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ミニチュアゲームのコンセプト提案書

ミニチュアゲームと通常のボードゲームとは何が違うのか、と言えば。それは勿論「距離の表現」であります。

通常のボードゲームにおいては、ゲーム盤上に何らかのマップ(というかグラフと言えばいいのか)が示され、そしてルールによって定義された「マップの意味」から、物体Aと物体Bの「位置関係」が与えられることになります。

対して、ミニチュアゲームでは、物体Aと物体Bの位置関係は、(物理的な実体としての)物体Aと(物理的な実体としての)物体Bの、(ごくふつうの三次元空間上の)「距離」によって与えられます。もう少しきちんと書くとすれば、その「距離」という数字に対して、ゲームのルールが何らかの意味を与えているとも言えるわけですが、いずれにせよ、ミニチュアゲームにおいて位置関係を示す主要な道具が「盤上のマップ」ではなく「巻尺」である、ということに変わりはありません。

マップと巻尺のどちらがよいのか。という話になりますと、巻尺にはそれはもういろいろな欠点があり、ゲーム盤にはいろいろな利点があるというのは確かにその通り。まずもって、巻尺と言うのは単純な「駒と駒の距離」以外のことを指し示すのには不向きなものでして。力関係の差だったり好き嫌いがどうだったりというような、なんだかよくわからない「距離」を示したいときには、自由に位置関係をデザインできるゲーム盤を用いざるを得ません。そして大概のゲームには、単に何メートル離れているということではない、いろんな複雑な位置関係を示したいという差し迫った必要があるのであって、そうなると巻尺を使おうなどという発想はまず出てこないでしょう。大体いちいち巻尺で測らないと位置関係が分からないというのでは取り扱いが不便ですし、位置関係がいまいちわからないまま遊ぶというのではゲームが大雑把なものになってしまいます。

しかしだ。どんなときでも盤にマップで点と線か?

ゲーム盤を使うからといって、物理的な制限から開放されるわけじゃない。ボードゲームには駒だかカードだか何だかが必要であって、それらのことごとくが盤上なり盤外なりで一定の面積なり体積を占有する以上、ボードゲームといえど面積・体積によるデザイン上の制限から自由ではない。というより、「盤面積」という言葉はゲームデザインにとって思い切り抑圧的に働く(ここで「電源付ゲームはいいねえ」と溜息をつきつつ、しかしあっちにはあっちで画面の面積というおもーい問題があったりして、やっぱり非電源でいいやと元に戻ってくるのだった)。位置関係を何らかの図柄によって表現しなければいけない都合上、ゲーム盤が表現できる位置関係の総量は、同一面積を使って巻尺表現を行う場合に比べて少なくなる傾向がある。そして最も重要なこととして、ゲーム盤の面積というのは殆どの場合、そのゲーム盤を設置する空間の面積に比べて遥かに小さい。

まだある。ゲーム盤というのはどう見たって平面的な存在なので、三次元的空間の表現には向かない。いや、まあ、三次元だろうが十次元だろうが、ゲームに必要なぶんだけ何らかのロジックを使って表現しちまえばいいのだろうが、第一にプレイヤーがその空間を把握しようとする際にえらいこと大変な思いをしないといけないという問題、第二に三次元空間の表現はまともにやると大量の位置関係を保存しておかなければいけないということになり、すると前段で述べた量の問題から、ゲームデザインに厄介な束縛がかかることになる。

では巻尺だ。いや実際のところ、巻尺が上記のような「ゲーム盤の欠点」を常に解決できるわけではないんだけども。これは巻尺によって表現できる空間というのが、「とりあえず今現在現実に目前に確実に存在している空間」だけであるからで、百メートル平方の空間を用意できるかといえばそれは無理だし、ホバリングするヘリコプターを表現しようとすればボードゲームと同じように難解かつ滑稽な手法を採用しなきゃいけない。

巻尺が完全な優位に立てる状況は極めて限定される。必要な位置関係は距離と大雑把な高低差の2種類であること。物体に要請される動きと、物体に実現可能な動きが一致していること。

そして何よりも、いま目の前に存在している使用可能な空間と同じ面積体積および構成が、ゲームにとって必要であること。

ここまでくれば、ミニチュアゲームに必要なゲーム風景がどのようなものかは明らかだ。ゲーム会場全体を、より限定的に言えば「誰かの部屋を」、よくわからないが存在感だけはある駒という駒が、隅から隅まで駆け巡る風景。やっと企画っぽい話になったと思ったらもう書くことが無い。

んーと、ある意味ではミニチュアゲームの文法に逆らう企画ではありますね。概ねミニチュアゲームでは何らかの舞台をセッティングして、その上で駒を動かすわけですから。でもこれまでの話から行けば、「舞台」なぞセッティングして使用可能面積を狭めている場合ではないのですよ。いや起伏を作るのはOK。OKなんですけど、それだったらジオラマ山を作るのではなくて、どっかからか衣装ケースを引っ張り出して部屋の中央に置くべきだと。ジオラマ山より衣装ケースのほうが大きいんで。

それとこれは個人的な趣味の問題なんですけども、なんというかあれだ、平原の上で衝突する二つの軍団をシミュレートするよりも、部屋になんだかわからないミニチュアが大量に現れて運動会をしたり殺し合いをしたりする状況をシミュレートするほうが、話としては遥かに上出来で興奮しませんかね? ということです。


※1年くらい前に身内向けで書いたもの。まだこのアイデア自体は諦めてないんですが、じゃ作ろうかというのでできたものがどこからどう見ても御弾きの亜種であってミニチュアゲームとは何の関係も無いよ、というものだったりしてもう一度落ち着いて考え直してみましょう、という意味をこめて公開してみます。
by Taiju_SAWADA | 2005-09-17 01:18 | うわごと
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