。
7.6 先端とかがある場合の警告表示。ないようにしましょう。
7.7 射出がある場合の警告表示。ないようにしましょう。
7.8 マスクとかヘルメットがある場合の警告表示。ないようにしましょう。
7.9 凧の警告表示。かんけいないです。
7.10 ローラースケートとかその手のやつの警告表示。その手のやつじゃ無いです。
7.11 ゆりかごとか檻とかにくっつけたりする系のおもちゃに関する警告表示。何を言っているんだ。
7.12 液体のつまったおしゃぶりに関する。本当に訳はこれでいいんだろうか。いずれにせよ全く関係ない。
7.13 撃発雷管に関する。だからなんだそれは。
7.14 楽器系に関する。楽器系じゃ無い。
7.15 おもちゃの自転車に。じゃない。
7.16 子供の重量を支える系のあれに。あれじゃない。
7.17 モノフィラメント・ファイバーで作られる玩具に。おお、シャドウラン!(ちがいます) 
7.18 おもちゃのスクーターに。
7.19 木馬系。
7.20 磁石とか電気をつかう実験用おもちゃ。そういうものでないようにしましょう。
7.21 電気ケーブルの入ったおもちゃ。これも関係ないようにしましょう。
7.22 紐とかが入ったおもちゃで、1.5歳から3歳向けのもの。向けのものではありません。

8章はテスト方法なので無関係です。

続いてEN71-2. 可燃性チェック。これも要件は4章に書いてあります。
4.1
・セルロイド禁止(ただしニスとかペンキとか糊とかで使われてる場合と、卓球のボールで使う場合だけは許す)
・セルロイドと同じ感じで燃えるようなやつは禁止。ここが重要でしょうね。セルロイドと同じ感じで燃えないためには、(用途がニスとかでなくてたとえばダイスで)プラスチックを使ってる場合、それが何の素材であるか把握し、書いておく必要があります(これはユリア樹脂だからそれほど燃えないんです、みたいな)。ここがプラスチック駒の難点。木はまあ木なので、セルロイドと同じような感じではさすがに燃えません(MDFはちょっと微妙。使わない方が賢明でしょう)。
・ベルベットみたいに毛羽立った素材はチェックの対象になります。使わないように。
・当然ですが燃える液体とか燃えるガスとかそういうのについては厳格に使用量規制があります。が、ボードゲームについては関係ないです。
4.2 頭にくっつける系のおもちゃにおける特殊要件。まあバンドを頭に巻くゲームとかありますけどね。
4.3 コスプレ衣装とか身につける類いの。かんけいないです。
4.4 子供が中に入って遊ぶ系。かんけいないです。
4.5 ぬいぐるみ系。まあ関係ないでしょう。

そしてEN71-3.化学検査ですね。ここで見るべきは4章ではなく、対象を書いた1章です。
「予期される使い方において、吸ったりなめたりしゃぶったり長い時間肌と接触したり、そういうようなことが無い玩具は、本文書の対象外とする。」
「ただし、6歳までの子供を対象年齢に含む場合、6歳までの子供はそういうことをするもんなので、対象に含む」
ボードゲームはもちろん吸ったりなめたりしゃぶったりするものではありません。駒を取って置くか、カードを手に持つくらいですから、長い時間肌と何かが触れる、というほどのこともないでしょう。そしてエッセンに持って行くようなボードゲームといえば普通は8+かもっと上です。なので、わたくしはEN71-3、スキップしてかまわないと考えます。
(なお、対象年齢に関する考え方として、欧州ではCEN CR 14379という文書が定められているんですが、すくなくともこの文書の2002年版では、3歳までのことは色々書いてあっても、6歳という判断基準については何も書いてありませんでした。どうすんだこれ。あんまり役に立つとも考えづらいですが、米国の同様の文書である、 CPSCという機関が出してるAge Determination GUidelinesには、そのへんの基準が書いてあります)

最後にEN71-9. 有機化合物。ここではチェックの対象となる項目および材質が26組、表の形で挙げられています。★と☆のやつだけ気にする必要があります。
1. 3歳以下で口に含む以下略。
2-4. 3歳以下が手に取って以下略。
5-6. 3歳以下略。
6-9. 口に含む系おもちゃのマウスピース。
10. 水を吸って膨らむ系
11-13. 口とか鼻とかにくっつける系のおもちゃ
14-15. 子供が中に入れる系
☆16. おもちゃとして売られてたりおもちゃの中に含まれる、お絵かき系のもの(くれよんとか)。これはぼーっとしてると引っかかりますので、そういうものが必要な場合はユーザーに用意してもらうようにしましょう。
★17. おもちゃのコンポーネントで、触れる部分にあるもの。インドアユース。材質:木材。はい。ここで木材が引っかかります。これってシックハウス症候群的な話が意識されてるはずだから、ボードゲームの駒みたいのは気にしなくていいと思うんですけど、まあ言っても仕方ないことです。主に防腐剤関連でいくつか指定化学物質があり、何かしらの検査結果の記載が求められます。化学物質含有に関するテストなので、ちょっと素人の手には負えないですね。ちなみに定義上、紙は木材ではありません。
18. 17のアウトドア版。
19. にせ食い物。
20. 痕を残すための堅いもの。
21. おもちゃの中の、さわれる液体。色つき。
22. 21の色なし版
☆23. 粘土とか。粘土ゲームの粘土はユーザに用意してもらいましょう。
24. 風船をつくる化合物。
25. にせタトゥー
26. にせジュエリー。

はい。以上でございます。前掲のEU謹製解説文書にドキュメントのサンプルが用意されていますが、基本的にフォーマットは規定されてません。思いの丈を英語で書きましょう。それではがんばってください。




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by Taiju_SAWADA | 2017-08-03 01:09 | 雑題

日本でアバロンヒルのゲームが店に並んだのはいつからかしら:中間報告(追記あり)

(追記: 20161223)

このサイトは主としてドイツゲーム以降のファミリーストラテジーボードゲームを追いかけるサイトなのですが、このファミリーストラテジーには源流がいくつかあって、そのうちの一つとして、アバロンヒル社が始めたボード・ウォーゲームがあります。どのような意味で源流になっているかというと、商業的に次々と出版されるゲームを取っ替え引っ替え遊んではゲーム自体を鑑賞するホビー、としてのゲーム趣味、あるいはホビイストとしてのゲーマーというのは、ここに起源を求めることができるわけです。

そういえば、以前moon Gamerで「レイメイ期のウォーゲーム (http://moon.livedoor.biz/archives/52401074.html )」という記事がありました。大雑把に要約すると「1972年に、ホビージャパン誌界隈を中心として、プラモデル等を用いたミニチュア・ウォーゲームのブームがあった」という内容です。そこでは(日本においても)ミニチュア・ウォーゲームの受容がボード・ウォーゲームの受容よりも先行していたことが示唆されているわけですが、そうすると気になるのが、それでは日本にボード・ウォーゲームが入ってきたのはいつ頃だったのか、という点です。

実のところ、単に「入ってきた」=日本国内にボード・ウォーゲームが存在していた、というだけでよければ、既に1960年代に存在していたことは周知の事実になっています。というのは、今でも続いている著名なボード・ウォーゲーム雑誌である「Strategy & Tactics」は、60年代、日本在住のアメリカ人(確か米軍関連の人だったはず)が編集していた時期があるんですね(※)。とはいえ今回の話は「日本における受容」の文脈での話ですから、これをもって「入ってきた」とは言えないでしょう。こちらの主要な関心は、いつ誰が日本で初めて商業的にボード・ウォーゲームを売り出したか、という点にあります。

(※【追記】 @alpharalpha_jjさんが、上記の点について「S&Tは67年1月に、東京で勤務していた米空軍のクリス・ワグナー軍曹が創刊した」と、証跡付きで正確な情報をコメントされています。 https://twitter.com/alpharalpha_jj/status/809429789694005248 および https://twitter.com/alpharalpha_jj/status/809434782534758401 )

諸々の雑誌等で見る限り、70年代当時の主要なプレイヤーとしては以下の出版社やショップがあったようです。
・ホビージャパン (お馴染みの例の会社。アバロンヒル社のゲームを輸入していました)
・モデルエース (久が原にあったホビーショップ)
・木屋通商 (輸入商社で、アバロンヒル社のゲームを輸入していました。後に、同社のコンピューターゲームの販売を手がけるようになります)
・タイムマイザー (輸入商社【※次の追記を参照】。「ホビーネットワーク」のブランド名で、ミニチュア・ウォーゲームのルール販売やボード・ウォーゲームの輸入を実施)
・えんどう (笹塚のホビーショップ【※次の追記を参照】。現在は通販専門店「ホビーセンターえんどう」。SPI社のゲームの輸入販売等を行ってた模様)
・キディランド (原宿と梅田に旗艦店のある玩具チェーン店。一時期は「日本で一番ウォーゲームを売る店」だったとのこと)

(※【追記】実際にタイムマイザーにいらしたという @hyuga55032216 さんから、タイムマイザーはホビーセンターえんどうの社長が設立した会社である、とコメントをいただきました。他に「ミニチュアゲームのUさん、カデーに属していたTさん、インディアンオーシャンアドベンチャーを訳されたAさん後にコマンドマガジンの編集長」が所属されていたとのこと。 https://twitter.com/hyuga55032216/status/809593740662685696 タイムマイザーは、後にツクダホビーからゲームを出版する岡田厚利さんも所属されていたゲームクラブ"Atelier"のデザインによるミニチュアウォーゲームルールブックを販売したりもしています)

(【追記】また、後藤信二さんから、積極的にシミュレーションゲームを取り扱っていたショップとして、他に蒲田「ベンケイ社」がある、とコメントをいただいています。「モデルエース、エンドウ、ベンケイは、同人系のゲームも扱っていて、そういうの作ってた人たちがバンダイやツクダのデザイナーになりました」とのこと。 https://twitter.com/gto246/status/809560537012965376

これらのプレイヤーのうち、タイムマイザーと木屋通商については、ほとんど何の情報もありません。えんどうについても何の情報もありませんが、こちらはまだ店が通販専門店として現存しているので、伺ってみるという選択肢は取れそうです。一方、最も簡単に情報が手に入るのは言うまでもなくホビージャパンで、何せ毎月雑誌を出していて、国会図書館に納められています。田村寛さんの調査によれば (http://legalalien.sakura.ne.jp/wiki/index.php?卓上ウォーゲーム/「ホビージャパン」卓上ウォーゲーム記事一覧 )、ホビージャパンがアバロンヒル社(以下AH)のゲームの輸入販売を予告する広告を初めて出したのが「ホビージャパン」誌の75年4月号です。わたくしもヤフオクで買って確かめたところ、確かに1頁使って「6月全国一斉発刊予定」と書いてあります(取扱タイトルはTactics II、Gettysburg、KRIEGSPIEL、D-DAY, PanzerBlitzなど)。ということで、ホビージャパンについてはこれでよいでしょう。

