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電力会社(二版)

[地図上の都市に電気を供給するゲーム。発電所を競り落とし、燃料を市場から購入して、都市間および都市内における電線の敷設費用を支払うと、(既に他社が入っていなければ)その都市の電気利権を獲得して電気代収入を得ることができる。最終的に最も多くの都市に対して電気を供給できたプレイヤーの勝利。ゲーム上の特徴として、中間順位(つまり所有する電気利権の数)の低いプレイヤーに対しては、燃料の優先購入権や電線の優先敷設権などが与えられることで、これによりゲームは概ね常に一定の緊張感を保つことになる。]

良質な順位マネジメントゲーム。実際のところマネージしないといけないのは順位じゃなくて金銭なんですが、間に順位というものを挟んで、常に直接意識すべき第一の対象として金銭よりも順位のほうを表に見せた構成になっています。つまりは「順位が高いほうが現時点での見かけの収入は高く、その代わりとして、順位が低いほうが盤面における要所を押さえるには都合がいい(但し、ゲーム終了とともに順位は絶対のものとなるので、既に盤面が手詰まりを起こしてからでは遅い)、そしていったん順位を上げてしまうとなかなかこちらの都合では下に戻せない(ので、決定的な場面で要所を他プレイヤーに押さえられてしまう危険がある)」という要約でこのゲームのほぼ全てを表すことができるのでして、後の部分は全てこの要約の構成要素となっています。
その意図がどれほどの実を結んでいるかと、その点にのみ的を絞って言うのであれば、これはほぼ理想的な状態であると思います。ある時点における自分の意思決定が直近の順位に及ぼす影響、これはきわめて明快です。その順位変動が金銭に及ぼす影響となると、きちんとした計算をしないと分からない。中期的な金銭面での損得勘定となると、その場での計算ではほぼ無理なのであって、事前の分析または経験、理想的にはその両方が必要となるでしょう。長期的な順位に及ぼす変動は。分析が効かなくなる分野(運も絡んできますし、なにしろマルチプレイヤーゲームとはそういうものです)においては、再び形容しがたい勘のような立ち回りの巧拙のようなそういったものが幅を利かせることになります。この時間の遠近への対処こそがマネージメントゲームであって、描かれた遠近法の美しさを評価の全てとするのであれば文句の付けようもありません。遠近法以外のものがないとか、結局上位の下にべったりくっついて最後に抜け出した者の勝ちじゃないか、とか言うのは的外れというもので、これはそもそもそういうゲームとして作られているのですから。
問題はむしろ、そういったものを全体として形作るためにはいろんなものを配置していかないといけないわけで、この配置されたなんやかやが少々気に障る。もうちょっとゲーム時間は短くならなかったか(2時間半という時間をどう見るのか、というのは人によって当然変わってくるでしょうし、前述の理由によりどうしてもマネジメントもののゲーム時間は長くなってしまうものですが)、市場への燃料供給のシステムはもうちょっとスマートに行かなかったか、それを言うなら時代変化のシステムも(一都市に参画できるプレイヤーの数が、時間が進むにつれて多くなっていくのですが、その区切りのルールがちょっと微妙なのです)、競りの使い方が適当すぎる、発電所の最低価格と性能の関係性が中途半端、といった感じで多数列挙できてしまいます。それだけのことがあっても基本線が「買って建てて多く建てれば勝ち」とごく単純明快なものなので、プレーそのものを妨げるというほどのことにはならないのですが、なんといいますか、折角本筋が綺麗にできているのになあ、という印象は持ってしまいます。
でも好きなんですけどね。

Funkenschlag (2nd Ed.)
by Friedemann Friese (2F Spiele)
★★★☆
by Taiju_SAWADA | 2005-01-22 16:30 | 感想・紹介
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