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[邦題は「ぴったりの箱舟」あたりのが原題に忠実でいいのでは。内容は文字通りぴったりに、というかここまでやるとぎちぎち過ぎて後で出せなくなるんじゃねえのかというくらいの勢いで動物を箱舟に詰め込みましょう、というもの。要は川渡り問題をアレンジしたようなゲームで、肉食動物と弱い草食動物は一緒の部屋にいれちゃだめとか、植物と草食以下略、なタイトな制限下で、他プレイヤーより多く手札の動植物を船に入れれば勝ち。ちなみにどうやっても駄目な場合は船室の増設ができる。いいのか。]
さてこのゲームをどうとらえればいいのか。とにかく制約が多くて、いや別に制約が多いこと自体は構わないといえば構わないんですが、言うまでも無く制約はルールなので、効果的な補助表示がついていないんであれば何とかしてこいつを全部覚えないとゲームが始まらない。いや無論各カードにはそれなりに表示もついてはいますが、特殊効果についてはテキストがついてなかったりとか色々不親切な点があり、ゲームを始めると結局一個一個マニュアル首っ引きで確かめないといけないことに。 Doris and Frank のゲームといえばちょっと前にも大貧民みたいなゲームで似たような表示の不親切があったような気がしますけど、このへん如何に見栄えが良くても同人物は同人物、ってことなんでしょうか。 始めるためのハードルが高いんであれば、そのぶんそのへんのルールはきちんと意思決定に噛んでくるんだろうね、と期待をゲーマーズゲーム方向に振ってみましょう。ところが別にその方面でもこのゲームはかなり微妙で、というのはこのゲームにおいて「あれもできないこれもできない全然駄目ー」というシチュエーションは当然いっぱい出てくるんですが、しかしこれは多くの優れたゲーマーズゲームと一部の極めて優れた非ゲーマーズゲームがそうであるような、今見えている局面と自分だけが持っている情報から手筋を一つ一つ読み進む熟考を重ねた結果、ということではぜんぜんないのです。単に一個一個マニュアルの記述を上から確認していってこの札はオケーこの札はだめ、とひよこ鑑定を行った結果でしかありません。 別にこのゲームに遊びでが全くないということではなく、動物の補充をどのへんでやめて船に放り込み始めるべきか(手は広く持っておくほうが良いのでカードの補充はしたいけれどもゲーム終了までに使いきれないのなら単に手損)とか、隣のプレイヤーがプレイできる可能性を完全に潰すにはどうしておくべきかとか、それとも自分が出し易いカードを優先的に処理しておいたほうがいいかとか、悩めるポイントはいくつもあります。駄目なのは、ゲーム全体を支配しているひよこ鑑定の重量のせいでそうした遊び所を強く認識できないってことで、もっとずっと軽く仕上げるか、あるいは川渡り自体にもっと戦略性を持たせて正しいゲーマーズゲームに仕立てるか、どっちかにウェイトを振るべきだったと思います。このままだと「頭を使わずにゲーマーズゲームの嫌な部分を体験するゲーム」にしかならないんじゃないでしょうか。いや、 Doris 画のナイスなどーぶつがいっぱい見れるんだから細かいことはどうでもいいじゃんという意見には黙って賛同したいところでもあるんですけど。 Arche Opti Mix by Doris Matthaus and Frank Nestel (Doris and Frank, 2005) ★★ ■
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by Taiju_SAWADA
| 2006-03-22 00:44
| 感想・紹介
[各プレイヤー四匹の駱駝を持ち、それぞれの駱駝に何種類かの商品を積んでゲームスタート。毎ラウンド、20あるマスのどこかに自分の駱駝を一匹ずつ配置する。各マスには一匹の駱駝しか入れず、また前回のラウンドにおける配置によって移動にそれなりの制限がかかる。ゲームのポイントは、この20のマスのうち5マスが地雷ポイントだというところで、地雷を踏むと指定の商品が没収される。地雷の箇所はラウンド開始時に各プレイヤーに対してそれぞれ別個のポイントが(盗賊カードとして)示され、一巡するごとにカードを回すことで少しずつ情報が増えていく、という形。メモ帳必須。数ラウンド行い、最終的に残った商品の数でゲームを決める。]