次に情報が手に入りやすいのはモデルエースなんですが…。まずは「シミュレイター」誌2号(83年1月)に掲載されている、モデルエース店長である矢木沼佐一郎さんのインタビューを見てみましょう。

10年くらい前かな、東京のキディランドで天井からぶら下がっているAH社の『ドイツ・アフリカ軍団』が目に入って、「うん、これは面白そうだ」と感じたのです。
その時はそれっきりだったのですが、それと時を同じくして、経済関係専門誌にAH社のゲームが、ビジネス新入社員育成教育用として紹介されているのを知りました。それですぐにその輸入商社に出掛けていったのですが、(中略)そのゲームの中からいわゆるウォーゲームといわれるものの3店『フランス1940』『クライグシュピーゲル(※原文ママ)』『パンツァーブリッツ』をほんのすこし見本仕入したわけです。ですから、おそらくこれが模型店の店頭にならんだ日本で最初のウォーゲームのはずです。
以後、AH社の内のウォーゲーム関係を主体に扱う代理店、ホビージャパン等があらわれ、流通機構がスムーズになったので、「ホビージャパン」1972年6月号に初めてウォーゲームの広告をのせたわけです。


というわけで、モデルエースがAHのゲームを扱い始めたのは1972年6月です。という風にはいかない事情があってですね。というのは、ヤフオクには出てなかったんで国会図書館行ってホビージャパン72年6月号を確認したんですが、モデルエースの広告、どこにも載ってないんです。ヤフオクで買えた中では、74年9月号にモデルエースの広告は載っていますが、ゲームの広告ではありません。ゲームの広告が載っているのは74年11月号(10月号は売ってなかったです。もしかしたら10月号にもあるかも)。その広告の文面は以下のようになってます。

アバロンヒルゲームは極めて高度な知識と頭脳を要するゲームです。その高度なプレーにより、戦略的訓練を培うために、アメリカのウェストポイント士官学校でも実際に使われていたり、アメリカ各地の軍人クラブでも広く利用されています。なおゲーム説明は英文です。
(A Bは日本語説明書を作る予定)


引用文中のAはパンツァーブリッツ、Bはフランス1940です。もうひとつCというのが広告に載っててこれがKRIEGSPIEL(広告では「クリーグスピェール」)。広告ではこのCのクリークシュピールが入門用という扱いになってるんですが、入門用のゲームには日本語説明書を作らないというのはどういう目論見なんでしょうか。いずれにせよこの段階ではまだ日本語訳がなかったわけですね。翌年75年1月号の広告になると、和訳ルールが販売されていることが確認できます。

74年11月号で注目すべきことはもう一つあります。モデルエース以外にも、ウォーゲームの広告を載せている店が2つあるんです。ひとつはマルケイ(千葉のホビーショップ)で、取り扱いゲームは「KRIEGSPIEL」「PanzerBlitz」「France 1940」。和訳なし。そしてもうひとつがポストホビー。言うまでもなくホビージャパン社の店です。そして取り扱いゲームが…「KRIEGSPIEL」「PanzerBlitz」「France 1940」。一緒じゃん! 更に言うと、この2つのどちらも、74年9月号の段階では、広告の中でアバロンヒルの話は一切していません。つまりまあ、先ほどのインタビューの内容と突き合わせて考えると、みんな同じ商社から仕入れていたんじゃないか、と考えられるわけです。この商社の名前がわかればいいんですが(それが木屋通商だったりタイムマイザーだったりしたら面白いんですが)、残念ながら記載はなく、手がかりは「経済関係専門誌に記事が載ってた」ということだけです。アバロンヒルの当時のゲームで新人社員研修に使えそうなゲームというと、おそらく「Business Strategy」(1973)と思われるので、73年か74年(タイミングから考えるとおそらく74年)の記事ではないかと思われます。これについては後で調査して、奇跡的に何か解ったら報告します。

そして最後にキディランド。キディランドについては、以前ボードゲーム読書会で高梨俊一さん(バンダイ「スペースコブラ」、アドテクノス「レッドサン・ブラッククロス」等の作者【後者は共作】で、パラノイアの校閲をお願いしています)にインタビューした際(私信:すみません今年中にテープ起こしします)、「1974年の早い時期にキディランドでウォーゲームが並んでいた。1973年のクリスマスシーズンからの取り扱いではないか」とコメントされていて、たしかに前述のモデルエース店長の発言とも整合します。

なお、高梨さんは74年の春にパンツァーブリッツ、夏にKRIEGSPIELをおそらくポストホビーで【高梨さんから訂正:キディランドでとのこと】購入していて、秋に【同年末か翌年初にポストホビーで「ルフトバッフェ」を購入し、】「他のゲームは無いか」とポストホビーの人【ちなみに錦糸町店とのこと】に尋ねたところ、モデルエースを紹介され、【75年に行ってみると】そこにはSPIの作品が各作品1部ずつ並んでいた、とも仰っています(更に、このSPIの作品を仕入れさせたのは、「当時イエナ書店でミリタリ関連書を扱っていた(※)」井出隆弥さんだった、とも【仕入れさせたというよりは委託というか持ち込み販売的なものだったようですが、契約上の構造は不明】)。雑誌に載せられるほど量を仕入れられるのは前述3作品だけとしても、店頭で1部ずつサンプル的に入れて売る、というのは個々にやっていたものと思われます。あるいは前述3作品にしても、パイロット的に店舗で数ヶ月扱ってから雑誌に広告を出した可能性が高いですが。

(※追記。前掲moon Gamerの記事では、「新宿でミリタリーフィギュアや軍事関係の書籍を販売するショップを経営なさっていた」と紹介されています。このショップは「日本史料研究会」で、70年代後半のホビージャパン誌に広告を出しています。日本史史料研究会とは無関係ではないかと思われます。DOBUROKU-TAOさんによる記事[http://bonkura-otaku-life.seesaa.net/s/article/390863511.html]を見ると、井出さんが1971年の時点で日本史料研究会に在籍していたことはほぼ間違いなく、一方で井出さんがイエナで仕事をされていたという証言も複数あります。移籍されたのか委託業務として行われていたのか…※※)

(※※【さらに追記】先ほどの @hyuga55032216 からこの件についてもコメントをいただきました。おそらく、イエナで勤務していた井出さんは並行してサークル「日本史料研究会」を主宰していて、この日本史料研究会が、1975年頃にモデルエース店舗を部分的に間借りする形でSPIのS&T誌50号[Battle For Germany]等を販売開始、その後70年代後半に西新宿でショップを開店、という流れと思われます。ショップ開店後イエナとの関係がどうなったのかはまだわかりません)

なお、この件について、キディランドに問い合わせを行ってみました。梅田店にいた方のご記憶だと76年頃から並べだしたとのことでしたが、これは梅田店での取扱が始まった時期であるものと思われます。当時のキディランドはアメリカやヨーロッパに直で買い付けに行っていたようで、またミリタリー物のプラモデル等も豊富に取り扱っていたとのことなので(72年夏にホビージャパンが主催したミニチュア・ウォーゲームのデモンストレーション会は、キディランドで行われています)、バイヤーが買い付けに行った先のアメリカで、興隆するAH社ウォーゲームを見て仕入れてみた、ということなんじゃないのかな、と推測しています。(これも高梨さんによれば、当時の原宿キディランドは1フロアが輸入玩具専用フロアで、その更に上のフロアにAHのゲームのコーナーがあった、とのこと)

ということで、以上中間報告でございました。木屋通商とかタイムマイザーとかどうやったら情報拾えるんでしょーか。

※ぜんぜん関係ない余談ですが、ボードウォーゲームの専門誌というのが80年代前半にいくつか出ておりまして、代表的なものが「タクテクス(ホビージャパン)」「シミュレイター(レックカンパニー→翔企画)」「オペレーション(ツクダホビー)」の3つです。これらのうち、本としての作りがしっかりしているのはタクテクスですが、当時の雰囲気を知る資料として役に立つのは(レックカンパニー時代の)シミュレイターですね。普通は活字化されると人格が漂白されるものですが、初期シミュレイターには漂白前の面倒なプレイヤー達の面倒な言説がそのまま載っています。

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by Taiju_SAWADA | 2016-12-16 00:34 | 雑題

文化的資産として保存し、広く利用に供することに関する二題、或いは同人誌納本と小出版についてのメモ

今回ボードゲームのことは殆ど…現状では…関係ありません。本当は「関係ある!」って声高に主張したいですし、関係あるようにもしていきたいのでここで書くのですが、とりあえずはボードゲームではなく文書に関する話です。

【この文書はスタブです。あとから色々追加する可能性があります】


* 1 *

別にWebでなんか書いてればよくて、それ以上のことは要らないんじゃないか、というのはそうなんですが、ただWebに書いた文章というのは宿命的に消えていくわけです。いやほんとはそれは宿命ではないような気もするんですけど、ここ20年間の実績を見る限りでは実際に消えていっています。そこ行くと紙に刷った書籍というのは消えないんですね。これは紙という物理的存在の性質によるところも少しはありますが、それよりも、過去数千年に渡ってその時々の文明国が文明国たる証明として維持管理してきた「書籍残すシステム」の存在のほうが大きくて、なので紙に刷っても書籍ではないもの扱いされると途端に保存状況が悪くなるわけで、書籍という体が大事ですね、ということになります。

幸いにして日本も一応いまのところ文明国なので(でも公文書すぐ捨てちゃうし準文明国くらいかなあ)、書籍残すシステムが整備されています。ですので、残すべき文章を作ったら、まずは紙の書籍を作ってこのシステムに載せよう、という話になります。何をもって「書籍」とするかという点については色々な定義がありますが、今回の文脈で言えば、書籍残すシステムが書籍と認めればそれは書籍です。では、日本の書籍残すシステムの要でありますナショナル・ダイエット・ライブラリ、国立国会図書館による定義を見てみましょう。


http://www.ndl.go.jp/jp/aboutus/deposit/deposit.html
http://www.ndl.go.jp/jp/aboutus/deposit/pdf/deposit_request_pvt.pdf

