「7つの習慣ボードゲーム 成功の鍵」というゲームを買ってきてルールを読みました。ふつうは遊んでいないゲームのプレビューはしないことにしているのですが、ちょっとこのゲームについては例外ということで、この段階で簡単なプレビューを急ぎ足でしたいと思います。
どういう意味で例外なのか、なんですが、まずこのゲームはウェブサイト等でルールが公開されていません。また、値段設定がかなり高め(二万円+税)なので、自分で買って読んでね、と言うのに無理があります。見た感じではルールの詳細に触れたレビューも少ないようです。まあこれらは本当はどうでもよくて、わたくしにとって重要なのは、このゲームがSid Sackson作「アイム・ザ・ボス (I'm the Boss! / Kohle, Kies & Knete)」の強い影響を受けている、悪意のある言い方をすれば所謂ぱくりがある、という話を耳にしたということです。そのぱくりというのがシステムの軽い流用程度のものなのか、それとも完全な盗作なのか。これは確かめてみる必要があります。というのはわたくし、「アイム・ザ・ボス」の日本語版出版に関わっておりまして、具体的にはルール和訳(初稿のみ)と一部ボード・カードのエディトリアルデザインをやってるのです。 そういうわけでございまして、次段落以降、アイムザボスとのルール比較という形で「7つの習慣」のルールを簡単に見ていきます。正直なところ筆致に稚拙な悪意が混じっているのは否定しがたいのですが、上記のような事情なのでご容赦いただきたく。(稚拙なのは単に時間なくて急いで書いているというこっち側の事情もあります) **** アイムザボスでは、プロジェクトに割って入ったり邪魔したりするために使う手札が重要な役割を果たしますが、7つの習慣には、その意味での手札はありません。あるのはプレイヤーの手元に置くビジネスマンタイルだけです。つまり、プロジェクトの交渉において、例の醜い主導権争いがなくなり、条件闘争のみになります。 【※これが最も決定的な違いと言えるでしょう。個人的にはこれでこのゲームへの興味が完全に萎えましたが、このゲームの本来の目的である講習的なアレを考えればアイムザボスみたいな意地汚いゲームが受け入れられるはずがないので、その意味では妥当な変更であろうと思います。どうしても面白くなきゃいけないってこともないでしょうし。あとまあこの段階で違うゲームになってるので提訴的なやつも無くなると言えるでしょう(そもそもゲームに著作権は…という話をおくとしても)。つまるところドミニオンが劣化デッキビルドを訴える権利も必要もどこにもないわけです。】 そのプレイヤーの手元に置くビジネスマンタイルですが、アイムザボスのように1種類につき1枚ずつしかないのではなく、いっぱいあります。ゲーム開始時には1枚だけしかありませんが、後から金で買えます。また、能力値の概念があり、難しいプロジェクトは能力値が高いビジネスマンしか参加できません。当然、高い能力のビジネスマンは購入費が高くなります。なお、所有ビジネスマンの能力値合計は勝利条件に絡みます。 7つの習慣には勝利点チップというのがあり、プロジェクトを成功させるとお金だけでなく勝利点チップももらえます。当然、勝利点チップも交渉対象になります。お金はビジネスマンタイルを買うのに必要なんで重要ですが、最終的な勝利条件に絡むのは勝利点チップのほうです。この変更はたぶん悪くないんじゃないでしょうか。 アイムザボスでは手番プレイヤーは「プロジェクト」か「手札補充」の2択から選択しますが、このゲームではその部分での選択権は基本的にありません。サイコロを振って出た目の指示に従います。出た目がプロジェクトならプロジェクト(プロジェクトのマスに止まったらプロジェクトの難度は自分で選択できます)、イベントならイベント、雇用ならビジネスマンタイルの購入、という感じです。あと「勝利点カードをもらう」というレアなマスがあります。 ええと、勝利点チップとは別に「勝利点カード」というものがあります。このゲームは何種類かの勝利条件があって、それを全部満たさないと勝利とはみなされません。で、勝利点チップと勝利点カードは完全に別の条件です。勝利点カードは4色あって、これを全て揃える必要があります。勝利点カードをもらうマスにとまったら、自分と誰か1人他プレイヤーを指名して、その2人が1枚ずつ任意の(ではなく山から3枚引いて好きなもの)色のカードを貰います。ちょっとしたネガティブフィードバック装置と考えればよいでしょう。 イベントは昔懐かしいこてこてなやつです。なお、悪いイベントを防ぐためのシールドも用意されており、特定のマスでお金を払うと買えます。 あと何か細かい要素がいくつかあります。 ちょっとおもしろいのは勝利条件で、このゲームは必ずしも勝者を一人決めるものではありません。ゲームは一定ターン数経過で終了し、(明確には書いていないんですが)終了時点で勝利条件を全て満たしているプレイヤーは全員勝利、満たしていないプレイヤーは全員敗北となります。ただし、勝利したプレイヤーの中でも、勝利条件の満たし方で優劣があります。プレイヤーはそれぞれミッションカードというのを1枚だけ渡されてゲームを開始し、そこに書かれたミッションを達成するのが勝利条件の1つになっています。このミッションは1枚1枚違うもので、難易度にばらつきがあり、難易度の高いミッションを達成したほうが優れた勝利だ、というわけです。そして、このミッションカードは特定のマスに止まると交換できます。難度の設定をある程度プレイヤー側で調整できるわけですね。普通の(1人勝ちまたは順位決めの)ボードゲームでは採用できないルールですが、これはこの種のゲームとしては気の利いたルールだと思います。 **** と、こんな所です。勝利条件には見るべきところがありますが、その点を除けば、重要なところがスポイルされ、かわりに何か変な要素がいろいろ突っ込まれたアイム・ザ・ボス、というあたりの評価になります。既に書いた通り、その変更にはそれなりに尤もな理由があるんですが、それならアイム・ザ・ボスじゃなくてもよくない? という疑問はどうしたってあります。ただしこれはあくまでもルールのみ読んだ段階でのプレビューであり、遊んだ後には評価の変更を行う可能性が大いにある、とは申し添えておきます(付き合って遊んでくれる人がいればね…)。 **** ※それから業務連絡。このゲームのデザイナーであるNaoki Matsunagaさんは二度とわたくしの前に顔を出さないでいただけますようお願いいたします。
by Taiju_SAWADA
| 2016-04-14 22:58
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