全員に情報のピースを非公開情報として配っておいて、ピースを配っていくことで徐々に情報の総体が見えてくる。但しどの時点においても全員の持つ情報が完全に重なることは無い。という、今まではガチ推理物にだけ許されていた手法を大々的に取り上げてほぼそれだけでゲーム一本作ってみましたー。実にインディーズっ気溢れるやり口ですがメーカー見たらこれQueenじゃないの。トップメーカーからは一段落ちるとは言えメジャーからこういうゲームがでてくるというのはちょっと驚きです。つっても作者がHennだから実は元は同人物(db)のゲームなのかもしれないですけど面倒なので調べません。 インディーズかどうかは置いといてその手法自体に対する評価ですが、ルール一見して感じたほどには遊んでみると悪くない、んですが結論としてはやっぱりちょっと無理筋っぽい。ゲームにおける情報提示の手段として理屈方面から眺めればこれは当然アリなやりかただとは思いますけども、ボードゲームは確かに理屈がメインとはいえ、それだけでなく特にファミリーストラテジーの分野ならばブツを右から左に動かす手続きの快楽にも支えられているわけで、そっち方面のことをいくらなんでも無視しすぎています。駱駝を弄ってたと思いきや唐突にメモ書きの作業を強制されるのがもう単純にうざい。推理物においてメモ書きが歓迎されるのはあれがそもそもメモ書きのゲームだからですし、ディプロマシーその他の同時プロット物では割り込んでくる回数が少ないから許容されているので、このゲームの場合どっちにも当てはまりません。 記憶物にしたくなかったし、そうすると他の手段は出てこなかった。というデザイン上の事情は理解できます。理解はできますが、そもそもの枠がはっきりと軽めのファミリーストラテジーなんですから、ゲームのテンポに余計な重荷を背負わせてそのまま投げっぱなし、というのでは単に異物が挟まったようにしか映りません。もうすこしメモ書きを面白くするか、ゲーム全体を重くしてテンポを合わせるか、できればその両方の措置を取るべきなんじゃないでしょうか。 しかしほんとにHennのゲームと相性悪いなあ。 Timbuktu by Dirk Henn (Queen, 2005) ★★☆ ■
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by Taiju_SAWADA
| 2006-03-22 00:44
| 感想・紹介
[盤にはすごろくが書いてあり、全員共通で動かせる駒をいくつか置いてゲームスタート。それぞれの駒に対応する色のカードを手札として持ち、手番にはこれを一色何枚でも出して、出した枚数だけ駒を進める。盤のほうにはそれぞれのマスに「-1」とか「+3」とか「カード一枚補充(これ以外の補充は、全員が使い切るまで無し)」とか書いてあって、止まったマスの指示に従う。どれかの駒がゴールに着いたらゲームセット、得点の大きい人が勝ち。]
マイナス点のマスが続く一個手前で駒を止めて、全員で別の駒のカードを出し続ける我慢比べ、1歩目ならさほど大きいマイナスにはならないから踏み込むか、それとも他の連中が耐え切れずに出すまでなんとか堪えて成功したら悠々と渡りきるか、主にそういう顔色伺いをやるゲームです。表明できる宣言の幅がたいしたことないので、ブラフというほどのものではありません。あと伺ったからといって特にどうなるわけでもなく結局運で決まるケースも往々にしてあり、どうにもならないときはどうにもならないという感じです。あと、駒が複数あるというのも実はちょっと微妙で、これのせいで戦局が微妙にばらけて散漫な印象を与えているかもしれません。 とはいえ美点もあって、ゲームのルールが全て一点を向いており、余計なものをなにも入れていないこと。放っておくとすぐゲームをややこしいものにしたがるKramer and Kieslingのボードゲームとしては奇跡的です(って、Holzwurmなんてゲームもありましたけど)。ゲーマーズゲームを出すブランドならばAleaがあるんですから、Ravensburgerブランドではこういう誰でもルールを聞けば勘所を掴んで遊べるようなものを出していったほうがいいと思います。少なくともこのゲームは、ゲームを好んで遊びたがる人種を不快にさせるような「勘所の無い」ゲームではありません。(このへん誰に対して何を主張しているのかと訝るかたもいらっしゃると思いますが、早い話BoardGameGeekにおけるあまりにもあんまりな低評価にちょっと憤っているのです。軽すぎるゲームが嫌いなのはわかるけど味噌と糞との区別くらいはつけてやれよと) ただしその観点で見たとき、対象年齢を十歳以上にしてしまったのはミステイクと言えるでしょう。本来これは八歳以上向け市場をターゲットとすべきゲームなんですが、あんまり上手く機能していない得点周りのルールと機能はしてるけど対象年齢を上げる要素でもある経験カードのルール(※)のせいで十歳向けと書かざるを得なくなって、そのせいでだいぶ損をしています。経験カードのルールは確かに悪くないんですが、削ることがクリティカルになっちゃうというほどのものではないので、とりあえずもう少し整理して解り易いものに変えてもよかったのでは。まあ作者というよりはRavensburger側に対する文句ということなりますか。 ※経験カード:マイナス点のマスに止まると補償の意味も込めて1枚もらえるカード。普通のカードがかならずいつかは使わないといけないのに対して、このカードだけは使っても使わなくても構わない。その他ゲーム終了時にいくつか(余計な)特殊効果あり。 Celtica by Wolfgang Kramer and Michael Kiesling (Ravensburger,2006) ★★☆ ■