【引用】
Q.
どんなものを納めなければならないのですか?
A.
原則として、頒布を目的として発行された全ての出版物です。
図書、雑誌・新聞だけでなく、CD、DVD、ブルーレイ、レコード、楽譜、地図なども対象となります。
また、自費出版でも、相当の部数を作成し配布されているものは納本の対象となります。
ただし、ホチキス留めなど簡易綴じのもの、頒布を目的としないものなどは、納本の対象とはなりません。
【引用終】

この「相当の部数」というものの定義が曖昧なんですが、文化庁の定義では50部の頒布をもって「発行」とする、という定義があり(※)、一方で国立国会図書館に電話で聞いたら「100部以上」と回答があったという未確認の噂もあって(※※)、あまり定まったものはありません。ですがまあ、無線綴じなり上製本なり、本またはブックレットみたいな体で100部刷れば、書籍とみなされると考えてよいでしょう。ISBNが付いているかどうか、というような話は、ここでは関係ありません。

※下記文書の25頁参照。 http://www.bunka.go.jp/seisaku/chosakuken/seidokaisetsu/toroku_seido/pdf/tebiki.pdf
※※ 噂の出処は下記を参照。但しあくまでも噂の域を出ない。 http://srad.jp/comment/2984168

従って、オフセットで100部刷った同人誌は、国会図書館への納本の対象である、ということになります。先方は「保管に適した環境の書庫で、可能な限り永く保存し、利用に供します」と仰ってますので、お手元に100部以上刷った同人誌のある方は、是非とも国会図書館へ2冊納本しましょう。宛先は下記の通りです。いきなり何の前触れも送り状もなく現物をどんと送ってしまっても問題ありません。

〒100-8924 東京都千代田区永田町1-10-1 国立国会図書館 収集書誌部 国内資料課 収集第一係

http://www.ndl.go.jp/jp/aboutus/deposit/images/deposit_02.gif



* 2 *

ということでオフセットで同人誌を100部刷って国会図書館に納本するだけでも充分といえば充分なんですが、それだけでは足りないシチュエーションというのもあったりします。やりたいのが翻訳出版であって、原著者側がこちらに対して会社組織であったり商業出版者であったりすることを求めてきそうな場合とか(しかし立ち止まって考えると会社というのは制度から言えば個人の責任を限定する方向に働くものなので、相手に対して会社組織であることを求めるというのはちょっと不思議な感じもします)。分野によっては、商業出版されることによって社会的に存在が認められた文章として扱われる、ということもあります。そうでないとしても、ISBNを取得して各種データベースに登録することで、当面の社会的な認知と、年を経た後でなお参照されうる可能性の向上もそれなりには期待できるでしょう。あとまあ、これは文書の内容にもよりますが、売る場所が広がる場合もあります(例えばコミックマーケットなど「法人が発行/制作したもの」の販売に制限がある場もあるので、場合によっては狭くもなります)。

つまり、なるべく手間をかけず商業出版者になることで、商業出版のシステムをつまみ食いする、ということが必要になったり、必要とは言わないまでもメリットが大きかったりする場合があります。ということで、手っ取り早くそういうものになるために便利な文献等をいくつか紹介したいと思います。

まず最も重要なのは、ISBN(厳密には、ISBNと書籍JANコード)を取ることです。「書籍を発行するとき、ISBNを付けなくてはならないという法令やルールはありません。ご自身が読者に直接販売・頒布する場合は、コード番号は必ずしも必要とされないでしょう。しかし、その書籍を書店やネット書店等で市販しようとすれば、その取引先からISBNコードを付けることを求められるでしょう。また、図書館を始め書誌情報を作成する方々にとって、ISBNコードは書籍を識別するためのコード番号として重視されてきています。」(日本図書コード管理センター「よくあるご質問」)
ということで、素早く申し込んでしまいましょう。申し込みのときに、ISBNと書籍JANコードあわせて3万円くらいのお金がかかります。なお、このコードの有効期限は3年で、更新時にもお金がかかります。

http://www.isbn-center.jp/regist/index.html

なお、ISBNのついた本には、ISBNと書籍JANコードの2つのバーコードをつけないといけないことになっています。バーコード作成用ソフトは市販でも色々ありますが、無料バーコード作成サイト(※)で作ったバーコードでも別段流通に影響はありません。

※例えば下記など。 http://rs-lab.net/jancode/

続いて、どうやって本を売るのか、ということになります。大雑把に言って「直売」「書店と直取引」「Amazon」「取次(=問屋)経由」の4つの経路がありますが、手続きだけなら最も楽なのはAmazonで売ることです。Amazonは「e託販売サービス」というのをやってて、年額9000円を払うことで、だれでもISBNが付いた本をAmazonに並べる権利を獲得できます(いまのところ取引条件は、原則として60%掛・送料こっち持ち・委託販売=売れなかったら返品されてくる、という条件になっています)。「e託販売サービス」で検索すればいくらでも情報が出てくると思います。とりあえず公式のページは以下にあります。

https://www.amazon.co.jp/b?node=4160761051&rw_useCurrentProtocol=1

書店との直取引、というのは、それこそ同人誌であればメロンブックスのような所が普通にやっているあれのことです(というか、さっきのAmazonのも「直取引」の一種です)。紀伊國屋書店や丸善ジュンク堂のような大書店チェーンは直取引の窓口を持っていることが多いので、やろうと思えばできますが、これをやり始めると本格的にマンパワーが必要になりますので、とりあえずAmazonのe託で売りつつ、取次との経路を準備する、というのがまあとりあえず無難な選択ではないかと思われます。

で、その取次なんですが、書籍取次の大手であるトーハンや日販は、新規の小出版社を取引先として見なしていません。小出版社を対象にした取次は、下記のようにいくつかあります。確認は取ってませんが、どこも出版社側が法人であることを前提にしているはずです…が、明らかに法人ではないだろう団体が取次と契約をしているのも事実です。
・トランスビュー
・地方小出版流通センター
・星雲社
・子どもの文化普及協会
・JRC
・ツバメ出版流通

これらのうち、出版社にとって最も分かりやすい条件を出しているのがトランスビューです。トランスビューが出している条件は、「まっ直ぐに本を売る(石橋毅史著、苦楽社)」にまとめられています(ウェブサイトには載っていません!)。何が分かりやすいかというと、他の取次の場合は「60%で出版社から仕入れて70%で書店に出す」みたいなモデルなので、一時的に倉庫に本を置いておくことに対するコストとかは取次側が持つことになり、つまり新規出版社との取引において若干のリスクが伴うことになるので、取引開始にあたって年ごとの出版計画みたいなものを書いて審査を受ける必要があったりするんですが、トランスビューの場合は「倉庫保管料が1冊につき月xx円、出庫の費用が1回yy円」というように、掛かるコストをそのまま出版社側に請求する形になっているので、トランスビュー側が持つリスクがごく限られており、なので出版計画とか無しで1タイトルから取引を結んでくれるんですね。とはいえ人文書の会社なのであまりにジャンルが違うと受けてくれないような気がしますが、仕組みから言えば最も広く門戸の開かれている取次だと言っていいでしょう。(なお、トランスビューは「取次」ではなく「取引代行」と形容してますが、これは理念的なものから来ていて、実務としてはまあ一緒です)

ついでオープンなのが地方・小出版流通センターですが、ここは「66%で出版社から仕入れて」モデルなので、年3タイトル程度の継続出版を求められます。取引開始希望のメールを送ると、FAXで(FAXです)案内書がやってきて、「会社概要・既刊図書、現在の販売経路と販売実績、今後2年間の出版予定(形態、価格、内容、著者等)」の提出を求められます(こっちもウェブサイトには載ってません!)。何しろ「現在の販売経路」を書かないといけないので、こちらを選びたい場合、まずはAmazonのe託から始めて…、ということにはなるでしょう。

トランスビューと地方小出版流通センターの違いは色々あるんですが、最大の違いは、トランスビューが委託が原則で書店には70%で卸しているのに対し、地方小は建前上は買切がメインで書店への掛率はもっと高い(注文経路によって値が変わるので具体的な値は示されていません)ということでしょう。「建前上は」というのは、地方小には特約書店というのが数十店くらいあって、これらの特約書店に限っては委託に近いかたちで販売され、そしておそらくこの数十店というのは小出版社の本でも売れる可能性のある大書店とほぼイコールなので結局そんな違わないんじゃないかということです。

契約が済んだらあとは本を作って売るだけで、本の作り方自体は別に同人誌と何も変わるところはありません(ただし、「短冊を入れる必要がある」「バーコードとISBN/書籍JANコードを載せる必要がある」「定価を載せる必要がある」「カバーは何かしらかけたほうが良い」という点のみ若干異なります)。営業活動というのは一応あるんですが、小出版社というのは書店営業みたいなことはほとんどやってないようです。メディアへのPRとか広告とか(書評を期待した)献本とかそれくらい。
【かつては暗黒通信団が「書籍制作と納品の仕方」というとても良い文書を載せていたんですが、非公開になってしまったみたいです】

あとは気構えとか諸々の話ですが、最近は「ひとり出版社」に類する本が数多く出ており、参考になるものも数多くあります。折角なのでここでいくつか紹介しておきます。



〈まっ直ぐに本を売る〉(石橋毅史、苦楽社)
取次としてのトランスビューの情報を得るのに最適な本であると同時に、出版社としてのトランスビューの思想もわかりやすく書いてあります。

〈ひとり出版社「岩田書院」の舞台裏〉(岩田博、1巻目は無明舎出版、2巻目以降は岩田書院)
ひとりで学術出版社を回すことに関する具体的な活動が詰まっています。たぶんこのシリーズよりも一人出版社のイメージを喚起する本は無いと思います。

〈翻訳出版の実務〉(宮田昇、日本エディタースクール)
翻訳出版をするなら、という前提で必読。必要なことはこの本に全部書いてあります。

〈出版状況クロニクル〉(小田光雄、論創社)
一応書籍のほうを挙げましたが、ウェブログの連載のほうがリアルタイムな感じがあっていいかも。日本の大規模商業出版流通に対して何の期待も持たなくなります。

〈計画と無計画のあいだ〉(三島邦弘、河出書房新社)
必読というほどではないですが、書店との直取引を行う出版社がどういうことをやっているのか、というイメージはつかみやすい本です。

〈日本でいちばん小さな出版社〉(佃由美子、晶文社)
本を作って流通させることのばたばたした感じはこの本が良いかなー、と。

〈あしたから出版社〉(島田潤一郎、晶文社)
ひとり出版社の営業活動が書かれているのは珍しいんじゃないでしょうか(っていうか書店営業やるひとり出版社が珍しい)。


あとはウェブサイトで、

〈本を出すまで〉(清田麻衣子、「マガジン航」連載)http://magazine-k.jp/category/series/hon-wo-dasu-made/
徒手空拳でおっかなびっくりやってるところが身近な感じがしていいです。マガジン航は他にも優れた記事が複数あります。

〈京都に出版社をつくる(には)〉(ホホホ座、「DOT Place」連載)http://dotplace.jp/archives/category/interview/%E4%BA%AC%E9%83%BD%E3%81%AB%E5%87%BA%E7%89%88%E7%A4%BE%E3%82%92%E3%81%A4%E3%81%8F%E3%82%8B%EF%BC%88%E3%81%AB%E3%81%AF%EF%BC%89
現状の崩壊した大規模商業出版流通システムと、その中でインディペンデントな出版をやるということについて、語られています。

日本著者販促センター http://www.1book.co.jp/
書店向けFAX営業の業者なんですが、コラムで色々と参考になる情報を載せたり引用したりしてます。
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by Taiju_SAWADA | 2016-09-12 23:44 | 雑題

ハイパーゲーム理論を用いた誤認識解消のための仲裁メカニズムの分析

むかし書いた修論が出てきた うれしい
http://twitdoc.com/53ZU
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by Taiju_SAWADA | 2015-12-17 23:50 | 雑題

Dummett and McLeod に書かれたタロットゲームを遊ぶための準備 #3

そろそろMcLeodに許可とったほうがいい気がしてきた(Dummettは故人)。
3章はイタリア以外でのクラシック(18世紀式)タロット。



タロットの基本形は「3人用」と「4人用」の2つ。78枚使用、フールはエクスキューズ扱い、
オナーはK,XXI,I,フールで各5(1+4)点、Qが4(1+3)点、カバロが3(1+2)点、Jが2(1+1)点。
3枚または4枚(=1トリックの枚数)につき1点【上記はこの1点を含んだ点数】。
ビッド、宣言、ボーナスなし。
3人ゲームではパートナーなしの個人戦。ディーラー28枚残り二人25枚配り、ディーラーは3枚捨て札。
捨て札はディール終了時にディーラーのものになる。オナーは捨てられない。3枚で1点。
4人ゲームでは、2-2の固定パートナー制。パートナー同士で向かい合わせに座る。
ディーラー21枚残り18枚配り、ディーラーは2枚捨て札。
捨て札はディール終了時にディーラー側チームのものになる。オナーは捨てられない。4枚で1点。

多くのタロットゲームがこの2つの細かいバリエーションでしかなく、実際イタリア以外で18世紀以降に作られた
度のゲームもこれをベースにしている。1700年以前にパリやノルマンディで遊ばれていたものを例外とすると、
イタリア以外のタロットは、東フランスのどこかで早い時期に遊ばれていた、そこに単一の起源があると考えられる。
(ドイツへのタロットの伝播は、イタリアからではなくフランスのアルザス経由。1600年前後。
 ところで、ボヘミアへの伝播はドイツ経由ではなく、1586年には既に知られていたらしい)

2人用ゲームも18世紀後半以降盛んに遊ばれていた模様。こちらも起源は単一のところに遡れるようで、
おそらく1750年頃のドイツ。1800年にドイツで出た本には言及がある。また、後述するフランスのオカルトタロット本
のルールからも、二人用ルールがメジャーだった形跡が見られる。

タロットの最盛期は1730-1830年(cf.モーツァルトは1756年生、1791年没)。
イタリア、東フランス、スイス、ドイツ、オーストリア=ハンガリー、ベルギー、オランダ、デンマーク、
スウェーデン、ロシアで盛んに遊ばれていた(ただし「国際大会」的なものは無い。あくまでもコーヒーハウスとか
自宅とかそういうところで遊ぶもの)。そして、細かい違いはあれ、ルールは基本的には同じものだった。

ドイツでは18世紀以降、カードゲーム本の出版が何冊も行われている。
19世紀(1846)にはアムステルダムでブックレットも出版されている
(19世紀に入るとドイツでGrosstarockが生まれ、オーストリアやフランスでは古いタロットはこれに置き換えられていく。
 オランダでは既に1821年には近代的なGrosstarockが遊ばれているので、このブックレットはold-fashionなゲームの紹介。
 一応18世紀型のゲームも生き残っていて、1890年にはフランスでパンフみたいのが出ている)
フランスでは18世紀の本でのタロットへの言及は1冊しかなく、それもオカルトタロットで起源をエジプトに求めている著者が、
友人から聞いた話としてまとめたもの。パリではこの時点で(1781年)既にタロットは遊ばれなくなっていた。
 
(東)フランスやドイツのタロットに最初にひねりが入れられた記録は1754年のもの。
まず手役が入った。(イタリアだと16世紀の時点で出来役の概念があるが、ドイツ・フランスではあくまで手役。たぶんOmbre由来)
つぎにIやKで勝ったときのボーナス、負けたときのペナルティ。(3人ゲームでは、ペナルティは残り2者両方に払う。)
(「最後のトリックをIで勝つ」というタロットの重要なルールはここから派生していて、これはイタリア由来ではない)
最後に、愚者の出し時の制限(最終3トリックで出すの禁止ルール。愚者がスキュースになってからは、最終3トリックでの無力化)。
ちなみにフランスでは「最終トリックのみ禁止」だったが、後に広まったのはドイツの「最終3トリック」のほう。

タロットの諸ルールは元々3人用を想定して作られたものなので、4人用にアダプトする際に問題が生じた。
たとえば自分がIを出し、勝ったのがパートナーだったら(これについては、18世紀当時はノーボーナスノーペナ。
後にペナルティ扱いになった)。ボーナスやペナルティはパートナーも受けるのか(受けるという原則が固まった)。

4人用拡張がどうやって出てきたのかははっきりしない。1846年オランダの本には、3人ゲームの4人拡張としての
ルールが記載されている。どちらかというと少なくとも19世紀以降の4人タロットはクラシカルな固定パートナー制ではなく
新式のもの(Lombard/Vinnese式。6章)で遊ばれるのが普通だったようで、オランダでも1821年の本には
そっちしか載っていないし、どいつでは旧式4人タロットへの言及はごくわずかなものしかない。
例外はミュンヘンで、ミュンヘンでは1756年の段階で、カードを103枚に拡張した4人ゲームの記述がある
(追加する25枚は本によって違いがある。全切札、愚者、ハートのACKとする本もあれば、XIII-XXI,I,愚者と♡全て、
 とする本もある)。同じカードが先出し有利か後出し有利かは不明。


3.1 ドイツ Taroc (18世紀中盤)
3人用。オリジナルランク。だいたい上記のルールにそっている。
・Kは捨て札禁止。「切札がちょうど3枚あるとき」「I, 愚者+あと切札1枚だけ」のいずれかの場合のみ、切札を捨てられる。
・愚者の捨て札についてはコメント無し。
・手役宣言あり。ディーラーから一巡。義務ではない。宣言した札は公開。点数を直ちに他の2人から受け取る。
 手役は以下のとおり。
 「Matadors」3枚式マタドールはXXI, I, 愚者。10点(取り決めによって20点の場合もある、とする本も)
 「Matadors(4+)」4枚式マタドールは書いてない本もある。3枚式に加えてXXからの降順連番。3枚目までで10点、
   4枚目以降の1枚につき5点。
 「Cavallerie」1スートのコート4枚揃い。本によって4点とか10点とか。
 「ハーフCavallerie」1スートのコートのうち3枚。フルが10点の本で、5点の扱い。
 「切札10枚以上」愚者は含まない。10点(本によって11枚目から1枚5点のものも)。ローカルルール扱いの本も。
   本によっては、宣言者の得点が26点以下だったらこの宣言による得点は無しになる、とするものも。
 「K4枚」10点。3枚だと5点。
・愚者は逃げ用。交換あり。ただし、「サレンダー」(逃げに使った愚者の交換用トリックを最後まで取れなかった時の没収)無し。
・愚者はリードできない(本に寄っては、リードできるルールのところもあり、この場合は切札リードと同じ扱い、とも)
・PAGAT ULTIMO: Iで負けたらペナ5点。最終トリックにIで負けたらペナ10点。最終トリックIで勝ったらボーナス10点。
 

3.2 フランス(前述のオカルトタロット本に書いてあるやつ)
28-25-25の3人制。Jの次は必ず10式。逃げ愚者(おそらく交換)。ディーラーは3枚捨て札。切札、K、愚者は捨てられない。
手役は以下のとおり。一巡の宣言。
愚者+XXI+I : 15点
切札10枚 : 10点
同13枚: 15点
1スートのKQCJ揃い:5点
最上位の切札上から5枚すべて: 10点
最下位の切札下から5枚すべて: 10点
最上位の切札上から5枚のうち任意の3枚: 5点
最下位の切札下から5枚のうち任意の3枚: 5点
XXI, I, 愚者のうち2枚を持っていることを宣言し、相手(のうち一人)を指名。相手が持ってなかったら、その人から5点。
(相手は持ってるならそれを公開)
切札10枚/13枚の場合は公開、その他は非公開。
プレーは普通に行う。
ディール終了後、得点計算時のボーナスポイントは以下のとおり。
・相手の出したIを取る:5点
・相手の出したKを取る:5点
・1トリックでK2枚と愚者を取る:5点
・1トリックでK3枚を取る(オカルトタロット本には違うことが書いてあるが、誤記と思われる):15点
ディールごとに得点を計算し、そのディールの最下位からの差分をスコアとする。100点先取。
得点計算時に特殊なのは、「(3枚ではなく)2枚で1点」となるところ。