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by Taiju_SAWADA
| 2006-03-22 00:43
| 感想・紹介
前回までのあらすじ:
箱...はなんとかなるかもしれないけど。カードが高いよう。チットはそもそもどこも印刷受けてないし、ボードすらどうにもならんじゃないかー。 ボードの問題はあれが特殊な紙だということで、通常だと1.5mm厚のA2板紙を印刷済みの紙で表裏からくるんで折り目加工を二箇所に入れて一箇所裁断ですか。やや小さめのボードでよければ、A3板紙を一箇所折り目加工で済むので値段的にはたぶん1/4くらいになるんだろうとは思うんですが、だいたいそもそもそういうのやってない。 前回の話ですと、タペストリーは高くて話にならん、同人印刷にも頼れない、箱屋にメニュー印刷扱いで頼めないか、というような方向だったんですが、後で見てみると案外そうでもないかも。 30*30(cm)以内の大きさだったら色紙(しきし。同じ字の異義語もあるので検索のときに紛らわしいことこの上ない)でいいんじゃないかとか、いっそ色紙を4枚ならべればそれで問題ないんじゃないかとかそういうことも考えたのですが(色紙は記念として刷るものなので小ロット印刷がむしろ普通なのです)。 布、ね、物によってはそんなしないんですよねー。前回はタペストリーにこだわりすぎたかもしれない。 タペストリーじゃない布って具体的には何かといいますと、つまり、 ハンカチ。 タオル。 不織布。 このうち、ハンカチとタオルにはサイズの問題があり(ハンカチは小さすぎ、タオルはボードゲームに使うには変形過ぎる)、更に言えばボードゲームで往々にして必要になる細かい印刷がいまいち得手でないんじゃないかとも思うんですが、でもこのへんなら同人でも扱ってますし、そうでないところでも普通にやってます。 でもう一個。不織布。CDとかDVDとかを傷から保護するための白い袋みたいのに使われてる素材としておなじみのアレですが、さいきん服屋でアレで作った袋を使ってるのもよく見かけるような気がします。そんなわけでアレの袋が家に転がっててじーっと眺めてたところ。 これ行けんじゃない? 残念なことに難点もあって、それはつまり誰がどう見ても薄すぎる。駒とか置くとちょっと頼りない感じがします。しかしそこは発想の転換(というか見たくないものを見ないで誤魔化してるだけですけども)。駄目なのは薄いことじゃなくて、安いことなんです。きっとね。箱を開けると四つ折のA2ポスターが恥ずかしそうに収まってたりするとカタン以降のプレイヤーである我々としてはどうしたって悲しいくらいに残念感が湧き上がってくるわけですが(WarSimではそういうことは別に普通だったので昔の人はなんとも思わないかも)、かわりに布がくるくる巻きにされてリボンか何かで縛ってあったら、変わったコンポーネントだなとは思われてもうわ安ーい、とはならないはず。まあ裏側の事情を察せられて苦笑を貰ったりはするかも。 それでは価格を見てみましょう。とある印刷屋のサイトから。 http://www.eastwest-inc.co.jp/price/2005-chroma-banner.html いわゆるフルサイズであるところのA2/50部で一枚1000円ちょっと。A3なら670円くらい、ということでこれくらいならまあ出せない値段でもないでしょう。50部というのは自作だと泣きが入るレベルできついくせに印刷に回そうとすると最低ロットにとどかない、そのくせ今同人でゲーム作ろうとすると需要の最頻は間違いなくここらへんという最悪な値だと思うのですが、それでもなんとかぎりぎり対応できます。 不織布はさっき書いたとおり服屋でも採用されてるくらいなので、うまくやればデザイン的にはそう悪くないものが出来上がると思います。プレーのときに微妙ー、というのが問題ではありますが、そのへんは自然石とか分銅とか同梱してあしらうということでどうですかお客さん。 ■
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by Taiju_SAWADA
| 2006-03-10 01:20
| 創作関連
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