3.3 オランダのTarok (1846)
3人用。オリジナルランク。逃げ愚者(交換あり:トリックを持っていないと愚者を出せない)。ディールとプレイが「時計回り」。
28-25-25。カードの配り方は5枚ずつではなく、3枚ずつ(8週目は4枚)。
ディーラーの捨て札における制限はないが、たぶん単に書き忘れ。
手役は以下のとおり。誰から宣言するかは書いていない。
切札10枚:5点
切札9枚+愚者:5点
K4枚:5点
K4枚+愚者:10点
K3枚+愚者:5点
1スートのKQCJ:5点
1スートのKQCJ+愚者:10点
1スートのK+(QCJのうち2枚)+愚者:5点
マタドール(XXI, I, 愚者):5点
愚者は手役1つにしか使えない。
切札9枚+愚者の宣言者は26点取る必要あり(取れなかったらリファンド)。
プレイは基本的には通常通りだが、2人目が切札を出している場合、3人目にはマストラフ制限はかからない。
愚者リードは不可。最後の2トリックで出されたら、逃げ機能は失われ、普通に負け札としてとられる。
得点ルールは普通通り。各2者間で差額払い。


3.4 ベルギータロット(1890-1910)
3人用。オリジナルランク。逃げ愚者、交換あり。
28-25-25。切札とKは捨て札不可、ただし切札が3枚ちょうどだった場合はこれを捨ててもいい。
マタドール(XXI,I,愚者):15
1スートのKQCJ:8
1スートのKQCJのうち3枚+愚者:4点
K4枚:12点
K3枚+愚者:10点
K3枚:8点
K2枚+愚者:4点
切札10枚以上:切札の枚数x1点
手役は宣言時の公開義務なし。
愚者は最後の5トリックでは効力を失う。
Iを出したトリックで勝てば5点、負ければマイナス5点(最終トリックなら倍)。


3.5 ドイツの2人用タロット(19世紀。1840など)
28-25。残りはそのディールでは使わない。交換ありの逃げ愚者。ラスト3トリックでは(5、とする本も)愚者は効果を失う。
ルールは3人タロットに基本的に等しく、手役等も3人タロットに準ずる(3.1のルールや、4章にあるルールのもの)。
ディーラーの相手からプレイ。
ボーナスは以下のとおり。Kの入ったトリックを取ると10点(最終トリックなら15点)。Iの入ったトリックは15点(最終は25)。
スコアは差分ではなく取ったものをそのまま点数になる。本によって100点先取/120点先取で1セット。
120点先取の本には、相手が60点以上なら1vp、30-59点なら2vp, 1-29点なら3vp, 0点なら4vpというスコアリングで
支払いを決めるとある。


3.6 オランダの4人用タロット(19世紀)
時計回り。ディーラーの左隣から配って21-19-19-19。2枚捨て札。手役あり。手役の点はチームの2人両者が払う。
誰かが既に切札を出しているトリックでは、それ以降のプレイヤーにはマストラフは適用されない。
「3枚で1点」。端数は四捨五入。片方のチームが全トリック取った場合は点数が倍。


3.7 「Tarok-Whist」(1890年代ドイツ。ホイストとのルール上の繋がりはない)
固定パートナーの4人用。時計回り。ディーラーの左隣から式。21-19-19-19。Kと切札は捨てられない(愚者はOK)。
手役は4章で述べる3人用のものと同じ、とあるが、調整無しで使われているというのはやや信じがたい。
交換ありの逃げ愚者。ラスト5トリックでは、愚者は効果を失う。
4枚で1点。チーム得点が36点を超えたら、その分を記録。
4ディールで1ゲーム、差分を精算。点差が36点以上か負けチームが0点だったら、支払いは倍。
6ゲームで1セット。6ゲームを完全固定パートナーでやる場合と、2ゲームごとに入れ替える場合がある。
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by Taiju_SAWADA | 2015-09-24 01:47 | 雑題

俺とバントゥと著作権

まず何よりも言っておかないといけないのは、Bantuは本当に素晴らしいゲームだってことです。

以前テンデイズゲームズの田中さんにお誘い頂いてごく短いレビューを書かせていただいたことがあって、そこで述べたことのくり返しになりますが、バントゥは「一人多数駒持ちのサイコロ/カード運なし多人数双六」のジャンルに含まれるゲームで、このジャンルにはクラシックである「うさぎとかめ(ハリネズミ)」「ビラボン(ビラボング)」「大競技場(古代ローマの新しいゲームに収録)」「ブレーキング・アウェイ」とそれぞれに独特の魅力を持った傑作がいろいろあるんですが(ブレーキング・アウェイは同時プロットなので本当はちょっと違うけど)、その中でもこのBantuは最古の部類に入る名作です。最古の、というのは私が勝手に言ってるんではなく、「うさぎとかめ」の作者にしてゲーム研究者であるところのデビッド・パーレットが自分の先行者として「たぶんBantuくらいしかない」と著書Oxford History of Board Gamesで述べています(まあハルマはどうなんだとかありますけど、パーレットの扱いではこのへんは別ジャンルになってます)。

同じジャンルっても魅力は様々で、「うさぎとかめ」なら細かい出し入れの計算とそれが微妙な思惑で崩される時のマゾ快感、「ビラボン」ならパズル的な発見、「大競技場」はマルチなブロッキングゲームとしての達成、「ブレーキング・アウェイ」はラインの形成からいつ前に出るかの自転車レース的駆け引き、ということになるかと思いますが、じゃバントゥはどこが楽しいのかというと、「ヒット」という無体な概念による追うものと追われるものの絶えざる逆転、が産み出す緊張感、そこに絡まるマルチゲームとしての特性、ということになるでしょう。

このゲームはおそらくバックギャモンを下敷きにして作られていて、何よりもヒットてのはバックギャモンの概念です。このゲームが偉いのは、2人用のバックギャモンがあれで成立しているところを安易に多人数向けに拡張することをしなかった、というところで、バックギャモンのヒットがもたらす逆転の楽しさというのは、まずあれが2人ゲームであって確率計算が全てを支配する閉じた緻密な世界だということ、互いに相手陣営に切り込む中という形式によって保証される「相手の全ての駒を通過しなければならない=駒をヒットしたあと、その駒を逃してしまったらこっちにもう一回やってくる」という緊張感、あとは緊張感が無くなったら(無くなる前でも)いつでもダブリングキューブでゲームを切り上げられる割り切った構造、といったところで担保されています。でもこれを黙ってマルチに持って行ってもしょうがない。まず何よりも、マルチというのは2人ゲームではなく、緻密な確率計算が今ひとつ役に立たない世界です。ファミリーゲームとしての制約を考えるとダブリングキューブというのも難しいでしょう。で、じゃあ代わりにどうするか、というところで持ちだされたのが「サイコロ/カード運なし、位置関係で移動力を決定」というルールで、つまり多人数ゲームの揺らぎの中でヒットが発生するんだから、ヒットされるか否かの不確実性の根拠も多人数ゲームの揺らぎのところにのみ求めるべきであると。誰かの駒が抜けだした時にこれをヒットできるかどうかは、他のプレイヤー同士が協力できるか、また協力すれば捕まえられるのかどうか、協力が可能なインセンティブ構造になっているか、といったところで決まります。当然、自分の駒を抜けださせるか否かも、そのへんの構造を分析して決めることになるわけです。で、その分析が正しいか抜けがあったか。バックギャモンにおいては確率計算で発生する状況分析の巧拙が、ここではマルチゲームの性質に合わせて綺麗に置き換えられています。

このゲームのマルチ的な素敵な嫌さはもうひとつあって、株ゲームとかではお馴染みの一抜け構造です。同じ所にみんなが集まってくると価値ががんがん上がっていきますが、どこかで誰かが頂点とみなして一抜けするとその人が一番儲かり、あとはその集団が瓦解していくだけ、という、まあどこでも見かけるやつですね。バントゥではこの構造が駒の移動歩数決定ルールにそのまま適用されていて、一番高いところで抜け出したい(「一番高いところ」の判断自体はこのゲームではほぼ自明です)、でも別のところでの一抜けゲームとか、何よりも前述のヒットをめぐるマルチ構造とかあって、さあどれを優先しよう、というところでジレンマが働いている。バントゥはこの両輪で回っています。この短いルールで、いや短いルールならではのというべきでしょうが、焦点の鋭い合い方。見事なもんです。

で。なんですけどね。

こんだけ言っておいてアレなんですが、バントゥって絶版なんですね。それも激レアとまではいかずとも、Boardgamegeekに出物があることはあんまり無い程度にはレアだったりします。えー勿体無いよ出そうよ、というので、おまえ版権取ってくるなら出してやってもいいよ、わかりましたじゃあ版権交渉してきます、と。

とりあえずまずは真っ直ぐ、元の発売元であるところのパーカー・ブラザーズ、現在は買収されてるのでハズブロ、にメールでお伺いをたててみるのですが、これが何度送っても返事なし。ええい大企業め。さて困ったどうしよう、というので調べてみると、なんか過去にBantuの私家版を出したひとというのがいる。その人にメールを出して話を聞いたところ、別に私家版を出すときには版権交渉とかはせずに勝手に出してて、何でかというとどっかの雑誌(具体的に言うとGames Internationalの4号)に「みんな勝手に私家版つくるといいよ」って書いてあったからだという。

その記事を確認できれば俺も私家版つくれるのかな、っていうか他にも私家版作ってる人いるのかな、ってんで、その記事を探したんですが、これが全然見つからない。どこにも売ってないし図書館にもない。うーん。じゃあ他に私家版作ってる人は? 探してみるとフランスでオンデマンド版を出してる人がいる。でもちょっと待て、これは私家版ってレベルじゃなくてコピーだし「©Parker Brothers」とまで入ってる。法律的にこれいいのか? もしかしてなんか抜け穴とかある?

ということで改めて著作権法を確認してみます。この著作権法というのが恐ろしく厄介な代物なんですが、ひとつ抜け穴としてあるのが、「翻訳権の10年留保」というものです。これは発表から10年以内に翻訳が出なかった場合、翻訳権が消尽してだれでも好きなように翻訳物を出版できる。という何だか恐ろしいルールで、1970年以前の日本など一部の国(まあイメージ的には「未開の国」ですかね)においてのみ適用されています。バントゥは1970年より前の発売で、もちろん日本語訳なんか出てませんから、少なくともルール部分についてはこれでOKということになります。問題はボードのほうで、もちろん絵の見た目は変える必要があるわけですが、ボードのグラフ構造が図形の著作物としての保護対象になるかどうかというのは相当な議論になりそうなところで、もし問題になるとあれだからマップは自分たちで変えてだそうか、みたいな話をしておりました。

でもフランスには10年留保ないのに普通にパーカーの著作権表示つけて出してるよね何で? 版権ちゃんと取ったとか? まさか。もしかして他にもまだ法律の何かが、というのでもう一度改めて著作権法を見直すと、ああ、これだビンゴだ、「団体名義の著作物」。Bantuは「©Parker Brothers」となっており、作者名のクレジットもイラストレーターのクレジットも無く、実際だれが作ったとも知られていないので、これはつまり完全に団体名義の著作物と言えます。でもって団体名義の著作物の保護期間は、日本だと公表後50年。バントゥはアメリカの著作物なのでアメリカ国内では発行後95年ですが、日本国内における著作権については(日本のが保護期間が短い場合は)内国待遇になるので公表後50年がそのまま適用されます。戦前の著作物だと戦時加算がどうとか面倒な話もありますが、バントゥは戦後のゲームなのでそれもなし。そしてバントゥの公表年は1955年。つまり、日本では、保護期間、切れてまーす。やったー。

ということで無事著作権的な問題がクリアされたので、日本でバントゥ出せることになりました。ちなみに商標は切れてるというより元々登録されていないみたい。もちろん日本で著作権が切れてるってことは、日本では誰が出したり作ったりしようと勝手なわけで、出版者に金なんか落とさず遊びたくなったときに自作すりゃいいってことでもあり、正直私としては自作派の方々に対して含む所は何もないんですけど、自作とかちょっと面倒くさいという方々におかれましては、(私ではない製造者が)何とか手間賃以上のものに仕上げるはずなので、ひとつよろしくおねがいします。そのうちハナヤマとかのn in 1系玩具(ダイヤモンドゲーム=チャイニーズチェッカー=Stern Halma、とかコピット=Fang Den Hutとか入ってるやつ)に収録されたりするとちょっと面白いですね。

ところでフランスだと団体名義の著作権は発行後70年ってなっててまだ保護期間切れてないんですけど…


***
追記(June 8)
バックギャモンよりもパチーシって気もするなー。形態的にはパチーシのほうが近いし。でも位置取りの悩ましさで言うとパチーシよりずっとバックギャモンなんですよねえ。バントゥ日本版が出て遊んだ人もちらほらいらっしゃるでしょうが、どっちだと思います?
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by Taiju_SAWADA | 2014-04-01 00:26 | 雑題

コースター宣言 The Coaster Proclamation of 1988

http://www.spieleautorenzunft.de/coaster-proclamation.html より】


1988年2月2日、ニュルンベルク・トイフェア中に開かれた、所謂「ホロホロ鳥の夜」。 この夜の Reinhold Wittig の呼び掛けにより、翌日13人の著者が「我々は、箱に著者名を記さないメーカーには自分のゲームを渡さない」とする宣言に署名したのです。

【画像】
http://www.spieleautorenzunft.de/system/html/Bierdeckel-Proklamation-df14f673.jpg

署名したのはコースター左上から縦に、Reinhold Wittig, Helge Andersen, Hajo Buecken, Erwin Glonegger, Dirk Hanneforth, Knut Michael Wolf, Wolfgang Kramer, Joe Nikisch, Gilbert Obermeier, Alex Randolph, John Ruettinger, Roland Siegers, そしてもう一人は誰なのか判別できていません。




「ホロホロ鳥の夜 Perlhuhn Night」についての注

Perlhuhnはドイツ語で「ホロホロ鳥」の意。但しここでは、 Reinhold Wittig が運営する個人運営ゲームメーカー「Edition Perlhuhn」を指す。


署名者について

Reinhold Wittig
前述のとおり、個人運営のゲームメーカー Edition Perlhuhn の主宰者。Edition Perlhuhn は Wolfgang Kramer「アンダーカバー Heimlich & co」(1984) の最初の出版元として有名。ゲームデザイナーとしての代表作に Das Spiel(1980。現在でもAbacusspiele版が入手可能)。

Helge Andersen
1980年代後半に活動したゲームデザイナー。Franckh(現在のKOSMOS)から複数のゲームを出版している。1980年代の Franckh=KOSMOS は Edition Perlhuhn と関係を持っており、「Edition Perlhuhn シリーズ」というレーベルを立てて複数のゲームを出版していた。

Hajo Bücken
子供ゲームの分野を中心に活動するゲームデザイナー。代表作に Coco Crazy (1992, Ravensburger)。 2000年代以降はHaba社との仕事が多い。

Erwin Glonegger
ゲーム批評家。Ravensburger社のディレクターとして活動。著書に Das Spiele-Buch (1999, Drei Magier).

Dirk Hanneforth
子供ゲームの分野を中心に活動するゲームデザイナー。Hajo Bückenとの共作が多い。

Knut Michael Wolf
ゲーム批評家、ゲームデザイナー、デベロッパー。とりわけ、ドイツゲーム賞 Deutscher Spiele Preis やゲーム展示会 Essen Spiel の母体となったゲーム誌、 Die Pöppel-Revue の創設者として有名。現在は主に Spielbox 誌で活動。

Wolfgang Kramer
ゲームデザイナー。説明は不要と思われるので省略。1988年に Franckh=KOSMOS の Edition Perlhuhn レーベルから フォルム・ロマヌム FORUM ROMANUM を出版している。

Joe Nikisch
Abacusspiele社の共同創設者。ゲームデザイナーとしても複数の作品がある。

Gilbert Obermeier
不明。→【追記 11/6】おそらくGilbert Obermairの誤記。Gilbert Obermairは70〜80年代に活動したゲームデザイナー。代表作に Black Vienna (1987, Franckh).

Alex Randolph
ゲームデザイナー。説明は不要と思われる。代表作のひとつ「ハゲタカのえじき Hol's der Geier」や「インコグニート Inkognito」はこの時期の作品。

John Rüttinger
不明。→【追記 11/6】Table Games In the World の小野さんより、 Drei Magier 社の創設者 Johann Rüttinger の誤記ではないかとのご指摘がありました。

Roland Siegers
ゲームデザイナー。主に1980年代に活動。代表作にマングローブ密林からの脱出アビリーン Abilene (1983, Hexagames)。 比較的最近の作品としては カフェインターナショナル・カードゲーム Cafe International Das Kartenspiel (2001, Amigo) などがある。



******

Spielmaterialの中の人であるHarald Mueckeさんは「SAZ Spiele-Autoren-Zunft e.V. ゲームデザイナー協会」というところの会長をやってた(まだやってるのかな?)んですが、Spielmaterialから駒を買った時に、SAZがやってる「ゲームにも著者がいますよキャンペーン」への協力を依頼されて、じゃあとりあえず日本語訳でもやりますよ、とか調子のいいことを言ったきりずーっと(年単位で)放置していたのをなんでか(じゃないな。TwitterのTimelineからの連想で)今思い出したんで、いまさら和訳してみました。そのうち他の文章も訳します(とかまた調子のいいことを…)
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by Taiju_SAWADA | 2013-11-06 00:19 | 雑題

捏造ドイツボードゲーム現代史に関するプレゼンのおしらせ

一年半くらいまえに「捏造ドイツボードゲーム20年史」というのをこのサイトで書いたのですが、これについて何か喋ることになりました。
「SF乱学講座」という公開講座にお呼ばれして、6月2日(日曜)、午後6時15分から東京の高井戸区民センターにてプレゼンテーションを行わせて頂く予定となっています。

SF乱学講座は、公式サイト(http://www.geocities.co.jp/Technopolis-Mars/5302/about.html )によれば「科学を中心とする各方面の常識を勉強しようという目的で始まり、もう15、6年続いている公開講座」(※)なので、いかなる意味においても常識ではない(なにしろ捏造だし)捏造ドイツゲーム現代史の話が相応しいかというと私の口からはなんとも言えないのですが、それはそれとして。この講座のメインスタッフである草場純さん(ゲーム史家/ゲームマーケット創設者)からお声がけ頂き、こういうことになりました。
(※)この文章の奥付は2004年となってます

書いた内容と同じ事を繰り返すのはいかにも寂しいということと、頂いている持ち時間がかなりあるので、周辺のこととかああいうことを書いた背景について盛ってみようと考えています。現時点で予定している内容目次は下記の通り。2週間前の現時点でまだドイツまでたどりついていません。どうしよう。それ以前にひとまえでまともに喋れるんだろうか。

・前振り
  ・ユーロゲーム/ドイツボードゲームとは概ねどんなものか
  ・なんのために現代史が欲しいか
  ・どんな観点で現代史を作ることにするか
    ・近現代のマルチゲームとポリティクス
・プレヒストリーを駆け足で
  ・ユーロゲーム以前
     ・伝統ゲーム由来の近現代ゲーム
     ・モノポリー
     ・リスク、ディプロマシー
     ・タクティクス
  ・ドイツゲーム以前のユーロゲーム
     ・3Mとサクソン
     ・70年代イギリス
  ・勃興前夜(~80年代中盤)
     ・ドイツのゲームメーカー
     ・ジャーナリズム
     ・スコットランドヤード
・本題
  ・スタイルの確立、クラマー/トイバー/クニツィア(80年代後半~90年代前半)
  ・カタン、エルグランデ、Jay Tummelson(90年代後半)
  ・Boardgamegeek、プエルトリコ、拡散(2000年代前半)
  ・二極化、反ポリティクス、アメリカ、時代の終わり(2000年代後半)
  ・現在
  ・未解決の諸問題


※「ポリティクス」などの語の用法は概ね Richard Garfield 他 "Characteristics of Games" (2012) に従いますが、特段この本の内容を話の前提にはしません
※「プレヒストリー」の部分は、概ね Stewart Woods "EUROGAMES" (2012) から必要な部分だけ取り出す形になる予定です
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by Taiju_SAWADA | 2013-05-19 23:46 | 雑題

Characteristics Of Games 3章のレジュメのようなもの

ひきつづき Characteristics of Games 3章のレジュメです。
(現在、読書会の2時間半前。間に合った!)

4章はぼくの担当ではないのではここにはレジュメはあがりません。
あがったらリンクは張ろうとおもいます。

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3章 インフラストラクチャー

概要

・ルールってのはそこまでゲームそのものではないですよ
・一階のルールと二階のルール
・ルールうざい。とくに長いルールうざい
・標準のありがたさ。あんまり新しいってのも考え物ね。
・ゲームの「結果」っていろいろあるよね。とくにマルチだと。
・終了条件と最終評価。金を賭ければ全て解決メソッド。
・非対称性について。あと道具とか。
・官能性のおはなし



ルール

ルールは何によって執行・強制されるか。
・プレイヤー
・審判
・環境(物理環境、プログラム)
この観点を考えると、ルールというのは「ルールブックに書かれたルール」よりも広い。

さて、ではルールはプレーにどれくらいの影響を与えるか。

まず、「ルール=ゲーム」ではないことを確認しよう。バスケの細かいルール変更があったとして、その前後で「バスケ」は別のゲームなのか? そうではない。
また、何かゲームをスポイルするような有力な戦略があったときに、これを塞ぐようなルール変更が行われることも多い。これはつまり、ゲームのコンセプトが先で、このコンセプトに沿ってルールがあるのであり、その逆ではないということだ。

この前提に立つと、ルールの中にはゲームの本質に関わる「一階のルール」と、初めてプレーするときにはべつに知らなくてもいいような細則「二階のルール」がある、ということも言える。むろん、一階のルールの中にもより重要なものとそうでないものがあり、また、MTGのカードのように「出てきたときだけ重要」というものもある。


ゲームの障害としてのルール

コアゲーマーやデザイナーほど忘れがちだが、もちろんルールは良くないものであり、短ければ短いほどましなものだ。1ページより長いルールを読みたがるプレイヤーなどそうはいない。
デザインの過程やルール調整の段階で問題が起きたとき、ルールを追加することで解決しようという方針は危険だ。特に一階のルールを加えるのはよくない。

別のトピックとして、あるコンセプトのために設けたルールが、それとは別の方向に(あるいは真逆の方向に)機能してしまうことがある。特に反則のルールに顕著で、「AをしたらXという罰則」は「Aをしてはいけない」にはならず、「AをしたらXという結果を産む」でしかない、ということは意識しておかないといけない。



標準

ルールを覚えるのは難しく、ヒューリスティックス・ツリーの構築も大変なので、すでにプレイヤーに広く受け入れられた「標準」を採用しよう、という話になる。標準はキーアサインから勝利条件まで多岐にわたる。また、素朴な見方を取れば、「ジャンル」とは標準の集まったものである、と言うこともできる。そのジャンルのプレイヤーはそのジャンルに共通で使える知識とヒューリスティックス・ツリーを持っていて、最初から快適に遊べるわけだ。

この「標準」の採用について、創造性の欠如だと文句が出ることも多いが(紙のゲームの世界ではそうでもない)、「標準」によってプレイングに快適さがもたらされているのであり、「創造的」でありすぎることは、この快適さを壊すことにつながる。当然、商業的失敗をもたらすことになるだろう。創造性の導入は、それがゲームにデメリットを超えて多くのメリットをもたらす場合に限って、採用されるべきだ。そもそも、ジャンル最大のヒット作はそのジャンルを創造したゲームではないことのほうが多いのだから。

ちなみに、あるジャンルの標準を別のジャンルに持ち込むことで、おもしろい効果が生まれる場合があるので、留意しておこう。



結果

2人ゲームの結果というのはたいてい、どっちかが勝ちもう片方が負ける、あるいはドローということになる。一方、2人ゲーム以外の世界では、結果にもいろいろある。
(非正統ゲームでは定義からして当然そうで、プレイヤーが自分で目標と評価を決めるものだったり、非電源系だとコミュニティでそれが定められたり。とはいえここでのメインは正統ゲームの話)

・1人ないし1チームの勝ち
・1人負け
・何人(何チーム)かの同盟による共同勝利
・ランキングづけで評価
・スコア(タイムとかふくむ)評価
・あとはドローの有無
(相互排他でないので注意)

こういう結果の定義はシステミックなものだと思われるだろうが、実際のところは相当にエージェンシャルなものを含む。ルールに何も書いてなくても、人は一位をとりたがる。

こういう結果の定義は、当然ゲームのポリティクスに大いに影響する。
1人勝ちなら負けてるプレイヤーはギャンブルに出るし(これはポリティクスじゃないけど)、キングメーカー問題も強くなる。
全員負け、の存在するゲームでは、2位に着くのがいいのか全員負けのほうがいいのか、という順位評価の問題もあるだろう。
1人負けのゲームだと、ターゲットを1人選んで残りの全員で殴る蹴るの暴行、ということが起きる。これは1人負けものだけでなく、負け抜けのある長いゲームでも起きる問題で、適当なところで「残った全員が勝ち」みたいな協議終了になったりする。共同勝利のゲームは「勝ち馬に乗る」ゲームであり、言うまでもなく極めてポリティカルだ。

こういうポリティクスを抑止する最も便利な方法は、既出の通り、金(ないしそれに類する利得)だ。金が支配する世界では、誰もが気にするのは順位ではなく稼ぎということになる。
金そのものではなくとも、スコアそのものに価値がある世界では、ポリティクスの問題は軽減される。


引き分けについて:
とりわけ正統ゲームでは勝者の発生を期待してプレーしている側面があるので、引き分けは不満が起きることもある。ただ、実力をきれいに反映する種類のゲームでは、引き分けが正当、ということもあるだろう。
引き分けありのゲームで注意しないといけないのは、負けかけているプレイヤーが引き分けに簡単に逃げ込めすぎるようだと興ざめになる、という点だ。



終了条件

正統ゲームというのはどこかで終わって勝者が決まる。終わり方には大きく2通りある。
・誰かが勝利条件を満たして終わる
・終了条件が満たされてゲームがおわり、その時点で誰が勝ちか評価される
勝利点的なものがあるゲームだと、後者が採用される事が多い。

終了条件は否応無く勝手にやってくる場合もあれば、プレイヤーが操作できる場合もある。後者の場合、勝ちプレイヤーは終わらせようとするし、負けプレイヤーは引き延ばそうとする。これは良い効果も悪い効果も生みうる。

ちなみに1人ゲームでは、テトリスのように「勝ち」が存在しないものもある。こういうものに不満が上がることもあって、2周目の概念がでてきたりエンディングができたり。


多重トラック制

スコアがスコアを再生産するモノポリーのようなゲームだと格差が雪だるま式に膨れ上がる。対して、ユーロゲーム的な「金と勝利点」式のアプローチがある。ユーロゲームほど明示的なものでなくても、囲碁における「地と厚み」のジレンマもこれに類するものと言えるだろう。これには利点がいろいろある。
・ビハインドを負ったプレイヤーが追いつきやすい。
・戦略的な選択肢を追加できる。
・ゲームの結果も接戦になりやすい。「あと1ターンあれば逆転できた」みたいなことが起きる。
・負けたとしても、「いや金では勝ってるから」的な慰めになる。



勝利条件

勝利条件にもいろいろある。勝利条件を適切に設定することで、ゲーム上の問題を解決できる場合がある。たとえば「相手の殲滅」を条件にすると互いに相手の陣地に攻め入ろうとせず膠着するところ、「マップ中央の拠点を支配下に置く」だとまともに組み合ってくれるとか。
勝利条件を複数持たせる手法もある。戦略の深みとリプレイアビリティをもたらすが、かわりに複雑化を招く。また、異なる勝利条件の間でバランスを取ることも必要になるだろう。(ゲームの穴を塞ぐために勝利条件を追加するケースではこの限りではないが)

勝利条件は必ずしも全員同じとは限らない。極端な例では勝利条件を自分しか知らないということもある。ヒストリカルシムのように大局的な勝敗がすでに決まっている状況からゲームを開始する場合、ゲームとしての勝敗をフェアに保つためには非対称的な勝利条件を設けるのが普通だ。



ポジション的非対称性

ほとんどのゲームは初期状態に関して非対称性を持つ。RPGでは種族が違っていたりする。また、2人ゲームでは先手と後手がある。完全同時プレーでないかぎり、厳密な意味での対称性は確保できない。
むろん、スキルの低いプレイヤー同士では、チェスの先手後手というのはほとんど非対称性とは無関係と行ってよく、そのレベルであれば多くのゲームは対称的であるとも言える。とくに古典的ゲームでは大きく非対称的なゲームは珍しいが、最近のゲームでは非対称性をフィーチャーするのがトレンドともなっている(Quakeみたいな対称的FPSは現在では少ない)。
非対称性の特殊な例として、用具の違いというものがある。通常のゲームではこれは許されないことが多いが(MTGみたいなものを例外として)、スポーツではたいてい、一定の制限の上で認められている。

対称性が望ましいようなゲームにおいて先手後手的な意味での非対称性がある場合、スタートプレイヤーを交代していくことで調整する手法は広汎に見られる。後手にハンデを与える手法もある。コンピュータゲームでは同時プレーが可能なので、おおむね非対称性は初期状態に関するものに限られる。
ゲームないしアトムが短ければ、複数回プレーすることで非対称性の解消を図れる。長いゲームでもリーグなどのキャンペーンを行うことはよくある。



官能性

ゲームにおいて五感に訴える側面は重要な要素だ。ここで押さえておく必要があるのは、ゲームのインターフェースにおける官能性の利用に関して、「美的側面」と「プレイサポート的側面」の2軸があり、この2軸は時に対立を招くということだ。
インターフェースと美についての問題は別途一冊の本が書けるほどのトピックなので、ここでは感覚的にいくつかのポイントを挙げるにとどめておく。

視覚
ゲームのビジュアルが悪くなるのは、複雑にしすぎたせいだということが多い。ゲームのビジュアルを「改善」すると、もとのものより悪くなっているというわけだ。

聴覚
特にコンピュータゲームでは聴覚の利用が著しいが、非電源系でも、ポーカーチップを置くときの音やボクシングにおけるボディコンタクトの音、スポーツイベントにおける観衆のうなり(勝敗にすら影響を及ぼす)など、聴覚が重要な役割を果たす。
聴覚は意識しているよりも無意識下に影響を及ぼすことが多い。官能性を抜きにしてゲームシステムを評価できると自分では思っているゲームデザイナーでさえ、実際には聴覚から自由ではないことが驚くほど多いのだ(音を消してコンピュータゲームをプレイしてみよう)。

触覚
チェスの駒の重み、シャッフルするカードの手触りなど、非電源系ゲームでは触覚の喜びを良く利用している。ダイスなどは最たるもので、ほとんど単にダイスを振り続けることのエクスキューズでしかないようなゲームすら少なくない。
コンピュータゲームではこの分野の利用は遅れていたが、最近では専用コントローラーやWiiリモコンなど、状況が変わりつつある。

嗅覚
コンピュータゲームやボード・カードゲーム等では嗅覚はあまり重要な要素ではない(が、本や箱を開けた時の匂いはみなさん嫌いではないでしょう?)が、スポーツでは匂いにも役割がある。つまり野外の匂いであり、人や動物や用具の匂いだ。

味覚
ワサビ寿司ロシアンルーレットみたいなものを除いては、味覚が問題になるのはスポーツでひどい目に遭ったときくらいしかない。

操作感
ゲームに対して何らかの入力を与えると、ゲームの環境がそれによって影響され、何らかの反応を返す。この反応がプレイヤーの予想と一致していたり驚きをもたらしたりすることで、プレイヤーに喜びを与えられることがある
チェス駒を前に進めようとすることで、チェス駒が前に進むとか、単に自明であるということもあるが、それでも触覚の問題でこれが良い感触をもたらしたり悪い感触をもたらしたりする。



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基本的には「意識されていなかったかもしれない様々なトピックを文字に起こして再確認」という章で、それほど目新しいトピックは無い(が、意識していなかったのであれば今からでも意識しておいたほうがいいポイントで溢れている、という言い方もできる。特に勝利条件設定や金の話など)。
あえて言えば、章の全体から「ルールデザインの非優越性」についてのメッセージを感じ取ることはできる。ゲームとはルールのことではない、新規性に対する戒め、官能性への言及など。とくに新規性に対する懐疑と標準への言及(レジュメではカットしているが相当なページ数が割かれている)には著者の商業ゲームデザイナーとしての矜持が感じられる一方、商業性による制約・限界の存在も同時に感じさせる記述になっているとも言える。
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by Taiju_SAWADA | 2013-03-20 10:37 | 雑題

カードを破いてみよう

破壊衝動というと無難なところでは窓ガラスを割って回ったりするわけですけど、その最もいじましい形態は何かという囁かな問いを立てるとですね、「カードを破く」というのはなかなか良い線をついた回答なのではないかと思うのです。

というわけでカードをいろいろ破いてみましょう、というのが今回のお題です。とはいえ、実際のわたくしがそういう卑小な破壊衝動を持っているかというと別にそれとは関係ありません。カードの紙というのはどうなっているのでしょう、というお話でございます。

トランプといいますかカードゲームといいますか、まあああいうアレですね、これを作る際には、普通の紙とは構造の異なる専用紙が用いられます。普通の紙と何が違うかといいますと、正面と背面の間に色つきの紙が挟まっていて、これがあるんで正面も背面も白っぽいデザインであったとしても、透けないんだと。もちろん他にもカードのコシがどうとか重さがどうとかありますが、最も重要なのはこの挟まった色紙です。

ただし、こういう専用紙を使わず、普通の紙を使ってるところもあります。「アートペーパー」といわれる種類の紙がよく使われます。何と言ってもお安いからですが、そのかわり透けます。こういう紙を使う場合、背面は黒ベタを採用するなりして透けないように工夫しないといけないんですが、昔のABACUSSPIELEのゲームってカード透けまくりだったよなー、あれって白ベタなのにアートペーパー使ってたんだろうか、と今ちょっと思いました。

で、これは本当か嘘かわからないんですが、同じ専用紙でも、紙の値段によって中に挟まった色紙の色が違うんだとか。安いのは灰色で高いのが黒、中間でピンクとか青とか。どうもにわかには信用なりません。もっとも、一般には紙というのは同系なら重い(厚い)ほど高いのでして、そのコード分けのために中の色紙の色も変えてる、というならある程度はわかります。でも実際のところ本当にそんなカラフルな色紙が使われてるかは破いてみないとわからないわけで。

それでは破いてみましょう。

※そのまえに。紙の重さの話もいっしょにしておきたいので、重さの単位についてここで前置きをしておこうと思います。日本でよく使われる単位は四六判換算の連量といわれるもので、書籍とかでよく使われる「四六判(788×1091mm)」で1000枚あたり何kgですか、という重さです。英語圏、というか英語で商談をするような場所だと坪量という単位で記されることが多く、これはその紙1枚1平米で何グラムですか、というものです。で、カードゲームに使われる紙として標準的な重さは、四六判連量だと230kg、坪量だと270グラム/平米[以下gsm]のものが多いです。正確には270gsm=232.1kgくらいの換算レートですが、ざっくり270gsm≒230kgとして扱います。

1.
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まずは王道中の王道、US Playing Card社のトランプ「タリホー」です。ご覧のとおりのくっきりブラック。ところで今回いろんなカードをくらべてみて、タリホーが意外と柔らかい紙を使ってることにちょっと驚きました。ほら何しろトランプ業界を代表する会社なのですし、思い切り重い紙を使ってるのかなーと思うじゃないですか。でも実際これたぶん270gsmくらい(あとで調べたら実際270gsmでした)。まあ必要充分ですし、あんまり重いとリフルシャッフルが厳しいので手品の人には売れなくなるかもですけど、王様としては物足りなくないすかね。

2.
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ひとのものを破くまえにまず自分のものを破きましょうということで、再版日英版の「ファブフィブ」です。印刷は中国製。こちらもブラック。今回比較したカードの中では、このファブフィブと後に出てくるアドルング社のカードが最も重いカードとなっています。数字で言うと300gsm。1割しか違わないじゃんって話ですが、いやしかしこれは結構歴然とした差なのですよ触ってみると。何か分銅とか使ってわかりやすく示せればいいんですけどね、いや頑張れば示せるはずですがそれはまた別の機会に。ところでさっきから色紙の話をせず重さのことばっか喋ってますね。

3.
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色紙といいつつみんな黒ですか、という反応が当然あるかと思いますので、黒じゃない色の紙が入っているケースを見てみましょう。
Amigoの6nimmt(1998年くらいに買ったもの)とHiGの操り人形(たぶん初期の版)です。写真だとちょっとわかりづらいかもしれませんが、どっちも紺色をしてます。これ同じ印刷所で刷ってるんじゃないかと思ってたんですが、よくみるとエンボス加工(英語だとlinen finishって言います)が違ってました。HiGのはドイツものでよく見かけるタイプのパターンなんですが、Amigoのはちょっとレリーフっぽいというか、パターンが大きいんです。どうも時期によっても違うらしくて、比較的最近の作品である「テネキー」では普通のドイツっぽいパターンになってました(後述するKosmos等のカードと同じパターンです)。重さは270か280gsmかな? タリホーより気持ち硬い気がしますが、そりゃ単にブリッジサイズとポーカーサイズの違いでしょ、と言われると返せません。

4.
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ドイツはみんな紺なのか、というとさにあらず、黒いのが挟まってるカードもちゃんとあります。Kosmosの「大聖堂カードゲーム」とHiGの「カードカソンヌ」。たぶんこの2つは印刷所同じです。エンボスのパターンが全く同じですし。紙質ですが、さっきの紺色組にくらべてわずかに柔らかくなってます。これが多分タリホーと同じ。そうすると紺色組は280gsmってことなんですかね。

5.
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続いてはドイツ非標準ものを。どっちもエンボスかかってません。
まずはABACUSの「シュヴァインズギャロップ(オール・ザ・ウェイ・ホーム)」。このころのアバカスはカードにお金をかけてない印象があり、実際エンボスはかかってないわけですけど、でもカードはご覧のとおりちゃんと黒紙を中に入れてました。初版のマンマ・ミーアとか透けまくりだった印象があるんですが、もしかするとわたくしの思い違いだったのかもしれません。お持ちの方はお試しください。重さはたぶん270gsm。
そして問題のAdlung。これは「ベネチアの仮面舞踏会」からとってきました。Adlungというのはいつでも60枚ワンパックの定形フォーマット、という印象がもちろん強いのですが、カードの質は結構ゲームごとに変えてます。この「ベネチアの仮面舞踏会」はすごくて、まず表面加工がマットじゃなくてグロスです。ドイツのカードでグロスのものってかなりレアだと思います(他の国だと結構ふつうだけど)。グロスはマットよりも硬くて丈夫なのでカードの重さを他と同じ基準で考えると間違える可能性がありますが、あえて気にせず比較しますと(どうせ印象論だ)、ファブフィブとほぼ同じ重さ・硬さとなっています。つまり300gsmですね。Adlungがいつもこんなごっついカード使ってるかというとそんなことはないはずで、個人的にはむしろエンボス無しで少し薄めのマット、という印象を持っていますが、何しろゲームごとにころころ紙を変える人たちなので、印象がどうこういっても仕方ないかもしれません。

6.
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変わり種を2つ。1点目は日本物で、モンスターメーカー5リバイズドのカードです。先ほど出てきた紺色のものと少し似てますが、これは水色になってます。これは珍しい。どこで売ってるんでしょうか。カードはエンボス無しのグロス、重さはたぶん270gsm。あと、ドイツものに馴染んでいるとちょっと面食らうことに、大きさがポーカーサイズです。というか冷静に考えてみると、欧州ものってほとんど全部ブリッジサイズですね。やぱしブリッジは欧州のものだってことなんでしょうか。そしてモンスターメーカーはなぜわざわざサイズのでかい(ということは値段も多分高い)ポーカーサイズを選んだのだろう。
あともうひとつ。Gryphon GamesのFor Sale。今回唯一の灰色です。というか、中身のほとんどが灰色ですね。他のカードは白ベースで薄く色紙を挟んだ構成なんですけど、この紙は基本が灰色のボール紙で、いちばん外だけ白い紙を貼ってる、という造りです(モンスターメーカーのも同様に、色紙のほうの比率が高くなってます)。見た目で判断するとこっちのが安そうですが。だってボール紙にしか見えないし。重さはたぶん270gsm。ポーカーサイズです。これがポーカーサイズなのは単純にメーカーが米系だからなんでしょう。

7.
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そして最後に、何の色紙も間に挟まず堂々とアートペーパーを使っている素敵なカードを御紹介。まず一点目の小さいカードは交易王(第1版)の小さい方のカード。まあこのカードは表裏の概念がない以上透けていても全然構わないわけで。大きい方のカードとは作りが露骨に違います。たぶん大きいほうのカードは色紙挟んでる。しかしこういうところでちゃんとコスト削っているのですねえ。そしてもう一点、こっちはあまり言い訳が効かない、Red GloveのBig Cheeseです。いや手札にはならないんでたしかに致命的なことにはならないんですが、でもねえ。ところでRed Gloveなんてメーカー知らないし、って人のが多いかもしれませんね。別に知っておかなければいけないメーカーでもないので気にしないでください。

以上です。ご清聴ありがとうございました。
…また印刷所の人の不興を買いそうだな…
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by Taiju_SAWADA | 2012-06-09 11:16 | 雑題